「報告!!時空の歪み!!未だに収まらず!!!」
「のみならず時空に裂けめが・・・これは・・・神子様がおわします大魔王の居住区に裂けめが出現!!」
「なんとしても-侵入-だけは防げ!!最悪は大魔王の居住区の一切が持ち出されようとも子等に被害を・・・」
「報告!!!裂け目より侵入者・・・これは・・・・他界の神の力を検出!!」
「どうして・・・・どうしてあの子達の幸せの邪魔をするんだ!!力の検出に伴い発生した力の根源を辿ってどこの他界かを探りつつ・・・」
「-アンロポス-様!!神子様が・・・・子等が・・・神子様の作りし万能薬と共に他界に連れ去られ・・・・これは・・・・ヴァルガブル神様にご異変が!!」
「・・・・即座に御止めせよ!!儂等も直接に・・」
「竜の!!それよりも時空のひずみと裂け目の広がりを止め、安定させることを第一とさせよ!!ティファを・・・・・子等はきっとどこであっても生き延びる!!!我等の助けを信じて・・・」
「天の・・・・・おのれ・・・・許さぬぞ!!!どこの他界であろうとも!必ず報いを受けさせよ!!!!」
それはティファとポップとチウが、キルの目の前で解けて消える少し前から天界は大騒ぎになっていた。
三神達がダイ達の結婚式で寿ぎを終えた後、この時空が揺らいでしまわないように強大な力を持つ神々の力をしまう様に天界に戻って一息付けようとした時にそれは起きた。
この世界以外にも当然別世界がある事は、天界最高神たる三神達とその側近達と六大精霊王達は知っている。
故にこそ、死して時空の狭間を揺蕩っていた今はティファとなっている者の魂を見つけ出し、自分達の望む知識と願いを託すに足る優しさと芯の強さを持っている事を突き止め、そして懇願をしてダイの双子の妹としてこの世界に産まれてもらったのだから。
そしてごく稀に、他界が自分達の世界にはない知識や道具、特殊な人材を求めて攫うという悲しい事がある。
所謂神隠し
それが選りにもよってティファを連れ去るとは!!
普段は温厚である竜魔の神ドラグーン、人神アランティウムも怒りに叫びあげるのを天神ウェントゥスが冷気をはらんだ語気で周りを鎮め、先ずは-通路の確保-を命じる。
三人が連れ去られてしまった上は・・・・
ヴァルガブル様・・・・我らが偉大なる父よ・・・子等の行き先をどうか・・・
ウェントゥスは心の中で泣き叫び、そして父に祈る。
ティファ達の行き先を追って欲しいと・・・
「通路確保を優先し、目途が立ち次第パレスに通達せよ!大魔王以下ティファの周囲全員に知識領域の解禁を許可する!!事の起こりと顛末とその後の対処法全てを共有する!今すぐに資料の作成をせよ!!」
「御意!!!!」
他界がある
この事は少なくともこの世界においては禁忌レベルにも等しい程の情報であり、天界においても三神達の最側近の、それも一部にしか共有されていない情報の開示の許可に、側近達はどよめきそうになる想いを飲み込み時空の安定と通路確保と連動して資料作成に取り掛かった。
必ずこの世界の宝を取り戻す為に
落ちていく・・・・どこまでも底が見えないくらい中を・・・
「ティファ!チウ!!絶対に俺の服を離すなよ!!!!」
「にぃ!結界晴れない・・・チウ君!にぃとティファの服両方もって!!」
「ティファさんもポップもお互いもっとぎゅっとして!大丈夫!僕潰れないから!!」
どこに向かっているのかはわからないが、三人は気が付けば暗闇の空間を落ちていた。
解かれていた体いつの間にか再構成され、解かれる前と同じティファとチウがポップに摑まり、ポップはティファとチウを絶対に落とすものかと万力の力を込めてティファを抱きしめチウを守っている。
「チウ君!宝箱開けられる!?中に薬の小瓶が入ってるから私の口に入れて!!」
「えぇぇ!!ティファさんまさか・・」
「お前・・・体に悪いから絶対やめろ!!!」
「やだ!!誰か知らないけど目当ては絶対にこれだもん!渡してやる言われなんてないもん!!!」
体が解けてどことも知らない空間の中を落とされ体が再構築したとしても、ティファの無茶苦茶は健在であった・・・しかしティファとしては本気だ!
誰かは知らないが万能なる万能薬を盗まれてたまるものか!!絶対に死守したいし、何よりも自分とチウの間にある宝箱が邪魔で三人の体がきちんと密着できないでいる。
今は只落ちているだけであっても、この先嵐や奔流のようなものが襲ってこないとも限らない。
その時に密着していないが為にばらばらになるなどごめんである。だからと言って万能なる万能薬を捨て去る考えはティファには毛頭ない!兄達への引き出物を捨てるなぞありえないからだ。
その決意にチウは折れ、どうにか宝箱を開ける事に成功して中身の小瓶を取り出し・・そして自分が飲み込んだ!!
「おいチウ!!」
「チウ君!!」
「・・・う・・・っく・・・こんな大きなもの・・・細いティファさんが飲んだら・・うっぷ!」
「チウ君!!」
「おいチウ!吐き・・・・なんだありゃ・・」
小瓶とは言え大きさがそれなりにあるのを見たチウは、女の子にしてはそこそこ食べるが、身が細いティファに飲ませては危険だと判断して自分の体内に収めたが異物が入った体が驚いたのを、ポップとティファは慌てて吐き出すように言おうとした時、ポップが目にしたものは、暗闇を切り裂く銀状の縄であった!
どこだ・・・どこに・・・・
「見つけた!!吾子等よ!!!」
「・・・・ヴァルガブル神様!??」
銀状の縄は、ヴァルガブルが結界につぎ込んでいた己の生命そのものであった。
天界を十万年覆い隠し守ってきた結界は、確かに天族達が代々注いできたものに違いないが、その根幹を支える力はヴァルガブル自身の全生命エネルギーであった。
自信を結界とし、全生命エネルギーを注ぎつくしてでも天界の子等を守らんとした巨大なる結界は、急激に解こうとすればあまりの強大なエネルギーが時空崩壊を引き起こしてしまうかもしれない危険を孕むと同時に、ヴァルガブルの命を脅かすことになりかねない。
自身の全てを使って子供達を守らんとしてくれた偉大なる父に報いるべく、天族と精霊王達が結界のエネルギーを緩やかに世界の循環エネルギーと、魔界の隅にまだある瘴気の浄化エネルギーに回し、後五十年もすれば半分は解けてヴァルガブルが肉体は無理でも往時の時の姿に霊体として顕現できる見込みが立ったのを、知らせを受けたティファ達は喜んでいたのだが、そのヴァルガブル自身が、己の消滅も顧みずに生命エネルギーを全て縄状にしてティファ達を救わんと
時空の狭間を追って来たのだ!!
あと少しで銀状の縄はポップ達に追いつきかけたが・・・・弾かれた!
まるで目に見えない壁が三人の子供達を取り囲むように・・・
「おのれ・・・・おのれ!!!返せ!!我が吾子等を!!我らが宝たる子等を返さぬか!!」
ヴァルガブルの怒りに震える声は、虚しくも時空の狭間の中に消えてゆく。
ヴァルガブルの怒りの声に含まれている嘆きと絶望に、ポップとチウの中に芽生えた希望が打ち砕かれんとした矢先
「探して下さい!!!」
ティファの凛とした声が木霊した。
「私達は必ずどこかに辿り着きます!!チウ君の体内に収められた薬には、あの世界最後の世界樹の最後の一枚の葉で作ったもの・・・チウ君ごめん・・・ラック=バイ=ラック!!」
「わぁ!!」
「・・・使えた・・」
この訳の分からない空間に落ちてからポップは直ぐにトベルーラを試みたが発動せず、ティファもまたジ=アザーズを使用して足場を確保しようとしたが矢張り結界は解けてしまったが、チウの体内から薬瓶を取り出すためにラック=バイ=ラックを使えば使用できた。
どうやら誰かは知らないが、相手は自分達・・・この薬を是が非でも欲しいらしく、逃げる類の事ならば見逃すらしい・・・・実に甘い事この上ない!
「ヴァルガブル様!!この薬を辿ってください!!!」
こうやって、-小石-をまかれて追跡可能になるのだから・・・・
量は感覚にして百数えて一垂らし、濃厚な気配がするのでもっと長い距離でも・・・
「必ず辿る!!どのような事があろうとも!どのような目に合おうとも!!!何をしてでも生きよ吾子等よ!!!」
遠くになってしまったヴァルガブルの祈りにも似た叫ぶ声を最後に、三人の体は光に包まれそして・・・空中に放り出された。
どことも知れない場所に到着したのだ。
「ダイ!!悲しくても立てよ!!」
「ダイ!」
「うるさい!!!もう・・・もう嫌だ!!」
目の前で起きてしまった悲劇を前に・・・-ポップ-も-マァム-も俺に戦えと言ってくる!-ヒュンケル-も-クロコダイン-も俺達の前に立って庇ってくれている・・けれども気配が俺に立ち上がれってうるさい!!
俺の心は・・・・もう砕けてしまったんだ・・・・
-ゴメちゃん-だけが・・・俺と一緒に泣いてくれている・・
目の前にいるのは確かに敵の大魔王なのかもしれない・・・・幾度も見て戦った-ミストバーン-と-キルバーン-を左右に従えている。
キルバーンからは、俺を嘲笑う気配がして、-一つ目の使い魔-が囃し立てている
弱い勇者、駄目な勇者、臆病者と愉しそうに・・それでも俺はもうどうでもいい!!!
こんな世界!!滅んでも・・・・
「・・ちる!!」
「にぃ!!トベルーラ発動できる!???」
「俺の全エネルギー使ってでも!!!」
「駄目だよ-ポップ-!!!そんな事しないで!!!」
・・・・・こんな世界どうなっても構わない・・・けれどもあれは何?
どうしてポップとチウが、女の子と一緒に空から落ちてくるの?
ポップはここにいて・・・チウは今-サババの砦-でハドラーの親衛騎団の一人フェンブレンに負わされた重傷を癒すために寝ているはずなのに・・・・そもそも
ーダイーの感じた疑問は当然・・いな、たった一人を除いた他の者達にとっては真っ当な疑問だった。
この決戦において勇者達は揃っており、空中にいるーポップーの方がおかしい。
それも何の気配もなく突然空から生じたのだから、キルバーンはともかくミストバーンはダイが突如として空を見て唖然としたのを訝しみ、気配は途切らせずとも同じところを見てみれば!白いタキシード姿の勇者の魔法使いと仲間の大ネズミが!!見知らぬ少女と共に降ってくるとは何だそれは!!
警戒度をマックスにしたミストバーンは瞬時に闘魔傀儡掌を放とうとしたが、主の右手がスッと上がるのを見て撃つのを止めた。
何事が起きているのかを突き止めるのと、面白そうな余興が始まったと愉しむ主人の癖がどうやら出てしまった様だ。
空から落ちて来た者の内の黒髪の少女が、今のこの状況が不味いと察したのか顔を蒼ざめさせている。
なんで・・どうして・・あれは・・あの光景は!!
「こなくそ!!発動しやがれ!!トベルーラ!!!」
ティファの混乱にも似た困惑をよそに、ポップは魔法の発動を優先させ、チウもティファとポップがばらけない様に必死に二人の服を掴むのに夢中になっている。
そして魔法はようやく発動し、ー勇者ーとー魔王軍ーの双方の間に降り立つ格好になってしまった。
地に足がついてようやく周りを見回したポップとチウは、ありえない、と唖然とした。
ポップは何故自分がいるのか分からない、そして歳も幼くなっているダイ達がいる?
ヒュンケルは何故鎧の魔剣ではなくラーハルトの魔槍を着ているのだ?
そもそもが・・・な・・・んで
「バランさん!!!」
目の前の状況に、ポップとチウは混乱をした!
何故ポップが二人いて、バーンもキルもミストもいて対峙しているのかが分からないのに!バランが倒れ伏していた!!
それも全身ズタボロで、そのバランに幼くなっているダイが取り縋っているではないか!!
「ダイく・・」
「動かないでチウ君!!ポップ兄も絶対に何もしないで!!」
チウが、ポップが状況はわからないが二人に駆け寄ろうとしたのをティファが大音声で止めた。
何故止めるのだとポップが怒鳴ろうとしてティファを見た時、ティファは・・身につけているもの全てを取り外していた!
リボンも小さなダイヤをあしらったチョーカーも、ドレスに合わせたレースの手袋も全て地面に捨て去る。
ティファとしては必死であった。ー自分のいないー勇者一行、魔槍を着ているヒュンケル、赤と黒の素敵なお衣装ではない気障ったらしい風貌のキルバーンと、キルバーンの肩に乗っているピロロ!自分の考えが正しければここは・・
全ての宝飾類を取り外したティファは勇者一行と思しきもの達と魔王軍との真ん中に立ち、ドレスの端を両手で持ち上げ貴族の正式挨拶をよりも更に深く頭を目の前にいる魔王軍に向かって下げそして
「他界から来せしティファと申します!
そこにおられるは他界の大魔王バーンとお見受けいたします!
所以も知らずに戦場に立ち入りし事!!誠に申し訳なく!!!」
今宵ここまで