勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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元魔剣戦士の結婚:番外編・後編①

その時世界に激震が走った・・・・・主に魔界の・・・・・ごく一部であるがそこが騒がしくなると本気で三界がやばくなるところに局地的な大激震ではあったが。

 

魔界の神の右腕にして大宰相ミストバーンが、かつての自分の弟子であった娘スピカとの結婚という一大事に、魔界の神は大喜びをして結婚式の費用は全額こちらが持つとまで言っちゃて、なんなら花嫁衣装に相応しい国宝級宝石・装飾品を贈るのだと言ったからさぁ大変。

可愛い自分の部下と、これまた可愛い孫娘が結婚するのだから、こんな慶事にお祝いせずしていつ祝うというのか!今であろう!!

脳内どころか実行しようと大暴走しかけたのを、止めたのはその可愛い部下にして自分の良いところどころか駄目なところも知り尽くしているミストであった。

 

自分の出せる範囲の式をしますと、ミストがきちんと釘を刺さなければそれこそパプニカ王太子夫婦の時以上、つまりロイヤルウェディング以上の格式高い式になっていたであろう。

そんな事をしてしまえば悪目立ちする事甚だしく、自分はともかく新妻になってくれるスピカに碌な奴が寄り付こうとすること請負である・・・・主は自身が強者の中の強者であるから有象無象も怖れて近づいてこなかったのでその辺の苦労はご存知ない。

無いのであれば自分が察して食い止めればいいと、忠誠心と守護心満載で阻止をして・・・主のがっかりとした顔を見る羽目になったのは仕方がないではないか・・・

 

とにもかくにもミストとスピカが、ヒュンケルとエイミにミストが結婚を申し込んでから一年後に、お式をする運びと相成って周り・・・ティファとキルとポラリス以外の全員が驚天動地の憂き目にあった。

 

何故ミスト!!!????

 

満場一致でこれである。確かに彼をきちんと知るのもであればお付き合いしたく、仲間や同僚にいてくれれば頼もしい、頼もしいのだが浮いた話は一つも出ては来なかった寡黙の大参謀が・・・・ヒュンケルから目玉通信で知らされた師や仲間達一同は、年の差を考えれば眩暈してきそうになった。

マトリフなどは、せっかくのポップ以降になる弟子候補を取られたとやけ酒をしている御年・・・本当に百二十歳のお爺ちゃんなのだろうかこの人は・・・・

実際の記録によれば、膨大な魔力を持ち、その上で精霊から愛された者はなんと百五十まで生きたとか・・・

悪霊にも近い性悪ではあるが、一応は精霊界では高貴な出自にあたるパックが、マトリフちゃんは長生きしてもっと自分を楽しませておくれよと、精霊の加護を与えたのだ・・・理由が本当にこいつ精霊じゃなくて悪魔だろうとは言ってはいけない。

そんな元気なお爺ちゃん大魔導士が怒っても、普段から優しいのを知っているスピカ当人に宥められ、スピカがあいつの嫁になるのかといった魔界の名工様は、寡黙な愛弟子に酒を勧められてこれまた宥められた。

ロン・ベルクだとてミストが悪い奴ではない事なんて百も承知しているが、、それでも思うところは多々あるのだ。

もう当人同士が好きあい、互いの事を良しっているのだから祝う以外ないでしょうとはアバン王の言葉であったとか。

秘かにではあるが、自分の子で今年十六になる王太子のお嫁さんになってほしかったのは墓場までの秘密にする事にして。

聡明で明るく、出自は自分の一番弟子というこれ以上ない保証があるので大丈夫であり、他国の娘さんではあるが、政治的しがらみがどこともない・・・・これ以上ない好条件のお嫁さん候補であったがすっぱりと諦めた・・・・もしもミストが下手をこいたら速攻でいちゃもんでもなんでもつけてかっさらい、自分の話術と王太子の魅力でスピカを取り込もうと算段する腹黒い諦めを・・・・・相変わらず飄々としながらもいい性格をした大勇者であった

 

それはともかく、式は-身内-とお世話になった人達だけの限定にした。そうでなけらばミストの地位と、スピカの両親の事を思えば-色々-ありすぎて、諸事情は推して知るべし!!

今回は身内枠なのでダイ王太子夫婦、ポップ・メルル国王夫妻、マァム・ラーハルトデルムリン島の長夫婦は式の場だけは、昔の様な、何の肩書も無かったあの頃のように楽しんでほしいとスピカは願い、ミストは速攻でスピカの願いを叶えるべく、都合の良い式場を抑えて招待状にもその旨を一番上位に書き込んでそれぞれに送り付けながら、チウ達も来やすいように、ヒュンケルとエイミが使用したあの広い教会だときちんと明記し、スピカと遊ぶことが多かった獣王遊撃隊・パプニカ王都支部のモンスター達も来てほしいと書き記し、チウは笑いながら承諾をした。

普段は休日であっても自主的に働いてしまう子達が多いので、たった一日ならば全員休暇にしてもらってもいいだろうとダイ達と相談をしながら。

 

チウの率いた獣王遊撃隊は、今や組織化され地上のどこであっても支部があり、さすがにその運営やら維持やらがチウにできようはずも無いので各王室で其れ専門に立ち上げられた新設の部門が日夜モンスターの皆様に喜んで働いてもらえるようにと頑張っおり、当然パプニカ王都にも支部はあり、スピカとポラリスは幼い頃にチウと一緒に遊びに行ってモンスター達と触れ合い笑いあったのがつい昨日の事のようだと思うほどにチウも成長をしていた。

お祝いは、いつものように幸運が訪れる木の木彫りがいいだろうか?

 

驚きながらも二人を祝福する声は多く、特に役職だの働き場が定まっていないマトリフとロン・ベルクは速攻で酒を片手にヒュンケル宅に突っ込んできた。

 

山ほどのお祝いの言葉と、贈り物は式の当日まで楽しみにしていろという二人の言葉をスピカはにこにことしながら聞いて夕餉を終えて、スピカがおやすみなさいと下がったところで大人だけの宴会になった。

 

「お前さんよくミストバーンとスピカとの結婚を許したな。」

 

程なくエイミも眠ったのを見計らい、ロン・ベルクがストレートに聞いてきたのを、ヒュンケルはその時の事を思い出してしまい、疲れと頭の痛さを飲み込むように、グラスのワインを一息に飲み干した。

・・・・あの時踏ん切りがついたと思ったのだが、矢張り男親としては娘を嫁に出すのは抵抗があるのだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-遡った半月前の夜-

 

元師であるミストバーンからの言葉に、ヒュンケルと諸事情全て知っているエイミは悩み、特にヒュンケルは頭を文字通り抱えた。

夕餉の後にでもそちらに邪魔をしてもいいかというとっても珍しい事を言って来たミストに来てもいい許可を出した自分を殴ってやりたくなった。

 

何故だ・・・・スピカは確かに十歳くらいの時までミストおじちゃんと結婚するのだと言っていたが、近頃は全く言わなかったのに・・・・言わなかったのではなくて、いろいろと分かり始めたスピカが言わないようにしただけか?

それがライオネルとのお見合い話が、スピカの秘めたる思いを後押ししたのだろうか?

 

だが理由などこの際どうでもいい・・・・あの厳格を実体化させたようなかつての師が、恥じらいだの戸惑いだのを振りまきながら自分の目の前にいないでほしい!

色々と切なくなる自分はきっと悪くない筈だ!!

 

とは言え・・・

 

「はぁ~・・・・・」

 

ヒュンケルの溜息に、スピカは怯え、ミストは矢張りすんなりとはいかなかろうと腹を括った。

スピカと違い、実際に自分とこの元弟子の間には、言葉には尽くせぬ様々な事があり・・選りにもよって、キルと違って自分にならば子供を見てもらっても大丈夫だと信頼していたのを、最終的には全然大丈夫ではなかったのだから無理は無かろう。

普通の親ならばもう抜剣して自分を追い回しても不思議ではない・・・返り討ちにできるがそれをしたら本当に様々に不味くてそれはしないが、さてどう説得したものかとミストも頭を悩ませていたら

 

「俺に、反対する理由はない。」

「お父さん?」

「俺もかつては罪人だ、それもこの国を攻め込み、死者さえ出したことをスピカ、お前にも教えたはずだ。」

「う・・・・うん・・・でも!!」

「分かっている、いつまでも過去の事だけで生きていくのではなく、償う道をエイミと共に歩くことを決めてお前たちが生まれた。」

「・・・と・・うさん・・・」

「幸せになれスピカ、お前の望んだ道が、誰はばかる事ないと確信しているのであれば俺と母さんはその道を守ってやる。」

 

娘を頼むと、ヒュンケルとエイミはミストに頭を下げ、短いながらも自分を愛してくれている想いの一杯詰まった父と母の言葉に涙をぼろぼろと流すスピカは無論の事、ミストは主大魔王バーンの言葉と同じか、それ以上の気持ちでしっかりと受け止め二人の結婚が決まったのだ。




今宵ここまで

次回いよいよお式です
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