勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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小石の投げられた世界:料理人の真価・前編

カール王国女王フローラが率いるカール騎士団達は、大戦始まりの時一度は魔王軍の猛攻を防ぎ切ったが、ドラゴン達が率いられてきた超竜軍団を前にして壊滅の憂き目にあった。

それは国を街を蹂躙されたが、国民達は一度目の敵の襲来でモンスター達の比較的少ないベンガーナとの国境付近にある緊急避難場所の山間都市に逃がしてあったので人的被害はそこまでは出なかった。

しかしそれはあくまでも-民間人-の話であり、首都防衛と避難民達を逃がすために数多の騎士・兵士達が命を落としている。

故に、勇者ダイの父親とは言えカール王国を壊滅し、氷の勇者ノヴァの故郷リンガイアはそれ以上の被害を以て国を丸ごと蹂躙され、未だに国王の行方がしれないと言う最悪の状態である現状を作り出したバランを、憎んでも余りあるのもは大勢いる。

魔王軍を殲滅させるのは無論の事、ドラゴンを率いた長の行方も彼等は同時に探しているそんな中で、実は生存していたかつての同僚にして故郷が生み出した大勇者の号令の下全員、それこそと隠し砦にいる者達を広間では手狭になったために全員が入れる大広間での会議が開かれた。

 

会議の内容には砦にいた騎士達全員が納得をした。

勇者達は一度敵の首魁・大魔王バーンに敗れ去り再起を図るために、今後この世界を守る為に、これまでのように勇者一行だけに闘わせるのではなく世界中の闘える有志達に合わせ今こそ我等カール騎士団も打って出ると言うのだと彼等は認識をし、士気を大いに上げながら会議場に指定された大広間にいたのは・・・年若い一行は、話に聞いた勇者一行だと分かるのだが・・・・その近くにいるどう見ても民間人の夫婦にしか見えないものが何故戦いを談じる会議の場にいるのだと、多かれ少なかれ疑問を持った。

 

その疑問を持ったのは何も呼ばれたカール騎士団だけではない。

サババ砦で勇者達を決戦後に送り出された後無事を祈っていたベンカーナ戦車隊長アキームと、リンガイア将軍バウスン、そしてその息子であり北方の勇者ノヴァも同様であった。

この世界のノヴァは、自身が首都を空けている間に故郷が壊滅しのみならず守るべき主君を行方知れずにしてしまったという心の傷を負い、様々な事で心が少々ねじ曲がって勇者ダイ達の一行に、改心したとはいえど魔王軍がいることが許せず、そんな彼等を許したダイ達の甘さに唾棄すべきだと断じて敵対心を露わにしたが、死の大地に来るものを選別する篩の場において、ハドラー親衛騎団を一度は押しているように見えたがボロボロになるほどの負けを味あわされ、それまでは自分がいれば故郷が守れた、皆を守れていたのだと言う強烈な自負心は幻であったと思い知らされた。

仮にあの日あの場にいたとしても、自分も故郷を守って死んでいった騎士・兵士たちの躯の仲間入りをしていただけなのだと。

甘かった、自分の実力などでは魔王軍の団長どころか魔軍司令官ハドラーの駒達にすら勝てない自分はいっそ死んでしまった方がいいとさえ思ったのを、一行の武闘家マァムに叱り飛ばされた。

 

貴方はまだ生きている、生きているなら立ち上がって歩き出せと・・・それができないなら自分が担いでやると・・・・少女のマァムにそこまで言われては立つ瀬がなかった・・歩かなければならないと知らしめられた。

自分は今確かに生きている・・・・死んでしまった者達の想いを抱えて・・・生きて魔王軍に立ち向かっていくのだと折れた心に抱いた光のお陰でノヴァはまた再び立ち上がれた。

 

彼等は強い、このままもしかしたら大魔王達すらも倒せるのではという希望は、勇者達が砦に来た時に見た雰囲気でそれは潰えたのがすぐに分かった。

弱ったようにロープの男に包まれるように抱き上げられボロボロになっている勇者ダイ、下を向き悔しそうにしているポップと申し訳なさそうしているマァムとヒュンケルとクロコダイン・・・彼等は負けたのだと出迎えた者達は直ぐに知った。

だがノヴァはくじけなかった。

マァムの言う通りであれば生きている限り立ち上って歩くだろうと思っていた。

そして今度こそ自分も彼等と共に戦場で助け合えるほどの強さを短期間で身に付けなければならない。

幸い彼等の師であり先の大戦を地上の勝利で収めた大勇者の復活は渡りに船、自分もダイ達と共に彼に支持を得て今度こを勝つのだと。

其の為の会議をする場に・・・・一般人がいるのは何故なのか?

彼等がここに来た経緯は知っている。

勇者達を丸ごと逃がした魔王軍が、大規模な人質作戦を展開する恐れがあるので早急に保護した事は伝えられていたから。

問題は、何故マァムの母親レイラとポップの両親までもが・・・そしてダイは何故ロープの男に抱えられたままなのか?

そのダイの行動を一行の誰も見咎めないどころか気遣う様に見ている。

何故なのか分からず、彼等、特にダイに近しい関係を持つレオナ姫を見てみれば、姫もまた何が起きているのか分からずに混乱した表情を浮かべている。

一体これから何が起きるのか、砦にいる全員を集めて欲しい、見張りはしなくともよいと言うアバンの指示の下、見張りの兵士達までもが一堂に会した時、フローラから会議の始まりを告げられたが

 

「ちょっと待ってもらおうか女王陛下。」

 

・・・待ったの声が入った。

その声の主は魔法使いポップの父ジャンクからであった。

 

「なんで戦いの中で足手纏いにしかならねぇ俺とスティーヌがこの場にいるんだ?何の役にも立たないどころか騎士や兵士達が混乱している。

俺達は息子たちの足引っ張んねぇ為にこの砦に来ることになったが、この場にいるのは場違いもいい所だろう。

俺達は他の部屋できちんと待つ、ウロチョロする子供でもないんだからな。」

 

かつて城の工房で働いていた時、自分の弟子のような年下の同僚に難癖をつけていた大臣を殴り飛ばして逐電した男はその性質は健在であり、己の考えを誰に対しても堂々と言い放つ。

その内容には筋が通っており、その場の・・・・一部を除いて大半の者達が支持した。

彼の言い分は正しく、闘わせるつもりがない民草の彼等を保護こそすれこのような会議の場にいるのは違うのではないかと・・・・真っ当な意見は蹴り飛ばされた。

 

「それは困ります。」

 

その声は・・・それこそこの場に、戦いを論じる会議の場には全く相応しくないドレスを着た少女によって再度の待ったがかけられた。

 

「魔法使いポップさんの父ジャンクさんと母スティーヌさん、そして武闘家マァムさんの母レイラさんにも是非とも聞いてきたいただかなければなりません。」

 

その少女は満座の視線を一身にあびても怖じ気づく事はなく、微笑みさえ浮かべていた。

何故ならば彼女はなれているから。

 

「事はこの地上界消滅が掛かっている事です。それを打ち破るには敵の首魁・大魔王バーンとその側近達を倒さねば地上界は明日の日の出を拝むことは金輪際叶いません!」

 

苛烈なる言葉を用いて現実を直視させ

 

「そしてその力は何も闘う者だけの力があればいいと言うものではありません!勇者一行の心は疲れ果てているのです。たった数ヶ月のことなれど、彼等を助けてくれる-手-はあまりにも少なく、ほぼ子供の多い彼等だけで戦い抜いてきたのだと言っても過言ではなく状況が続いたのだから無理からぬことだと推察をします。

そんな彼等の心を放ってまた戦えと言うだけでは不足でしょう!!」

 

誰に対しても持論を力強く述べるその姿は

 

「なればこそ、この世界とは異なる世界より、この世界の竜の騎士を生み出しておられたま聖母竜・マザードラゴンよって呼び出された他界の勇者ダイの妹であるティファが、この度の会議の場において魔法使いポップの両親と武闘家マァムの母君に、いま世界がどのような状況にあるのか、その中において彼等がどれ程その身を心を削って世界を守って来たのかを知ってもらわねば、彼等の心に寄り添う事は叶わぬ事かと。」

 

かつてパプニカ王国において開かれた世界会議の場において、様々な発言をした-料理人のティファ-の姿がそこにはあった。

 

その内容に、様々な驚愕の念が飛び交った。

圧倒的に多いのは地上の消滅とそして、異なる世界から連れてこられたとはどういう事か、様々な者達のその質問に、ティファはにっこりと笑って宣った。

 

「それは全てこちらにおられるアバンさんに話したので、順を追って説明してもらいますのでご安心を。」

 

その辺は現地の御方に丸投げである・・・・・いきなり会議の場を沸騰させ、そして丸投げしてくるティファに、先程嫌がる手紙を書かせたことへの意趣返しだろうかと疑念がわいたのは・・・悪くないだろうと思いつつ、アバンはティファから聞いた事と、それによって起こしたこれまでの一切の流れを順を追って話した。

 

それは神話かおとぎ話にでも聞かされているような奇妙な話であり、そこにいる者達は勇者一行のみならず、こうした抵抗勢力達を根こそぎにする為の魔王軍の罠ではないかという言葉に、それまでダイを抱えて黙っていたローブの者がダイを降ろして立ち上がり瞬間に吠え上げた。

 

「あんた達の立場だったらその疑念ももっともだと言ってやるんだがな・・俺達からすればくだらない事言って時間潰すなって俺はな思う訳よ・・・俺はな・・今日結婚式を挙げてたんだよ!!

魔王軍の野望を砕いて平和になった世界でさぁ好きな女の子と添い遂げようって誓い立ててお披露目を終えて二次会終わりゃぁ初夜だったんだのを!!まったく関係もないこの世界を救って欲しいって我儘の為に全部ふいにしたんだよ!!!!」

 

・・・・臆面もない事を火を噴くほどの怒声で張り上げる気配は確かに魔法使いポップだと・・戦う彼を知るノヴァとアキームは本能的に納得をした。ポップは普段は自意識が低く、一行を盛り上げるお調子者だが、一度戦いになればその眼差しは鋭くなり、そして火を吹くが如くであるのを知っているから。

そして納得できないものは、アバンの理路整然とした説明でいったんは引くことにした。

アバン曰く、異界は確かに存在し、時折こちらの世界に迷い込むものがいる事も文献や古文書にきちんと記されている。

そしてこのような事をせずとも勇者一行に勝利を収めた魔王軍は地上を消滅させる術があり、その前ではここにいる抵抗勢力とても蟷螂の斧であるのだと厳しい言葉で正しい状況を認識させた。

ただの人間では、何百と集まろうとも戦力たりえず、勇者一行が万全であるからこそ抵抗勢力にも意味があるのだと言う言葉に、サババ砦でからついてきてくれたロモスの有志達も、カール騎士団と兵士達も悔しそうに俯く。

自分達だけでは、地上はおろか自分の身一つさえも守る事は叶わないのだと言われたのだから・・・

 

そんな過酷な戦いを、先の大戦で自ら経験をしていたレイラはやマトリフ、ロン・ベルクは兎も角、戦いに無縁であったジャンクとスティーヌは、息子がそんな苛酷な戦いに身を投じていたのかと愕然とした。

自分の息子が勇者一行の魔法使いになって活躍をしていたのは知っていた・・・しかし彼等は本当の意味では分かっていなかったのだ。

それは先の大戦でもベンガーナは他の国よりも被害は少なく、今大戦においてもベンガーナはどこよりも被害が少なかったために戦いにおいて負けた者の悲惨な末路がどうなるのかを実感できないでいたのだ。

ただ死ぬだけではない、もっと惨い目に遭ったかもしれない事を、ジャンクとスティーヌは本当に今更ながらに知ったのだ。

それを責めるのは酷であろうと、ジャンクとスティーヌを不見識であったと詰る者はいなかった。

当然であろう。

それはベンガーナを襲ったのが魔王軍において耐久力が最も低い魔軍団であり、その長は侵攻よりも軍内部の周りに取り入る事に熱心なザボエラであった事が、大戦始めから国の防衛を破られなかった要因であると、今更ながらに少年達の置かれていた過酷さに驚愕を見せたジャンクとスティーヌを見ながらティファは考察をしている。

実際にドラゴンが攻めてた時は、街は抵抗虚しく蹂躙されかけたのだから。

 

人は・・・どの種族であっても実感が伴わなければ本当の危機意識を持ってくれない、話だけで持てる者が稀有なのだとは改めてティファは思う。

先程までこの場にいない方がいいのではないかと言っていたジャンクとスティーヌが、息子たちの現状を知ろうと耳をそばだてながら少年ポップを何者からも守ろうとするかのようにジャンクとスティーヌが抱きしめている。

他界から来たと言うポップの事を驚いて見ていたが、其れすらも忘れたように必死に。

その腕の中で、少年ポップは身じろぎ戸惑う。

自分が戦いに行く事を、見送った両親が今更自分を守ろうとしてくれている事にどう返せばいいのか分からずに・・・・

そしてマァムの母レイラもまた動いた。

自分達の時には・・・もう自分達だけで動いても問題がない歳になっており、そんな中ブロキーナ老師やマトリフ大魔導士というしっかりとした大人達が助けてくれた・・・翻ってこの一行は・・・自分が年を取り最前線から長らく遠ざかったからと言えど、彼等をもっと手助けする方法は無かったのかと悔やまれた!

偶然出会えたからいい者を・・自分はマトリフ大魔導士がどこに隠棲していたのかを知っていた!

それはロカが亡くなるまでずっと薬は薬草類をずっと届けてくれた時に、世間話の様にマトリフの近況を聞いて、バルジ島の大渦前の海岸に隠棲していたのを聞いていたのだ。

ロモスを救った後に、マトリフ大魔導士の下へと生ける道を指し示せば・・・自分でマトリフ大魔導士に紹介の手紙を書けば・・・もっと早くこの子達の助けになれたのだと・・後悔があとからあとから溢れる中、少女ティファから-提案-がなされた。

 

「皆様は勇者ダイの父親についてご存知でしょうか?」

 

その言葉に、騎士・兵士達は戸惑い、サババ砦で会ったアキーム・バウスン・ノヴァは彼がどうかしたのかと怪訝な顔をする中、フローラだけが苦い顔をした。

 

 

勇者ダイの父親はカール王国とリンガイアを滅ぼした超竜軍団の長である。

だがそれらを起こした大罪人が超竜軍団の長という情報は末端まで下りているが、今魔王軍と最前列で戦っている勇者ダイの父親だと知っているのは本当に一握り、それこそ国の主の身で情報は止められている。

バランの事を知られたのは、テラン王国フォルケン王が各国の王達に新書で知らせた事で現国王達と、秘かに各国の王達と書簡をやり取りしていたフローラだけが知っている。

何故ならば大戦の最中に、最前線で魔王軍を撃破している勇者ダイの父親が、二か国を滅ぼしベンガーナを強襲した者であると知られたならば!いつ騎士・兵士達が暴発をしてしまうか知れたものではないと怖れたがゆえにの判断であり、それこそ王の右腕たる宰相達にも秘っせられた最重要極秘事項だからだ。

そしてそれは、国の代理を務めている将軍職のバウスンにさえ知らされないレベルのものであったのを・・・何故ティファがバランの事を持ち出したのか・・・

 

「実は私の父も竜の騎士バランなのです・・・そして・・-この世界と同じく-大罪を犯しました。」

 

誰もの驚愕も苦い想いにも構いつけずに、ティファは他界の父の-罪の一端-を明らかにした。

それは母ソアラを身勝手な思いで駆け落ちをし、遂には国を滅ぼしてしまった事を。

それは魔界にて冥竜王ヴェルザーとの死闘を一人で五年もの間繰り広げた後の事であることを事前に話し、傷だらけになったバランは、出会った少女に光を見出し誰がために起きた悲劇であった事を。

 

そして後に魔道に堕ちた父が自分と共に人間を滅ぼせと言って来たのを拒絶しそして打ち勝った事で父を改心させたことを。

 

「その時兄は父から記憶を奪われ・・・攻めてきた父に成すすべがなくなった時、ここにいる兄・ポップが命を懸けて守ろうとしてくれたことが父の心に届いたのだと思います・・そしてこの世界のバランもまた、私達の世界の父と同じ道をたどりそして戦い敗れたところも同じだったのです。」

 

数奇な運命に翻弄されるところまで同じでなくてもいいだろうと、ほろ苦く笑うティファに誰もが沈黙をする中声がかけられた。

 

「だからその者の罪を許してほしいと言いたいのですかティファ?」

 

それは彼の者に滅ぼされたカール王国の女王陛下フローラからの言葉であった。




今宵ここまで
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