あ~・・・いい天気だな。暑くなるなこれは・・・・
ども、能天気にお空を見上げて今日のお昼ごろは気温高くなりそうだから今開いているお茶会ののデザートに氷菓子を、氷の勇者と呼ばれたノヴァに手伝ってもらって追加でお出した方がいいのか悩んでいるお料理人のティファです。ミストとどうしようか相談中でもあります。
ミストとしては主様と、華奢で細くてあまりお茶菓子類を召し上がっていないティフィールさんを案じて出そうと言っていますが、私としては、暑いからと言って冷たい物ばかりはお腹壊すだろうを標榜したいのだけれども・・ティフィールさんの事思うとな~。
南国育ちでも熱射病にもなった事ない私には、分からん・・・・どうしようか・・まさかあんなに折れそうな細い令嬢様初めてだし・・・
ティファはどうしてあげれば良いのか本気で悩み、それは周囲全員の思うところ。
野生児であったダイは言うに及ばず、人生経験の長いはずのバーンも触れれば壊れそうなご令嬢は初であり、陽気で場を盛り上げる気満々であったキルですらも、何を話題にすればいいのやら手をこまねいてしまっている。
クロコダインがティフィールというパプニカの男爵令嬢とお付き合いしているのは仲間内ですぐに共有をされていた。
何となればみんなの親父さん的な、勇者一行の精神的支柱をティファと共に支えてくれた、まさしく世間でいうところの盾の君。そんなクロコダインの幸せを全員が共有して喜んだが、お相手の事を考慮して全員で突撃祝いするのは控えられた・・・・言っては何だが勇者一行の者と、その周辺の女性陣はティファを筆頭に-女傑-が多い・・・ぶっちゃけ言えば女傑しかいない・・・・
マァムは闘うものであり、エイミも賢者として最後まで戦い抜いている。
フローラ様もレオナ姫もメルルも戦う事はなくとも死闘を前に一歩も引かずにいた強い女性・・・・・ガルダンディと婚約したニーナは言うに及ばず、つまるところ何が言いたいかと言うと、儚げな可憐な少女など完全に埒外であり全員接した事が未経験!
一人ずつ会いに行くのも何やらティフィールを値踏みしに行くように取られたらどうしようと、一行は結婚式かその近くになるまで待つ事にした。
ティフィール自身もクロコダインから仲間達と会うのはもう少し先だと言われた時は正直ほっとした。
目が見えず、そもそもパプニカ国自体が戦火を知らずとも勇者一行の英名は鳴り響き、そんな雲上人にも等しいクロコダイン様とお付き合いができかつ結婚できるだけでも奇跡だというのに、心の準備もできないままに尊き方たちとお会いなぞした日には心臓が持たないこと請負である・・・・名前が某破天荒料理人と似ているのに、容姿も精神力も大違いなのが謎である・・
しかしその可憐で儚げながらも、優しく芯のある心に惚れこんだクロコダインは全面的に守る気満々なので、少しでもティフィールの負担にならないように関係者一同に無作法を詫びて、全員、それこを目出度い事には大暴走する魔界の神様も納得したのでほっとして、そうして結婚式があと半月になった頃にティフィールの心も定まり晴れて全員とのお茶会を・・・・パプニカ国と書いて不運の国と呼ばわれるところの中庭で開催されたのだ・・・
無自覚権力沢山お持ちの魔界の神様来るのに、慎ましい男爵の家にお招きできる筈も無く、関係者一同の胃を壊しながらパプニカ城に。
だがここで魔界の神様も気を利かせたのだ!・・・・神様の中ではではあるが、一応ティフィールがいきなり知らない気配が漂うバーンパレスでのお茶会よりも、知った気配のするパプニカのほうが良かろうと言われては、満場一致でそちらが可決されたのは道理であった・・・・本当に珍しく真っ当だったのだ。
「ティフィールよ、疲れておらぬか?もう少しお茶を飲むか?」
「クロコダイン様・・・・大丈夫でございます。他の方ともっとお話をさせていた頂いても良いでしょうか?」
「うんむ・・・」
中庭には日よけの傘がさされた席が用意をされ、そこにクロコダインに連れられたティフィールが座ると同時に、ダイとヒュンケルとエイミ以外の全員が名乗って挨拶をし、ティファとミストがお茶を淹れて穏やかにお茶会が始まったが、さて何を話して楽しんでもらおうかと静まりかけた時、伸びやかでよく通る明るい声がティフィールにかけられた。
「いやぁ~ティフィールさんお目が高いよ。俺クロコダインのおっさんには絶対に家庭持ってほしかったからさ。おっさんは超優しくて頼りになる人だからよろしく頼むよ~。」
「まぁポップ様・・・私こそクロコダイン様に頼まれる身です・・・不束者ですが・・」
可憐で大人しめのティフィールに最初に口火を切ったのは勇者一行の頼れる魔法使いにしてムードメーカーのポップであった。
その前にエイミやマァムが優しくティフィールにクッキーなどの食べやすいお茶菓子を勧め、メルルも何くれとしようとしたが、世話ではなく世間話の様に楽しい話の糸口を、ポップはきちんと作って見せた。
クロコダインの好みの食べ物やお酒の話から、ティフィールも少しずつクロコダインの好むことを周りに聞いて自然とクロコダインの為人やこれまでしてきた数々の冒険話を、チウやラーハルト、ロン・ベルクやマトリフなどもティフィールに話して聞かせられるようになり、お茶会は賑わいを見せ始めたのを共に参加を許された兄のロベールは泣きたくなった。
いつも笑っても、それはどこか寂し気な笑みであった妹が、頬を染めてコロコロと笑っている。
目が見えない、それは本人も周りもどうしても上げられない、どうしようもない事なのに、時折心無い者達が陰口をたたくのを聞くたびに、それが妹の耳に入ってしまう度に胸をかきむしられ、言った本人たちの口を、何度裂いてやりたいと思ったか知れない!
その妹が心から慕い愛した人と結婚ができる・・・それもその身内全員から祝福をされて・・・
相手が勇者一行の方々だからではない!魔界の神様という奇跡のような方たちだからでは決してない!自分もティフィールも諦めていたのだ・・・クロコダインと言う-素晴らしき漢-が現れるまで、妹は終生嫁ぐことはなく、自分が結婚をする時はティフィールの事も受け入れ、共に住む事を笑って許してくれる女性が条件であった。
其の為に、ロベール自身は二十五になっても独り身であった。貴族の娘で少し落ちぶれている男爵の上に、そんな条件を受け入れてくれる奇特な女性は見つからず、こうとなれば庶民の娘でもよいと思っていた矢先に、ティフィール自身を本当の意味で愛していると言ってくれたクロコダインが現れてくれたのだ。
目が見えずとも良い、終生自分が守る。種族が違い、武骨で全く気が利かない自分であっても良いだろうかと反対に聞かれた時に、そんな事ありませんと言い切ったのがつい昨日の事のようで、食い気味に答えた自分に驚き目をパチクリとしたクロコダイン様が可愛く見えてしまったのは内緒だ。
今日はハドラーアバンは王様業務でどうしても来られなかったが、アバンは手作りスコーンを愛弟子の一人ポップに持たせ、ハドラーも来れない詫びの伝言をティファに託している。
スコーンの方はティフィールが一口で食べられるサイズにあらかじめ焼いており、なんと
「まぁ・・・スコーンの中にジャムが、こちらは・・・・イチゴ、こちらはマーマレード・・クロテッドクリームが入っております。」
ティフィールの指を汚さずにかつ味を楽しんでもらう為にのアバンの心尽くしに、ティフィールは嬉しくて泣きたくなる。
先程ティファから伝えられた魔王ハドラーからの伝言も、-結婚式であう日を楽しみにしている-と言われた時も・・・・そも、クロコダインとの結婚が決まった時から胸が熱くて、そして何度泣いたか知れない・・・嬉しくて、こんなに人々に大切にされて幸せで、幸せすぎて本当に良いのか・・・・・何も成した事がない人生だった。
目が見えずとも刺繍やレース編みで生計を立てている人もいるというのに、針の方は苦手で、兄の服の繕い物がせいぜいで・・・・・こんな自分が生きていていいのかと何度思ったか知れない。
クロコダインとの逢瀬の時も、そんな自分の情けない事を正直に話すティフィールを、クロコダインは一層愛おしさが募ったのを知らず、いつか呆れられて破談になってもいいように心の中で覚悟をしていたのに、妻になれと言われたあの時、あれ以上の幸せは無いだろうと思っていたのが・・・・優しい人達だ。功績も偉大さも知っている。勇者一行のダイは自国の王太子でありレオナ王女はやがて女王となる。ヒュンケルも近衛騎士団長であり、それなりに話が聞ける身分にいれば魔法使いポップと占い師メルルもまたテラン女王とその王配になるのも知っている。
そして・・・・魔界の方達もまた高貴なる・・・・生涯において交わる事のない人々が、自分に優しく、そして一人前の女性の様にクロコダインをよろしく頼むと言ってっくれている!
「こ・・・・こんな私ですが・・・」
クロコダインのプロポーズを受けたあの時の様に、ティフィールは勇気を振り絞る。
細いが、何かを決意したその言葉の響きに、談笑していた一同は口を閉ざし、ティフィールの言葉を静かに待つ。
しんとなってしまった場にティフィールは心許なくなり沈黙をしてしまったが、誰もが温かく見守り、そして、震えるティフィールの手を、そっと大きな手がかぶさるのを微笑んで見る。
クロコダイン様の手・・・・
愛おしい人の手だとティフィールは瞬時に分かり、真っ赤になってうつむいてしまった顔を上げれば、先ほどと変わらない優しい眼差しが自分に向けられていると気配がする。
本当に・・・・本当に何と優しい人達なのだとティフィール心の底から思う・・・・あの大戦を無血で終わらせる事ができたのはこの優しさなのだと得心するほどに。
優しい人達に甘えたくない・・・・だから・・・だから・・
「クロコダイン様を頑張って幸せにしてみます!!よろしくお願いいたします。!!」
晴れた空の下、ティフィールは一歩を踏み出した。
鳥籠に囲われ守られる小鳥ではなく、愛した人達と同じくこの大空を自由に羽ばたく鳥になる道を
そしてその言葉はクロコダインにも、身内一同からも微笑みを以て称賛され、その日は日が暮れるまで楽しい笑い声がパプニカ王城の中庭にはに響き渡った。
今宵ここまで
漸く双方の身内一同の顔合わせができました!
次回はいよいよお式本番です。