勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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いしの積まれる世界:・・・解き放った

どちらの平原の戦いは地上軍側が敵に圧倒され身動きが取れない、そして双方共に見方が捉えられ文字通り手も足も出せない状況に陥った。

 

パプニカの平原で魔影参謀ミストバーンの暗黒闘気に全身を縛られたヒュンケルが囚われ、カール平原においては死神キルバーンによって異界のポップとチウが水の牢獄に囚われた。

ヒュンケルはミストバーンの暗黒闘気の糸で全身の神経を引き裂かれる痛みに耐えかね苦痛の声を止められず、ポップとチウも脱出できずに次第に体内に残っている酸素が乏しくなり苦悶の表情を浮かべるのを、どちらの仲間も助けに駆け寄ろうとするが、ダイ達は大量のシャドー達に阻まれ、アバン達もまた地上のモンスターではなく魔界のモンスター達の波状攻撃によって近づく事が叶わなかった。

 

そろそろ頃合いかと、主人格であるピロロも飽きてきたので人形のキルバーンに帰ろうと可愛い声を出して提案をする。

 

「キル~、ここ飽きたからもう帰ろうよ~。ミストの方も-愛弟子さん-捕まえてる頃だろうし、どちらの獲物の方が面白そうか見せあいっこしようよ~。」

「そうだね~。ヒュンケル君も捕まって勇者様達も大したことないの分かったし帰ろうか。」

 

その言葉に、アバンは焦りそして何よりも怒りに駆られかけるのをぐっと押しとどめる。

ヒュンケルは己の未熟で魔道の道に堕としてしまい、あのような外道から親し気に名をよばれるような縁を結ばせてしまった可愛い自分の長兄を捕られ、師である自分の前で敵の愛弟子であったのだと言い放つキルバーンか許せなくて!

しかしだかろと言って自分までもが激情に駆られ攻撃をすれば確実に打ち取られる・・そうなってしまっては誰が囚われた彼等を救えるというのか・・・だが、自分だけでは子の戦力差を突破しようもできず、戦力分散の采配がここにきて裏目に出てしまった。

 

万策尽きる

 

だからと言って・・・みすみす彼等を!!

 

アバンは今一度命を捨てる覚悟をした。それはデルムリン島で愛弟子達を救う為に仕掛けたメガンテをキルバーンに仕掛けるべく、己の持てる闘気を剣に宿した。

 

アバンストラッシュ!!!

 

ストラッシュアロータイプでキルバーンと自分達の前を塞いでいる全モンスター達を全闘気をもって瞬時に倒し、結果を見る事無くアローを追うようにトベルーラでキルバーンに迫るが、キルバーンの瞳が・・・・嗤っていた・・・・罠が、アバンを飲み込んだ。

 

「アバン!!!」

「アバン殿!!!」

 

炎型のダイヤシリーズではなく、アバンの周りの空間が黒い口を開け数多の剣戟がアバンの身に狙い定め飛来する。

 

「何を企んでいたのかは知りませんが、チェックメイトですね~先代勇者様~♪」

 

アバンの決意を小馬鹿にするように弄ぶように嘲笑い踏みにじる。

 

「死~ユ~アゲイン~。」

 

 

カール平原にてアバンの命の命数が尽きようとしている時を同じく、ヒュンケルが危惧した通りダイ達の魔力が切れ始めシャドー達に押されかけていた。

 

シャドー達の冷たい息にダイは竜闘気で半減しているとはいえども猛吹雪のような状態で次第にダメージが蓄積されつつあり、またヒャド系を得てにしているとはいえノヴァもそしてポップやフォブスター達も魔力切れが近くなり、ノヴァは闘気剣でも倒せるとは言えじり貧になって来た。

斬っても斬っても、マァムの光の闘気の打撃で霧散させても次から次へと現れるシャドー達に、彼等の心もまた擦り切れ始めた。

 

いつまで倒せばいいのか

 

そんな果ての無い敵を倒す前にヒュンケルが連れていかれのは目に見えている!

この中の誰か一人でも倒されればおそらくミストバーンはヒュンケルを連れて戻ってしまう・・・・・折角・・・光の道に言ったヒュンケルが連れていかれてしまう・・・

 

「・・・えせ・・・・返せよ!!俺達の兄弟子返せよ馬鹿野郎!!!!」

 

そんな事は赦せないと、ポップは魔力切れを起こす前に打って出た!

いけ好かない男だ、自分とマァムに対する扱いの酷さに腹が立ち、思いを寄せているマァムの心を掴んでいる嫌な奴・・・時に自分の失敗を皮肉って叱ってくる・・・それでも!

 

「俺達の長兄くれてやるかってんだよ!!!!」

 

トベルーラで乱数軌道でシャドー達の間を縫いながら、最後のメドローアを仕掛けにミストに近づくポップに、ヒュンケルが苦痛の中に会っても焦りながら押しとどめるべく残りの力を振り絞って大音声を発した。

 

「よ・・・せ!!!その力を俺なんかに使うんじゃない!!!」

 

一度は魔道に堕ちたこの身を、救い上げてくれたのはダイとマァムとそしてポップであった・・・普段ポップが自分に対してどれ程つんけんしようともヒュンケルはその時の事を片時も忘れた事は無かった。

自分が負けたあの時、マァムの慈愛溢れた笑みに心を温められたのは本当だが、死にかけた自分を案じた泣きそうなポップの声に目が覚めたのだ。

自分の死を厭う者がいてくれる人間がいてくれるのだと・・・そのポップが、自分の為に身を危険にさらすのをヒュンケルは受け入れる事は出来なかった。

 

その言葉の意味を、ポップだとて真意は分かっている。

自分よりもダイ達を救うべきだと・・・それでも!あのいけ好かない長兄を取り戻す為にとまらないポップを、ミストバーンは両手でヒュンケルを拘束していたが右手の身に暗黒闘気を集中させそして左手をポップに向けた。

 

闘魔傀儡掌は、ヒュンケルのよりもはるかに広範囲に広げて投げつけることが出来、ポップの乱酔軌道は捕らえられる範囲であった。

 

どちらの戦場も、大事な者達の為に足掻こうとするがその刃は届かず凶刃が振り下ろされそうになったその時

 

まずパプニカの平原に異変が起きた。

 

「バットですよ~異界のポップ少年。闇雲に飛ぶ出す猪は-網-に囚われてしまいますよ。」

 

のんびりとした-アバンの声-と共に聖石を根元につけたシルバーフェザーが上空から五本落とされるのを、ミストバーンは見逃さなかった。

 

声の主は-異界のポップ-と言った!ではあれはあの異界の忌々しい小娘達の仲間が何かの仕掛けだと瞬時に看破し、ポップに向けて放とうとした暗黒闘気の糸を一本の銀の羽に狙いを定めて絡め取ろうとした時、-ソレ-は放たれた!

 

「ブラッディ-スクライド!!!!」

 

それはヒュンケルの必殺技であり、ミストバーンが知る限りは暗黒闘気か通常闘気が練られた必殺技であったが、ミストバーンに放たれたブラッディ-スクライドは黄金の渦であった!

 

あれを食らう訳にはいかないと、さしものミストバーンもヒュンケルに固執する事をせず右手の暗黒闘気を切りすぐさま上空にとんだその時、パプニカの平原に詠唱が響き光に満たされた。

 

邪なる威力よ退け!マホカトール!!

 

その光は瞬く間にシャドー達を駆逐し、上空でミストバーンは怒りに震えた。

あともうほんの少しで主と親友が立案した作戦が、またもや異界の者達によって灰燼に帰したのだ!!

 

昨日キルバーンがパプニカの平原から戻って来た後に、嬉々として今回の作戦の大筋を主に具申していた。

 

曰く異界の彼等は心が美しく同族と仲間に対する愛情強く、彼等を引きずり出すのは容易いと。

引きこもった彼等には身内ではなくとも地上のどこかを人質同然にして脅せばいいというキルバーンの言葉に、バーンも思うところがあり採用した。

異界の者達は一様にそのような傾向が見て取れた。

 

たった一度であったが彼等のパーソナリティを取るには十分であり、キルバーンの報告と具申案と合致しているので、試してみれば全員が釣りだすことが出来たのを!

 

邪魔をしたのはおそらく一人は異界のヒュンケルに他ならないとミストバーンは確信している。

あの技は、アレが命を削るように編み出した必殺の技なのを誰よりも自分が一番知っているから。

 

そして光が収まってみれば、そこにはかつてバラン戦で砕かれた魔剣の鎧を着こみ・・少年ポップを-お姫様抱っこ-しているヒュンケルの姿があった!!

 

魔剣の鎧は何故異界のヒュンケルだと分かるのか、それは彼が己をヒュンケルだと認識してもらう為に態と鎧の兜部分を外しているからだ。

そして・・・ポップがお姫様が抱っこされているのは、ヒュンケルがブラッディースクライドを放った後に乱数軌道とはいえどシャドー達の冷たい息に足を取られたポップを見て自動的に-弟妹弟子達は自分が絶対死守-が発動し、-いつも通り-にしているだけであったが、ポップ自身は勿論、他のアバンの弟子達にとっては破壊力抜群の光景であった!

 

常日頃からの彼等の接し方と心の距離を知っている者達としては、夢でも見ているのだろうか、それとも幻覚攻撃も追加されたのだろうかと思うほどであり、特に二人の仲をとりもてないかと考えていたマァムにとっては衝撃的ですらあった。

 

・、その世界のポップが知れば、恋心持っているマァムに、いけすかないヒュンケルと仲良くして欲しいと言われればキレる案件ではあろうがそれはともかくこの世界のポップ・ヒュンケル事情を知ってる者達の心の絶叫は一致した!

マァムではなくて何故ポップがお姫様抱っこ!?それも助けた後自分達の兄弟子ならサッサとポップを落として立てとかいうのに、あのヒュンケルは剣は手放さず周りを警戒しつつ上空のミストバーンを見据えながらもポップを降ろす気配がゼロだったりする。

ちなみに魔剣の鎧のヒュンケルは足に凍傷追っている弟弟子を降ろす気など毛頭ない。

 

そのヒュンケルを見下ろしながらも、ミストバーンも周りの気配を全力で探っていた。

異界とは言えヒュンケルが呪法を使うのが信じられず、あともう一人いるはずだと探っていた・・・だが!!

 

「よう~異界の魔影参謀さんよ~。異界のとは言え俺と同じ馬鹿弟子ポップを甚振ってくれた礼したんだがいいか?俺もメドローアくらいはまだ使えるんでね〜。」

 

ミストバーンの背後を取りゼロ距離からのメドローアを仕掛けようとしているのは

 

「し・・・師匠!!???」

 

ヒュンケルからお姫様抱っこされているよりも!百歳になろうという師が戦場に出てきている方に少年ポップの心臓は跳ね上がる中、ミストバーンの前方に静かに-アバン-静かに姿を見せた。

 

「初めまして異界の魔影参謀さん。ここでの戦闘は双方にとって無益かと思いますがいかがですか?」

「・・・お前は?」

 

聞くまでもない事だが、ミストバーンは忌々し気に目の前にいる飄々とした男に名を聞く。

おそらく自分の推察が正しければ

 

「これは失礼をしました。私他界で勇者の家庭教師をしているアバン・デ・ジニュアール三世です。

この度は他界の弟子とティファとチウ君を迎えに来たのですが・・」

 

飄々としていた男の顔は笑っているが瞳は笑っておらず

 

「ついでに貴方を倒してしまうのもいいでしょうかね?」

「アバン!こいつ消すんならお前邪魔だからどけ。」

「せっかちですねマトリフ。まだこの方の返答聞いてませんよ?

引きますか?消し飛ばされますか?」

 

その忌々しい問いに答える前に、異界のアバンは爆弾発言を落とした。

 

「その前にあちらの外道がバラバラにされているでしょうが・・・おや?」

 

その言葉にミストバーンの姿が消えた。

 

「・・・・この世界の彼も・・・こちらは終わりました・・・でいいでしょうかねマトリフ。」

「はん、ギラ合わせただけの魔法のはったりで脅しをかけるなんてお前も悪党だな~アバン。」

 

其れよりも下の小僧達の面倒見に行くかと大人二人はシャドー達下消え失せたパプニカの平原にゆっくりと降り立ち、アバンは暗黒闘気の糸に捕らえられ神経にダメージを負って起きられずにいるヒュンケルの方に向かい、そっと抱き起す。

 

その事に驚き止めようとするヒュンケルを、アバンは優しい言葉で押しとどめる。

 

「無理はいけませんよ。大丈夫、こちらと同じようにカール平原の方にも私達の仲間が行っています。

貴方達はまずは自分達の傷を癒しなさい。

少年ダイ君、マァムさん、ノヴァさん、クロコダインさん動けますか?向こうの世界の薬草がこちらの方達にとっても使える事は確認済みなのでお持ちしました。

動けるようでしたら配ってください。

マトリフ、少年ポップ君の足は?」

「ん・・・ちと深ぇな・・・薬草塗ってベホイミすっか・・・暴れんな!」

「いやだって!!あんた・・あの・・・いいから降ろしてくれよ!!!!」

 

治療を申し出るアバンとそしてマトリフに、一同向こうに駆け付けなくていいのかと言いかけるのを押しとどめられ、そしてポップにいたっては此方の世界のヒュンケルではないとは分かっても、それでも普段の自分達の関係にこんな事は絶対にあり得ないポップは顔を真っ赤にして降ろしてほしいと懇願のように言っても・・・無情にも却下をされた。

 

「駄目だ、凍傷はきちんと治してもらうんだ。少しの傷と甘く見ずに、もっと自分を大切にするんだ。

直ぐに済むが、回復呪文で傷を治しても其の箇所は脆くなっている。嫌だろうがきちんと休める所までこのまま運ばせてもらう。」

 

・・・何か物凄く優しい言葉をヒュンケルから受けているのが超あり得ないポップは、低音ヴォイスのイケメン言葉に顔をさらに真っ赤にしているのを、異界のヒュンケルは羞恥心と受け取り、少年ポップにすまないと思ってしまった。

 

「・・・似姿は同じでも矢張り赤の他人に触れられるのは抵抗があるか・・」

「・・・へ?」

「アバン先生!そちらのヒュンケルの具合はどうですか?」

「ふむ、ダメージはありますが寸前までご自分の神経に闘気を巡らせて守っていたようです。これならば薬草だけでなんとかなりそうですがどうしましたかヒュンケル?」

 

普通にアバン先生呼びしているヒュンケルって何!!と、事態についていけないアバンの弟子達とヒュンケル本人とその事情を知っているの者達が困惑しているのを他所に、異界のヒュンケルの天然が止まらない。

 

「矢張り見知らない俺よりも、なれているそちらのヒュンケルの腕の中の方が落ち着くと思うのです。」

 

・・・・アバン先生に超丁寧姿勢で敬語を使って何言ってるんだこの人!!

 

「少年ポップ、済まんがもう少し待っててくれ、今あちらの・・」

「・・・す・・」

「ん?どうし・・」

「貴方がいいですヒュンケルさん!!!!!」

 

・・・・・・人生の危機を救われたポップは、彼を兄弟子だと認知してからは発した事のない言葉を絶叫する羽目になった・・・異界のとはいえ、ヒュンケルにさん付けする日が来るなんて・・・それも皮肉でもなんでもなく素で絶叫させられなんて・・・

 

 

パプニカの平原には完全に平穏が絶叫と共に広がった様を、アバンとマトリフは苦笑しながら見守りつつ、カール平原の方に想いを馳せる。

 

・・・・彼等がやりすぎていないといいのだが・・




今宵ここまで

次回カール平原の方を助けて全員集合に持っていけるようにします!
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