幸せな時間には美味しいお料理が不可欠!!
ただ美味しいだけじゃぁ駄目だ!その時その時の雰囲気と場所柄に相応しいお料理であってしかるべき!!
例えばだ、可愛い婦女子のお茶会に、美味しいからと言って生魚料理出したらアウトでしょう。
これは極端な例だけど、今日という日は豪勢なだけじゃぁいけない!華やかながらも-主役の花嫁-に相応しい・・・・
「・・・・何を考えているのかは知らんが忙しいのだ、もっと手を動かせティファ。」
「・・・・・・・ごめんなさいミスト・・」
えぇ~色々と迸る物があって大暴走品がら獣王クロコダインと、その花嫁様たるティフィールさんの結婚式の真っ最中に、魔王軍かつ大魔王バーンの料理人のミストバーンと共に、大聖堂の厨房で披露宴用のお料理を今日の未明から作っているティファです・・・・正直眠いんです!!
昨日は二人の事が嬉しすぎて寝れなくて、今も徹夜明けのテンションマックスでお料理作りに勤しんでます。
今日のコンセプトは何と言ってもお祝い事!
今回は立食形式ではありませんよ、正統派コース料理ですとも。
何となればティフィールさんの負担を減らす為にも、披露宴は立食よりも決まったテーブルで食べられる方がいいと、アバン先生やフローラ様と言う先達からのアドバイスいただきました。
さぁ!後はお二人の式に間に合う様に、私とミストもきちんと出席できるようにするのみです!!!
「・・・・・厨房のぞいたら戦争状態ね・・・」
「ティファさん・・・・張り切ってますね・・」
「ティファだし・・・」
「そうなのですか?」
例によって例の如く、花嫁のお支度には女性陣一同様が集っている。
レオナもいればマァムにメルル、新婚さんのエイミもお手伝いできており、今日はこっちに来るかしらとレオナが厨房に声をかけに言って・・・・後悔した。
数々の麗しい料理が、実は指揮官(料理人)達の怒号のような采配の下に作られていたなんて・・・
ミストは寡黙ではあったが、もたもたと肉を切っている輩を見ては、お前を切ってやろうかと実に怖ろしい気配を出して尻を叩いており、ティファなんて文字通り各所に指示飛ばしながら盛り付けしてた・・・・あの子が一番少女であるはずなのに・・・可憐さが・・
「・・・・・ティファ相変わらず元気に料理してたよ・・」
「まぁティファだし元気でいいじゃないかダイ君。」
「そうだぜ、俺達の妹は-ちょっと-ばかし元気いっぱいなんだよ。」
「・・・・嬢ちゃん・・」
「ったくお嬢さんは本当に・・」
「むぅ?俺は元気にあふれたティファが一番だと思うのだが?」
そして例によって・・・花婿の部屋にも男どもがたむろっている。
レオナと共に厨房に言ったダイは頭を痛める。
今日はレオナもマァムも結婚式の招待客に相応しく、真夏のドレス姿で華やかで麗しいのに・・・・妹だけが調理用の服着ているって・・・妹大好きのダイも溜め息つく中、扉が軽やかに叩かれた。
結婚式の始まりの呼び出し音として。
「汝クロコダインは、ここにいるポルコット男爵家の令嬢ティフィールを妻とし、健やかなる時も病める時も、貧しくともいついかなる時であっても、愛し守り抜く事を誓うか?」
「誓おう。」
「汝ポルコット男爵家令嬢ティフィールは、ここにいるライリンバー大陸の覇者・獣王クロコダインを夫とし、健やかなる時も病める時も、貧しくともいついかなる時であっても、愛し守り抜く事を誓うか?」
「はい、誓います。」
「よろしい、結婚に異議申し立てるものいなくば二人の誓いの着を沈黙を以って見守り、二人は誓いの口付けを交わしていただきます。」
誓いの言葉よりも、口付の方にクロコダインの心臓がはねた!
お・・俺の心臓はこんなに音を立てるものであったか?
ドクドクと耳打ち、こんな五月蠅い音をティフィールに聞かれたら恥ずかしい事この上ない!!
喉もカラカラで・・・大魔王達と戦った死闘の時よりも体が震えるのを、クロコダインは渾身の力を振り絞ってティフィールの顔を覆っているいるベールに手をかける。
いよいよ・・・・俺はこの美しい人と夫婦になるのだ・・・
クロコダインが緊張の極致にあるように、ティフィールもまた自分の心臓の鼓動に悩まされている。
手触りの良いシルクのドレスに身を包んでから、イヤリングにネックレスもさらりとした真珠であると分かる一品で、ヴァージンロードにも自分の事を考慮されたものだった。
大聖堂の扉を開けて一歩踏み出せばふかりとした感触が足の裏に伝わった時、不思議になってエスコートしている兄の顔があるであろう一に目をやる。
自分でもヴァージンロードはウエディングドレスを着た花嫁が転んでしまわないように薄い布で作られる筈。
その事を兄は前方を向いたまま
-とても分厚い絨毯を赤く染め上げて、お前の為に作られた道なんだよ-
ひそりとした声で教えてくれた。
目が見えない自分の為に、今まさに赤いヴァージンロードを歩いていることが分かるようにしてくれたのだと、対面のお茶会に来てくれたあの優しい人達の、優しい配慮だと。
その道を歩いてエスコートはクロコダインへと移り、誓いの言葉を述べてそして・・・ヴェールが取り払われたのが気配で分かり、温かいものが自分に口に・・・
大柄なクロコダインが最大限の優しさを込めて、華奢で可憐な花嫁の腕を支えて口づけをしたその瞬間、大聖堂は割れんばかりの祝福の言葉で溢れかえった。
柔らかくそしてとろけそうなほど甘やかな唇から、名残り惜しくもクロコダインはそっと離れ、ティフィールの顔を見てみれば、真っ赤になっていた。
何と繊細で可愛らしい娘である・・・いや妻であることか・・・俺の全てをもってきっと守ると、クロコダインの決意をさらに高めたのだった。
「クロコダイン様!ティフィールさん!!どうかお幸せに!!」
「良き方達が結ばれるのを見られて私達も幸せです!」
「家も近所ですので、何かあれば私達にお声掛けを。」
「ティフィールさん、本当におめでとうございます!」
ヴァージンロードを出口に向かって歩いたクロコダインとティフィールに祝福の言葉を一番に贈ったのはダイ達であり、その次がなんとクロコダインとお見合いパーティーをした娘達であった。
彼女達も本気でクロコダインに惚れこんだ娘達であったが、惚れた殿方が幸せいっぱいの結婚をする、それもあのティフィール嬢とだ。
彼女達もティフィールを知っている。目が見えない悲しい境遇であっても屈する事無く常に笑みを浮かべる優しく可憐な少女であり、数回ではあるがお茶会をした仲でもあり顔見知りである。
惚れた殿方と優しい知り合いの娘の結婚を、彼女達は心の底から祝福の言葉を贈る為に出席をしたのを、ティフィールも知っている。
獣王クロコダインのお見合いパーティーは秘密でも何でもないので、耳を済ませれば聞こえて来る事。
その参加者の大半が、まさかお茶飲み友達であったとは・・・それでもクロコダインは自分を選んでくれ、彼女達も祝福をしてくれている・・・・本当に・・・・本当に自分はなんと幸せなのだろう・・
「これより、花嫁様によるブーケトスがございます。」
大聖堂の外に出れば、優しい風が吹いている。夏の盛りは過ぎて心地よい秋の風の中、ティフィールは両手にありったけの力を込め空高くブーケをなげ、そして歓声が上がった。
何とブーケが空中でほどかれ、沢山の花々が最前列でブーケを受け取ろうとした娘達一人一人の手の中に入ったのだ。
これはティフィールからの感謝の気持ちの行動であった。
自分の幸せを沢山の人達に贈りたい、今日来てくれたみんなが幸せになるように祈りを込めて、幸せなる花の雨を会場に降らせたのであった。
花を受け取ることができたハンナ、セシル、イグレット、そしてロザリアは、ティフィールの心遣いを感じ取り、花嫁と同じくらい幸せの笑みを浮かべて喜んだのであった。
ちなみに今回はレオナ達女性陣は遠慮した。あと少しすれば、自分達がブーケを投げる番が決まっているのだから、他の女の子達に譲り、その代りレオナは自分と同じ背丈になってくれたダイに、メルルはポップに、マァムはラーハルトに、そして顔なじみの獣王クロコダインのお式を聞きつけたニーナはガルダンディに、エイミは当然ヒュンケルの腕にもたれかかり、男達は黙って優しく彼女達の肩を優しく抱き寄せ、ネイビーブルーのサマードレスを着たティファもレオナ達と同じ位置にいてやんやと歓声を上げる、そんな幸せな結婚式であった。
披露宴の料理もまた着替えたティファと内緒だがミストも張り切って支度をし、これもまた新郎新婦と出席者一同の舌を唸らせ大盛況のうちに終わりを迎えることができ、夕暮れの道を新郎新婦が見送る中招待客達は帰路につき
「じゃぁねクロコダイン、ティフィールさん。」
「邪魔者は消えるとする・・・あて!!」
「余計な事言わないのポップ兄!!またねクロコダイン、ティフィールさん!!」
「また落ち着いたら、今度こそ余の城にてお茶会をしよう。」
「あ!その折は私も是非に!!」
「・・・・お前はもう一国の王だろうアバン・・・・まぁ、俺も出たいがな・・」
「さっさと帰んぞ!いつまでもいると馬に蹴られるぞお前達!」
「マトリフ様・・余韻も大切に・・」
賑やかで、最後までわいわいと帰るダイ達を、クロコダインとティフィールは手を繋いで見送。徒歩やルーラではなく、キルが空間を開け全員が入り空間が閉じるのを見届けた後、二人も自分達の家へと入った。
ダイ達が気を利かせて自分たち以外の招待客達が帰った後、キルの空間を通って二人の新居に全員で来たのだ。
ティフィールの住んでいたロベールの家からは然程遠くなく、ご近所さんもあまり変わらないところにクロコダインが用意したのだ。
その家に初めて明かりが灯り、新しい主達の新生活が始まりを告げたのであった。
「あぁ・・・・結婚式は-無事-に終わりましたか・・・・お前達のせいで私・・・いえ-ティファ-が見損なったじゃぁないですか・・」
パプニカの大聖堂からかなり離れた場所で、-銀の髪のティファ-が不機嫌そうに鼻を鳴らして足で踏みつけている-不逞の輩-を冷たく見下ろす。
今日のお祝い事に、-ケチ-をつけようとした愚か者達・・・・ティファ達が思いもつかない事を、-クロファ-はティファの意識の中であっても表で起きているお祝い事に何となく嫌な予感がしたので、厨房の料理作りが終わってミストと別れた後に意識を乗っ取り、鳥や虫の式を拵えて周囲五十キロを偵察させれば案の定引っかかった馬鹿たちの話を拾う。
内容は・・・・屑、その一言であった。
「獣王と呼ばれて、モンスター風情がいい気になりおって・・・・」
「盲いた娘も恥知らずにもモンスターなぞに媚びを売りおってからに・・」
「あんなリザードマンが救国の英雄だと!?もとをただせば魔王軍の人類にとっては大罪人ではないか!!」
「然様、然様。それに力だけで内政の何たるかも知らん者達がこの先も平和な世の中で厚顔無恥にも幅を利かせると思うだけでも虫唾が走るりますなぁ」
囀っているのは全員が五十代の、不健康そうな中年達。内容から察するにクロコダインの評判を妬んでいるのと種族差別をしている馬鹿者であった。
会話の端々から、ティフィールに対してよこしまな思いを抱いていたことも聞こえて来る・・・・馬鹿どもだ。
エイミの時も、自分とティファは眠っていたので分からないが、大方似た様な不満があって、今回はクロコダインというリザードマンが世間から称賛を浴びて幸せになる事に低俗でしょうもない不満が爆発したのだろう。
ここまでであれば-クロファ-も別に出張ろうとは思わず、悪魔の目玉に録画させて後日大魔王バーンに見せてパプニカ王城の者達に知らせるで終わったのだが・・・
「確か今日が式であったな・・・あの貧乏な男爵家にしては-良すぎる式-だとか。」
「そうよな~あんな豪勢な式を、リザードマンと貧乏男爵家風情が用意できるとは思えんな。」
「大方目は見えずともそれなりに整った顔をしたあの娘が、お強請りでもしたのだろうよ。」
「然様然様、あの柳腰を-振って-の~。」
「それに骨抜きにされたのでしょうかね~、-救国の英雄達-は。」
「はっはっはっは!違いない違いない。私達にもお強請りのお零れをくれませんかな~。」
「なに、其の内にあのリザードマンも家を空けよう。その時に我れらが-相応の分-と言うものを教えてやればよい。」
新妻を攫い、たっぷりと可愛がって-躾-をしてやろう。人の娘なぞ、モンスターには分不相応だという事を教えてやろうと酒に酔った男たちの言葉にクロファが切れた。
殺そう
屑達はクロコダインとティフィールどころか、自分が・・・表のティファだけではなくクロファである自分も大事に思う者全員を穢す輩、見逃してやる道理がどこにもない。
法も倫理も自分には知った事ではない。生かしておいても碌な事にならないのであれば生かしておく理由もない。
苛烈なる決断はすぐさま実行された
屑どもがいたのはパプニカでも評判の悪いスラムの酒場であり、話していた屑男四人はクロファのラック=バイ=ラックで召喚されてあたかも消えたように見えたが、誰も、それこそ酒の注文を受けて持ってきた従業員すらも気にも留めずに酒をカウンターに黙って持っていくだけであった。
他の者達の末路なぞ知ったことではないと。
クロファとしても、慶事のある国の中での殺人は、あの奇麗な花嫁を穢すようで嫌であり、航路としても使われない北海の海の上にジ=アザーズの結界の足場を作って四人を召喚し、海の落としてそのまま空飛ぶ靴で一路大魔王のパレスへと飛んで行った。
それは丁度、ティフィールがパプニカの大聖堂に、幸せの花の雨を降らせている時であった。
一方は花を、そしてもう一つは四人の屑男の命が舞い散った
しかし・・・・・この世界平和ボケになるのが早くないだろうか・・・勇者たちはともかく、大魔王達がこれでいいのか?
大切な者達に対する警備配慮が全くないのは問題だろうに。
何のための目玉とシャドー軍団なのだろうか、、
「そんな事がありました。」
一応クロファも事後報告位はする。報告相手は大魔王ただ一人で、いつものようにバーンの寝室でしている。
なにせ魔族気質のティファの存在を知っている唯一の人でありそしてティファではなくクロファと名付けた名付け親であるのだバーンは。
幼な子が目覚めて少しした後に、このクロファもまたティファの魂の奥底から目を覚まし、以来本人の望む通り血生臭い荒事解決をさせていたが・・・・やったことは正しいく、その者達を罰したのは当然で反対する理由は欠片も無いが、やりようがもっとあったろうに・・
「ティファが不審がる・・」
クロファの報告に、バーンは内容は称賛に値するが思わず洩らしてしまった。
なにせ披露宴にはきちんと-ティファ-がいたのだ。クロファの話から察するに、そのティファは式で作った身代わりであろうが、後日ティフィールやマァム達とその時の思い出話をした時、記憶にない事を言われては不審がらない筈がない。
それがなければ精々寝不足で、料理を作り終えた後寝てしまったのだろうかと思うであろうが・・
そんな大魔王の懸念を、クロファはベットに横になったまましれっと答える。
「大丈夫です、式と私達は視覚はおろか記憶も共有できますから、もう私の脳内に披露宴にきちんと出てお祝いをしたと書き加えておきましたから。」
あの後-式神ティファ-は用事があるとダイ達から引き離し、いまだに自分と式の区別が付けられるものはいないから大丈夫でしょうとしれっと笑った。
そもそも式を見破れるものはもうこの世界にはいないのだとも言い放って。
・・・・ものすごい方法を何事もなく行いながらもどこかつまらなさそうにしているクロファに、バーンが唖然とするのをクロファはちらりと見ながら言葉を紡ぐ。
「貴方の可愛い-幼な子-は何も知らずに今もそしてこれからも-奇麗なまま-ですよ・・近々私も消える予定ですので。」
淡々としたその言葉に、バーンがぎょっとしたのをクロファは体を起こしてきょとんとして首を傾げる。
「何を驚いているんですか?貴方だって私が消えて、奇麗な可愛い子だけになった方が嬉しいでしょうに。」
嘲笑うでもなく、どこまでも穏やかな声で自身が消える事を話すクロファに、バーンは泣きたくなった。
確かに、自分はこのティファとは似ても似つかない-モノ-を厭い、そしてクロファ自身が望んだこととはいえ、死神キルバーンがしていた・・それ以上に汚れた仕事を与えながらもいたわることもせずに冷たくあしらって来た。
自身の暗黒闘気をティファに与えた事で、目覚めティファの自我から独立した意思だと分かっても・・・・・何と身勝手な事をしたのだ自分は。
最終決戦のあの時、ティファが自分の暗黒闘気を飲んで、堕ちて自分の所に来る事を望みながら、和平の道が開かれ血の道がなくなった世になれば厭うなどと・・・・
そんなバーンの後悔の念も、今のクロファには意味をなさなかった。
「あ~別に罪悪感は持たなくてもいいですよ?あの時とはいえずとも、信念を持った命の、魂のぶつかり合いをしたいと望んで仕事をしたのは私の意志なんですから・・・ただこの世界にはもうそんなものが存在しないのが分かって来たのでもうういいかになっただけです。」
淡々としたその言葉に、偽りもまして強がりも無いのが分かる。
クロファにとって、この世界は生きるに値しないのだと・・・ただ周りの身勝手さで産み出され、たった一つの喜びしか知らずに、それ以上の事があると教える機会が幾らでもあったのを無下にしてしまったのは自分で・・・
「消えてくれるなクロファ・・・・」
「・・・・・・今更ですか?」
「・・・本当に今更だ・・・・詰ってもいい、余を恨んでもいい・・・・それでも、其方が消える、それは間違っている・・・・・余が其方を産んだ産み親であるのを、余はそれを蔑ろにした、してしまった・・・・・すまぬ・・・・・すまぬクロファ・・」
ベットに座るではなく、ベットの上にいたクロファを抱き上げ床に座り込み、後悔の念に涙を流すバーンを、クロファは冷たくあしらう。
それでもバーンは、後悔したままでいたくはなかった。
「クロファよ、其方との約定全て取り消そう。そなたの存在は、其方が明かしていいと思う相手に明かすが良い。」
「・・・・・可愛い幼な子に傷がつくよ?」
「構わん、其方もティファであり、ティファもまたクロファだ。」
「・・・・・・でも私は-ティファ-じゃない・・・」
「・・・分かっている、其方がティファを名乗るが嫌なのを・・・」
ティファと呼べば嫌そうにしていたので、黒いティファとバーンが感じていたのでクロファと呼んだが、己の目のなんと節穴な事か・・・・これのどこが黒い、最初に出会った時に自分に言った望みは、ただ純粋に闘う事を楽しむ魔族の中では珍しくも無い事であり、強者が尊ばれる魔界の中では称賛こそされ忌むべきことでもなんでもなく・・・平和の中のぬるま湯に、自分がおぼれて見誤っただけではないか!
今回とても、クロファは自分の大切な者達の為に何のためらいもなく己が手を地で汚した・・・汚させてしまった・・・・妬み嫉み嫉妬・謀略・罠、魔界においてもよくある心の闇の伏魔殿を生きてきた自分が、周囲の警戒を怠り、大宰相ミストバーンと、死神キルバーンですらが気がつかなかった、気付こうともしなかった災禍の種を、クロファが未然に刈り取ってくれたのだ。
何の見返りも求める事無く、ただ淡々と・・・・手を汚させてしまったのだ
「この世界は果てしない、余もそして其方も知らない事がまだまだいくらでもある!消えるのはそれら全てを見てから、其方が身をもって知ってからでも遅くはない!!」
「・・・・・それってさ・・・-アレ-が言った事でしょう・・」
「そうだ、ティファが言った言葉だ。ティファはそれを身をもって知っている。そなたはまだ知識としか知らぬ。知っても、それでも消えると決めたのであれば・・・」
その時は覚悟を決めて、消えるまでこの身で抱きしめると、魔界の神は泣き震えながらクロファに告げる。
かつて、闇の底の底で明るい世界を見上げるだけで自らはそこに行こうとせずに身勝手に消滅させようとした自分を、魔界全てと共に救って引き上げてくれたティファの言葉をクロファに伝える。
「ティファもいつか嫁ぐ日がこよう。その時の相手が誰かは余にも分からぬ。ただ、その時には其方の存在をもきちんと告げよ。」
「・・・・・それってお婿さん嫌がりますよね?」
「構わぬ、其れでティファと其方から逃げ出す輩なぞ不出来であろう。」
・・・・・この人・・・・・無茶苦茶でなんと自分勝手な事だとクロファは呆れる。
今まで自分を使うだけ使って労りの言葉も無かった・・・・いや、数度前にあった時に不意に優しく頭を撫でてくれてはいた。あの時から・・・もしかしたらその前からこの人は私を・・・
「・・・・・・お婿さんか・・・」
少しだけ、ほんの少しだけ冷たく感情のなかったクロファの瞳が蕩けた。
式と共有して、今日の主役のティフィールの花嫁姿は美しく・・・・ドレスが美しいと思った。
自分にもあれが似合うだろうか?血まみれで欲望まみれのこんな自分に・・・・・白のドレスが似合うと言ってくれる人がいるだろうか?
その顔は徐々に優しくなり、まだ見果てぬ未来のお婿さんに想いを馳せた。
バーンの望んだ道を、クロファは半歩だけそちらに足を向けてみた。
闘う相手が、信念のぶつかり合う相手がいなくとも消滅するのではなく-背の君-を探してみてもいいのではないか、恋する乙女の気持ちが、ほんの少しだけ芽生えたのをバーンは甘やかになったクロファの気配で察し、無言で抱きしめる。
この自分は黒だと言い張る、ティファ以上に己の命を軽んじる儚げで可憐な少女が、いつか優しく花開く笑みを浮かべる事を願って。
その日は満月であり、優しい光が誰をも照らす。
式を挙げた夫婦の寝室を、満月を共に見ようと外に出て寄り添う恋人達を、良き結婚式を見られてさて残りの仕事を片付けようと執務室で仕事をしている女王夫妻を、そしてまだ知らぬ温かい道を歩こうかと思う少女と、その道を守ろうとする魔界の神をも優しく照らす。
可憐な少女達の行く道を照らし、それを守らんとする男達が周りを良く見まわせるような柔らかな光を
今宵ここまで
もう少しで本編も終わりに向かい、-全員-が幸せになる為に裏のティファことクロファも出して道を整えてみました。
幸せの裏には、それを支える者がきちんといるのを書けていたら幸いです。