勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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小石の投げられた世界:料理人の真価・本領発揮!

為政者としての判断として後悔はない・・・・・

 

フローラの発した言葉に、ポップは動揺をした。

先程はティファに対して悔やみ言葉を発していた目の前の女性は、それでも国を統治し守るべき女王としての立場での発言は一変して後悔はないという。

その差異に戸惑うポップに、アバンから厳しい言葉が投げつけられた。

 

「貴方の世界の為政者たちは随分と-貴方達-を甘やかしているようですね。」

「・・・なんだと?」

 

アバンの断言するように切り込んできたその物言いに、妹を利用した輩がさらに何を言うつもりだと激高する寸前のポップを前にしても、アバンの表情は微動だにせずさらに言葉を重ねる。

 

「為政者とは、時に己の大切にしている想いだろうが誇りだろうが・・・守るべき身内をも犠牲にしてでも-大-を守る事を第一とする事で、国を守り抜くものなのです。

この場合はこの世界の為であれば、フローラ様の心情も、まして貴方方の心情すら打ち捨て利用させていただく。

ティファという少女自身が言った事と同じです。貴方方は異界の者、少なくとも私はこの世界を、ひいては-あの子達-を守る為ならば何でもします。」

 

・・・・そう、なんでもして何を犠牲にしてでも今度こそ自分の愛すべき弟子達を己の力で守り抜く!!

其れで自分の世間からの評判が落ちようが、目の前の異界のポップから蔑まれようともそれがなんだというのだろう・・・・大事なのは、大切なのはそんな事ではない・・己の力不足で、導く力が足りなくて魔道に行く事を止められなかったヒュンケル・・・大戦が始まり己の力が必要な時に足手纏いにしかならず、表の世界から離脱せざるを得ずに心をすり減るまで戦わせてしまったダイ・ポップ・マァム達を、今度こそは守り抜くために・・・そして

 

「貴方も結婚をしたというのならば覚えておきなさい。世界は善意で溢れていようとも、目に見えない悪意は、人の弱さで起きる悲劇は簡単に牙を剝き起りえる事を。」

「っ!!・・・そんな事!!あんたに言われなくとも俺達はとっくに味わってんだよ!!!大戦のあの時に・・・あいつが・・・ティファがどんな目に遭ったかも知んねぇ奴が偉そう抜かすんじゃねぇ!!!」

 

さらに続くアバンの言葉に反発を覚えたポップは怒りに任せて反論するのをアバンの言葉に押しとどめられた。

 

「ならば-平和ボケ-をしましたか?」

「・・・は?」

「世界の酷さを痛感したとしていたとなれば、為政者が守るべき者にその牙が向かないように万全を期すことも知っていてしかるべきでしょう。」

 

この場合は自分はダイの大戦後の居場所を守る為に動いた。

もしもこの大戦が地上側の勝利で終われたとしても、先程のことが無ければバランを罪人として処罰ないし処刑せざるをえない未来しかなかった。

今は大戦時の事で各国もこの場にいる戦う者達も手一杯だが、人は平和になれば己の国を滅ぼした、其の事に手を貸した者達に対する憎悪が再燃するのを自分は良くしている。

それが為に先のハドラー大戦で、ハドラーのせいで狂暴化したモンスター達の大多数は、恨みを持つ人間の手によって殺されたのを、旅の中でヒュンケルと共に見続けてきた。

その度にヒュンケルは最早邪気の無くなった抵抗する気の無いモンスター達になにをしているのだと人間を嫌悪していたが、自分はどこか仕方がないと割り切っていた。

復讐する事で弱った己の心を守っている人間、モンスター達を狩る事で名声をえようという人間・・・鬱憤晴らしや気まぐれに殺す者、人間は良き者もいるが酷い者はとことん酷い、その点においては人間も魔族もそう変わらないとアバンは悟った・・・悟らされた

一体人間と魔族のその考え方に、どこに違いがあるのだと

 

人間を弱いと見下した魔王と、弱いモンスター達を見下して迫害する人間と・・違いなどありはしないのかもしれない、それがアバンが下した結論の一つ。

だからと言って人間に失望したとも見捨てようとも思わなかった。

元来アバンは人間に対してそこまで期待をしていなかった。

魔王を討つ旅に出たのは、自分の故郷と敬愛するカール王と王女フローラを守る為。

人間すべてを守ろうとは端から思っていなかったが故に、彼は人間の醜さを知っても失望しなかった。

そして、自分で平和の芽を育てようと野に降った。

大戦を終わらせた勇者として城に置かれ権勢の道具にされるよりも、己の手で善き人々を生み出し広げようとした。

誰の害意にも屈せずに済む力を持った善き人々を・・・それが勇者の家庭教師という看板を立ち上げた理由。

そう、この世界の-アバン=デ=ジニュアール三世-が志した事であった・・しかるに異界のアバンはこの弟子に何を教えているのだか・・・

 

「貴方は結婚をしたというからには当然家庭を持つ。ならば為政者とは言わないまでも、世間に普遍的に横たわる様々な害意から家族を守る事も知るべきです・・・・あのティファという少女からはそれが感じられなかった・・・まるで世界は優しさだけでできているとのだと言わんばかりの無防備さに、私は本気で驚いたのです・・・・まるで戦いを知らぬ童のようだと・・・・あれでは・・いつか誰かに何かに食い尽くされてしまうでしょう・・」

 

世間の酷さを知らぬ幼な子の様に、初対面の自分やフローラに対し、自分に何かできますかと申し出をされた時には本当に二人で驚いたのだ。

異界から攫われたというのに危機感が薄いどころか全く感じていないようなその無邪気な申し出を傍らで聞いていたこのポップとチウもまた、積極的にではないが頼めば力を貸すのだろうと見て取れた。

おそらくはあのティファが嫌がる事に利用するという類の事でなければ何の疑問も無く手を貸してくれる・・・仮にもしこの世界の人間の王達が神に願い自分達を攫わせたのではないかという考えはおそらく無い!

善意だけを信じる事の危険性を・・・向こうの世界のアバンは教えていないのかと憤然とするほどにこの子供達は無防備で危険すぎる・・・・

 

「人を疑いなさい、考えの裏を読みなさい、今の貴方方は異界という危険で自分達の常識が、これまで取り巻いてきた環境と違う事を以って危機感を以って認識しなさい!」

 

この愚かな程どこまでも善良で優しい子供達が、この世界でこれ以上傷つかないようにアバンは心を鬼にする。

キルバーンの情報を得た時、自分の弟子の方のポップが、チウという子の心を傷をつけて嬉々としていたと聞いた時アバンは誓ったのだ。

己達の不甲斐なさ故に連れてこられてしまった子供達が、自分を軽蔑しようとも多少傷つこうとも、本当の意味で傷つかないように・・・この世界は今誰も彼もが弱っている。

心も体もそして精神も・・・あの優しい少女に縋る者もこの砦からも出ないとも限らない、事態は混迷を極め自分とて戦況が長引くのか、それとも情報通りに地上を消す大仕掛けを仕掛けらるのか全く読めない・・・そんな中、彼女は格好の餌食になるのが目に見えている。

優しさに縋られ、応える彼女に気を良くした者達が戦況が長引き此方が不利な状況になった時、縋っていた者達がこの事態は異界の者達が来てしまったからこそ招かれた状況だとでも誰かが口走ってしまえば・・・そうならない為に、アバンは線引きをティファ自身にさせたのだ。

これ以上双方が近くなりすぎないように、こちらとあちらの者達が互いが傷づかなくて済むようにと願いも込めて。

 

アバンの厳しい言葉に、ポップは何も言い返すことが出来なかった。

大戦時・・・人の弱さで、そしてティファ自身の振る舞いによって悲劇が起きかけた時、自分は確かに思い知ったはずだった・・・・良かれと思って軽率な程に敵・味方の区別なく優しい言葉と笑顔を誰にでも向けていたティファを、人が理解できないのは無理からぬことであり、二度と悲劇が起きないようにとティファの言動を注意して見守り、そして周りの者達の事も警戒とはいかずともそれとなくティファを怖れて排斥しようとする者はいないかと見ていたのが・・・いつの間にか・・・・自分もまたティファと同じく善意だけを信じるようになっていてしまったのかと・・・

近頃は師のアバンを始めとした、バーンやフォルケン王が、そして各国の王達が自分達に優しく無理はしなくていい、もっと子供らしくのびやかでいていいのだという言葉に甘んじて・・・今目の前にいるアバンの言う通り・・・・平和ボケをしてしまっていたのだろうか?

 

あの甘い大人達の言葉に揺蕩う童の様に・・・・

 

アバンの言葉に打ち沈んだポップを先頭に、アバンとフローラは大広間へと戻る。

フローラとしては、ポップやチウ、そしてティファに厳しい事を言うつもりは毛頭なかった。

しかしアバンは何かを危惧するような・・・自分の弟子達に危機が及んでいる時のような焦燥感に駆られた言葉を感じたフローラは口を挟まなかった。

もしも自分の考えが正しければ、アバンは己を軽蔑したポップに対しても守る為にあえて厳しい言葉を投げかけたのではなかろうかと。

その言葉を投げかけられたポップの足取りは重くてそして遅く、まるで大広間につきたくないとばかりに溜息をつきそして時折頭をガシガシと掻いて居る。

まるで納得は出来ないが、それでも覚えておかなければいけない大切な言葉を頭に仕舞っとくようにしようとばかりに。

 

そのポップの重い足取りに、アバンとフローラは追い抜く事もせずそしてせかすこともしなかった。

この若者が、自分の投げかけた言葉にいくばくかの危機感を持ってくれれば、そしてそれを糧に己の守りたい者達をどんなことをしてでも守れる強い心を持ってくれればと願う。

世界はこの子供達が考えている程清らかでも優しすぎもしない・・・誰かがその優しい世界を裏から様々な策謀や謀略を以って守っているのもまた一つの真実で、いつかその真実を覗いた時、このポップが世界に失望しなくて済むように・・・・このポップが壊れなければ、きっとあのティファという少女がその真実に触れてしまっても大丈夫だろうとアバンは見込んでいる。

この異常事態に会っても己の心を保ち、冷静に仲間を守らんとしているポップであったればこそと。

大広間にはきっとダイ達がいて・・・少し離れたところにティファが遠巻きにして事態を見守っているだろう・・・寂しそうにしていなければいいと思うのはきっと身勝手な思いで・・・・ポップが慰めになればと思いながら大広間につけば・・・アバン達の目の前に広がっていた光景は・・・

 

 

「もう少しで用意が出来ますからお待ちください!!

レオナ姫!そのエプロン付けないと汚れてしまうので付けてくださいね!!

そこの人!つまみ食い・・・味見?・・・・そんな言い訳通しませんよ!!」

「お姉ちゃん!これどこに置けばいい?」

「ダイ君、食器は各自持ってもらって並んでもらうのでそこでいいですよ。ヒュンケルさんクロコダインさん、スープの寸胴はそこで大丈夫です!

ほらポップさん!マァムさんとメルルさんのエプロン姿に見とれてないで・・・あ!!ポップ兄!手伝ってよ!今・・・どうかしたの?」

「いや・・・・お前こそ何してんだ?」

「ん?夕食の準備以外の何に見えるの?あ!!バウスンさん!腕の怪我良くなっていないのにそんな重いもの持たなくてもいいですよ!!式!!ゴックン!ムックン!!テーブルとイスは君達に・・あぁこれは私の能力で式神というものでして、この子達は重い物を持つのが得意なんですよ。」

 

 

そこに広がっていた光景は・・・何故か砦にいる者達が食べてもあ場る程であろう量のパンがテーブルの上に山盛りとなっており、これまた何故か大量の野菜とベーコンの入ったスープらしきものが沢山の寸胴鍋で用意され・・・・どこからか持ってきたのか分からない食器類を、全員にいきわたるようにしているティファと、それを手伝うダイ・ポップ・マァム・ヒュンケル・クロコダイン・メルルの姿があり、法衣が汚れないようにと手伝う気でエプロンをかけようとしているレオナ姫が、各自食べられるように北方の勇者ノヴァとその父親のバウスン将軍と戦車隊長で偉いはずのアキームが手伝い・・・その様をマトリフはアバンとこの光景を見比べてニマニマとしている!!

まるで、お前の茶番はひっくり返されたぞお疲れ様だったなと、自分の失敗を楽しそうにせせら笑う様は、味方だか敵の悪党だか分からない時の往年のマトリフに戻ったかの様な笑みであった!!

若造の底の浅さを鼻で笑っているマトリフに、アバンは本気で殺意が湧いた!!

 

しかし、だからと言って目の前の光景は幻の如く消えることは無かった。

 

「スープの量は一人このくらいでいいわねティファさん。」

「ありがとうございますスティーヌさん、レイラさん。今日は強行軍をしていただいたので休んでほしかったのですが・・」

「何言ってるの!!??その考えで行けばティファさん!貴女こそ・・・」

「あぅ!・・・・だ・・・丈夫です・・・」

 

スティーヌとレイラに囲まれ、少しレイラに説教されかけ萎れているティファの姿・・・

アバンは足早にティファに近づき、そして持ち上げるという強硬手段をとってダッシュで大広間の外に連れ出した!!

 

・・・この子供はいったい自分達がどうしてあんな事をしてまで・・・

 

「ティファさん!!」

「はい、なんでしょうか?」

「・・・貴女は線引きをしたのですよね?」

「はいしました。」

 

アバンの冷たい声音に対しても一向に怯む気配も撒くティファはあっけらかんとした調子でアバンの質問に答える。

 

「線引きしたので-やる事がある-と言って私大広間出ましたよね?」

「・・・それは貴女が心の整理をつけに外に出たのでは?」

「は?・・・・・なんですかそれは?」

「はい?」

「え?」

 

・・・・・嚙み合わない・・・

 

そのやり取りに、妹をどうする気だと血相を変えて追って来た兄ポップは、恐る恐ると妹に聞いてみる。

 

「いやお前・・・・芝居のためとはいえ嫌な言葉をここにいる人達に言っちまっただろう?それが嫌で大広間を・・」

「あぁあれ?あれはあくまでも芝居でしょう?アバンさんが言った事は正しいよ。

ここの人達が私達・・・ポップ兄の強さとチウ君の優しさに依存したらヤバイもん。

それにあれであの服装言動悪趣味野郎をここにいるみんなの共通の敵にできて、ダイ君達の後顧の憂いが無くなって絆もできて色々と上手くって・・・にぃ嫌だった?ティファがあんな酷い言葉言ったの・・・」

「あ・・・・大戦時はさんざん見てきたから・・・・俺てっきりあの後大広間を出て行ったのはさ、お前が自分の言葉に嫌気がさしたんじゃねぇかって・・・」

「へ?」

「ほら・・・・フラフラと出て行ったから・・・」

「あぁ~あれね、流石に-沢山の式-を一度に使ったからティファも疲れちゃって。」

「・・・はい?」

「あそこに沢山のパンあるでしょう。あれね、保護者一同の皆様集めてその後のお話合いの時に式達に各国のバラバラの場所でパンを買ってきてもらっていたんだよ。」

 

兄が懸念していることが何であったのかに思い至ったティファは、これまたあっけらかんと答える。

あの沢山のパンは、式達にマジックリングを持たせて、森や川や海を渡れる鳥の式神にして、無事な都市についた式を街中で人型にして買い求めさせた。

資金はキルに贈られたドレスと合わせたチョーカーについていた宝石を先にベンガーナの質草やに売らせに行き、そして分けてから式を行かせて買い求めさせ、そして人里離れた者をまた鳥にして目玉やシャドーなどの魔王軍の監視網をかいくぐらせた。

そしてスープの方はこれまたサババ砦の物をかっぱいで、急いで具材を炒めて火を通して速攻で作ったのだとか。

ティファが疲れたのは式を人と鳥にするタイミングを取る為に、大量の式の目で風景を見て判断したからで・・・・この妹何しちゃってんの?!

 

「そんなことしたらお前ぶっ倒れんぞ!!なんでそんな・・・・・無茶しやがって・・」

 

力の限界を超えても不思議ではなかったティファの有様に、思わず怒鳴りかけたポップは言葉の勢いを飲み込んで妹を抱きしめる。

何故ティファがジ=アザーズやラック=バイ=ラックの改良版という大技を使った後に己を消耗する方法で食料をかき集めたのか、一所で買い集めれば、人々の耳目を引き、やがてはどこからか魔王軍の耳に入ってそこから謎の集団がいる事を突き止められ、まかり間違って自分達の事が知られて居場所まで辿られる事をティファは警戒したのだ。

この妹はどうして・・・なんで・・・・

 

「ティファさん、貴女は線引きをした。そしてこの世界の事から手を引いたのでは?」

 

ポップとフローラが持った疑問を口にするアバンに、ティファは兄に抱きしめられながらも不思議そうな顔をアバンに向けた。

何故アバンが起こっているのか理解できないが

 

「助ける義務も義理もありませんが、食事は皆で食べたほうが美味しいでしょう?」

「・・・・・は?」

「いやだって、線引きしたからって美味しい物をティファ達だけで食べるって・・・気が引けて美味しくないじゃないですか。

いくら線引きだのなんだの言ったって、それは双方嫌でしょう。

長期戦になるかもしれません。その時私達が何を食べて過ごしているのかとこちらの人達に気遣われるのも嫌ですし、私達だけで美味しい物を食べるのは嫌なので、ご飯くらい一緒に食べたからと言って、アバンさんの懸念する依存云々無いと思いますよ。

もっとダイ君達の事を信じましょうよ。」

「・・・・・」

「ダイ君達ならもう大丈夫でしょう。見てください、私がいなくても、アバンさんが変な事をしても気にせず熱々のスープでご飯にしようとしているじゃないですか。」

 

自分の言葉に絶句したアバンにティファは大広間の方を見る様にアバンに促す。

その先に見えたのは

 

「ノヴァ!ゆっくりでいいからスープ溢さないで!!」

「ダイ!体の大きい人もパンは二つまでってティファさん言ってたろ。」

「だって・・・・お腹すかないかな?」

 

ティファの用意した食事を、自分達で振舞っている弟子達とその仲間たちの姿が・・・

 

「彼等も始めはアバンさんと同じことを言っていました。線引きした私が何のつもりだと。」

 

自分達を見捨てるも言ったも同然の言葉を吐いた者がいまさら何をするつもりだと。

 

「お腹がすいたら戦は出来ないでしょうと鼻で笑い飛ばしてやりました。

利用できるものはしなさい、全てはこの大戦に勝たなければ何も残らないのだと言ってやったら、ダイ君がその通りだって分かってくれましよ。ポップさん達も承知して、飯の世話になって良いのかと言ってきました。」

「貴女は・・・何と答えて全員を納得させたのですか?」

 

ティファの言った言葉を、仮に大魔王達の強さを身に沁みたダイ達は兎も角、カール騎士達とノヴァたちを何と言って納得をさせたのかと、フローラがここにきてティファに問うたのを、ティファは何の事は無いとばかりに笑って答えた。

 

「あの服装言動悪趣味野郎と、身勝手な大馬鹿大魔王もどきを叩きのめしてくれれば結構ですよと言っただけですよ。」

 

・・・・はい!!!??

 

その言葉に呆気に取られたアバンに、ティファは笑って宣った。

 

「アバンさん、貴方の懸念は私にも分かっているつもりです。

けれどももっと彼等を、そしてこの世界の人達を信じてみませんんか?」

「・・・・なにを・・」

「アバンさん、これは私の持論ですが、私はこの言葉を信じて今まで生きてきました。」

 

世界の人達を信じると言うティファの言葉に気圧されたようなアバンは、ティファが何を言うのか待ってみた・・・・どれ程の甘い言葉を言うのだろうかと

そしてその予想が当たったような言葉であった

 

「世界は弱すぎも酷すぎもしません。確かに貴方が懸念するような者達が多くいるのもまた事実ですが、優しい人達もまた同じように大勢いてくれるはずです。

私はその人達を信じます。そしてここにいる人達の心は弱くない・・・いえ、弱ったのならば私が美味しい食事をたくさん用意します。沢山食べて大勢の仲間達に支えられればここにいる人達ならば、ダイ君達ならばきっと大丈夫だと信じます。」

 

それに悪意なんかにいちいち負けてたら悔しいじゃないですか

 

優しさと善意を信じると・・・・ここの者達の心の強さを信じるとティファは静かにアバンに告げる。

その言葉に、ポップの顔に優しい笑みが浮かび、腕の中にいる妹をもっと強く抱きしめるのを、ティファは嫌がらずに抱き返してくれる。

 

「・・・・アバンさんよ・・・・俺も信じるわ・・・」

「ポップさん・・・」

「あんたの言う事も正しいか知んねぇ・・・けどな・・・・俺やこいつは確かにそうやって沢山の人達に接して酷い目だけじゃなくて・・・・それ以上にいい事に巡り合って・・-全部-を救い取ったんだ・・・・」

 

思い出した・・・・ティファのこの言葉が、敵になってしまった自分達の長兄やクロコダインやバランの心をも助けて・・・・そしてついには大魔王達をも救ったのだと・・・近頃はその状況が当たり前で、どうして自分が周りの者達を信じ切っていたのかの原点を忘れていたのだと・・

 

「確かに警戒は必要だ・・・守る為に、守り切る為に・・・・それでも俺は警戒よりも信じる方を先にする・・・無警戒は無理でも・・・それでも目の前の人達を信じて困ってたら助けたい・・・・見捨てたくないんだ俺達は・・・」

 

かつて自分が出した戦う理由は、仲間を見捨てたくないだった。

それがいつの間にか仲間の定義が世界全体に広まりそして・・・・死にゆく魔界の民達も入って・・・自分が目指す道はそこだ、悪意に会おうとも弱き人達の非道を目にしてもそれでも・・・

 

「世界を信じて見捨てない男に俺はなるよ。」

 

ポップの出した言葉に、ティファは兄の腕の中で満足げに笑う。

見捨てないと答えを出した、怯えながらも助けに来てくれたあの頼もしい兄の姿を思だしつつ・・・そしての答えに、アバンは頭を殴りつけられた思いがした。

 

警戒はしても、それでも世界を信じて見捨てない・・・それは自分が育てようとした者の理想の形で・・・・自分は人を・・・・

 

「アバン。」

「・・・・・フローラ様・・・」

「アバン、貴方は一人ではないのです。焦らずに背負いすぎないでください。」

「私は・・・」

「この二人の言う通りです。信じましょう、勇者ダイ達とこの砦にいる者達を・・ここにはいなくとも私達を陰から支援してくれる人達の善意と世界を守ろうとしている者達を。」

 

フローラはアバンの心情を察して言葉をかける。

アバンの考えは正しくとも、どこか焦りを感じる拙速さがあったのを懸念しいたが、それがどのような事か分からなかったがティファとポップの言葉で分かった。

アバンもまた、大戦時と大戦後に人の醜さを多く見すぎて疲弊して、大人になってうまく隠していたのがこの大戦と今回の事で噴出してしまい、世界に対して失望してしまったのだと。

神までもがそこまで堕ちているのであれば、いわんや人はと・・・見続け蓋をした傷が再び開いて・・・・助けが必要だったのはアバンもまた同じであったのだと。

その労りと慈愛に満ちたフローラの言葉に、アバンは俯きそして肩を震わせるのを、ティファとポップは見ないふりをしてこっそりと大広間へと戻っていった。

残りの人達にも温かい夕食が行き渡るように、料理人の仕事を果たすべく。

 

ティファの心情は過去も今もそしてこれからも変わらない

美味しい物を大勢の人達と一緒に食べて笑い合いたい、ただそれだけを望んで大戦を終結させたあの頃から何一つとして変わらないティファを、ポップは当然の様にダイ達に混じって手伝う。

そして列の最後にフローラとアバンが並ぶのを見て、ティファとポップと少年ダイ達も嬉しそうに笑って迎え入れる。

 

「先生大盛りにしますか!!」

「フローラ様、お疲れさまでした。」

 

晴れやかに笑って食事をよそってくれる弟子達に、アバンは微笑みそして

 

「ベリーサンキューですよ皆さん!!」

 

すっきりとした明るい声でお礼をし、その言葉に弟子達とそして、アバンに罪悪感があり暗い気持ちでいたヒュンケルの心も温めた。

全員にいきわたり、そして席について言う言葉はただ一つだというティファの言葉に、ダイが俺が言いたいと席を立ってそして手を合わせた

 

いただきます!!!!!

 

その言葉は全員が唱和してティファを見て、見られたティファはにっこりと笑って応える

 

熱々の内に召し上がれ!!!!




今宵ここまで・・・・・

終われた!料理人の真骨頂かけた・・・・かなです・・

人を信じる事の難しさ・・・それでも信じる心を捨てない尊さを書けていれば幸いです。
小石の世界を少しでも良くできればいいなと思いながらの今回の話はここで終わり、幕間をはさんでいよいよ魔王軍も動き出します
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