マザードラゴン
その名に少年ポップとダイは苦い顔をしたのをポップは見逃さなかった。
まるで聞きたくも無いという名を聞いてしまったかのように・・・何故だ?聖母竜は全ての竜の騎士達の母であり、少なくとも自分の知るバランとダイとティファは時折テランのあの湖に献花に行きメルルの案内で像が祀られている神殿に祈りを捧げに行っているのに・・
なんか俺の御婆ちゃんみたいだと思うとさ、父さんとティファと一緒に行きたくなるんだよ。
そしたらダイ君・・・私をお孫さんのお嫁さんだって紹介してくれる?
うん!それいいねレオナ!!
おのれの命を賭して竜騎衆三人を蘇らせる手助けをしてくれた偉大なる母を、バランとダイとそしてティファは尊敬し敬愛の念を抱いているというのに、この世界の者達・・・特にダイが浮かべているあの表情は何だとポップの疑念を置いて行くように、ティファの呼びかけに答える様に空に光が満ちた
「子よ・・・異界の竜の・・・」
その姿は荘厳であった。光り輝く竜の姿に表情は聖母竜と呼ばれるのに相応しく慈悲に満ち溢れ、さしもの魔界の神と呼ばれるバーンも、長年世界を支えた者に対していきなり攻撃をすることはしなかった。
如何に地上を滅して天界もその余勢を以て討ち滅ぼそうと目論んでいようとも、それなりに敬意を表しても良かろうと・・・最早竜の騎士バランとその子供は-敵-にもならないという余裕も手伝っているがそれは兎も角、バーンとても暫し聖母竜の言葉を拝聴しようとしたのだが・・・
「持って回った言葉も感動もいりませんよ。」
・・・・・はい!?
「その・・・異界の・・・」
「単刀直入に聞きますのでサッサと答えてください。貴女ですか?兄達の引き出物を-盗んで-ついでの様に私達を-誘拐-した者は?」
「ぬ・・・ゆ・・・竜の子よ!私の話を・・・」
「言い訳は結構なので答えなさい!!私達が命を懸けて守りし世界にて!幸せなる時間を過ごすはずであった事象全て壊したのは貴女かと私は聞いている!!
神だから許されるとでも?」
ティファの直情的とも言うべき、尋問とも呼べそうな問いに、数千年間三界の調停者を生み出し見守り、時に奇跡を起こして世界を見守って来たと自負していたマザードラゴンは困惑をした・・・・情報では・・・・この娘は、目の前にいる竜の子に連なるティファは命を慈しみ大切にしている子の筈なのに・・・・この冷たい気配は何としたことか?
まるで敵を見る様な眼差しを何故向けるのか!自分の言葉を聞いてくれれば、自分が伝え聞いた-ティファ-という娘であれば手を貸してはくれまいかとも思っていたのが・・・
「問います、あの万能なる万能薬の事を何故知りえたのですか?他界同士の交流がある世界はごくまれにあるそうですが、少なくとも私の知る範囲内ではそんな話は聞いた事ありません。
また神聖を帯びた神級のアイテムであれば、その世界の外に気配が漏れ出て察知される事もごく稀にあるとか。
しかし私の作ったものは直ぐに封印を施し、誰が見ても効能は分からない筈なのですが?」
「・・・・子の・・」
「私はこの世界の貴女の子孫ではありません。子と呼ばずにティファと。」
「・・・ティファ・・・貴女の全てを、-私-は知っているのです・・」
ティファの情け容赦のない追撃に萎れたマザードラゴンの言葉に、それまでティファの冷徹さに戸惑っていた全員が、その言葉に驚く。
異界の物を知る・・・そんな力をマザードラゴンが持っているとするならば、地上がここまでになる前に打てる手が幾らでもあったのではなかろうかという当然の疑問と共に向けられる驚愕の視線に、マザードラゴンは静かにティファの問いに答える。
「この世界は貴女方の世界と非常に近いのです。-世界の性質-が似通い、かつ近くにある世界同士で互いに存在している神々であれば、情報を共有することが可能なのです。」
それは本当に、神話の世界の話であった。
世界の性質と言われたティファは、それはここで言えば-ダイの大冒険の世界-であろうと理解して目線でマザードラゴンに話を促す。
曰くただ力を持った目の前にいるバーンや、冥竜王と呼ばれるヴェルザーにもこの力はないそうだ。
真に神としての権能を持ち、-時空-の概念を理解しかつ世界の性質が似通う世界に、己の同じ存在がいる事が不可欠だとか。
ダイの世界であれば当然竜の騎士が存在し、マザードラゴンがいるのは共通事項であり
「竜の騎士の紋章に、代々の竜の騎士の戦いの歴史が蓄積されているのは貴女は知っていますか?」
「それをして竜の騎士はその場の戦闘における最適解を瞬時に導きだし、己の敵を打ち取れると。」
「・・・・その通りです。その紋章の中に蓄積される戦闘データーを強化するべく、-私達聖母竜-は時空を超えて情報を共有し合うのです。必ず三界を揺るがす敵を討たせるべく・・・」
それは知識領域における禁忌事項であり、天・地・魔界の者達に知られてはいけない事柄をあっさりと言ったマザードラゴンの言葉に少年ポップ達とポップとチウは無論の事、キルバーンとミストバーンもが驚く中、バーンとても信じられないものを見る目を向けた。
神隠しがあるのであれば、確かに途方もない話ではあるが無いという事も無かろうと納得がいくが!そのような秘っされた話を何故スラスラと話すのだ・・・・もしや・・・
「貴方は・・・寿命が迫っているのですかマザードラゴン?」
まるで自分の疑念を代わりに聞くティファの問いに、マザードラゴンは首肯した。
「そこにいるバランを最後に、私には最早竜の騎士を産む力はありません。
それはもうすぐ私の消滅を以て知られる事・・・隠していても意味は無いので正直に応えましょうティファ。」
それは告解であった
隣ともいえる程に近い世界にて、異色の竜の騎士の子がなした事に自分は驚愕をした事から始まった。
それを知ったのはこの世界で自分が産みせしバランが、悲しい事に愛憎に囚われアルキードを滅ぼして少し後の事であった。
失意を覚えながらもその頃の自分にはまだ力が残っており、ならば次の世代の子に少しでも良きものを継がせてあげるべく、自分は隣の世界のマザードラゴンの思念に触れた。
その時の隣接する世界のマザードラゴンは、バランと-ティファ-の願いを叶えるべくその身を賭して奇跡を成し誰がために肉体は消滅してしまっていたから。
その時のマザードラゴンに、バランの戦闘経験ではなく、ダイとティファの戦闘経験を貰い・・・・それと同じくらいに-孫自慢-をも目いっぱいされたのだ・・
「余程貴女という存在が嬉しかったのでしょう。貴女の歩いてきた道を、想いを、成した事をすべて私に教えてくれたのですよ。」
その時の事を思い出し、マザードラゴンは場違いだと分かっているがつい苦笑してしまう。
本当に・・・孫自慢をする祖母のようであったという言葉に、ティファ以外の一堂呆気に取られたのはきっと悪くない・・・・神様に自慢される娘って何?
「・・・・つまりこのあの薬を作ったのが貴女に連なるとも言っても差し支えない私が作ったから・・」
「はい、ティファの考える通り、そのおかげで私はその情報を得ることが出来たのです。」
さらりと言われた言葉に、ティファの眉間に皺が寄り、声がさらに低くなり
「・・・もしかして・・・・私と貴女は-マザードラゴンと竜の騎士-の親子関係という名の繋がりで・・」
「貴女の考えている通りです。あちらのマザードラゴンと私の性質は同一ともいえる程であり、貴女とその・・・あちらのダイとも繋がれます。」
それは・・・そしたら!!
「・・・つまりこの度の騒動は、全て私という媒介を通したと?」
「・・・・・貴女にはすまないとは思いますが、貴女の世界の壁は何が起きているかは知りませんが非常に薄くなっているのを私にとっては幸いとして、薬を手に入れる為に貴女があの薬の近くに来た時、貴女を通路として薬の入った宝箱に陣を展開したのです・・」
「私達は・・・・」
「言い辛いのですが、貴女方がここに来させる予定は私には無かったのですが・・・・手をお貸しくだされた天神が貴女方も欲したので。」
-様々な要因-で、本来であれば辛うじて大魔王に勝てる筈であったこの世界の命運が、負ける方に傾いてしまったのを焦った神の一人がティファ達を・・・もっと言えばティファの力を借りようと連れて来てしまったのだと、マザードラゴンが悲しい顔をして申し訳なさそうにするのを、本当に何度目か分らない驚きをこの世界の勇者一行と魔王軍がする中、ポップとチウはマザードラゴンの言い分に腹が立った!
俺達の大切なティファは!他の世界が困ったからと言って召喚されて使われるアイテムだとでも言いたいのか!!・・・・この事を-向こうの全員-が知った日には・・・この世界の全てを滅ぼしそうだとも思う中ティファはというと・・・
・・・・・・・・・・・・あぁ!!!!もう!!!!!!
つまり何??!!!この騒動の原因全部私なの!!!???
私って言う存在は厄ネタか何かなの・・・・今日はにぃ達全員が幸せになって・・・みんなが笑って祝う日だというのに・・・・肝心な時にどうして私は・・・私のせいで・・
ティファは怒っていた。それは兄とチウを危険に巻き込んだこの世界と、それを引き起こしたマザードラゴンと、手を貸した神と・・・おそらくは父を死なせたくないというダイの心の底の願いをゴメが拾い薬のみならず自分をも転移させる事に無意識に神の涙としての力を使ったのだろうと予想が付く。
何の事ははない・・・・・厄介事の原因は・・・・いつだって自分のだと、ティファは己に対して怒りを沸かせていたのだ。
今宵ここまで