三年、バーン大戦が平和的に終われてこの三年、三人の少女たちの胸の中を熱い思いで焦がし続けた三年であった。
大人になるのはあっという間だと子供のころに聞かされていたあの言葉は偽りだろうと思うほどに、少女達にとっては長い、本当に長い三年の月日であった・・・
少女達には恋人が、更に言うのであれば婚約者達がいる。
いづれもこの世界でこれほど素敵な人はいないだろうと、三人の少女達は自分達の婚約者に心の底から惚れている、三年など待たずにすぐに結婚をしてほしいほどに・・・しかしそうもいかない事情が多々あった。
少女の内の二人は将来国を背負って女王となる事は確定しており、ゆえにその為の王族教育を修めなけれなばならなく、当然伴侶となる方にも王配としての知識・立ち居振る舞いを習得する義務がある。
其の為の教育期間が理由の一つ、しかし最大の原因はそこではない。
婚約者達の一人が、大戦が終結した時の年齢が十二歳と幼かったせい。
その年齢で結婚をするというのは王侯貴族たちの間では珍しくも無く、なんなら五歳で王となりその為に妃を娶った例があるが、それは先代の王が突如として崩御された時の異例中の異例ではあるが、十二歳であればそこまで珍しい事ではない。
だがその十二歳の少年は、出自はともかく育ちはモンスターアイランドで育った勇者ダイその人であり、彼の中では結婚とはきちんと己が大人になり伴侶を支えられてからするものだという、-一般的な感覚-で育ってきた。
勇者ダイの相手であるパプニカ王国の一人娘・レオナ王女はダイがそう考えているのであれば待つと、素直にその考えに従った。たった三年など、ダイが王族教育を受けつつパプニカ城で共に過ごすうちにあっという間に過ぎるのだと、その時は高を括っていたのだ。
子供から大人になる時はあっという間だという言葉を信じて・・・後悔を三人の少女達はお茶会で溢す羽目になるのを知らずに。
「・・・・後半年・・・あぁもう!!私どうして三年待つってダイ君に言っちゃったのよ!私のバカバカバカ~~!!!」
春の長閑な晴れの日に、少女達は-とある秘密部屋-を借り受けて胸の中にある思いの丈をぶちまける為のお茶会をしている。
こんな事を身内はもとより周りに言うにも恥ずかしく、とは言え自分の胸の中だけに留めるにはもう限界であると、日頃から少しはお転婆であってもそこはお姫様をしているレオナが常のお姫様モードはかなぐり捨てて叫ぶのを、残りの少女マァムとメルルもレオナの叫びに驚くことはなく、寧ろその通りだと真剣な表情で頷いている。
「・・・レオナ・・・そのね、うん・・・・・私もそう思う。」
「姫様とマァムさんの気持ちとっても分かります・・・・私も最初の内は・・・ポップさんと一緒にいられたり・・・スティーヌお義理母様とジャンクお義理父様と過ごしながら、おばぁ様とフォルケン様に女王としての知識や立ち居振る舞いを教えていただくうちに・・・三年なんてあっという間だと思ってたんです・・」
「私はレオナとメルルみたいな凄い事はないけれど・・・そうね・・・・デルムリン島は今ブラスさんが長をしていて次はガルダンディとニーナが結婚したら譲る積もりみたいで、私とラーハルトは副長として島の外と島内のモンスター達との交流をいい感じに保っていけるように勉強してて・・・・学ぶことが多いはずなのに・・・・どうしてたった半年がこんなに長く感じるのよ!!!」
少女達も始めはその状況を確かに楽しんでいたのだ。共に国や島の為に同じことを学び、パプニカ女王となるレオナの下にダイが王宮入りをし、市井の占い師であったメルルは数奇な運命をたどって次期テラン女王となるべくフォルケン王の養女となって城に入ったのを恋人であるポップがすぐさま追っかけてきてあっという間にテラン国の住民登録をして・・・その日の内にテラン王宮の宮廷魔法使いの肩書を引っ提げてメルルの前にやって来た。
「いや~、メルルの王配になるってんなら俺もテラン国民になる必要あるだろう?ダイはさ、地上界の王族会議でソアラ王女の息子として故・アルキードの王族の末裔だっていうお墨付きあるけど、俺は一般庶民の息子だし、テラン国の宮廷魔法使いの長くらいの地位あった方がいいだろうって思ってさ。」
いきなり様々な事でメルルを驚かせたポップはいつもの二カリとした笑った顔と明るい声でメルルに話した。
これから自分達が行く道は、もしかしたら大戦よりも大変な道であり、それを承知で進むのならば自分達が楽できるように今から色々としておこうと、将来を見据えたポップの言葉にメルルは頼もしく思った。
それからは沢山の事をポップと共に学んで過ごしているのに・・・三年が長い・・・
「私ね・・・ダイ君と一緒にウエディングドレスとダイ君の衣装をどうデザインしてもらうか、色はどうするか、私がするティアラとダイ君のクラウンのデッサンを見たりして楽しかったんだけど・・・・・最近それよりも・・・・一刻も早くダイ君の妻になりたいって思うのよ~~~!!!」
自分達の結婚式となればロイヤルウェディングであり、それもただの結婚式では済まされない。
三界を救った立役者の勇者とその相棒たる魔法使いが、次期パプニカとテランの王配になるという前代未聞の、三界全ての慶事と言っても過言ではない!
その式ともなれば三年で足りるかと手配をしている部門がパプニカとテランで立ち上げられ、地上界にとっても魔界と天界の方々が一堂に会されるのだからと準備の手伝いの申し出があってようやく形になっているのは知っている。
魔界からは絶対にあのお祭りと慶事大好きな魔界の神様とその側近の影さんと死神さんと次期大魔王に指名された魔王ハドラー様がやってくる!
ダイの出自はアルキード王女の忘れ形見にはとどまらず、三界の調停者たる当代の竜の騎士である。必ず寿ぎに、六大精霊王達と、もしかしたら天界からも祝いの使者が来るのではなかろうかと予想されて天界にお伺い立てたら・・・・その通りだった。
天地開闢以来の前代未聞のオンパレードも良い事で、関係各所が天手古舞なのを知っているのだが、結婚する当人が待つのがもう限界であると叫んでいる。
それほどまでにダイを、ポップを、ラーハルトを愛しているのだ三人は。
あの腕に抱かれたい、胸元で抱きしめられて・・そして愛おしい男の身籠って・・・・乙女の夢は果てしなく続くのだ!
レオナは持っていた茶器をそっと置きつつ大絶叫するという器用な事をしてのけ、洞窟にこだまする声の中、レオナの荒い息遣いも響くのを、秘密の部屋の持ち主である、かつての勇者一行の料理人だったティファは、苦笑しながら三人とは少し離れた位置で一人お茶を飲みつつ見守っている。
後半年もすれば結婚できるというのに、それが待てないとレオナと同じようなことを絶叫している少女達が微笑ましく・・・自分にはない情熱だと少し羨ましくある。
愛を知っても恋を知らないとクロコダインに言った通り、あの三人の恋慕の熱が、ティファにとっては不思議であり、それ故に素敵なものに見えると言ったっら・・・・三人の今の楽しさに水を差してしまうので黙って見ている。
そしてこうも思う
きっと三年の月日が長く感じるのは少女達だけではない・・・・ある意味男達は少女達以上のじれったさの炎に身を焦がし・・・・・地獄を味わっているのではなかろうかとティファは思う。
兄の一人のポップは世間からも炎の大魔導士として語られている通り、胸に秘めている情熱の炎は激しく、ラーハルトなどは大人の男ではあるがマァム一筋で実に禁欲を守ってマァムの成長を優しく見守っているが・・・時折食い殺しそうな顔をしているのを自分は知っている。
そして兄ダイは・・・・・式の当日レオナ姫を食い殺さないように本気で言った方がいいと今から思っている。
あと半年か、スパイスとお砂糖や素敵なもので出来ている女の子達の悩みがこれであるのならば、カタツムリやボウキレ、子犬の尻尾で出来ている男の子たるダイ兄達は今の少女三人以上の絶叫しているのだろうか?
・・・・結婚か・・・・大変だな~とどこまでも他人事としながらティファはそっとお茶を飲む
今宵ここまで
マザーグースより
女の子はスパイスとお砂糖と素敵な何かでできているの
男の子はカタツムリと棒切れと子犬の尻尾で出来ているの
甘い女の子と男の子との対比に出させていただきました(*´ω`*)
漸く構想も固まり、プロローグをお届けできました。
次回は男達の悶々とした内面をお届けいたします( ´艸`)