勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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初戦闘の回です。
よろしくお願いします。



獣王クロコダイン

             魔の森の洞窟

「・・ロコダイン様・・クロコダイン様。」

「ん~・・む、どうした悪魔の目玉・・」

「魔軍司令官ハドラー様より通信です。」

「分かった、映してくれ。」

クロコダインは-退屈-で拠点の洞窟で眠っていた。

そこに数日前に会ったばかりの司令官から何の用だか・・。

「クロコダインよ。」

「ハドラー殿、四日前に会ったばかりなのに何事ですかな?」

「その前に、ロモス侵攻はどうなっているか。」

やはりそれか。

「この国には武人はおらず兵達は火器での多一戦しかしてこずに、正直今一つ

やる気が起きませんな。」

人間ばかりが収まりかえり、モンスターを迫害する人の世を滅ぼし人外全ての者の

理想郷を作ると言う現魔王軍の理想に賛同をして戦に挑むが・・。

「相変わらず気ままよな。

まあいい。お前の腕ならばいつでもロモスは落とせよう。」

む?・・おかしい。

先日会った時には功を焦るように各軍に檄を飛ばしていたのだが、

妙に分かりよく落ち着いている。

いや・・懐が深くなり、よく見れば映像越しでも貫禄が増している気がする!

「ハドラー殿、ここ数日で何かありましたか?」

「・・どうかしたのか?」

「・・いや・・」

これは自分の勘でしかないので深く聞くのはやめにした。

「それよりもクロコダイン、

貴様に一つ命を下す。

ロモス陥落よりも優先すべきことだ。」

「ほう!

どのような事か?」

国よりも優先すべき重要ごととは。

「我等の前に立ちふさがる敵が出現をした。

そ奴らを確実に倒すのだ。」

「なるほど・・。

して、どのような者達で?」

「うむ、こやつらだ。」

ハドラーが一つの国よりも優先をして倒すべきだという敵を、悪魔の目玉が映せば・・それは

「ダ~ハハハハハハ!!!!」

初めは映っていた者達を見て呆気にとられ、次に大笑いをしてしまった。

目玉に映っていたのはたかだか子供が三人。

少年が二人の、うち一人は少女!

しかもその少女は大きなリュックを背負い、リュックの横から鍋が下げられている。

「冗談はおやめくださいハドラー殿!」

大爆笑をしながら言ってみれば、

「冗談ではないクロコダイン。

こやつらは三日前に俺に手傷を負わせ未だ完治せずに身動きが取れん。

その内の小娘の方は俺のヘルズクローを無傷で苦も無くかわした手練れだ。」

「何と!

貴殿のヘルズクローを・・」

どう見てもただの子供の一行にしか見えないが・・

「面白い!!」

ハドラーに重傷を負わせた者達・・特にヘルズクローを無傷で躱した少女と全力で戦いたくなった!!

ここ最近自分はくさくさしていた。

王国側は火力勝負ばかりなのもあるが、

地上のモンスター達が自分達に呼応せずに、縄張りを荒らされたと獣王である自分に向かって来る

モンスターもいたくらいだ。

何故⁉

これは各地の進行している全軍に当てはまり、リンガイアの超竜軍団などはその地に住まう

全精霊達に敵対をされて主力が丸事足止めを食ったほどだ!

のみならずロモス・リンガイア・パプニカは備えていたよう各軍に適した装備を施されていた。

その報告を受け、二日でオーザム王国を氷炎軍が落としたのを機に一旦各軍団長は

緊急に呼び出されて報告会となる事態となった。

「・・明日には精霊達を力づくで押し通る積りであったが・・。」

あの魔王軍随一の強者バランは苦々しげな顔をし、

「け!!

甘いなあんたは。

たかだか精霊なんてちんけなモンなぞさっさとやっちまえばいいのによ~。」

六団の中で唯一国を落としたフレイザードは余裕の態度でバランを侮った。

「・・フレイザード。

我等の敵は人間のみ!

罪のない精霊達を殺して何になる!!」

バランは不快気にフレイザードに反論をし、双方にらみ合う形となったがハドラーによって

各地の報告が続き、ハドラーの判断でリンガイアはミスト率いる妖影軍団が内部からの崩壊を、

バランは群を整えた後に戦場をカールに移すように命が出された。

 

フレイザードは引き続き逃げたオーザム王国の王族探索を命じて会議は終わり今に至る。

久方ぶりに武人としての血が騒ぐ!!

 

 

早く・・もっと速く走ってよ俺の足!!

ダイは真っ暗な森を駆けながら自分を叱咤する。

ティファが相手は隊長格かそれに類する者と言っていた。

ティファの考えはよく当たる。

優しくてとても頭のいい双子の妹は自分の自慢の妹で一番信頼をしている。

今回だって間違ってはいないだろう。

そいつを倒せれば、あの優しい王様の助けになる!

モンスターを友と言った自分を優しく受け入れてくれて、伝説の覇者の冠までくれた優しい王様を!

助けたい!!

アバン先生の時の様に大切な人を失うのはもう嫌だ!!!

その一念でダイは声の主の元に駆け続ける。

 

 

・・遅いな。

人間とは不便なものだな、早き足も持たずに・・む!!

「い・・やああ!!」

少年一人か・・しかし「ふん!!」-ガッキン!!!-

走ってきた勢いの乗ったナイフの一撃をバトルアックスで受け止めれば、

思った以上の重みが感じられたいい一撃だ。

だがはじき返し、

「小僧!仲間はどうした?

貴様一人か。」

「え!

なんでみんなの事・・。」

問いただせば敵の自分に素直に答えてしまっている。

未熟で戦い慣れをしていないのがよく分かる子供だ。

・・こんな子供が本当にハドラー殿は・・

しかし、先ほどの打ち込みの重みはただ者ではなかった!

手加減せずに本気を出そう!!

「来い小僧!!」

「でええい!!」

果たして真っ正直に正面から打ち込みに掛かってきた。

一撃は確かに重いが攻撃は単調であり、

「大地斬!!」

大振りな攻撃を仕掛けて来たが、

「甘いわ!!」

何の策もなく打ち込むダイにクロコダインは痺れるブレスを吐き、

バトルアックスの風特性で吹き飛ばし地面に叩きつけた!!

(しまった!!)

「小僧!止めだ!!」

(やられる!!)

 

          -メッラゾーマ!!!!-

 

止めの一撃がダイに届く前に、両者の間をすさまじい炎の壁が立ちはだかるように横切り、

-ダーン!!-音と共にダイは光に包まれて「・・しびれが・・とれた?」

回復をした。

「そこまでだワニ野郎!!」

「遅くなってごめんダイ!!」

ポップはダイとクロコダインの間に立ちふさがり、

マァムはダイを急いで抱え起こした。

クロコダインは新手の出現に驚く事無く油断せずに冷静に観察をする。

(ふむ、こやつ俺を怖れて頬がわなないているが、仲間を守らんとするか。)

この国の兵よりもよほど気概に溢れている!

気に入った!!

・・もうひとりの・・少女は何だ⁉

映像の少女とは似ても似つかない・・そもそもあの少女は黒髪の筈!

少年が居て見づらいが、ちらりと見えた髪は桃色だった!!

あの黒髪の少女はどこだ!!

遅れてくるのか?

「おいワニ野郎!

どこ見てやがんだ!!」

少し辺りを見回したが気配もない!

「おい小僧!!

もう一人の黒髪の娘は何処に行った⁉」

戦うのをとても楽しみにしていたというのに!!

 

 

こいつ・・なんでティファの事を知ってんだよ・・まさか⁉

ハドラーの島だけの情報ではティファが同行して来たかどうかまでは分からない筈で、

方法は分からないが、どうやら自分達は何らかの方法で敵に随時見張られているようだ!

-変に目立つと一番の攻撃目標にされてやられちゃうよ-

まさにティファが言った通りとなってこんな強そうな奴が自分達目当てにやってきやがった!!

ティファって凄えな、これからは手数増えても慎重に動いて・・

「小僧!

答える気はないのか!!」

おっといけねえ・・魔法使いは常に冷静に考えて動かなきゃだ・・これもティファの教えだが、

「あいつが出るまでもねえ!!

俺達で十分だ!!」

情報をくれてやる必要はねえ!

張ったりで十分だ!!!

はたして・・

「そうか・・」

来る!!

ここに来る道すがらマァムが先生から送られたという魔弾銃の事は聞いて、

二つの空の弾にヒャダルコとメラゾーマを入れておいてた。

さっきダイにキアリクの弾を撃って効いているようだ。

「ダイ、俺の魔力溜まるまで持たせられるか?」

「うん!やれる!」

「んじゃ頼む。」

「うん!」

「マァム!」

ダイがクロコダインに打ち込むとともに、マァムに作戦を伝える。

「ダイが上に飛び上がって撃ち込んだらあのワニ野郎もアックスで迎え撃とうと

振りかぶるはずだ。

そこを狙って腕を凍らせんぞ。」

先程自分が放ったのはメラゾーマで、あの鎧に効くほどの威力はないと看破されたはずだが、

そこが狙い目だ。

通常の魔法使いは滅多に相反する属性の呪文を使う事はなく自分も氷系は得手ではないが

そこはマァムの魔弾銃のヒャダルコと合わせれば効いて鎧のない腕の一本は凍らせられるはずだ!

勝負は一瞬!!

「でええい!!」

打ち込みで暫くし、ダイが飛び上がって威力を付けた一撃を放とうとすれば、

「通じんぞ!!」

相手も腕を上げた!!

「今だ!

マァム!!

ヒャダルコ!!」-ダァーン!!-

ガッチーン!!

「ダイ!!」

「止め!!」

「・・まだだ!!

小僧!!」-バッリーン!-

凍らせたはずの腕の筋肉が盛り上がり氷を吹き飛ばし、

「獣王痛恨撃!!」

「きゃー!!」

「あうぅ!!」

「ぐあ・・!」

凄まじい闘気の渦が襲ってきた!!

「・・手間を・・取らせおって・・」

地面に叩きつけられながらも敵を見てみれば、

今の攻撃ははじかれたが、無駄ではなく効いてやがる!

息遣いは荒く、余裕の気配が完全に消えてる!

あの野郎もジリ貧だ!!

「ダイ耳・・」

隣に吹き飛ばされてきたダイの耳に作戦を手早く伝える。

お互いに余力はなく次で最後のはずだ・・

「勝負だ!!」

ダイは気力を振り絞り最後の勝負を挑み、

「おおっ!!」

正面で受け止めようとしたところを、

「イオ!」-ズガーン!!-

敵の足場を狙って崩し、

ダイが素早く飛んで脳天に一撃を決めるはずが・・

「小賢しい!!」

相手も読み切ってきた!!

受け止められると思われたその時、偶然か天佑か・・敵の目に朝日が・・

「喰らえ!

大地斬!!」

「グッアアアアー!!」

疲れ切り、初戦で実践慣れをしていないダイは目測を誤り致命傷を与えられはしなかったが、

左目に一撃を決められた!

「お・・のれ・・小僧ども!

我が名は獣王クロコダイン!!

次に会う時までこの名を覚えておくがいい!!

左目の返礼は必ずさせてもらう!!!」-ズガーン!!-

クロコダインと名乗った者は、地面に穴をあけて立ち去った。

「待て!!」

「追うなダイ!」

「でもポップ!!」

「俺達もボロボロだ。

それにレイラさんとティファが待ってるだろう。

俺達が帰んないと心配するぞ。」

「・・分かった。」

ダイは釈然としないが、

「二人とも凄かったわよ。

特にポップ、作戦立てるのが上手なのね!!」

マァムには手放しで褒められた。

「いや・・ギリギリ運にめぐまれただけだよ・・」

朝日が無ければダイがどうなっていたか・・考えただけでゾッとする!!

「そんなことないよポップ!」

「ん・・いやぁまあ・・帰るぞ二人共。」

「うん。」

「そうね。」

ダイも何か言おうとしたのを遮って帰途につく。

自分は凄くなんてない・・今でも指先が震えて心の奥底では恐怖で一杯だ・・

次は立ち向かえるか分からない程に・・。




感想で、キアリーとキアリクの違いのご指摘をいただき早速直させていただきました。
誤字脱字も毎回教えてくれる方ありがとうございます。

ハドラーは回に出るたびに一流魔王近づいていく予定です。

破魔の石の力のせいでモンスターを従えられる獣王の力も無効となり、
クロコダインは元から地上にいて平和に暮らしていたモンスター達に、
敵と見做される事となりました。

ダイのような特別な力はなく、
マァムの様に幼少期よりの戦いの薫陶が無い一般人ポップの心情を最後にして
この回の終了となりました。
主人公によって心の在り様は多少は変わっても、まだ原作よりのポップが強く残っています。
ロモス編で、原作以上の心の強さを身に着けてもらう予定です。

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