ふ・・・っく・・
ポップの苛烈ともいえる痛罵に空気は凍り付き、いつ開戦されてもおかしくない気配が漂う中、少年ポップ達も覚悟を決め、いまだに父バランの傍らで座り君動けないでいるダイを囲みながら構え、言葉を放たれたキルバーンは殺気の塊と化し大鎌を持ち直してトラップを発動させる機会を伺うなか・・・・・場違いな声が流れた。
「はっはっはっは!!ポップ兄の言葉もう最高すぎます!!わ・・笑い死にしたら恨みますよポップ兄!!!」
小さく微やかな声はやがて大きくなり、遂には口元を抑えて我慢していたティファは我慢できなくなりお腹を抱えて大爆笑していた!!
「・・・・何がおかしいんだい小娘さん!!」
「ふっくっく・・・失礼、しかし本当にあなたは口を開けば開くほどに襤褸が出て滑稽になりますね~。」
タキシード姿のポップに言われた事だけでも許しがたいというのに、さらに追い打ちをかけるようなティファと言う小娘の笑い声は本当に気に障るとキルバーンが何かを言いかけるのをポップの言葉が被さった。
「ティファ!お前チウが穢されたって言うのに笑っている場合かよ!!」
なんとキルバーンに向けられた怒気が、自分の妹分にまで及んだのだが、その妹分はバーンですらもがポップの語気と覇気とそして床にひびを入れる程の魔法使いにはありえない程の闘気の質と量に警戒心を高めているというのに、怖れる風もなく去れりと流した!
「笑っている場合ではないけれどもポップ兄・・・私怒っていいの?」
「・・・・あん?」
「いいの?-篩の篩の塔-で、あの敵にしたみたいなことを今してもいいんならするよ?」
「ティファさん!???」
ティファの謎のぞのような言葉に、一番に反応したのはキルバーンの言葉の刃で切り刻まれかけたチウであった。
あれは・・・あの時のティファさんは・・
「駄目です!!ティファさん怒らないでください・・・・さっきの言葉に、あの・・・目の前の人の言葉に僕は嫌でした・・でも!あの時のティファさんを見るのはもっと嫌だ!あの時のティファさんに・・・ならないでティファさん・・・。」
心擦り切れる中に会ってしまった相性の悪すぎる敵に対してティファした事は、壊れかけていたであろうティファの心にひびを入れる程荒らしたのを間近で見ていたチウは、キルバーンの言葉を忘れる程に懇願をする・・・もう、あの時の悲しいティファを見たくないと・・・自分に付けられた心の傷よりもティファを優先したのだ。
小さな手でティファのドレスを握りしめ、怯えて流した涙よりも大粒の涙をぼろぼろと流し、兄も先ほどの言葉の愚を悟る。
ティファが、怒っていない訳がないではないか・・・・
「・・・・・・前言撤回・・・・お前は絶対に怒らないでくれ・・」
「うん・・・・そうする。だから大丈夫だよチウ君。」
「ティ・・・ファ・・・さん・・」
笑いながらもティファの目に笑みどころか熱量は全くなく、冷たい瞳でずっとキルバーンを見ていた。
許さない、許せない・・・・しかし・・・それをするのは-自分達-ではない・・そうあってはいけないのだと、ティファが我慢していれば兄ポップが痛快な言葉であの不快野郎をぶった切ってくれてすっきりとしたところで、自分のスカートを握りしめている手をそっと包み込み、そして微笑む。
「チウ君、もう私は怒ってないよ。」
「・・・本当に?」
「うん、にぃが代わりに怒ってくれたからもう大丈夫。それよりもチウ君は大丈夫?」
「僕も大丈夫です!」
瞳を柔らかくしているティファに、本当にもう大丈夫だと確信したチウはティファのドレスを離して大丈夫だと元気いっぱいに答える。ティファの様に、もう大丈夫なのだと示すように。
「そう、ちょっとごめんね・・・・にぃメドローアを引っ込めて・・・・しないと強制的に消さすよ?」
「い!!??たってティファ!!消すって無理だぞ!!メラとヒャドもう組み合わせて通常の魔法みたいに霧散させられねぇぞ!!??」
妹の頼みであっても・・・たとえその内容が怖いとは言っても!混ぜ合わせて生み出されたメドローアは放たない限り消えねぇぞ!!
その言葉にティファは溜息をついて、仕方がないと助言をする。
「あそこの服装・性格悪趣味野郎に撃てばいいでしょう。」
「はぁ!!??・・・・・その後の事考えて・・」
「いるからさっさと撃つ!!!」
「あぁもう!!!こん畜生が!!!」
自分で蒔いた種とは言え、あのどぐされ外道野郎言った言葉は後悔してはいないが、メドローアを構えるまではやりすぎたかとほんの少しだけ後悔をしていたポップは、妹の言葉を信じてキルバーンに向けてメドローアを放った。
その威力は、かつてハドラー親衛騎団に放たれた物よりも小型であったのものの、その威力を知る少年ポップ達はあの三文死神も無事では済まないと期待したが・・・メドローアが当たる瞬間に消えた・・・否!空間が開いて飲み込まれてしまった!!
「これは返すよ愚かな坊や。」
何をするかと思えば、空間を自在に開け閉めできるこの僕に向かって大呪文は夏とは馬鹿な事をとほくそ笑みながら、自身の呪文で死んでしまえと空間を開けようとしたが・・何も起きなかった。
空間を開けたはずなのに・・・まさか!!
キルはある疑念を抱いてこの空間に仕込んでいたトラップを発動させようとしたが・・それすらも発動をしなかったのだ!
「・・・何したの?」
「あん?」
「何をしたんだい・・・空間を閉鎖させる呪文でも君達の所には存在でもするのかい?」
あ~・・・・うん分かったわ。
キルバーンの静かな怒りの声で発せられた言葉に、チウを含めて周りが何事かと注目をされたポップはとっても納得をした。ティファが言っていた策があるとはこれだったか。
ティファが、ハイ=エントの結界術、ジ=アザーズで空間閉鎖をしたのだろうと。
どうやらティファは、メドローアを何とかするよりも自身の能力が使えるかを確かめたかったようで・・・・魔法の発動はトベルーラが出来たから分かっていたが・・・ハイ=エント使えなかったら・・・ティファなら次善策もあんだろうとがっくりしたくなったが、メドローアを消した自分をヒュンケルが素早く腕をつかんで後ろに下がらせた。
「・・・・俺達の為にここまでしてくれたのだ、後は後ろにいてくれ。」
「今ベホイミかけるから手を・・・・治ってる?」
ヒュンケルがポップを後ろに下げたのは闘わなくていいと示す為ともう一つ、マァムに回復呪文をさせる為だったのだが・・手にある筈の凍傷と火傷がもう軽減されている事にマァムは驚くが、少年ポップはある事に思い至りポップに対して驚きの中に畏敬の念が生じた。
手が治っている・・・それも自前で、それはすなわち
「あんた・・・・賢者か?」
「俺・・・よせやい、俺は-賢き者-なんて大層なもんじゃねぇよ。ただ回復呪文ができるようになっただけだよ。ほれ、俺なんて見てねぇで前向けよ。敵さん相当に頭に来てるだろうし・・・・その辺俺達のせいだわ・・・わりぃ・・・」
まるで師匠がいるみたいだと・・・胸の奥からじんわりと何かがあふれて・・・生じた思いにポップは慌ててそこから目をそらすように前を向く。
確かに、痛罵されたキルバーンは兎も角、大魔王バーンもミストバーンの雰囲気が一変して・・・来る!
そう覚悟をしたのを・・
「大魔王バーン。最後に質問があります。」
・・・・・またあの女の子か!!
「ちょっと黙ってらんないのかよ!あんた命いらないのかよ!」
「ティファさん流石に今は不味いですよ!!」
「娘よ!流石に俺もそう思うぞ!!」
「・・・・黙っていられないのか小娘・・」
「本当に僕に惨殺されたいようだね・・」
ありとあらゆる方向からその発言やめてくれコールにもティファはめげずに、ティファは真面目な顔をバーンに向けている。
「・・・・聞くだけ聞こう・・」
・・・そこで答えると言わないところが大魔王と違うな~と思いながらもティファは気を取り直してきちんと問うた。
「ここにいる地上の勇者一行の子供達が闘うのは、魔王軍の侵攻絶対阻止なのは分かりますが、貴方は何の為に闘うのですか?」
「ほう?ティファよ、その問いに対する答えの対価として、其の方はいったい何を余に支払ってくれるというのだ?」
「おや、先程の返しですか。そうですね・・・・では一つ、そこにいるキルバーンがヴェルザーからの贈り物で実は-刺客-なのは知っていますよね。」
その言葉に、バーンとミストバーンは驚かなかったが、少年ポップ達は唖然とした。
バーンの名を冠した大幹部が!実はどこかの組織から送り込まれた刺客ですって何だそれはと・・・真っ当に育ってきた者には無理からぬ話だが
「それがどうした。」
あっけらかんとしているバーンの頭の中が絶対におかしいと思った者達は悪くなかろうがそれは兎も角
「彼の者の-動力炉-が頭部にありまして・・・・おっと!!」
ティファのその言葉の先を言わさんとばかりに襲い掛かるキルの攻撃をティファはやすやすと避けそして、振り上げられてきた大鎌が地面を抉った時、ティファはがら空きになったキルバーンの左脇を思いっきり蹴り飛ばしてバーン達とは反対方向の壁にたたきつけて、-拘束-をした。
「あ、続き言いますね。このキルバーンの動力炉は頭の部分にあって中身は-ハドラーの腹部に埋め込んでいたもの-がある筈です。
取り扱いのほどは御存じのようなので、どうにかすることをお勧めしますよ~。」
ーキルバーンーの色々を知っているはずのチウとポップはティファの発言に衝撃を受けた!
あの野郎、、ひいてはかつての人形だったあいつにもアレが、あの恐ろしいものが
俺のメドローア外れてよかったと、ポップは生唾を飲み込みながら外れたことを感謝する中、後でティファに色々問い詰めようと心に誓った。
そして情報を対価としたて受けたバーンの方は、ドレス姿で凄まじい事をしてのけた娘の言葉はそれ以上に衝撃的で、それは確かに対価となるものであったと納得をした。。
キルバーンの事は後でどうにでもできるのでそちらは後に回して答えてやろう。
「礼として答えよう。余が大戦に身を投じたのはあれよ。
今更と世界を煌々と輝かせているあの素晴らしき太陽が欲しいが為よ!
神々は我等魔族を、力強きモンスター達を地下の魔界に封じ込め!惰弱という理由だけで人間達を優遇し太陽の恵みを人間に与えた!
ならば余はこの地上を人間諸共消し去り!愚かなる失策を犯した天界を消し去り、太陽の光を魔界に届ける!」
そしてその後に、真に魔界の神となるのだと絶対的なる自信と覇気に溢れた言葉に・・故郷どころか地上を消されると言われた少年ポップ達は、内容の大きさに飲み込まれかけた!
こんな途方もない規模の・・・世界征服を掲げていた魔軍司令官ハドラーの言葉がちっぽけに感じてしまう程の言葉に動きも思考も止まりかけたその時、溜息と共にガリガリと何かを掻く音がしたのでそちらを見てみれば・・どこかうんざりとしたティファがいた!
・・原作通かと、うんざりとしたティファをであった。
「・・・・・一応聞きますが、今魔界は太陽の恵みの無さや、地上が蓋をしているせいで魔界が滅びに向かっているとかそれ系ですか?」
「ふむ?・・・魔界が滅びるなぞという絵空事を何故口にする?」
ティファの物凄いうんざりとした声音の言葉に、バーンは不思議そうな顔をしてきちんと答えた。
「魔界は無事で・・・・太陽の恵みが欲しい・・・・消される地上は堪ったものではないでしょう。人の命をなんだと思っているんですか?」
「ふふ、おかしなことを言う娘ぞ。ここは其方のいた世界ではないというのに-虫けら-如きの命を何故心配する?」
・・・なんだと?
「人間なぞ最低だぞ竜の子よ。奴らは自分達を守る存在であっても自分達とは違いすぎる強き者を怖れ排除し疎んでやがては集団で排除しようとするものぞ。
-そこにいるダイ-が、身をもってその事を知っているのだ、のぅダイよ、人間は最早其方の中では守るに値せぬであろう?」
今の今まで放っておいた幼き勇者に、バーンは優しいとも思える声音で話しかけられたダイの体はびくりと動き・・・泣きそうになっているのに満足をしたバーンは、取引を持ち掛けた。
「其方はそれ故に余に刃を向けていない。ここにいる者達を消しても、其方だけは残しても良いと思うのだがどう・・・」
「ちなみになんですが、地上を消すにあたって魔界全土の民達はその事を知っていますか?それについての対応も万全なのですか?」
「・・・なに?」
「地上を消す算段の方法は当然-私達-は知っています。その方法も、実行された時地上の砕かれた欠片が魔界に降り注ぐであろうことも・・・あぁ、安心してください。それは計測から導き出された事であって実際はきちんと防いでいるので大丈夫ですが、こちらではその辺どうなっているのですか?」
折角自分が竜の子の変わり種を手元で飼ってやるという提案を邪魔したティファに、バーンはつまらなさそうにおざなりに返答をした。
「馬鹿馬鹿しい、地上の欠片すら避けられぬ弱き者を何故、余がいちいち気に掛ける必要がある。魔界全土に通達をするなどと戯言を。」
そんな事をすれば自分の目論見が天界に漏れてしまえば、薬どころかなりふり構わずもっと強力な手を打ってこられて阻止されては堪ったものではない。
そもそもが、魔界は強き者が全てであり、弱者を気にする必要が無いという言葉は
「お前・・・・お前は王なんだろう!!大魔王なんだろう!!??」
先程のポップの様に、少年ポップ達が火を噴いた。
自分達の住まう地上を消すだけでも許せないのに!自分の民すらも顧みないこいつが・・こんな醜悪な奴が存在していていいわけがねぇ!!!
少年ポップが、マァムが、ヒュンケルが、クロコダインが叫びあげるのを一頻り聞いたティファの心は定まり、闘気を乗せて手を一度叩いて静寂の場を生んだ。
その音は、少年ポップ達はもとより、聴覚が優れたバーン達の鼓膜が破けかける程であったが、ティファは構わずに結論を出した。
「つまり、貴方は弱い者差別をする-最低野郎-という事ですね。」
その言葉に、バーンの片目がピクリと動き、ミストバーンの怒気が上がっても無視をした。
「人間が最低ですか。私からすれば・・・・一つ経験談をしましょう。私は小さい頃から地上を旅するように回るのが好きで、その時には様々な-種族-に出会いました。
当然良い人もいれば、最悪な出会いもありまして・・・六歳の頃に持ち歩いていた傷薬で傷だらけだったはぐれ魔族を助けたら、背中に硫酸を浴びせられました。」
「・・・・硫酸を?」
「はい、私が人間の子供とみて、襲われた鬱憤晴らしをしたようです。私を見て憎々し気に人間風情が触れるなと言っていましたから・・・あれを治すの苦労しましたよ。七歳の時にはリンガイア周辺で仲良くなったモンスターが洞窟案内しくれるというのでついて行ってみればドラゴンが居まして、驚いていたら案内してくれたモンスターに背中を押されて危うく食われかけました。どうやらあの辺一体のボスに、貢物として私をだまそうとしたわけ死でして。十歳の時には見目がそこそこいいようなので、親切に泊めてくれた老婆さんに一服盛られて奴隷商人に売られかけましたよ。」
どれも寸前で逃げましたけれどもねと・・・本人はあっけらかんとして言っているが、凄まじい生い立ち知った少年ポップ達はもとより、その類の事があったのを知りながらも詳細は知らなかったポップとチウも愕然とする中
「・・・・其方何故世界を恨まずに魔王軍と戦い地上を守らんとした?」
当然生じる疑問をバーンがしたのを、ティファは笑って答えた。
「どの種族にも良い人悪い人がいるのは当然でしょう。私を子供だからと馬鹿にしないで、体の為になる栄養学という貴重な百ゴールドもする本を一ゴールドで売ってくれた港町のおじさんがいました。
助けてくれたお礼だと、身に着けていた最後の宝石をくれようとした半魔の人がいました。
一緒にご飯を食べて笑うモンスターも精霊も人も魔族も沢山沢山いてくれる世界のたった一部分だけを見て・・・私は世界を憎めなかったのですよ・・・昔も今もこれからも・・」
「それを、この世界でもすると?異界であるこの世界であってもか?」
危険だ・・・この娘は危険だと、バーンの中で警鐘が鳴り響く中言葉は続き、バーンは確信したことを敢えてティファに問う。
短い言葉ではあったが、その意図はティファには伝わった。
「仕方がないでは無いですか、私の中の天秤はすでに傾く方を決めたのですから。」
謎かけのような問いに返された謎の言葉に、バーンの表情は険しさを帯びら中、少女は笑う。
「どうやらこの世界の地上の勇者達は良い子のようですが・・・どうしますか?
そこで蹲り、大魔王の言葉にも憤慨をしない-情けない勇者-を置いて行きませんか?」
「なん・・だと?」
「ポップさん、貴方が決めてくださいな。戦わない勇者を・・・」
「・・・・加減にしろ・・・」
「ん?」
「あんたが作ってくれた薬のおかげで確かに助かったさ!!そしてとんでもなく酷い目にあって来たのは分かったがな!!ダイの事をとやかく言うんじゃねぇよ馬鹿野郎!!!!!」
切れた・・・もう知るか!!恩?被害者だろうがなんだろうが!!戦わない情けない?ダイの・・・こいつがダイの何を知ってるってんだよ!!
「こいつがどれ程今まで・・・いままでどんな・・・」
「・・・・ポップ?」
言ってやりたい事は沢山あるのに・・・言葉にできないで、それでも、-弟分-を馬鹿にする奴が許せなくて涙を流すポップを、ダイは初めて顔を上げてポップを見た・・・どうしてポップが泣くのかがわからなくて・・・
「ふむふむ・・・どうやらダイ君とポップさんはお話合いをきちんとした方が良いようですね・・・少し静かなところに場所を移しましょう。ポップ兄!-陣-出します」
「ちょ・・・ふざけてんのかよティファ!!あれは・・・」
「大丈夫です。」
今の魔法使いの言葉と、それに伴う様に武闘家と戦士達が自分の発言に怒りを見せている。
戦いを放棄している勇者を、それでも大切な仲間だと言外に知らしめて。
ならば答えは決まったと、兄ポップに-移動手段-を通達すれば怒られたが大丈夫である!
「あれきちんと改良したから、-私-も行けるから。」
「・・・嘘じゃぁ・・」
「信じて。」
「・・・分かった・・」
「・・・・どこに行こうって言うのさ・・逃がすわけないでしょう。」
「おやおや。」
-陣-を構築するために、ジ=アザーズを解いた瞬間キルバーンが襲う。
こいつの首だけでもと、狙ったところをまたもや邪魔が入った!
「キルバーン!!」
ヒュンケルが槍を繰り出し、大鎌を跳ねのける。
この少女の先ほどの言葉は自分達を試し、そして-自分達-を選んでくれたのだと確信をした。
静かな場所に、この少女達も行くと言ったのだから。
「助かりますヒュンケルさん!勇者一行の方達に要請します!一分持ってくださればそれで結構!!倒さなくても負けないで防いでくだされば・・・」
「メッラゾーマ!!!」
ゴオオオウ!!!!
「ティファ!口上いいからさっさとしろ!おいポップ!お前はそこにいてダイとバラン守ってろ!チウも動くなよ!!クロコダインのおっさんとマァムはタッグ組んでミストバーンの攻撃防いでてくれ・・・・つう訳で俺と遊んでくれよ別世界の大魔王さんよ!!!」
往年ともいえる程でもないが、そこには確かに、歴戦を潜り抜けてきた勇者一行の魔法使いが勇者一行と魔王軍との間に立ちふさがり、妹に迫りかけたミストバーンの前に炎の壁を出現させて退けながら、先程の様に不敵な笑みを浮かべて的確に指示を飛ばしている。
それは、少年ポップにとっては初めての事で・・・隣居るダイを見れば、ダイもぽかんとしている・・・・戦わない自分を守れという者が信じられないとばかりに・・
その間にも、キルバーンとヒュンケルの戦いは続き、ミストバーンも両の手甲を双剣にして待ち構えるマァムとクロコダインに闘気の糸を放つが、初見ではないマァムは持ち前の怪力と技で床を砕いて瓦礫で防ぎ、それを目くらましとしてクロコダインが打って出る。
当然捕縛用の技をミストバーンが出そうとしたが、マァムの拳が光り輝き咄嗟に回避をする・・・ダメージを怖れたのではない、まだ衣の中身を知られるような攻撃を受ける訳にいかな。
そしてポップとバーンが睨みあう中、それは聞こえた
「繋がりし道よ!此方と彼方道を繋げ!!契約の名の下にティファが命じる!!」
矢張り・・・ラック=バイ=ラックであるとポップは苦い顔をする。
其の表情にバーンは疑念がわく。どうやら自分の結界を超える自信があるよだが・・しかしそれが何であっても・・・
ゴォウ!!
「カイザーフェニックス!!」
「それ知ってんだよ!メドローア!!」
ティファの術を止めるべく、バーンは躊躇わずにカイザーフェニックスをポップに放ったが、ポップはコスパが低いメラとヒャドで小範囲限定のメドローアを作り出し、過たずカイザーフェニックスをだけを消滅させ、それのとどまらずにバーンの懐に入りイオラをゼロ距離で放ったのを、バーンは諸に受けてしまった。
「バーン様!!」
「へ・・・油断大敵ってな・・・おっと!」
「貴様許さん!!」
「ここのミストバーンも忠誠心が高いな!!」
油断はしてはいなかった・・・しかし自分の自慢の技を瞬時打ち破られ驚愕した瞬間を見すませて食らった一撃に、ミストバーンはすぐに駆け付けポップとバーンの間に割って入る中、最後の詠唱が-終わりの始まり-の道を繋いだ。
「ミーディア=ラック=バイ=ラック!!!!」
最期の詠唱は・・・今までとは違うと思いながらもポップは最後まで油断をせずに魔王軍の主従に目を向ける。
何かを言っているが、最早相手の声が聞こえないのは-移動-が始まっているようで、周りを見回せば幼い自分と仲間達が驚いている。
そして・・・・確かにティファの体も透けている・・・こんどこそ、緑の陣を通って一緒に行くんだと安堵しながら、ポップは唇を動かした
またな
その唇の動きにキルバーンが怒り狂ったように大鎌をポップに振り下ろしたが通り抜けたのを愕然とした顔を見たのを最後に、ポップの意識が少しだけ薄れてゆく。
・・・この移動は本当に嫌いだ・・・
静寂が、瓦礫だらけのパレスの玉座の間に落ちる。
居たはずの勇者一行とバランと異界の者達はおらず、-鳥-がいた。
鳥を好むバーンは、その鳥を忌々し気に見つめてそして・・・カイザーフェニックスを放ち消し炭にした。
誰がどう見ても、癇癪だと分かるさまで
しかしミストバーンと、そして普段は主のそういう行動を笑うキルバーンすらもが、灰になった鳥であったものを同じくらいに憎らしげに見ていた。
鳥の色は青
それはあの少女が来ていたドレスの色をほんの少し濃くした青は・・地上界においては幸運のシンボルとされたおとぎ話があるのを知っているから。
あの少女は-誰-の幸運を祈ったか、それを思うだけで八つ裂きにしてもなお飽き足らないとばかりに憎悪がわく。
異界から投げられた小石の波紋が、世界中にさざ波を起こした瞬間であった
今宵ここまで