異界から成長して大人の姿になっていたポップと、大ネズミモンスターの癖にいやに礼儀正しい品位を感じさせるチウと・・・・・そして異界の竜の騎士の双子の妹と言ったあの忌々しい小娘ことティファという輩のせいで、ハドラーに仕込まれていた黒の核晶でバランを葬り去り、以って勇者ダイの心をも粉々に砕き勇者一行を一網打尽にし得る機会を食い破られた大魔王バーンの右腕たるミストバーンは苛立ちを募らせている。
その様を大魔王の手によって-骨抜き-にされたキルバーンが宥めている。
「そうカリカリしないでよミスト。あの忌々しい奴らは絶対に僕の手で嬲り殺しにしてあげるからさ~。」
「・・・・キル・・・お前は反省やめげるという言葉を知らないのか?」
「ん!ふっふっふ・・・だってバーン様は最初っから僕のこの姿が-人形-だって知ってたし、君だって僕のこの体の事を知っていても態度変わってないじゃないか~。」
そう、大魔王は初手からピロロと人形の事を看破していたが興味が無かったので放っておいたが、異界のティファの情報でまさか人形の頭部に黒の核晶が仕込まれていたことまでは見抜けず、勇者達がどういった方法かはわからないが絶対にあの忌々しい小娘が逃がしたのだろうとバーンもティファを八つ裂きにして殺してやりたいと殺意を持ったが、本人は目の前にいないので仕方なく目の前の最重要案件から取り掛かった。
即ち-キルバーン-に搭載されている黒の核晶の無力化である。
あれの内部中央に起動させる呪法が彫られており、その呪法を発動させるか衝撃によって核晶の中にある圧縮された膨大な魔力を秘めた黒水晶が暴発しない限り滅多な事では自然爆発はない・・・滅多にという言葉があるのがつらい所だがそれは兎も角、バーンはさっさとキルバーンを拘束し、普段外さない死神の笑いの面を躊躇いなく取り去り見た物に対して溜息をつく。
「・・・・忌々しい娘の言う通りか・・」
「見つかってしまいましたか~。どうしますかバーン様、今から僕をヴェルザー様の下に送り返して黒の核晶を発動させて諸共にしますか~。」
こんな状況であるにも関わらず、-キルバーン-は悠々と嘯いている。
まるで初対面で出会った時と同じ、礼儀知らずで図々しい無礼者でありながら、どこか憎めないところがある道化そのもので
「死神としての仕事を与える、忌々しい娘達を刈り取ってこい。
わざわざ余が手を下さずとも失敗した時はお前は壊されよう、それがあの異界の忌々しい者達の手か、この世界の者達の誰かによっては知らぬがな。」
「成功した時は?」
「物騒な死神を飼うのも一興・・・・今更変わりない事だ。」
「ふふ、さすがは魔界の神、器の大きい事で。」
-バーンを殺せ-と名乗った死神に対して言った言葉を、バーンは今更覆すつもりはない。
長い寿命の中、刺激を与えてくれる玩具を放り出されるほどの齟齬を感じないせいかもしれない。
常々自分の隙を虎視眈々と狙っているヴェルザーの刺客だと、端から知っていたのだから黒の核晶を無力化させればいい。
命令を下した後バーンは、黒水晶の中にある魔力を取り出しそしてそれをパレスの動力炉の燃料にするようにミストバーンに命じ、後は興味が失せたかのようにキルバーンを解放した後は見向きもせずにキルバーンとミストバーンに出ていくように命じた。
今後の計画の立案を、今までと同じく静寂のなか一人で練り上げるべく。
参謀と表させているがミストバーンは自分の肉体を預かる者にすぎず、自分の手元に置いておいても疑念を抱かせない隠れ蓑として参謀を名乗らせているが、これまでの戦術は兎も角大まかな戦略や指針は自分一人で考えていた。それこそ大戦の構想を持ってから数千年間ずっとだ。
一人になったバーンは玉座にもたれかかるように座り、見るともなしに視線を宙にさまよわせ沈思する。
この後考えていた計画はきっとあのティファという忌々しい娘は知っている・・・あの兄だと言ったポップも、異界のとは言えども魔王軍を-打ち破っている-のだからその計画を知っているのだろう。
知性と理性とそして胆力があり、修羅場をくぐって来たもの特有の強者の匂いをあの青年魔法使いから感じた。
あれは軽視してよい者ではないと・・・・ここで一つ疑問がわく・・あの忌々しい娘からは-強者特有の強さの匂い-を感じられなかった。
しかしバーンの長い年月を戦場で過ごした勘が、一番あの娘を警戒していた。
自分の中の勘を信じてきたバーンは、最初の計画を日延べさせ代わりの事を命じられたミストバーンは、自分の分身たるシャドーに実行させた。
それはティファ達がバーンの手の中からすり抜けた一時間という短い時間の間で起こった事であり、ミストバーンは直ぐに主の命じられたことを完遂したという報告をできるのもだと信じていただけに・・・・シャドーからの報告が信じられなかった。
「ミストバーン様、勇者一行の武闘家マァムの住まうネイル村には母親レイラと思しき者の姿はなく、のみならず村人たちも忽然と姿を消していました!」
「報告!大魔導士マトリフが隠れ住んでいたバルジの大渦近くの海岸に彼の者はおらず-これ-が!!」
「またダイの剣を作ったと目されるロン・ベルクの住処ににも人気はなく・・・矢張り-これ-が・・・」
「・・・・その・・ダイのデルムリン島も鬼面導師はおろか!モンスター一匹もおらずにこれが!!」
・・・・おのれ・・・・おのれ!!!!
「・・・・またあの忌々しい小娘さんの仕業か・・・なんなのあの子?疫病神か何かなのかい?」
主に今まで通りにしていろというお墨付きの下、自分に対してもいつも通りの対応をしてくれる親友ミストバーンを怒らせているティファの事を、奇しくもキルバーンは疫病神と評したが・・・・異界の元祖・疫病神が知った日には大惨事待ったなしを知らぬが何とやら・・・・チウだけに飽き足らずティファまで穢した輩は地獄に行けが合言葉であろうがそれは兎も角、バーンがミストバーンに命じた事は勇者一行のマァムの母親レイラを人質とし、更にこのほど判明した魔界の名工ロン・ベルクの捕縛であった。
レイラは当然逃げた一行をあぶりだす為の人質であり、ロン・ベルクは・・・・あいつは絶対に膾切りにしてやると私怨も・・・私怨しかない理由でミストバーンは張り切った。
その様子に普段であれば親友が面白い事になっていると茶化すキルバーンが苦笑するほどにミストバーンの黒い笑みは凄かった。
そしてもう一手として、バルジ島でダイ達を助けた者は誰かを探っていたミストバーンの配下達が掴んだ大魔導士マトリフの隠棲先がバルジ島の目の前にある海岸付近だと知り。魔法使いポップの急激なレベルアップに絶対に関わっているだろうと推論をしたバーンはマトリフも捕縛するように命じてミストバーンが配下達を向かわせてみれば・・・全てからであった・・・文字通り探り当てたところにはマトリフとロン・ベルクはおらず・・ネイル村はレイラがいないどころか一村民丸々いなくなっているとはどういう事だ!
仮にあの忌々しい小娘がレイラ達の事に気が付き保護したとしても、一村民丸ごと連れ出せるだけのことが出来るとはミストバーンは到底思えなかった。
例えばこれがこの世界の者で地上の人間からの信頼の厚い人間が、自分達の存在と目論みを明るみに出し、レイラを保護しても村人たちも質になる危険性があると説けば村人達は動く可能性がある。
大戦時とは言え故郷を離れるのはこの世界では余程のことが無ければあり得ず、信頼が全くないあの忌々しい小娘が勇者一行のマァムを使って説得したとしても鮮やかすぎる!
まるで老成された知者が関わっている不気味さに心をざわつかせたミストバーンは、あるものを配下達から受け取り・・・・完全に切れた。
それは置手紙であり、向かった先全てにそれは置かれていた。
マトリフのいた洞窟の中のテーブルの上に、ロン・ベルクのいた小屋のテーブルの上に、そしいてネイル村にはわざわざ村の中央にテーブルが置かれその上に石の重しまでご丁寧についていた。
内容を見たミストバーンは・・・・瞬時に置手紙を引き裂こうとして・・・止めた
その内容は
-少し振りですね、これを読んでいる魔王軍の方にご挨拶を申し上げます。
さて貴君がこの手紙を読んでいるという事はここにおられた方を人質にでも取る積もりでしたでしょうがお疲れ様です。
ここにおられた方は私どもの方で保護させていただきました。
この手紙を読むという事は、私の考えた通りの見え透いた手を使ったという事でしょうね~。
ご苦労様と慰労を述べさせていただきます。
お分かりかと存知ますが、私は魔王軍がどのような方法で地上を消滅させようとしているのかを知っておりそして止めています。
魔の六芒星の描かれる場所のも未だにきちんと覚えています。
もしもそちらが同じ手段に出るのであれば、私達には止める手立てがきちんとあります。
そして-私ティファ-は、貴方達がいるバーンパレスが超超高度にいるのかを把握しています。
もしも魔の六芒星を描くために-柱-を落としに行こうとすればすぐさま進路から場所を特定し、そこに住まう住民を逃がした後に-柱の中の黒の核晶-を、私の陣で飛ばします。
今いるのはどこの大陸でもない大海原の辺りでしょう。進路を見れば、直ぐに行き先が分かりますので、無駄な事はやめる事をお勧めします。
他界の勇者一行の料理人ティファより-
知っている・・・知っていた・・・・知られていた!!
此方の取りうるべき手段を!魔の六芒星の事を!!そして・・・どうやってこの空飛ぶバーンパレスの位置を知れるというのだ・・・
あまりの忌々しい内容にティファからの手紙を破りかけたミストバーンは、得体の知れなさすぎるティファに怖気が奔り、すぐさま主の下にリリルーラで向かったのを見送ったキルバーンは、他の所に置かれていた手紙を読んでみれば内容は全て一緒であった。
「どう思うかねピロロ、全てあの忌々しい小娘さんの考え付いた事だと思うかい?」
「分からない・・・けれども・・・やる事に変わりはない・調べるのは-僕等-の仕事じゃない。
獲物を見つけて狩り取るのが-僕等-の仕事だ。」
「そうだね、可愛い親友を虚仮にした奴を始末するもの僕らの役目だ・・・早く見つけないと。」
人形であるはずの物体に話しかけられたピロロは、-キルバーン-に向けて返事をして会話までした。
知っていると思っている者が見れば、人形遊びの延長の如く映るだろうが違うのである。
このキルバーンにも、他界のキルの様に自分で思考し動けるように疑似自律回路が埋め込まれてそれが育った結果、人格とも呼べそうな物が、このキルバーンにも確かにありそれをしてミストバーンとの友愛にいたったのだ。
完全な人形ではないとミストバーンは断じ、それ故にミストバーンはキルバーンに対しての態度を変えなかったのだが、だからこそ厄介ともいえる。
暗躍するのが好きなピロロと、残虐な行為で敵を屠るのが好きなキルバーンはまさに二人で一人の死神と言えよう。
その死神は怒っている、親友をここまで虚仮にした輩に対して・・・
「へ・・・・へっくしょん!!・・・・誰か私の噂をしていますかね。」
「大丈夫っすかアバン先生・・」
「ノープロブレムですよポップ・・・・それよりも-ポップさん-、そちらのティファさん大丈夫ですか?」
「・・・・大丈夫に見えたら本物の眼鏡をかける事をお勧めしますよ-アバンさん-・・あんな手紙をティファに書かせて・・」
「う・・・うぅ・・・あんなひどいお手紙書いちゃった・・・大戦時だってあんな煽り文句の手紙を魔王軍に送った事ないのに・・・」
「ノンノン、敵の手を制するにはあれくらいの事をしてはじめて相手に衝撃を与えて計画を一時的にでも頓挫させられるのですよ?
貴女はその辺が甘そうですねティファさん・・・」
「力が足りなかったからって死にかけていたアバン先生がそれ言うんだ・・・」
「う・・・ダイ・・」
「お姉ちゃんいじめないでよ、後五月蠅い・・・」
「ダイ・・・」
「ダイ君・・・」
魔王軍の参謀がティファのお手紙で切れているその頃、カールにある隠し砦で真っ黒い大勇者は敵との丁々発止の策謀のやり取りを他界の料理人と言っているティファにレクチャーすれば、あの時点ではまだまだ弱いと言える部類の魔軍司令ハドラー相手に死んだふりしていた先生が偉そう言うなというダイの一言に、当人と周りは秒殺された。
そのダイは、-ポップさん-の懐にべったりとしている。
・・・・・何がどうしてこうなったのだろうと、気絶から復活を果たしたフローラは頭を痛めるのを、横でこの砦の良心とも言えそうなリンガイアの将軍・バウスンとベンガーナの戦車隊長・アキームと、そしてレオナ姫が慰めている。
今この砦の大広間にはあり得ない光景が繰り広げられている。
マァムの母親レイラは、大戦時アバンに置いてけぼりを食らったロカが、アバンがハドラー諸共に凍れる時の秘宝という天文を使った大呪文で封印されてしまった事を報告しに戻って来た時にロカに俺の妻ですと紹介をされたのだ。
あの時の胸の痛みはよく覚えている。愛した男がその身と引き換えに魔王を封印し、世界に平和が訪れても喜べることではなかったから・・・しかしロカが力強く言った言葉に希望を持てもした。
「今俺達に力を貸してくれてる大魔導士マトリフ様が、封印を解く手立てと魔王ハドラーだけを始末する方法を探しています。」
決してアバンを諦めないロカの言葉に、どれ程力づけられたか・・・その男もハドラーとの決戦時の傷が下で大戦終結数年後に逝ってしまい、悔やみの言葉と長年の功績を讃えてカール騎士団長に贈る勲章とそれなりの額の見舞金を贈れば、礼儀正しい手紙と共にお金だけは返されて来た。
それはこれまで多くの薬草類をロカの為に贈っていた事対するお礼から始まり、勲章はロカのいた寝室にずっと飾る事が書かれていた。
そして、これまで多くの支援を戴いた上にお金までもらってはきっとロカに怒鳴られてしまうという趣旨の内容が礼儀正しく書き連なり、気持ちだけ受け取る事を許してほしいとまで書かれていた手紙は、カールの城の自室の文机に入れてある。
レイラの優しさがしのばれる温かい手紙は、慣れぬ執務に励む若き女王の支えとなってくれたのだから。
そのレイラはマトリフの手を取り娘と思しき武闘家マァムと話をしている。
そしてその横には、魔法使いポップが親父・お袋と呼んでいる庶民の夫婦が魔族と共に話をしている。
今は傷が癒えずにこの砦のベットで眠っているチウの傍らにはブロキーナ老師様がいる。
そして異界とやから来たポップの懐にダイがおり、其の両隣にチウと、料理人という可笑しな職業を名乗ったティファという少女の横に・・・・死んだはずのアバンがいる・・・何がどうしたらこうなるのかと・・・・その死んだはずの男アバンからは、ダイの祖父になる鬼面導師ブラスとデルムリン島にいたモンスター達は全て-モンスター筒-に入れて保護しているのでそちらも大丈夫ですと言われて・・・・モンスター筒は一つでも高価でありそもそもが入手困難な物を!どうしたら鬼面導師は兎も角島に数百はいるというモンスター達を入れる筒があったというのだ・・・・もう・・・誰かこの状況を一から説明して欲しいとフローラとカール騎士団一同と、サババ砦でお留守番をしていた一同が泣いたのはきっと悪くない・・・・そして異界の料理人ティファも思う・・・・
腹黒先代勇者なんて放っておけばよかったと涙を滂沱の如く流しながら後悔した・・・・
あの時-ポップ-の放った極大消滅呪文当っていればよかったのにと・・・・
今宵ここまで・・・・
敵どころか味方もカオスに叩き込んだのはこの世界でも真っ黒な先代勇者様でした!
次回は保護者一同全員集合時の内訳話となりますm(__)m