勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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勇者達の大結婚式:プロローグ・槍使いと勇者の想い

もう婚前ってありだよね・・・・そうディーノ様が言われた時・・・・俺の心も物凄く・・後ほんの少しの魔が差したら賛同するところであった・・・・・ポップの言葉がなければ自分もその道を選んでしまいかねない程に飢えているとは恥ずかしい限りだと、野郎どものお茶会(壮絶な欲望のぶちまけ合い)が解散となって夜が更けてから、ラーハルトはつくづく己の未熟さを省みて落ち込んでいる。

 

今日はマァムはティファ達と共にお泊りをすると言って出掛けたが、それは寂しいと送り出しといてなんだがマァムがいなくて助かったと思うのは現金なものであると苦笑したくもなる。

今マァムに合わす顔がない・・・・あの優しい笑顔を向けてくれる少女を欲してやまず、三年待つという交わした約定を己の欲望で踏みにじりかけたのだから・・・

 

父と母もこれほどの情熱をもって結ばれたのだろうか?

 

寝室の窓辺に座り、煌々と輝く満月を見るともなしにラーハルトは亡き父と母にも想いを馳せる。

自分が生まれた時はハドラー大戦前であっても魔族と人間との間には越えがたき種族間の壁は確かにあったはず。

ハドラー大戦以前にも魔族は地上を幾度も攻めてきた魔王との記憶が薄れる事はなく・・・だからこそ自分の母はハドラー大戦が終結した後も、魔族と契った人間の裏切り者として断罪され、そして自分は忌まわしい魔族と裏切り者の人間との間にできた忌み子として迫害をされ・・・・そして母は亡くなった・・・・病にかかっても同族から助けらる事は遂に無く残された自分は・・・・それでも、病床にあっても母は自分達を助けるどころか迫害する人間を悪し様に言う事なく・・・・父を愛し、俺を産んだ事が人生での宝であったと笑っていた。

 

ラーハルト、人は弱い・・・・それでも、人を恨まないであげて・・・・いつかきっと、貴方を愛してくれる人が現れるわ。

 

私があの人を愛したように・・・・

 

残暑の中、弱った身に病を得ても母は誰も恨まず、俺にも恨んでくれるなと言っていた母の願いを、自分は忘れ果て人間を恨み・・・・ティファ様とリュート村のあの子供達に出会わなければ、俺とそして・・・・ガルダンディとボラホーンそしてバラン様はいったいどうなっていたのであろうかと思うと今でもぞっとする。

きっと、バラン様を含めて俺達は人間を憎んだまま人間を殺し、屍を踏みにじったその先には、今のような穏やかな暮らしなぞ出来ようはずもなく勇者であったディーノ様とティファ様に討たれていたのだろうと想像がつく。

その時の自分達はきっと、大勢の人間を殺しても何の罪悪感も抱かずに取るに足らぬ有象無象の命を散らせたからと言ってそれがなんだというのだと、勇者一行に言い放ちながら・・・・きっと醜い顔でけがれた言葉を悪びれもせずに・・・・自分は、自分達はつくづく幸運であった、坂を転がるように人間を憎んで殺そうとしていた矢先にティファ達と出会え、似たような優しい人々の心に触れそして母の言った通り、自分の事を愛してくれた少女に巡り合えたのだから。

 

この道を歩ける幸運を胸に・・・・後半年己の中の欲望と戦うかと、-色々-と思い出したラーハルトは甘くも苦い思いを噛みしめながら決意する。

もしも自分と同じような境遇の者があれば、自分がしてもらったように光への道を指し示せる者になりたいと思いながら。

 

 

ラーハルトが一人静かに決意を新たにする中・・・・ダイは大魔王御一行に-捕縛-され、パレスで自分をひっ捕えた張本人である魔界の神様に泣きついてたりする・・・

 

「ポップのバカ!!!どうしてバーンに言っちゃうのさ!!!」

「・・・・ダイよ・・・その方の気持ちは・・・矢張り分からん・・・・後たったの半年だけだというのに何を血迷うか・・」

「もう!バーン達の時の長さと俺のを一緒にされても分からないよ!!たったって言うけど俺にとっては果てしなく・・・・だってレオナの事好きなんだもの!!俺の子供産んでほしいんだよーー!!!」

 

確かに数千年単位で地上破壊と天界せん滅を目論んで機が熟すのをひたすら待って実行しようとした自分と、寿命が長くとも百と少ししかない者との心情は物凄く違いがあるかも知らないが・・・・心清き勇者がこれを言っていいのかと、本来であればその心清らかな勇者に討たれる筈の敵の首魁であり悪の権化であるはずの魔界の神・大魔王バーンは自分の膝に取りすがってとんでもない事を口走らせながらさめざめと泣くダイに、バーンは心底溜息をつきながら宥めている。

夕方仕事がひと段落してお茶をしていた時に、ポップから目玉通信が来て何事かと思った。

別にポップから通信が来た事には驚かない。普段からティファと楽しく話しているし偶にアバンやチウ達から近況報告がてらの世間話もしている。

しかし、半年後に結婚を控えたポップが溜息をつきそうな憂い顔をして通信が来た時には何があったかと身構え・・・・・聞いた瞬間がっくりと来た

 

曰くダイが姫の事が好きすぎて暴走一歩手前だからお悩み相談してほしいと言われた時には新手の冗談かと思った・・・・思いたかった・・・

しかし自分もダイの・・・主にティファに対する偏愛にも似た愛情を知っているので確かに放っておいて不味いのかもしれないとは思っていた。

特にダイの父親バランも、愛の為だけに一国の王女と駆け落ちをして・・・・挙句がその国を滅亡に導いた一端を担ったのを知っているだけに洒落にもならない・・・・あの一件は実は自分達がバランを闇落ちさせて引き入れる為に、アルキード国の者達を誑かして、バランとその妻を追い詰めたのではなかろうかという陰謀論まで自軍でささやかれたが冗談ではない。

あの一件は本当に自分達は関わっておらず、人間の無理解と偏見と・・・・バランの深すぎる愛憎が招いてしまった悲劇であった・・・・一国の跡取り王女としてもソアラ王女の深すぎる愛情と無思慮さもどうなのだろうと思ったが、その二人の良い所も悪いところもしっかりと受け継いだのがダイである・・・・暴走させたらどうなるかなぞ火を見るよりも明らかであり、ポップの危惧が現実化する前に死神と影も動員した。

二人もダイの-そういう駄目さ-を知っているだけに真剣な表情で参戦をし、デルムリン島の浜辺で鬱々としてたダイを速攻で捕縛しパレスに持ち帰り、当然ダイは何が起きたのか呆然としたので事の経緯をはなしてやったら・・・・自分の心情勝手に暴露されたとダイはショックで大泣きをした。

親友に裏切られた気がしたのだダイは。

しかしポップとしても、真剣に悩んで親友であり可愛い弟のダイの為を思って成した事であった。

この一件、本当に暴走すればダイ自身の評判が落ちてしまう。

可愛い弟が、後ろ指を刺されるのは我慢できない!

しかしアバン先生に相談するには何か違う気がするし、女性問題に長けていそうなマトリフ師匠ならいいんじゃねぇのかとか言いそうだし、後頼りになる人生の先達といえばバーンであり、頼むと頭を下げるポップの願いにバーンはきちんと応えたのだ。

 

そしてダイとしても、泣くほど悲しいが愛情深さとそれに比例するように愛した者への執着心が年々高まっているのは自分でも分かっていた。

ティファがパプニカ城内で笑顔でいる時も、それがレオナやエイミや女性陣相手には微笑ましく感じるが、アポロ・バダック・三人のお爺ちゃん学者やロムス・レオール王以外の男が混じると苛ただしく感じるのは少し不味いとも思っている。

妹をいつまでも囲っている訳には行かない・・・・いつかティファも好きな人の下に嫁ぐのだと・・・・そう言い聞かせてもまるで駄目で・・・近頃はレオナの事が欲しくてたまらなくなってそして持て余している想い・・・尊敬している魔界の神に、こんな醜い思いを知られたのは悲しく・・・そしてどうすればいいのかとダイはバーンに泣きぬれた顔を上げて、このままだと本当に己で暴走止められずに不味いという焦りを滲ませて胸に秘めていた悩みを打ち明ければ、バーンは得心した顔になった。

 

竜は宝の守護者にして貪欲なるもの

 

これは魔界・天界・地上界三界の共通認識であり、ヴェルザーやバランを始めとし、実際にファヴニールの竜を見ていて-様々な竜達-の業の深さも知っているバーンは溜息をつく。

三界の調停者として、人の心と天・魔・竜の力を与えられた竜の騎士として、ダイはどうやら竜族の性を色濃く継いでしまったらしい・・それこそ父親のバラン同様に。

とにかくダイの中に溜まっているであろう鬱屈とした思いを吐き出させそして提案をする。

 

話を聞けばダイは学習能力が異様に高く、それは戦闘だけではなく一般教養から王侯貴族としての嗜みや立ち居振る舞いをたったの二年間で習得してしまい、教師達からはもう座学で教える事はなく後は実践の中で培うのみとなり・・・・ようは時間に余裕ができたから生じてしまった思いのようだ。

であるのならば、半年間忙しくさせればいいのではないかとバーンはダイに-宿題-を出した。

内容は、こののちダイと婚約者であり女王となるレオナ姫がレオール王の後を継いだ後に、どのような国を作っていくか。

 

「国って・・・・今みたいに他の国や魔界・天界と一緒に、モンスターや精霊達と仲良く共存していくんだよね?」

 

椅子に座っているバーンの膝に頭をつけたままダイは不思議そうにバーンの顔を見上げる。

優しい世界を踏襲するのが正しい事だと何の疑いもなくきょとんとしている様は昔と変わらず、バーンは微笑ましく思う。

ティファとダイは優しい所は全く同じであり・・・・ある意味ティファも愛した者達を守る為ならば自分すらも使い潰す怖ろしさを持ち、よく似た兄妹だと苦笑しそうになる。

世界は優しさで動くものだと思っているところもよく似ているものだと、背が伸び顔も少年から青年になろうとしているダイの頭を、慈しみを込めてゆっくりと撫でてやる。

父バランと同じ癖っ毛を、パプニカ王族の証である長い髪にするべく伸ばした髪を優しく梳きながらゆっくりと教えていく。

 

「今の世界は確かに優しい者達が力を持っている。しかしなダイよ、悲しい事に時代が下るにつれて優しさも良きものも放っておけば腐敗してしまうのだ。」

「・・・・・俺達の頑張った事が駄目になるの?」

 

バーンの言葉にダイは信じられないと驚きバーンの膝から頭を離して悲しい顔になる。

ダイの周りには優しい者達しかいない。元々パプニカという国は自然豊かであり都市機能と自然が程よく混じってモンスターと人間の距離は程が良かったところがある。

それが一変したのがハドラー大戦での狂暴化であったが、バーン大戦の時には狂暴化はなくパプニカの人々は他国に比べてモンスター達を危険視することがなかった。

それどころか大戦初日にヒュンケルがパプニカに攻め込もうとした時に、バダックの開発した様々なアイテムのお陰で不死騎団を撃退したのもさることながら、地元のモンスター達が、攻めてきたアンデット達に対して縄張りを荒らされた事を敵対攻撃と認識をし、一部地域では人と共に撃退をしたところもあり、その話がさらに広まりモンスター達との関係はそこそこいいので、今のままのパプニカでいるのだとダイはずっと思っていた。

しかし国の興廃を、それこそ神々と同じくらいに見続けてきたバーンは、良い国も何もしなければ十年も持たずに腐っていくのも知っている。

良き国を維持したいのであれば何が必要か、王としてどのように導くべきか

 

「姫と結婚をするという事はそういう事を共に成さねばならん立場になるという事ぞ。」

 

愛しているだけでは王配となる者としては不足であり、国の為に、ひいては愛している者の為にならないとバーンは諭し、ダイは再びバーンの膝に頭を靠れて聞き入り次第に心が凪いでいくのを感じる。

 

自分は・・・・女王となるレオナを支える夫になりたい、良き国を共に維持していく王配になりたい・・・・・そして・・・

 

「俺・・・・ずっと-みんな-で笑って生きていきたい・・・・」

 

家族と、仲間と、今まで出会って来た人達と、これから出会うであろう人達と共に手を携えて幸せな時も苦しい時も共に歩いて笑い合うのだと・・・・・結婚の誓いの時のような言葉をぽつりと言うダイを、これならもう大丈夫だと確信した陰で見ていた大宰相と死神はそっとその場を離れる。

 

キルが空間でダイの前にミストと主を出現させ、驚いたダイをミストが闘魔傀儡掌で捕縛しバーンが引っ担いでパレスに連れてきたのだが、狂気のようなダイの想いが薄れたのにほっとしたのだがそれはともかく、ダイもこの一件で、女王の伴侶の意味を教える事が出来たのだから良いかと、バーンは微笑む。

 

この子供達はみんないい子達ばかり

早く半年がたてばいいと願いながら




今宵ここまで

これからの世界を率いて行けるように結婚を迎えるにあたって一皮むけてほしいと願った回でした。
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