三組の誓いの言葉が終わった後は、神父は誓いの言葉の後の大切な儀式を勧める事はしなかった。
花婿の一人ラーハルトが泣き止み落ち着くのを待っているから。
今ラーハルトの胸には様々な思いが渦巻いている。
辛く悲しかった事、人を憎んだ事、そして・・・・自分は幸せなのだという思いが胸も思いも熱くしてどうしても涙を止める事が出来ないでいるのを、参列者一同文句を言う者はおらず優しく見守り、ダイとポップはラーハルトの背中を優しく撫で始める。
自分とポップとティファは兄妹であり、新しく加わった-長兄-を優しく包み込むように。
その優しさがなお一層ラーハルトに涙を流させている時、-其れ-は起こった。
いきなり聖堂の間の天井から、何の気配も前触れもなく声が響いたのだ。
「ああ!式はまだ終わっていなかった・・・・我等は間に合ったと言えるか?」
「終わったなんて寂しい事言わないでね!!これでも僕ら必死に頑張って来たんだから!」
「ふふ、光のも闇のも落ち着け。見やれ、花嫁達の-ヴェール-はまだ被られたまま。誓いの言葉は分からぬが、最後の最後は来れたとみる。」
「水のはもっとしゃっきり喋れんのかい!言い方が回りくどいぞ。」
「木の言う通り!!俺の様にドカンとした物言いで、間に合ったの一言でいいんだよ。」
「・・・・土のががさつすぎるだけだ・・・」
「んだと!火の!!やろって・・・・・」
聖堂の間の天井に現れしは、六大精霊王その人達であった!!・・・危うく警戒をマックスにした死神・影・ガルダンディとボラホーン達は襲い掛かりそうになった・・
今日の結婚式には絶対に参加すると言われていたがなかなか来ずに、何かどうしても外せない用事があるのだろうか、仕方がないから始めようと式は始まったのだがどうやら何かをしていて遅くなってしまったらしい。
そしてその遅くなってしまった理由は直ぐに光の精霊王の説明がなされた。
「遅れてすまなかった子等よ。此度の式に出たいと申し出たは此方であったというに。」
光の精霊王は三神の天神よりも厳格だとティファは思っていただけに、来れないのであれば何故何の連絡も無かったのか不思議に思っており、周りからも精霊王達から何か知らせはないのかと聞かれてティファも分からないと困惑していたが、光の精霊王の次の言葉で合点がいった。
「実は天界と地上界の境は未だに自由に行き来は出来ないでいる。理由は我等の住む場所は十万年前の出来事で結界で覆っていたからだ。その結界は今少しずつ解除しているところなのだ。」
長い・・・それこそ人の身どころか魔族達にとっても神話の時代ともいえる長い時に渡って張られていた結界は、いきなり解除しようとすれば大惨事になるという。
長い間結界を維持するために注ぎ込み続けられていた膨大なえねるーを一気に解除したとしたら・・・この-時空-そのものが壊れてしまうのだが精霊王達は優しい言葉に置き換えた。
「この世界そのものが崩壊してしまうから、溜まりに溜まってしまったエネルギーを少しずつ世界の循環エネルギーに変えているんだよ。」
そうすることで安全に結界の解除に移行でき、今は大勢は無理でも数人ずつであれば天界から天族の者達が出入りできるのだという説明に、天界は本当にこの世界の為に頑張ってくれているのだと聞いていた者達がジンとする中・・・・はなでわらったものがいた・・
「ふん!馬鹿馬鹿しい!!それこそお前達の責任だろうが!!!なにを自分達は頑張ってますと言い募っているんだか。やって当然の事を長ったらしく言いおって・・」
「こら!!駄目だよヴェール!!!」
天界にいまだに恨み骨髄なヴェルザーの悪態にティファが焦るが今回はヴェルザーの口は閉じなかった。
「そもそも今回お前達が来る一件は三年前から決まっていたんだろう!それが遅れるとはどういう事だ!?小僧達を侮って適当に来たんだったっら帰れお前達!!!」
それは天界の者達に会いたくないという私怨も無くはないが、お気に入りのダイの結婚式に遅れたのが癪に障るのだが・・・・
「すまないとは本当に思う。しかし今回は・・・」
「ごめんねヴェルザー・・・・・どうしても僕達が皆にお祝いを言ってあげたかったんだよ・・・」
「・・・・その声まさか・・・」
「人神様!!???」
前回バーンをへこませたようなど正論を言ったヴェルザーに謝罪しようとした光の精霊王の言葉を遮ったのは
「すまぬ子等よ。我等の言葉を通してもらうべく、精霊王達に一年も前から無理を言って頑張ってもらったのだ。」
「・・・・最初に取り決めた通り・・・・使者を送るべきであったか・・・」
「・・・・竜神様・・・天神様・・・」
ティファにとっては長い年月馴染んだ声に、そして他の者達も大戦の終結時に聞いた・・忘れられない声は、人の神・天の神・竜魔の神、三神の声であった。
三神はずっと・・・ずっと世界中の人とお話をしたかった。跡継ぎを定めて権限を委譲しないと地上界に降りる事は叶わないがせめて声を届けるだけでもしたかったが出来ないでいた。
それは天界から数名の者が出入出来るほどになったとしても、三神達は声にだけでも力が備わっているゆえに話すことだけであっても無理だったのだ。
そもティファがデルムリン島を出る寸前まで話が出来たのはデルムリン島に出現をさせた特殊なダンジョンを通じてであり、それ以降は維持していたダンジョンをたたんで他の事にエネルギーを回したので、ティファとしても実に久しぶりにに三神達と話が出来る大喜びをしてテンションマックス化した!
「天神様!人の神様!竜神様!!!お元気でしたか!?お変わりないですか?困ってる事ありま・・・もが・・」
「・・・・ティファ・・・・周りを見ろ・・・」
「・・・・・あ・・」
ティファのたかが外れて話が進まないとハドラーが溜息をつきながらティファの背後に回って言葉をポンポンと飛び出すとんでもない娘の口を片手で塞いで注意を促すのを、精霊王達と三神達の不意のお出ましに固まっていた周りが苦笑しながら動き出す。
バーンやその側近・ヴェルザー以外の参列者はあのアバンやマトリフをしても驚く事であるが、そこは無自覚シリアスブレイカーティファのやらかしで凍った場が砕けたのは良いのだがとため息をつくハドラーはきっと悪くないがそれは兎も角、おかげで三神達も話しやすくなれたのでお祝いを述べた。
「おめでとう若き子等よ。君達の結婚を僕達にもお祝いをさせて欲しい。」
「我等は知っての通り、一人一人に加護や祝福を与える事は出来ないが・・・」
「せめて其方達の行く道の平穏を祈る事を許してほしい。」
「「「幸せになっておくれ、若き子等よ。」」」
それは荘厳とは程遠い穏やかな声で、温かさに溢れた声であった。
自分達の行く末を案じ、心の底から幸せを望んでくれると分かるその声に誰もが心打たれずにはいられなかった。
三神達は先代の神達の負債を背負わされた事を誰もが知るところであり、今も膨大な結界のエネルギーが暴走しないように日夜腐心しているのもバーンや地上界の王達には伝えられているだけに、そんな大変中勇者達の結婚式を寿いでくれる真心には・・・・さしものヴェルザーも文句が言えなかった。
そしてさらに驚いたのは
「世界中の子等も聞いてほしい。今日の様に僕らは-直接-慶事に声をかけてあげられないけれどもいつでも見守っている事を知ってほしい。」
「そして其方等の行く道が幸せであることを切に願う。」
「其方達の行く道が幸多き道であらん事。」
三神達の声が大戦の最終戦のあの時の様に-世界中-に響き渡っている。これこそが精霊王達が遅れた理由である。
最終決戦のあの時三神達の声が世界中に届く事が出来たのは、バーンが画策した魔の六芒星に黒の核晶をティファ達が乗っ取り、その膨大なエネルギーを使って世界中を繋いだのを、今回は精霊王達が解体中の結界エネルギーを同じ仕組みの魔法陣を作って可能にしたのだ。
あの時は三神達の声を届けるだけではなく、魔界・地上界・天界に生きとし生ける全ての者達の意識を・視覚を全て繋げるという奇跡にも似た術法を使ったが、今回は単純に声のみを届けるに済んだので一年という期間で済めたと精霊王達はほっとしたのだが・・・少し遅刻してしまったがそれでも彼等は満足であった。
三神から寿がれた者達の顔は喜色満面で実にいい笑顔を見ることが出来たのだから。
きっと・・・世界も同じような笑顔が溢れているのだろうと、精霊王達が祈る中、とうとう神父が最後の儀式の宣言を発した。
「誓いの言葉は終わり-様々な方々から-の寿ぎを受け、この結婚を証人とします。
新郎・新婦は真の愛を交わすべく誓いの口付けを。」
この物凄い事態にも動じずに場を見定め空気を読みつくし進行している神父の読経には恐れ入ると一同思ったが、それ以上にダイ達の最後の仕上げに注目が行く!
クロコダイン達の時の様に時間がかかるかと思った。
そこは矢張り経験の少ない若人等を見守るぞと!参列者達は意気込んだのだが・・・・いつの間にかラーハルトの涙は止まってマァムを自分の方に向かせており、ダイとポップもそれぞれの花嫁を同じように自分の方に向かせていた。
ダイ・ポップ・ラーハルトも、いま世界の者達が感じているように神々からの言葉に嬉しく思ったがそれはそれ!ようやく・・・
「レオナ・・・」
「・・・・ダイ君・・・」
「メルル・・」
「ポップさん・・・」
「マァム・・・・」
「ラーハルト・・・・」
花婿達は花嫁のヴェールに手をかけながら呼びかけ、花嫁達はそっとそれに応える。
自分達もまたこの時を待っていたのだと
そして花嫁達のヴェールは優しく取り払われ、そっと口付けが交わされた。
互いの愛情を、これまでの喜びも悲しみも、これからは同じ道を共に歩いていくのだという想いを胸に抱きながら
その瞬間、聖堂を揺るがす程の歓声が起こり、そして世界中からも歓声が沸き起こった。
ダイ達の結婚を祝うべく、三神達の寿ぎを喜んで、誰もが幸せの未来を行ける様にとエールを贈るべく世界中の者達が喉も裂けよと祝いの声を上げたのだった。
「あ〜、、喜んでもらえたね」
「こりゃ!ほっとしとらんですぐに結界の隙間を閉ざさぬか!!」
「左様、我らの力はいまだに強く、時空の守りすらも揺らがせてしまうのだぞ。」
人神が無邪気に喜ぶのを竜魔神と天神が、用が終わったので直ぐに自分達の力の制限をして、術法を消し去り天界の結界を元に戻す。
この世界を守る為に、今しばし天界に篭らねばならないと気落ちしながら
・・・もう・・・いい・・
「ふぇ?」
「どうしたティファ?」
「ん、今ね・・」
喜びの歓声の中何か悲しみと絶望の声音が聞こえた気がしたティファが辺りを見回すのを、ティファから手を離してもそばにいたハドラーが何事かと聞いた。
この慶事の中、あんな声が聞こえるはずはないかとティファは空耳でも聞いたかと首を振ってハドラーに答えた。
「何でもないですハドラー。」
きっと気のせいだ、みんなが幸せで嬉しい
今宵ここまで・・・・・やっとゴールインさせてあげられました!!
次回は二次会と・・そしてフラグの回収をします。