・・・・・俺の、俺達の息子はいったいどんな男になっちまったんだ・・
あんなすげえお方を怒鳴りつけるって
目の前で繰り広げられている光景にジャンクは唖然としている。
自分も昔威張り散らしていた大臣を殴り飛ばしたことがあるが!規模が違うだろこれは!!今世間から尊敬されている魔界の神様相手に何つうことを・・そのすぐ隣で妻スティーヌも両手を握って開いてをして息子を止めるべきかどうするかを物凄く悩んでいるのを、酒飲み仲間で武器作り仲間でもある魔族ロン・ベルクはからりと笑って一言
「-あいつ等-はいつもあんな感じだから気にするなよ二人共。それよりも久しぶりに邪魔させてもらうぞブラス老、バラン殿。」
目の前の光景なぞうっちゃって、この家の家主であるブラスとバランにのんきに挨拶する友人魔族に、ジャンクとスティーヌが頭痛くなっても不思議ではない。
そしてそれはもう一組の招かれ夫婦、ロカとレイラも同様であるのをこれまたマトリフが・・慰めにもならない慰めをしていた。
「あいつ等なりのじゃれ合いだから気にすんなよ。それよりもロカ、お前体の方は異常ねぇか?
早めに休ませてもらった方がいいぞ。」
・・・・この家の主でもないのに飄々と休むことを勧めながらロン・ベルク同様にこれまたブラスとバランに挨拶をした後は、-みんな-で持ってきた土産を出して宴会の準備をしていたりする!
目の前の大嵐をものともせずに、ロン・ベルク-達-の挨拶を溜息交じりに疲れた様子で受けているブラスとバランが可哀そうになって来た・・・・・魔界の神様のやらかしのせいで大嵐は発生している
ティファは大戦以降は怒るという事はなかった。大戦時は己の信念に反すると思った事に対して怒りを燃やし怒鳴り上げていたが、本島に大戦以降は無かった・・・・今日事の時までは・・
「貴方一体何を考えているんですか大魔王!!いきなり人様の家にこんなに大勢の人達引き連れて押しかけてきて!!なんですか?私なら能天気に受け入れると思っていたのですか貴方は!!!!」
鬼の形相で、床に-正座-させられている大魔王バーンを相手に怒鳴っているのを、兄達も同じような形相で怒っている。
「俺には仲良き者にも礼儀は必要で!相手に対しての気づかいしろって言ったのは噓だったのバーン!!???」
「あんた一体何してんだよ!!こんなに大勢で押しかけて!ミストバーンに料理作らせるからいいだろうとかってそういう問題じゃぁ無いだろうがよ!!!」
-竜の三兄妹-は火を噴くほどに怒っている。
ティファが扉を開けて、誰が来たのかとダイとポップも出てみれば・・・・玄関先にいたのは大魔王様で・・・・その後ろにはにっこりと笑うアバン先生とか、その先生にがっちりと摑まって引きずられて来たであろう魔王ハドラーとか・・・師匠やロン・ベルクに、強引に誘われてバツが悪そうにしているノヴァとクロコダインとチウとか・・・その後ろですまなさそうに笑っている
「招かれていないが余等も泊ってよいかティファ?急な事ゆえきちんと食料も持ってきたのでミストに・・・・」
そこから先はティファが凄かった。
速攻で全員を中に入れ、超高齢社マトリフをロカと同じゆったりとしたソファーに座ら
せ、キルとミストにはにっこりと笑ってきちんと挨拶をした後、今回の発起人は逃がさなかった。
「こんにちは大魔王。本当に私は貴方達を招いた覚えないんですかね~。」
凄みを浮かべた笑顔に、魔界の神様の背筋が凍り付いて自然と正座してからそこから怒涛の説教タイムと相成った。
ティファとて好きで怒っている訳ではない。しかしだ、今日この家にいるのは大魔王バーンに慣れている自分達だけではなくそれこそ本当に一般市民のジャンクとスティーヌがいる!
百歩譲って戦いにも魔王にも慣れているロカとレイラだけならばティファもダイ達もここまでは怒らなかっただろうが、それにしたって今回の事はやらかしすぎである。
「以前私に身分差を考えない人は少数だから!よくよく考えろって言っておいて!!」
「より良い事をするにはお互いの総合理解が必要だって言っておいて!!」
「事前準備の大切さを俺に言ったのバーンだろうが!!」
ティファもダイもポップも、人生の先達たるバーンに様々な事を教えてもらい尊敬しているだけに、それら全てをひっくり返したバーンに怒っているのだ。いいこと教えてくれたのならば、それを破るって絶対にない!!
「まぁまぁ三人とも、そろそろその辺に・・・」
「アバン先生も悪いんですよ!!」
「おいマァム・・・・何もそこまで・・・」
「おじさんだって大魔王と同罪なんだよ!?その辺分かってる?」
「あ~ティファ・・・マトリフ様は半分はロカさんの事を心配してきたんだからその辺は・・」
「師匠の破天荒ぶりを庇わなくてもいいぞノヴァ!あんたも暢気に酒飲もうとするなロン・ベルク!!!」
バーンを怒っているのを執成そうとするアバンとマトリフも同罪であると四人はさらに怒りを募らせる。
ティファとダイとポップとマァムの四人に叱られるバーンとアバンはしおしおと項垂れる可愛さはあったが、子供達が心の底から怒っていないのを分かっているマトリフとロン・ベルクはまぁそう怒るなと宥めに掛かり、そして時の氏神様たちが溜息をつきながらも重い腰を漸く上げた。
「ティファさん、ダイ君、ポップ、大魔王さんは本当にみんなの結婚の事を喜んで来たんです。僕達もご飯の支度やお泊りの支度も手伝うからそろそろ・・」
「うむ、許してやってはくれまいか?俺達も祝いたいのだ・・・」
「・・・うにゅ~・・」
「チウとおっさんがそこまで言うんだったら・・」
「・・・・バーン、今度からは本当に気を付けてね?俺だって怒るの嫌だよ・・・」
「うん、私も怒りたくないからお願いね?」
チウとクロコダインの執り成しに、ティファ達は矛先を収めるのを萎ていたバーンは顔を上げてきちんと謝罪をする。
今度はもう少し気を付けるという・・・・・なんとも心許ない言葉ではあったが、子供達は本当にバーンの事が好きであり、特にダイとティファは二人でバーンの手を取って立たせる。
自分達の嵐の真っ最中に、キルとミストが主の無作法を詫びながらきちんとお泊りの許可をブラスに取っているのは耳の端で拾っているので、謝罪したバーンをきちんと許して、いつの間にか整っている夕餉の席へと誘った。
ティファ達が怒っている間にミストが速攻で夕餉を整えるのをノヴァとチウとなんとラーハルトがしれっと手伝い、食器類をガルダンディとボラホーンが整えていたのだ。
ロカ達とレイラ達以外はこのようなやり取りは見慣れており、いつものようにすぐに落ち着けば仲直りもあっという間なので心配するだけ無駄であり、すぐに夕餉を摂れるように息子たちと魔界の神様とのやり取りに頭を痛めているブラスとバランと、そして主と大勇者に振り回されているハドラーをキルが労わりつつ、ラーハルトはロカとレイラとジャンクとスティーヌにも、あれが大魔王バーンと子供達のいつもの事と説明をし、すぐに収まるからと安心をさせて準備をすればその通りになった。
「・・・・・お前本当にハドラーなんだよな~。」
嵐が去れば、ロカとレイラは複雑な気分になる。それもそうだろう、ハドラー大戦でやりあったハドラーが、あの傍若無人で人をちり芥のように見ていたハドラーが・・・苦労している中間管理職の様にしか見えないのだから無理もない。
「・・・・・・・・・・俺にもいろいろとあるのだ・・・」
重いため息と共に呟かれたハドラーのその一言には万感の思いが籠っており、ロカとレイラはそれ以上の追及はしないでおこうと心に誓ったが、夕餉は概ね和気あいあいとした。
「その方がロカか。大戦の最後の時、其方の言葉のお陰で余は良き道を歩くことができた。その時の礼をしたいと思っていたのだ。」
「そんなよしてくれよ、俺は思った事を言っただけで最期をきちんと纏めてくれたのはアバンだろう。」
バーンの言葉にロカは顔を赤くし、自分は大層な事をしていないと否定するがアバンものほほんとした笑顔でロカを追い込む。
「私もロカのあの言葉が無ければどうしようか手立てが見つかりませんでしたので、ロカのお手柄ですよ~。」
「アバン!!」
ロカが真っ赤になって怒るのを、マァムはクスクスと笑ってしまう。
バーンが今ロカにお礼をしているのは、最後の戦いの時の-世界の繋がり-のあの時の事を言っている。
大戦を引き起こした責任は自分の命を持って償う、だから滅びゆく魔界を救って欲しいというバーンの言葉をロカが否定をした。
命を捨てて償うな、生きて償う道を行けとティファが常々言っていた言葉を図らずもロカがバーンに対して言ったのだ。
ハドラー大戦を戦い抜いた戦士の言葉には重みがあり、それがきっかけでバーンの命を繋ぎ留められたのだ。
その時の事を、ジャンクとスティーヌもよく覚えている。
愛息子の無事を祈っていた時、突然ポップ達の言葉が頭の中に響き渡った時は村全体がパニックになりかけたが、すぐさまポップが今起きている奇跡のような出来事の説明をなされた時は規模の大きさから呆然とした。
しかし、魔界が滅びゆく運命にあると知った時、二人もまた救う道はないのかと思った方であった。
家族を、同族を救いたいと願い、それが為に足掻き苦しみ引き起こしてしまった戦いを終わらせることができないだろうかと・・・・・終わった後に、まさかその息子が魔界の神とあそこまで距離が近いとは思わなかったが・・・・本当に自分達の息子はどこまで遠くまで行ってしまうのかと少し寂しくなるが、男ならば元気よく遠くまで行くのが良いだろうと思い定め
「ロン!今日はとことん飲むぞ!!息子の門出だからな!」
「いいぜジャンク、今日はそのつもりで酒はしこたま持ってきたからな!」
「俺も混ぜろよ、久しぶりだな親父さん。かみさんも元気そうで何よりだ。ロカは駄目でもレイラもどうだ?久しぶりにアバンも飲めよ!可愛い弟子の門出だぞ。」
「そうですね~、しかし明日の事も考えて程々にお願いしますね。二日酔いの薬は作りませんよ?ハドラーも・・・・・もう飲んでますか・・・クロコダインさんはどうしますか?」
「俺も飲もう。」
「私も飲もう。-息子達-の門出を祝って。」
「バランは話が分かるな~。とことん飲むぞ!!」
「・・・・俺も一口は・・」
「ロカ・・・舐めるだけですよ?」
「分かってるよアバン!!」
ジャンクとロン・ベルクの音頭で野郎どもは盛り上がり、それを女性陣はしょうがないという顔で見守りつつ、ティファ達の方に寄って行く。
まだお酒が飲めないティファとマァムはバーンとブラスと一緒に食後のお茶を楽しんでおり、ダイとポップは明日までは我慢すると言って、ラーハルトは飲まないながらもロカの隣に座って面倒見る気満々であり、キルとミストはいつもの如くバーンの後ろにいる。
「すまぬなティファ・・・・どうしても今宵其方達を祝いたかったのだ・・」
「大魔王、さっき謝って頂いた分で十分ですよ。」
「そうだよ、ちょっとやらかしちゃったけど、来てくれたのは嬉しいんだよ。」
「今度はちゃんと目玉で教えてちょうだい。うんと美味しい物を作って待ってるから。」
子供達の優しさに癒されながら、バーンは初めて会うレイラとスティーヌにきちんと挨拶をし、場を騒がせたことも謝罪すれば
「大丈夫です。お忙しい中ポップを祝いに来てくださってありがとうございます。」
「そうですよ。お祝いは皆で楽しくするのがいいですよ。」
片やお城の大臣ぶっ飛ばして逐電した破天荒な夫を持つ妻と、片やハドラー大戦を夫と共に戦い抜いた女傑妻は、魔界の神様にもすぐに慣れて楽しくお茶をするのをバーンも少し気おされ気味になる・・・・なんとなく、ポップとマァムの芯の強さがどこから来たのか分かった気がしたがそれは兎も角、ブラスも最初の内はどうなる事かとハラハラとしたが、実に賑やかな結婚前夜に涙がこぼれそうになる。
あの小さかった子供が大きくなり、こんなに大勢の良き知己を得て明日結婚をする・・
「ダイや、ポップ君もマァムさんも幸せにおなり・・・」
「じいちゃん・・」
「ブラスさん・・」
「ブラスさん・・・・」
自分が言わずとも、きっとこの子達は幸せな道を行くのは分かっているが、それでもブラスは祈るように言わずにはいられなかった。
たった十数年しか生きてこなかった子供達が、あの大戦時にどれほどの苛烈なる道を歩かなければならなかったのかを思えば、どうしても言ってあげたかったのだ。
そのブラスの言葉の想いを、ダイ達はきちんと受け取り、ダイはすぐさまブラスに駆け寄りブラスを抱きしめる。
「俺はじいちゃんにも幸せになってほしい。-みんな-でずっとこうして笑って生きていくんだ。」
ブラスの想いに応えるダイの言葉を継ぐように、ポップとマァムも二人の側により言葉を重ねる。
「俺もだぜ!結婚したらメルルや姫さんも一緒にここでこうしてまたみんなで集まろうぜ!」
「ふふ、今度はきちんと知らせてちょうだいね。私達何時でも待ってるから。」
子供の成長はあっという間である
先人のその言葉の通り、ダイとポップとマァムは大人びた顔をしてブラスの想いに応えるのを、ティファと大人たちは微笑ましく見る。
始めはドタバタとするが、最後には温かくなるのがいつものお約束なのだと初見のロカ・ジャンク夫妻はばっちりと学び、次は驚かずに楽しもうとなったりと、楽しい夜が過ぎていく。
明日はいよいよ結婚式だと、ティファは幸せな笑みを浮かべて待ち侘びる。
早く明日になってほしい
もう嫌だ・・・・こんな世界、
俺どうして
こんな目に合うんだったら
今宵ここまで