勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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二話連続です。
ハドラーの他に、大幹部二人が出てきます。
よろしくお願いします。



ー幕間ー魔王軍サイド

                -ハドラー-

 

おのれアバンの弟子達めっ!!次に会った時が最後にしてくれる!!

悪魔の目玉の情報で宿敵アバンの動向が分かり、大戦三日目ですべての指示を出し終えた後、

大魔王バーンの許可を得て単身島に乗り込んだ。

・・まさかアバンが弱くなっていたとは・・何故か心から喜べずにイライラとする!

メガンテを使っても自分を倒しきれなかったアバンを苦々しく思ってしまう。

島に行く前は強くなった自分が勝てさえすればいいと思っていたのが不快に感じる。

「全然魔王に見えません!」

「酒場の外で喧嘩してるおじさん達並の気配しかしません!!」

いきなり乱入してきた小娘の言葉が、胸の奥に引っかかったせいだろうか・・。

ガルーダに指示を出して従えさせ、鋭き一閃を放ってきて、ヘルズクローを無傷で躱した

アバン以上の実力を持った小娘の言葉が・・。

あの小娘と、ダイといった小僧の額に輝いた紋章は・・よもや竜の紋章か・・。

あの紋章が浮んだあとの二人は、爆発的な強さで自分を撃退した。

あの紋章が竜の紋章であれば大変なことになる!

何故なら自分の配下の超竜軍団の長のバランは当代の竜の騎士だからだ!

・・それを大魔王から教わった時には戦慄が体を駆け巡ったのを今でもはっきりと覚えている。

妻を人間に殺され、子等とも引き離された故にバランは今魔王軍に属している。

人間を深く憎むがゆえに。

しかしここであの子供達に会ってしまってはとてつもなく厄介な事になりかねない!

正義の使徒となった子供達に会い、改心させられれば魔王軍の最大の敵となってしまう!!

それだけはどうあっても防がねばならない!

ダイといった小僧は未熟ながらもアバンに受けた傷よりも治りが遅く、魔法使いの小僧から受けた右手の平もズクズクと深く痛む。

間違いなくアバンの弟子達は今後の自分達の脅威に成長するだろう。

そうなる前に叩き潰す!どのような手を使っても!!

しかし今の自分は手負いの身、誰かに任さねばならない。

道連れにされずとも、アバンから受けた傷も深かった。

やはり魔王の宿敵と呼ぶにふさわしかったのだろうか。

そのアバンが弟子達に別れの言葉を言っていたのを、何故自分は待ったりしたのだろうか?

問答無用でベギラマを放っていれば、もしかしたら弟子も諸共に片が付いたはず。

「中身が伴えば一流です。」

「現時点では勿体ないです!」

ティファといった小娘の言葉が妙に引っ掛かり、待ってしまったのだろうか。

竜の騎士の子で、勇者アバンも実力を認めていた娘。

そのようなものが認める魔王とは・・馬鹿馬鹿しいと・・鼻で笑おうとしたが、何故か出来なかった。

 

 

              -キル・ピロロ・ミスト-

 

「ハドラー君、すっごく傷だらけになって帰って来たね~。」

「ね~、ボロボロだ。」

「・・・・」

「それに勝って帰って来たというのに浮かない顔をして妙に静かだったね。」

「してたしてた~。勝ったのに変なの~。」

「雰囲気が島に行く前と少し違う気がするね。」

「どうして?」

「それはねピロロ、なんだか妙に落ち着いて、少し貫禄が付いた気がするんだよ。」

「貫禄って?」

「ん~・・大人になったって事かな?」

「大人?それじゃあ今までは子供だったの?」

「・・・・」

「ほ~ら~、ミストもだんまりしてないで少しは喜ぼうよ?

君のお気に入りのハドラー君が、ようやく大人の階段を上り始めたんだからさ、

祝ってあげなよ~。」

「・・・・・・」

「それにしても、それだけの事があの島であったんだね・・。

誰だろうね?ハドラー君にあそこまでの影響を及ぼした人物は?

倒された勇者様かな?

それとも勇者様が教えていたっていうお弟子さんの誰かかな?

お弟子さんだとするとちょっと楽しくなってきた。

僕にお鉢が回ってきて、暗殺依頼がバーン様から来たら楽しいな~。

あ・・でもそしたらハドラー君怒るかな?

獲物を横取りされたって。」

「・・その命をバーン様が下されたのであれば、ハドラーも文句はなかろう。」

「おや!珍しく喋ってくれたね。

久し振りだよ、親友の君の声を聞けたのは。

ふふ、とっても嬉しいな~。

でも中身はやっぱりバーン様に関する事なんだね、君って本当に分かりやすいよ。

バーン様一筋だもんね。」

「・・・」

キルとミストは味方の魔王軍の前にはめったに姿を現さない。

キルは始末人として裏で敵勢力と役に立たないとバーンに判断をされた味方を裏で殺す死神。

ミストは大魔王の右腕と呼ばれる影の参謀。

ミストはともかく、キルは今退屈をしている。

大戦が始まってしまえば、裏で暗躍をする死神の出番は当分なさそうだ。

バーンの真の目的を知らないミスト以外の軍の進撃を見ていても詰まらない。

最後には地上はすべてなくなるのだから。

-自分の本体-であるピロロは、真の主である冥竜王ヴェルザーの命を果たそうと虎視眈々と

バーンを狙いつつ、獲物を残虐に殺して楽しんで過ごしているが・・近頃-自分-は

それに対して嫌気がさし始めてきた。

・・僕って機械仕掛けの人形の筈なのに・・

ヴェルザーに与えられた、自律出来るように埋め込まれた自我が育ちすぎたのだろうか?

退屈なのはとても嫌だ・・面白い事がおきてほしい。

 

 

 




ハドラーは原作よりも早く一流魔王に目覚めつつあります。
ミストは原作のままですが、キルは原作とは似ても似つかない中身になってます。
次回からロモス編です。

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