勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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元魔剣戦士の結婚:番外編・後編③

「「私達は今日集っていただいた皆様を前に」」

「私ミストバーンは、ヒュンケルとエイミの娘スピカをこの時を以て妻とし」

「私ヒュンケルとエイミの娘スピカは、ミストバーンをこの時を以て夫とし」

「「夫婦となり、病める時も健やかなる時も何時いかなる時も互いを尊重し合い助け合う夫婦となる事をここに誓います。」」

 

聖堂での誓いの言葉と、誓いの口づけの聖堂を揺るがす大歓声が上がる。

この時を以て、二人は夫婦となった。

 

 

-遡った少し前-

 

「む~・・・・まだか・・・ミストはもう祭壇前で待機をしているというのに・・・スピカがなかなか来んの・・」

「・・・・落ち着いてくださいバーン様・・・ダイ達の時も、花嫁がバージンロードを歩く前は少しかかったのと同じです・・」

「ハドラーよ、その方は落ち着いているが、考えようによってはそのほうのひ孫が結婚する晴れの日ぞ?」

「そうだよハドラー君!もっとこうさ、お祝いムードで盛り上がろうよ~。」

「そうか、ヒュンケルの親父さんのバルトスさんはハドラーが禁呪生命体で産んだんだっけ・・・本当にひ孫だわそりゃ。」

「なんだか魔王軍とヒュンケルさんって、本当に縁続きなんですね~。」

「ふふ、その元魔王軍であった俺の後を継いだお前も十分縁続きなのを分かっているのか?」

「そうね、考えようによってはチウもそうなるし・・・ダイ君とティファもそうなるのよね~。」

「私の場合は父さんと母さんの後継いだみたいなものかしら?」

「勇者一行のか?・・・・・そう考えると俺って本当に一般人だったんだな~。先生にくっついて行かなけりゃ~今頃こんな凄い所で皆でワイワイ出来なかっんだろうな。」

「縁って不思議だよね。俺だって何事も無かったら一生デルムリン島から出たくないって言ってたかも。」

「ダイさんは本当に島がお好きなんですね。」

「そうだよメルルさん。一度私がロモスの港でもいいから行こうって誘っても、島のみんなと遊んでたいって言ってたんですよ?」

「ディーノにもそのような時期が・・」

「今では押しも押されぬパプニカ王太子ですが。」

「やんちゃなティファ様見てやめておこうってなったんじゃねぇか?」

「さよう、ガルダンディの言う通りかもしれませんな~。」

 

・・・・・・スピカを待っている間になんだか私への雲行き怪しくなってない?

ども!聖堂で花嫁スピカを待っているティファです!!

厨房後にした後白い料理人服からダッシュで-キル作成-のモーニングドレスに着替えたティファです!大き目のリボンタイが付いているオフホワイト色のブラウスに、ライトブルーのボウタイワンピースをバッチシ着て、きちんとお祝いモードで大魔王達もいる聖堂の最前列でスピカ待ち状態です。

今日の結婚式の為に、皆んなが一年前から来られる様に調整して、近頃は無かったー全員大集合ーになれて本当に良かった。

でも仕方ないか、皆んな世界の明日も幸せになれる様にいそがしくしてるんだから。

それでも、今日はなんの肩書きも無く、昔みたいにはしゃいで楽しそうにしている皆んなを見られて、お式とは違う嬉しさを感じる。

幾つになってもダイ兄を君と呼ぶレオナ姫も、来年あたりはレオナ女王に、メルルさんも女王稼業について随分経って、ポップ兄も王配としての貫禄がついて・・たはずなのに少年に戻った様にスピカまだかと何度も言ってそわついてる。

早く来ないかとみんなそわそわして、おじさんとロン・ベルクさんなんて様子を見に行こうとしてノヴァとポラリスに止められて・・・・アポロさんはマリンさんにハウスされてた・・・でも気配的には聖堂の扉の前あたりまで歩を進めているの皆分かっているだろうに、ヒュンケルがスピカの手を離せなかったらどうしよう・・・

 

ティファの予想は-半分-当たっている。

ヒュンケルも愛娘の手を放しがたいのと、スピカも父と付き添ってくれている母に、官署の気持ちを伝えても伝えきれずにいたのだ。

 

「お父さん、お母さん・・・本当にありがとう・・・大好きだよ。」

「スピカ、貴女がミストバーンの奥方になっても、生涯ヒュンケルとお母さんの可愛い娘なのよ。」

「そうだぞスピカ、それを忘れないでくれ。」

「はい・・・はい!!!」

 

行ってきます!!

 

スピカが自分の気持ちに一区切りを漸くつけ、行ってきますと元気よくヒュンケルとエイミに向かって挨拶をする。

これからは両親と兄が自分を守ってくれていた巣から巣立ち、ミストバーンと共に長い人生の道を共に行くのだと決意を示すために。

 

「新婦様とお父君の入場にございます!!!」

 

この一言を待ちわびた聖堂の招待客達は案内人の言葉と共に一斉に立ち上がり、祭壇の前で待っていたミストも開かれた扉を見つめる。

 

そこには白百合のごときスピカが、花嫁のヴェールで顔を覆い、片方の手でサムシングブルーのブーケを持ち、父ヒュンケルにエスコートされて楚々として入って来た可憐な姿があった。

その美しさに、ミストは瞬間で心を奪われた。

 

美しい・・・・

かつて自分は大魔王バーン様の魂に触れ、その高潔なる想いを美しいと感じて永遠の忠誠を誓ったが・・・誓おう、終生変わらぬ忠誠はバーン様に、されど愛しい思いを-妻-に

 

黒いダキシードを着た父に伴われ、スピカがバージンロードを歩く時、先ほどの喧騒が嘘のように静まり返り、荘厳な静寂が聖堂を満たした。

聞こえるのはスピカとヒュンケルの足音のみで、一歩ごとにミストに近づくいていくのを誰もが固唾を飲んで見守る。

産まれた時から見守って来た自分達の娘にも等しい子が巣立とうとするのを見守る親鳥の様に。

そしてとうとうスピカがあと一歩でミストの前にならばんとした時、ミストが一歩踏み出し、父ヒュンケルからスピカのエスコートを受け取る。

 

娘を頼む

終生スピカを守る

 

互いが無言であっても目で会話をし、スピカの幸せを守ることをミストが誓い、ヒュンケルは頭を深々とミストに下げ、妻エイミの待つ花嫁の両親の待機席へと向かう。

これからはミストがスピカを守るのだと託して。

 

「ミスト・・・・その・・・お待たせしました。」

 

父から愛おしい夫となるミストにエスコートが代わり、祭壇へと行く道すがらスピカはミストに小声で詫びをした。

どうしても父と母に感謝の言葉を伝えたくて・・・それでも待たせすぎたのではなかろうかと、素直で良い子のスピカの詫びに、ミストもひそりとした声で返した。

 

「構わない・・・待つ間も楽しんでいた、気にするな。」

 

そう、キルには花嫁衣装を着たスピカはもうすぐみられるだろうと言ったが内心ではスピカはどれほど美しくなっているかをずっと考えていたのだ。

だがどの想像した姿よりも、スピカの今の美しさにかなうものではなかったが、言われたスピカはきょとんとしてミストに聞き返す。

 

「あの・・・それはどういう・・・」

 

その答えを聞くのには時間切れとなった。

二人は祭壇の前に立ち、神父から祝福の言葉を授けられた後、-神-にではなく、自分達の大切な人達に向かって夫婦となる事を誓いあったのだ。

ミストも今は許しているとはいえ、一時は天界を憎み、神々を滅ぼさんと魔界の神と共に長い時を渡って来た身。

其の想いは、要因となった魔界の滅びがなくなったとはいえ胸の中にわだかまりが色濃く残っている。

そんな自分が神に誓うとはどうなのだろうかとスピカとティファに相談をし、ティファからの提案でこの形に収まりを見せた。

結婚式自体の神の祝福を受け取り、誓いは大切な人々にすればいいのではないだろうか。

きっと天上の三神様達も、笑って見守ってくれるだろうとからりと笑って。

文言はスピカとミストの二人だけで相談をしあい、共に声を合わせる練習を何度も重ねたのを知っているのはティファだけであった。

 

朗々としたバリトンヴォイスのミストと、可憐なスピカの声が美しいハーモニーとなり、聴く者達を魅了した。

そしてクライマックスがやって来た。

ミストとスピカが向き合い、ミストがスピカのヴェールに手をかける。

 

落ち着け・・・・ただ、ヴェールを上げさえすればいいだけではないか・・・

 

ミストがヴェールを上げスピカの顔が見えるまではそう時間を要さなかった。

しかしミストにとっては途轍もなく長い時間と感じた。

むやみに喉が渇いてカラカラとなり、心臓の鼓動がうるさく感じるなど初めての事に戸惑いながら上げたヴェールの先に見えたのは、スピカの真っ赤に上気し匂いたつような薔薇の頬、うるんでまさに紫水晶のように美しい瞳・・・・そして自分を待つかの如く、小さく開かれた可憐な唇・・・

 

あぁ・・あぁ・・・・スピカ・・・・・愛している!愛し抜く!!私をどうか・・・

 

「ミスト・・・・」

「スピカ・・・」

「私と一緒に・・・幸せになってください・・・」

 

おのれの赴くままに発せられたスピカの小さな声で言われたその言葉に、眩暈のような愛おしさを覚えたミストは、背を押されたように小柄なスピカにまさに覆い被らんとばかりに抱きしめ、腕に込めた力とは裏腹に、そっと優しい口づけをスピカにおとし、その瞬間祝福の言葉の嵐と、割れんばかりの拍手が聖堂を揺るがすほどに満たさる中、スピカは切に願った。

 

このまま愛おしい夫共に溶け合って一つになれたなら、これほどの幸福は無いだろうと

 

ミストが自分のヴェールを取り払った後、-あの時-の様に少しだけ悲しい気配がした。

洞窟で結婚をしてほしいと望んだ自分に、ミストは罪深い自分ではいけないと気配が悲鳴を上げていた。

きっと今もまた・・・・だからこそ、自分がミストバーンの心の支えになりたい。力も知識も経験も何もかもが強く高い彼を、そういう意味で支えられるのはそれこそ魔界の神様と次期大魔王との呼び声が高い魔王ハドラー、親友で同僚のキルバーン、人界ではアバン王とマトリフ大導師、そしてティファしかいない。

ダイ王太子、テラン王配ポップも、力と知識はあるが両方はない・・・・そんな途轍もない人物を夫にするのであれば、自分の思いも何もかもを差し出して、心を支える以外があろうか?

自分は夫の庇護対象になりたいのではない!誓いの言葉の様に支え合う夫婦になりたいという願いと共に、溶け合うような優しい口づけを交わす・・・・ミストもまた、スピカと共に溶け合いたいと望みながら・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれは本当にすごいお祭り騒ぎだった・・・・ダイ兄達よりもすごい熱狂だった気がするな~。

 

ミストとスピカの結婚式が終わって一月後、約束よりも半月遅くなってしまった学友や近所の人達とのお祝いの会の料理を作りながら、ティファはその時の事を思い出す。

 

口づけが交わされた後、二人は腕を組んで父ヒュンケルと母エイミに挨拶に行き、そしてフラワーとライスシャワーの祝福を浴びながら、バージンロードの上を歩いて出口に向かい、祝いの鐘の音共に表に出て、スピカは泣いて笑って力強くウエディングブーケを投げて・・・・私が受け取ってしまったけれどもいいのかな?

 

全員の目が・・・・・主に父さん・兄達・・・大魔王とキルが一番怖かった気がするのは気のせいという事にしたいよ、うん。

それでも・・・・いい披露宴ができたと思うんだよね~。

 

「ミスト!スピカ!!夫婦初の共同作業です、きれいにケーキを切ってあげてください!!」

「・・・・こんなきれいなケーキを・・・・切ってもいいのティファママ?」

「・・・・・やりすぎだ馬鹿者・・・」

 

聖堂から降りた広い庭が披露宴の場となり、中央には三段になったケーキが安置されるように置かれていた。

 

台とケーキを覆う様に色とりどりの花が敷き詰められ、中央に置かれているケーキは見事で・・・・・・見事すぎて新郎新婦が切るのをためらわせるなぞ馬鹿であろうと、ミストは溜息をつきつつ内心でティファに突っ込んだ。

純白のドレスの様なクリームに、金朴銀箔を細かくしたのを絶妙な配置で眩し、どう見ても季節外れでハウス栽培で頑張りましたと分かるイチゴが花束に見えるようにカッティングをされ飾られている・・・・これを中央から真っ二つにしろと言うのか・・・

 

ティファとしては、お祝いと言えば紅白だろう、金銀だろうという前世の記憶に引っ張られ、去年の内からイチゴ専用のビニールハウスを大魔王バーンと共に設営し、温度管理を徹底し、其れ専用の部門をバーン様が立ち上げたからさぁ大変の巻きとなった。

こればかりはバーンの跡継ぎも反対できず、ミストに知られる事なく繊細な作業が得意なキルが部門の長となって頑張って大振りで見た目も瑞々しいイチゴができた。

カッティングされ、細かくなったイチゴもきれいにケーキの上に花びらを散らせたように飾りつけ、新郎新婦が切るのを躊躇うほどのウエディングケーキが出来上がったのだ。

大暴走したらまずい人達が、一致協力をして気合を入れて作られたケーキに、二人は緊張しながら入刀を果たし、楽しい宴の始まりとなった。

 

スピカはあっちからもこっちからも引っ張りだこで、ミストの側を暫し離れたが、ミストは楽しむスピカに眼福を覚え、見ているだけで楽しいので無問題であり、待つ間もバーンが二人の幸せを寿いでくれ、ティファもなんだかんだと料理の方を手伝い、双子がちょろちょろと出ては自分に見られたと分かると引っ込むという愉快な光景が繰り広げられている。

ポラリスも師のロン・ベルクやマトリフと共に呑んで妹を祝い、綺麗に盛り付けられていた料理皿はいつのまにか空になっているのをまたティファ達が足していく。

主もティファ特製の十種類のトライフルを堪能しているのを横目で見て楽しんでいる時に、灰色の貫頭衣と揃いの色のローブをまとったチウがちょちょかと近付いてきた。

手にはチウの贈り物として馴染みのある木彫り細工を手にして。

 

「ミストバーンさん。その、芸がありませんが…僕からの贈り物です。」

「・・・有難く貰おうチウ・・・・腕が上がったか?」

「そうですか?そうだと嬉しいです。」

 

スピカと同じくらい、ミストもバーンとキル以外にも引っ張りだこで、言葉が短いながらも礼を尽くし、その中でチウより、雄鳩と雌鳩が共に木の枝にとまり寄り添っている一本彫りの木彫りを贈られた。

塗装でもされているのか真っ白であり、いつもは木肌をそのままにするチウにしては珍しいと思ったが、話を聞けばチウが塗ったわけではないらしい。

 

「これは白樺と言いまして、いつものライリンバー大陸の幸福を呼ぶ木の物ではないんです。お二人に特別な物を渡したくて、キルバーンさんと一緒にどの木にしようかを考えたんです。」

 

人間は花言葉の様に木にも言葉をつけ、白樺の木言葉は

 

「光と豊富だそうです。」

 

二人がこのハトのように寄り添い、光と豊富に包まれた生涯を送れるようにと言われた言葉に、スピカはまた嬉しくて泣きだし・・・・そして・・・・・

 

 

 

 

 

自分があの時涙を流すとは・・・・チウは矢張り大物だ。

 

一月前に贈られたハトの木彫りを置きながら仕事をしているミストはしみじみとあの時の事を思い出す。

様々な意味で満たされ、これ以上ないだろうと思った幸福な気持ちは、もっとあるのだろうと指し示されたあの時に、自分もまたスピカの様に涙を流した。

洞窟でスピカに結婚を申し込まれ苦悩し、そして受けたあの時にも流さなかった涙を・・・

これから先も切って幸せな事に巡り合える気がする、スピカと共に。その時また、自分は涙を流すのだろうか?

ローブを着ているおかげで周りに知られていたいと思いたい所ではあるが、自分の気配で絶対に主と悪友の如きのキルとハドラーとそして・・・・ティファにはばれているだろう。

だがいい、それが嬉しい事の発露なのだから・・・・・この先もきっとあることなのだから。

 

そのミストの予感が当たるように、三月後にスピカより子ができたという知らせと、そして十月十日後に産まれた我が子を抱いた時も、ミストは誰はばかることなく涙を流して喜んだのは別のお話。

今は新妻が学友達とどのように楽しんでいるのかを、夕餉に聞くのをミストは楽しみにしている。いつもの様に小鳥が囀るように、笑って沢山話してくれるだろう。

五年十年・・・・百年は無理であっても、彼女が人としての寿命が付き、その後も愛し抜くと決めた妻スピカの笑顔を思い浮かべ、ローブの下のミストの顔もまた、優しく微笑むのであった。




今宵ここまで

長くなりましたが、これまでの登場人物たちが、大切な人達の幸せの為に奔走していただいたお話を送り届けられたかと思います。

次回の主役は獣王様です。
後日談の方で地の分だけで結婚をさせてしまったのがどうにも気にかかってしまい、二、三話を予定させていただき、その後ようやくダイ君とレオナ姫、ポップ君とメルル王女とラーハルトとマァム嬢の合同結婚式となります。

後一つだけお願いがあります。
主人公の結婚式、ifではなく本編の最終話の前に入れようかどうかを悩んでいますので、ぜひご意見を伺いたくアンケートにご協力をお願いしますm(_ _)m

主人公ティファの結婚話しもいりますか?

  • ダイ君達の後ならば入れてもいい
  • 独身の方が面白いのでいらない
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