儚げで可憐と言う言葉はきっと…あの者の事を言うのだろう・・・
クロコダインは近頃は日に何度か溜息をつく。
溜息と共に、出会って一目惚れした少女の名前を呟く。
「ティフィール・・・・・」
大戦が終わり魔界が浮上して半年後にアバンが結婚をし、更にその後ヒュンケルとエイミが結婚をして一月後にクロコダインはバダックの企画したお見合いパーティーに出席をした。
その時は出席した婦女子達が可愛い女の子達だとしか思えずにバダックをがっかりとさせてしまったが、そのすぐ後に出会った盲目の少女・ティフィールに出会って自分は一目惚れをして・・・何の奇跡が起きてティフィールも自分を好きだという・・・・何故だ?
目が見えないゆえに、リザードマンの俺の容姿が分からないせいかとも思ったが、それではお見合いパーティーで自分を心の底からもてなしてくれた娘達に対して失礼が過ぎるというのは、あまり女心の分からない自分でもそれは分かる。
自分が妻を、それも人間の少女・・・・・さらに言えば、あのような華奢で可憐なる少女に惚れようとは思ってもみなかった。
仮に結婚をするのであれば同じ種族か、人間だとすれば自分と同じ戦士の類か・・・・そのどちらでもない、自分の身を守る術が一つもない・・・・唯一の救いがあるとすれば、年齢が十七歳と少し大人であった事だろうか?
彼女も盲目とは言え意思表示のはっきりとした子で、別れてから三日後に兄であるロベールを通してもう一度自分と会いたいと言って来た。
もう一度ティフィールたちの家に行けば歓迎をされ、ロベールからティフィールの事をも娶ってほしいと言われた時に天地がひっくり返る思いがした。
貴方にならば、妹を託せます!
そう一言を言って立ち上がり、自分が返事をするまで頭を上げない実直な漢の心に、そして自分がなんと返事をするのかと怯えながらも逃げ出さないティフィールの健気さに、自分は承諾をしたが何と答えたのか本当に覚えてない。
こんな武骨な自分が、可憐な少女を娶る・・・・
「どうしてあげればよいと思うティファよ?」
「・・・・・・さて・・・恋と言うものを私もしたことがないので何とも言えませんよクロコダイン。」
「・・・・そうなのか?」
「はい。」
ティファの返事にクロコダインは少々意外そうな目を向けるが、その目線にティファは苦笑しながら律儀に答える。
「私は生まれてながらにしてこの世界の事ばかりに・・・・もっと言えば幸せにする事ばかりに考えていて、-愛-を知っていても-恋-は知らないのですよ。」
もっと正確言えば、あの最初の大魔王達との決戦時に、あるいはすべての策がうまくいき、三界全てを繋げこの世界の命運をひっくり返した最後のあの時に己の命は対価として消えるのだろうと思い定めて生きてきた十二年間で、自分が恋をするという考え自体が欠落していたというのは・・・・・終生の秘密だと、ティファは胸の中で呟きながら相談に来たクロコダインを見やる。
彼ほど迷う事無く仲間の為に思いを、命を使って来た戦士はいない。
それが恋となると違ってくるのはきっと良い事だ。
それは自分もだが相手の幸せを考えたうえで悩み不安になり、幸せの道を模索していることに他ならないのだから。
しかし本当に困った・・・・この件は自分にはさっぱりだと自分で淹れた紅茶を飲みながらティファも溜息をついてしまう。
-普段の逢瀬-の時のプレゼントの時にはアドバイスならばできていた。
クロコダインもティフィールも、いきなり結婚とは心の準備ができていないので、結婚式の用意をしながら結婚は半年後がいいだろうとなった。
その間にお互いの事を知れるようにと二人の周りが活発に動き、パプニカ自慢の風光明媚な場所で二人がピクニックに行ける手配をし、あるいは兄ロベールも入れて温泉旅行一泊二日に行かせたり、ありとあらゆる手を使って二人の距離が縮まるように頑張ってくれた。
そんな時ティファに、
ピクニックの時には手触りの柔らかいハンカチで汗を拭ってあげて渡してあげては?
温泉旅館でふんわりとしてこのタオルを使ってもらってください。
このハーブティーはとても良い香りがするのですよ。
等々贈り物を共に用意してくれた。
しかしそんなティファにとっても、今回の相談は悩む。
兄を通してティフィールを娶れる事になったが、プロポーズは矢張り再度自分から言った方が良いのかと聞かれて困っている。
自分だったら好きな人に自分で申し込んでいるので、親族挟んだ場合の事など知らんし、好きな人にどうしてほしい事態が・・・・お手上げだ。
しかしだ、クロコダインも本気で悩んでいるので力にはなってあげたいと思う。
こと戦いになれば思いっきりがいいのにと、クロコダイン自身も自分はここまで不甲斐ない男だったのかと落ち込んでくる。
文字通り戦いしか知らない自分は、婦女子相手にどうしろと言うのか分からない。
だからと言って、結婚するまで会いませんと言うのは失礼にもほどがある・・自分が相手の保護者だったら間違いなくアックスを唸らせて相手に打ち掛かりながら破談にしてやると怒鳴りつけること請負であり、ティファに相談をしながら頑張って来た。
そしてそろそろ結婚式の日が迫り、その前に再度自分の口から結婚の申し込みをした方が良いのか・・・・それでは兄ロベールが結婚を申し込んだあの時は、自分との事を悩んで半年近くしてようやく答えを出したのかと思い違いをさせても可哀そうではなかろうか・・・そう思って二人はどうすべきかと頭を抱える。可憐な少女の胸の内はいかなるものなのだろうか?
では他に相談者がいるだろうか?
レオナ姫は無いだろう、王女にする相談ではない。
ではエイミは?・・・・新婚夫妻の馬に蹴られてはたまらなく、メルルは今頃は次期テラン女王になるべく勉学の真っ最中・・・・ではマァムはと言えば、近頃はラーハルトがべったりしているので近寄りづらい・・・
「・・・・・春ですね~・・・」
季節は夏なのに、それぞれに春が来たと、デルムリン島の森のそよ風を受けながらティファはのんびりと呟く。
さて・・・・どうしたものでしょうかね~
今宵ここまで
主人公ティファの結婚話しもいりますか?
-
ダイ君達の後ならば入れてもいい
-
独身の方が面白いのでいらない