勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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いしの積まれる世界:出陣

そろそろ動かねばなるまいか・・・

 

たった一人が発したそのポツリとした一言で、地上界は地獄への道が開かれた。

主の言葉を受けた影は、御意にと一言を残して足早に主の下を辞去し、主の望みを叶えるべく作戦を各部署に伝えに行く。

 

大空のパレスにいるバーンは、異界の者達の迎えが来てからゆっくりと地上界と天界を攻めればいいのだと考えていたのだが、昨夜のパレス内での大騒動でそうも言ってはいられなくなった。

 

バーンもキルバーン同様、どのような方法かは分からないがこれまで経験した事のない謀略戦を仕掛けられそしてまんまと嵌められた。

まさか死神に擬態した者を使ってくるとは思わず、キルバーンとても理由のいかん問わずに自分に牙を剝いてきた者を放っておくという選択は端から無く、同僚だろうが何であろうが命令一つで数多の味方をも狩って来たキルバーンは迷う事無く刃向かってきた者全員を瞬時に大鎌の錆とし、パレスの一角を血の海にしながら忌々しいとばかりに驚愕の表情を晒した者の一人の頭を踏み抜く。

もうブーツは血塗れなので、ピロロが調達してきてくれるものに変えればいいのだから怒りに任せて踏みにじる・・・・まるで謀略戦を仕掛けた犯人を踏みつぶしてやらんとばかりに。

 

その怒りはバーンも同様であった。

他者に興味は無くとも、手塩に掛けて育てた軍団の精鋭達を自分達にとっては無為にされ、敵にとっては戦力削りに成功をされたのだから、相手を八つ裂きにしてもなお飽き足らない程業腹である。

 

昨夜のことが無ければ魔界の戦士達を地上の各所で暴れさせ、二日たっても魔王軍の大規模な捜査網から逃れている勇者一行と忌々しい異界の者どもを炙り出してやり、弱ったところをと思っていたのだが

 

「やむおえん、質こそ落ちるだろうが勇者達の現状を知るには不足は無かろう。」

 

受ける者のない言葉を虚空に放って解くに任せる。

まだ手札を晒したくはない、あのティファという忌々しい小娘が-自分達の秘密-を知っていると考えるべきでありミストバーンを動かすのは時期早々・・・もう少し様子を見ればよく、キルバーンにいたっては-あの一つ目のマスター-と共に勝手に死神として動こう。

 

-あれ等-は酷く執念深い、マスターも疑似自律神経回路という馬鹿気た物を搭載された人形も双方共に。

 

さて、収穫はあるだろかとバーンはまたぼんやりとする。

今日の結界遺憾で、今後の方針が決まる。その前にある程度は固めておこうとバーンは思考の海に漂う。

各所に作戦を通達したミストバーンがすぐに戻ってくるのだから・・・

 

 

 

 

 

「・・・・ポップさんが怖い・・」

「・・ポップ、あのポップさんて人間?もしかして向こうの竜の騎士ってあの人入れた三つ子じゃないの?」

「ったった・・・午前中だけでもう何度死んだのかしら私?」

 

アバンの弟子幼年組はさんざんに青年ポップに翻弄されて、あれは本当に人間でいるのか疑問な事甚だしい・・・・ポップ・ダイ・ティファの三人で竜の騎士では無かろうかと。

 

少年ポップもバランから竜の血を受け取りそして魔法力と扱う精度が特段に跳ね上がったのを自覚しているが、それでも自分達三人相手にして翻弄させるってどんだけだと。

 

先ずあのイオラの嵐からして訳が分からない・・・そしてそのイオラの嵐の中を平然と突っ込んでくるかと思えば、近づいてきた自分達をメラゾーマの炎の壁が立ちふさがり、ダイとポップがトベルーラで上空に出れば読んでましたとばかりにヒャドの氷が飛んできて、ポップがメラゾーマで対抗した時氷と炎の相殺で霧が発生して目くらましになってしまい、上空で二人は頭をこつんと青年ポップの棒で叩かれた。

地上でマァムが援護しようにも、上空では手が出せないので青年ポップは一旦放置したのだ。

 

そんなポップに食らいついたのがヒュンケルであった。

 

流石はダイ同様戦いの天才・麒麟児の名を欲しい侭にしているアバンの長兄殿と、ポップは冷や汗をかきながら一つ一つの鋭い槍の突きに怯えそうになりそうになるのを強がって笑って見せるが・・・そこは矢張り地金が違く、首にビタリとヒュンケルの槍が突きつけられ、青年ポップは降参をしたのを、ダイとマァムそしてポップも小さくではあるが歓声を上げる。

 

負けたポップもヒュンケルに惜しみない賛辞を贈るのを、当のヒュンケルが面喰う。

この世界のポップは、自分の事を・・・敵対心ではなかろうがどこかライバルか競争相手に思っているのか、自分に対して一歩引いておりそして自分の言葉に反発をしてくるのだが、青年ポップは素直にあんたやっぱりすげぇやと屈託なく笑いかけてくる。

自分も・・・弟妹弟子達と共に屈託なく笑うことが出来ればと・・・しかし自分は其の弟妹弟子達のお陰で罪を償う事を許されている。

それ以上を望むのは過ぎたる事だと思考が暗がりに落ちかけた時、明るい・・・否!能天気な声が響き渡った!

 

「みんなご飯だよ!!!!」

 

・・・・・あの娘に、緊張感という言葉は無いのだろうかと思ってしまうのは罪だろうかとヒュンケルは本気で思ってしまったのは悪くはないはずだ・・・悪くは・・ない筈であった。

その後に、ヒュンケルこう回想をする。

 

能天気のような穏やかな時間がそのまま流れればよかったのだと・・・

 

昼食を告げに来たティファの表情が青褪め、そして・・・ティファは足元の雑草を手で刈り取り中に放って大量の式鳥を作り出し隠し砦の散らばせながら叫びあげた!

 

「非常事態宣言!!!ベンガーナ!パプニカ!!ロモスの各王都に魔王軍と思召しきモンスターの群れが向かっています!!到達時刻は十分とありません!!!」

 

王都にこんな間近に迫るまで分からなかった事にティファは愕然とした。

 

「式鳥にキメラの翼を三枚持たせました!!中庭から遠い方はそれを使ってここに来てください!!・・・後はアバンさん、出撃の場所を決めてください。そこまで私が結界を張ってのエスコートをします。」

 

まだ子の隠し砦の場所を知られたくないと、直ぐに飛んで来たアバンに引き継ぐ。

 

ティファはこの二日間、主要都市部の上空に式を散らばせ言って時間で見まわしそして発見したことを告げそして砦は騒然となりながらも誰もがティファの指示に従うように戦う準備を整え中庭に集まり、アバンが支持を出す。

 

「ティファが身を隠す結界で途中までエスコートをしてくれるそうです。ダイとポップのペアに三十人の騎士・兵士をパプニカに、ノヴァさんとヒュンケルのペアに半数の有志の方々と二十人の騎士・兵士ベンガーナを、残りは私と共にロモスです。」

 

パプニカの王都近くは平原であり、ダイとポップの効果力は有利であり、ベンガーナは森林が多く細やかな戦いはノヴァとヒュンケルが得意とし、ロモスはクロコダインとマァムの故郷であり二人はあの地に慣れていると判断を瞬時に下したアバンは自分はロモスの方が到着時間が若干早いというのでそちらに回る事にして次の指示を飛ばす

 

「万が一を考えてポップさん達を残し・・」

 

その案を、当人である青年ポップが棄却案を出してきた。

 

「いんやアバンさん!俺とチウはサポートで出させてもらう。・・・ティファは絶対にダメだ!お前はここで戦況見て式鳥で知らせてくれ。早く終われたところは他に行けるように・・ティファ、キメラの翼まだあるか?それと敵の内容分かんねぇか?」

「・・・・分かった・・・各自四枚追加で・・・モンスターの方は土煙で詳しくは分からない・・・ねぇ、ちゃんと式鳥見るからティファも連れてって!」

「駄目だ!!お前はもう戦いに出さねぇって俺達-全員-で誓ったんだ・・・・いい子だから・・な・・」

「にぃ・・・チウ君・・・分かった・・・」

 

アバンの言葉を退けた青年ポップを誰も詰る事をしなかった。最早砦全員が知っている、この青年の強さを。

 

そしてティファも馬鹿ではない。他界に来たからと言って自分の性根が治るわけではない・・駄目なのだ、味方は無論だが敵であっても命を落とすのを見るのが・・・もう無理なのだとティファの身内全員が知っている。

大戦最終時のあの時、死兵を相手取れた時のあの気概はもう無いのだと・・・それが嬉しいとティファの身内はほっとしているのだが、本人は忸怩たる思いがある。

いざという時動けない自分は本当に役に立たないと。

 

悄然としているのは何もティファだけではない。

自分達の子が出撃するのを見ているしか出来ないと、ロモスでの獣王戦やパプニカの鬼岩城戦で味わったあの痛みをまたもや味わう事になったレイラとジャンクとスティーヌ。

アキームはベンガーナに向かうが腕の傷でまだ戦えないと己の不甲斐なさに憤るバウスン、そしていつも勇者達の帰りを待たねばならないレオナとメルルとエイミ。

今回の彼女達には出番がどこにもなく祈る事しかできない無力感に苛まれる。

 

それでも信じて待つ、ここに全員が帰ってくることを、フローラは時間がないので激は飛ばさず、しかし言葉短に告げる。

 

「全軍出陣!魔王軍を蹴散らし全員で戻って来なさい!!」




今宵ここまで
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