勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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三人の初冒険です。
よろしくお願いします。


ーロモス編ー ネイル村

島を出れば大冒険が待っていた。

襲い掛かる魔王軍との攻防に明け暮れる日々に、いつしか兄二人は逞しく・・とかいえたらな~。

現実はそうはいかない。

私達三人は絶賛迷子です!!

あ~あ言っていて情けなし。

旅立って三日目なのに首都のロモス城は果てしなく遠そうだ。

ダイ兄は前回は飛行モンスターできたから魔の森は通っておらず、

ポップ兄もこの森は通ってないのと、ルーラがまだ出来ないので歩くしかない。

式でキメラの翼作れるから渡せばいいとどっからか突っ込みが来そうだけれども、

早々楽はさせません。

自力で歩いて辿り着くのも修行です。

迷子になっても休憩に合間に木の実や野草、川でとった魚を出したりして二人の士気を

下げないように気を付けながら旅をしている。

先はまだ長い、張り詰め過ぎたらばてちゃうもんね。

でも歩いていて収穫があった。それも飛び切りのだ。

地元のモンスタ-達が全く狂暴化をしていない。

スライム、毒タケ、動く木がいても襲ってこずに、のんびりと通り過ぎていくのには

ダイ兄とポップ兄がキツネにつままれた感じでポカンとしていた。

無理もない話で、大戦の始まりとハドラーが来たときは確かに島の皆が狂暴化したいたのを見ているんだから、島のモンスターは全部そうなっていると戦う覚悟して出てきただろう。

 

「何でモンスター達普通のままなんだろう?」

「どうなってんだこりゃ?」

二人共首を捻っていた。

破魔の石を七年間ばら撒いた苦労が報われた。

魔王軍にとっては計算外だったろうけどざま見ろだ。

「でもこれで罪のないモンスターを倒さなくて済むね~。」

これから相手をするモンスターは間違いなく魔界産の魔王軍モンスターだ。

平和に暮らしていたモンスターが被害を受ける可能性はあっても、倒す必要はなくなったわけだ。

「・・そうだね、本当に良かった。」

「だな・・。」

二人もホッとしてる。

私もダイ兄も島でモンスターを家族として育ち、ポップ兄も島で三日間皆と接しているうちにモンスターに対して友達みたいになった。

戦わなくていいならそれに越したことは・・

 

                 「きゃー!!」

 

・・悲鳴?

「ダイ!!」

「うん!あっちから聞こえた!!」

「行くぞダイ!ティファ後から来い!」

・・二人共頼もしい顔で走っていったけど・・悲鳴の主は女の子っぽかった。

何に襲われてるの?

「こないで!・・だめ・・」

辿り着いてみれば黒髪を三つ編みにした五歳くらいの女の子が、バブルスライムから

遠ざかろうとしてる。

どうやら相手は女の子に危害を加える気はなさそうで、物珍しそうに近寄っているだけのようだ。

何となくわかったをダイ兄達の袖を引いて小声で伝えたら、

「んじゃ、お引き取り願うか・・。」

-ボン-ポップ兄がバブルスライムの頭上に軽いメラをして注意を引いて、

「あのね、この女の子恐がってるよ。」

モンスターとお話しできるダイ兄がスライムとお話をして、

「こっちおいで。」

私が女の子を保護した。

三人の初連係プレイで平和的解決が出来た。

 

「助けてくれてありがとう。」

お礼言われたけど・・この場合助けた内に入るのかな?

「お礼はいいよ、あいつ悪い奴じゃなかったし。」

「俺たちたいしたことしてねえよ。

それよりもお前、親とはぐれて迷子か?」

保護した子にポップ兄が聞いてみれば、村にいるお母さんが高熱を出して薬が切れているので一人で薬草摘みに来てしまったらしい。

・・原作通りモンスターが狂暴化してたら下手したらこの子死んでる。

つくづく破魔の石ばら撒いて良かったと思うわ~。

「私はティファ。あなたは?」

「・・ミーナ・・」

「ミーナちゃん、村への道分かる?」

「・・分かんない・・分かんなくなっちゃた。」

「そっか・・ポップ兄。」

「あいよ。」

「メラで焚火作って煙り上げよう。

こんな小さい子が一人で森に出たら村の大人が捜してるはずだよ。

煙で来てくれるかもしれない。」

「分かった。」

「そしたら俺は焚き木拾ってくる。」

「お願いねダイ兄。

さてミーナちゃんはこのビスケットをどうぞ。」

甘いものを食べて落ち着いてもらおう。

「・・いいの?」

「どうぞどうぞ。」

「ありがと・・いただきます。」

ようやく笑ってくれた、可愛いな~。

「俺にはないのかよティファ・・。」

「・・お仕事終わったら二人分あるからね・・」

物欲しそうにするポップ兄って子供っぽい・・てか子供だった。

ダイ兄も戻ってきて狼煙っぽいのを上げつつ、四人でビスケットを齧ってのんびりと

お迎えを待っているとヒトの気配が近づいてきた。

まだ二人は分からないようでまったりとしている。

・・仕方ないか・・まだ二人共見習いレベルを卒業したくらいだもんね。

でも、欲を言えば気付いてほしいところだ

 

               -ガサリ-

 

木々をかき分ける音で二人もようやく気が付いた。

警戒する二人の前に出てきたは、「ミーナ!無事だったのね。」

ピンクの髪を長く伸ばしたマァムさん登場!!

生マァムさん超かわいい!!!

元気いっぱいな短パンに半そで姿がまたいい!!

・・いかん・・心の中とは言え興奮しすぎだ私・・落ち着こう。

「ミーナ!みんな心配して・・」

捜し人を見つけてほっとしたマァムさんがミーナちゃんに説教始めてる。

「まあまあ、その辺で続きは村でしませんか?

もうじき日が落ちそうですよ。

村に帰ってからゆっくりとミーナちゃんからお話を聞いてみてはどうでしょうか?」

・・アバン先生風ってこんな感じかな?

旅の間中眼鏡をかけて私なりにアバン先生の言動を思い出して、今マァムさん相手に

初・アバン先生風を披露して説得してみた。

 

ただでさえこの森は日中でも鬱蒼として日が当たり辛くて暗いのに、夜になった真っ暗だ。

モンスターが狂暴化していなくとも、縄張りをうっかり踏み荒らしたら確実に追い出そうと襲ってくる。

リスクは避けたいし、ミーナちゃんの安全確保が優先だ。

「・・あなた達は?」

・・ちょっと怪しい人風になったかな?

何やら警戒されたような・・。

「あのねお姉ちゃん。ミーナねこのお兄ちゃん達に助けられたの。」

「そうなの?ごめんなさい、ミーナを助けてくれたのにお礼も言わずに。

私はマァム、ミーナと同じネイル村に住んでいるの。

ミーナを助けてくれてありがとう。」

う~ん良い子だなマァムさんって。

「俺たち何もしてないよ・・俺はダイ。」

「そうだぜ、ダイの言う通りお礼はいいよ。

ポップってんだ。」

「たまたま通りがかっただけですよ。

ティファと言います。」

「ティファ・・あなたのその眼鏡。どこかで?」

おっと鋭い、観察眼はなかなかのもんだ。

「マァムさんと言いましたね。」

「ええ。」

「その首から下げているペンダントはもしや-輝聖石-ではありませんか?」

「あっ!!」

「・・マジかよ・・」

・・二人の兄は少々鈍いか・・。妹は悲しいぞお兄ちゃん達・・。

「よく知ってるわね。

これは私の先生から貰った卒業の証なの。」

 

 

「えー!貴方達もアバン先生の・・。」

村に行く道すがら自己紹介だ。

「俺は一年前・・って事はマァムは俺の姉弟子ってことか?」

「俺は三日しか・・アバン先生の弟子ってあっちこっちいるのポップ?」

「ん~・・俺も初めて他の弟子いるって知ったしな?」

先生話で大盛り上がりだ。

「あなたも先生の弟子なの?」

「いいえ、眼鏡を-預かりました-がアバン先生のお弟子さんではありませんよマァムさん。」

「そうなの?

でも、貴方何となく先生に似てるはね。」

「そうですか?」

表面すっとぼけたけど内心ではよっしゃーもんだ!!

こうやって頑張って先生に近づけて、先生の立ち位置に行くようにしよう。

「光栄ですが、私は先生程凄くないですよ?

お料理の腕位は及ぶかもしれませんが。」にっこり笑ってウィンクもつけちゃおう。

「ふふ、面白い子ね貴方って。」お、掴みはオーケーか。

「そのお姉ちゃん料理上手だと思うよ。」

「あらミーナ、どうして分かるの?」

「さっきビスケットくれたの。

お姉ちゃんがつくったんだって。」

「ミーナ、きちんとお礼した?」

「はい、マァムさん。

可愛いお礼をいただきましたよ。

ちなみにビスケットはまだだいぶ余ってますので良ければ二人ともどうぞ。

・・ダイ兄達の分もありますよ・・。」

「よっし!」

「いただきまーす。」

ワイワイしながら森を抜ければ村があった。

「見えたわ。

あそこが私たちの村のネイル村よ。」

・・懐かしいな~。

石落としに来て以来か。

「さっ、ミーナお母さんが起きて待ってるはずよ。」

「え!熱は?」

「たいしたことなくて落ち着いてる。

早くミーナの元気な顔を見せてあげて。」

「うん!」

ミーナちゃんを無事に送り届けたら他の村人や村長さんまで来てお礼を言われて、

ダイ兄とポップ兄を大いに照れさせた。

「今夜はうちに泊まっていってちょうだい。」

マァムさんからの申し出に、

「助かる~!」「良かった!!」・・お兄ちゃん達あからさまに喜びすぎ・・迷子が堪えたか。

「マァムさん、私達が泊ってもよろしいのですか?

却ってお邪魔になりませんか。」

「おいティファ!」

「ポップ兄、きちんと確認しないとマァムさんのご迷惑になりますよ。」

隅々まで確認しないとだ。

「大丈夫よティファ。

私の-父さん-と母さんが知ったら泊まるように勧める人達なの。

このまま行かせたら反対に私が叱られちゃうは。」

「そうですか、良い親御さんを・・」・・って・・あれ?

今・・マァムさん・・お母さんのレイラさんの前に・・お父さんて・・言った?

「あのもしかして・・マァムさんのご両親というのはもしかして・・アバン先生の・・」

「そうよ、先生が話したの?

父は先生の一行で戦士をしていて、母は僧侶をしていたのよ。

二人も先生の新しいお弟子さんに会ったらびっくりして喜ぶわよ。

だから泊って頂戴。」

「分かった!俺も先生の一行の人に会ってみたい!!」

「行こうよティファ!」

「・・そうだね・・分かりましたお言葉に甘えてお願いします。」

 

どうなってんの⁉

何でロカさん生きてんの?

・・人が死ぬより生きてんのはいい事だけど!

呪いと戦いのダメージどこ行ったの!!

・・訳わかんないけど・・マァムさん家行ってみれば分かるか。

サクサクとお宅訪問させてもらおう・・。




マァムさんの登場回でした。
ロカさんが生きているのではと、割と早い段階で読者様からばれているぞの
感想をいただきましたが、その通りで生きています。
次回は-三人-の初陣です。
お楽しみに。

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