勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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よろしくお願いします。


料理人の仕事

二度目のクロコダインの咆哮が聞こえた。

それも苦痛の混じったような声で。

決着がついたのが分かって玄関の外で待っていれば、

「・・う、ボロボロ・・」

「・・から・・追わなくてよかったろ・・」

「あっ!ティファ!!」

兄達ボロボロで、マァムさんの体にもあちこち擦り傷切り傷がある。

でも・・皆無事に帰って来てくれただけで嬉しい。

「皆さんお帰りなさい。

レイラさんと一緒に軽い朝食を作って待っていました。

スープ温めている間にこの傷薬を塗って、

出来たらマァムさんホイミを掛けて上げてください。」

表面上の傷用の万能薬があれば、マァムさんの普段の魔法力の半分で治せるはずだ。

「分かったわ。

使わせてもらうわねティファ。

母さん、ただいま!!」

「お帰りマァム!」

マァムさん優しく笑って薬瓶受け取って家の中でレイラさんと喜び合ってくれてるけど、

「スープだけ?」

「もっと食いたい!」

飢えた男二人からはクレーム来た・・

「あのね、そんなボロボロの体で急に食べたら胃がビックリして良くないよ。

休んだ後にお肉出すから。」

「「・・分かった・・」」

理由言っても不満そう。

激戦の後にがっついて無事でいるなんて孫悟空かワンピのルフィーじゃない限り無理!

旅していてポップ兄の胃袋状態はしっかり把握してある自信はある!

ダイ兄は言わずもがなだ!!

あえて言おう!無理であると!!

・・話脱線しかけたけど、三人にはしっかり休んでもらおう、ロカさん同様。

マァムさんロカさんが薬がよく効いてあの騒ぎでも目を覚まさなかったと思っているのか

ロカさんの事を聞いては来なかったけど、

そこは歴戦の戦士。

弱っていても敵の気配で薬の効能吹っ飛ばして目覚めた・・気力だけでって・・信じらんない。

あの薬はちょっとやそっとどころか、

地震で震度六でも起きない効力はあるって自負していたのが・・粉々にされましたとも。

人の精神の強さを押して図るべしを地で行かれた結果だ。

戦士としての強さもさることながら、

「起きて待ってる。」

愛娘を思う心の強さが薬に勝ったと言えよう。

そんないいお父さんに申し訳ないが、

「駄目です!眠れなくともベッドに戻ってください!!」

ドクターストップ掛けなきゃいけない方の身にもなってほしい・・。

「一人娘が体張って戦ってんだ!!

せめて起きて・・」

「ではその娘さんに心配かけないようにしてあげてください!

先程ぐっすりと眠った貴方を見てマァムさんは泣くほど喜んでいましたよ。」

「っつ!」

「今ロカさんが出来ることは体を治すのを第一としてあげてください。

お願いします。」

「・・分かったよ・・ちくしょう!!」

無念だろうな・・こんな小娘に説得されなきゃなんないなんて・・。

説得というより脅しに近い言葉でロカさんを止めて、

止めたお礼をレイラさんから言われてすんごく複雑になったけれどもまあいいか。

 

「あれ・・マァムのちょっとのホイミで傷全部治っちまった。」

「ホント・・この薬が凄いのよ。

私のホイミいつもこんなに凄い訳じゃないのよ?」

「ほんと・・少し残ってたしびれも無くなった。」

一体何が調合されているんだろう?

傷の手当てを終えた三人は薬の威力に驚いたが、

「三人とも、スープが温まりましたよ~。」

「行こう!」

「腹減った!!」

「行きましょう。」

食欲が勝り薬への考えは霧散して、

「「「いただきます!!」」」

「美味しい!」

「美味え!!」

「母さん、お代わり!!」

心ゆくまで食べてバタンキューで休み、その光景をレイラとティファが

優しい笑みで見ているのを知らずに眠りの中に落ちていった。

 

「皆が無事でよかったわ。」

「そうですね~レイラさん。」

二人は台所で片づけをしながらお喋りに花を咲かす。

三人が無事に帰り、そのことによりロカが安心をして眠りに着いたのを喜びつつ昼食の話をしていたが、

-ピクン-

(・・なにか・・入ってきた!!)

ティファの気配探査網に何かが引っ掛かった。

(・・片づけは終わったか。)

「レイラさん、私は森に薬草を調達してきますね。」

「あら・・昨日の今日だから気を付けてくださいね。」

「分かりました。

・・そう言えば、この村には何か結界が張ってあるのですか?

何か力を感じるのですが。」

「ええ、ロカを治療してくださっている方が、

六・七年前に何か怪しい気配を感じたといって張ってくださったのがあるわ。」

「それは破邪ですか?」

「いいえ、破邪を張れるのはアバン様だけ、でも、

聖結界の凄いのよ。

(・・それって・・張ったのおじさんで・・怪しい気配って私かい!!)

ティファとしては覚えがある。

初めてネイル村に来た時、運悪くマトリフが居た。

しかもだ、遠目から見ただけなのにバッチリと振り返られて十分近くガン見された

怖い記憶が忘れられない・・。

 

(ロカさん生きてんのって、おじさんの万能薬+聖結界でザボエラが入れなかったせいか。)

確かマァムさん達は流行り病で亡くなったって原作では言ってたけど、

なんかの前世情報だと実はザボエラの姑息な方法で亡くなってたってあったしな。

・・あの時の私の行動が今に結びついてくれたんならいいや。

その結界が綻んで何か邪気持つものが侵入して来たか。

目玉か、ミストのシャドーか・・どっちみち消そう。

 

ティファは玄関からは出ずに視界結界で姿を隠し、空いていた窓から音もなく外に出た。

村の入り口付近の木の枝の影に目玉がおり、辺りを探ればかなりの数の偵察用の魔物の気配がする。

(三人の事は・・絶対守る!!)

 

          -バサラ・ダンカン!!-

             ゴオウ!!

 

金の炎が辺りの木々や草を一つも燃やさずに、

「・・ぎ・・き」

「ぐ・・う・・」

多数の目玉やシャドーを焼き尽くした。

聖炎には物理的な破壊力は皆無だが、ほんの少しの邪気にも反応をする。

それは元々森に棲んでいたモンスター達にはない気配なのでティファは存分に聖炎の

力を広範囲に発揮をした結果だった。

少しでも三人の助けとなるために、ネズミをうろつかせる気は毛頭ない。

破魔の石と同じ効力がある紙で作った術符を村の外から円を描くように地面に埋めていき

村の中に魔王軍の偵察部隊が入れない様に再び結界を直したティファは、

レイラに言った通りに森に薬草の補充をしに行った。

料理人の仕事は料理以外でもやることはたくさんある。

仲間の傷を治すことや、こんな風に周りからの干渉を撥ね退けることまで。

アバンに託された約束と共に、料理人の仕事を頑張ろう。

 

ティファが張り切って仕事をしたため、-とある所-が少々混乱をした。

「いきなり目玉の映像がすべて途切れました!」

「シャドー、ゴースト部隊も瞬時に全滅です!」

(・・何故だ・・情報は戦の要!

今あそこには何がいるというのだ!!)

情報部隊を管理している魔影軍団の長・ミストは、配下の報告に珍しく驚いた。

あそこには元アバン一行のロカがいる。

アバンの弟子達が立ち寄るかもしれないと情報部隊を送ったのだが・・瞬時に・・

それも何の気配・痕跡を残さずにというのが納得がいかない。

アバンの弟子はまだ未熟なはずだと・・。

そしてもう一つ、ミストを悩ますのが・・

(・・これでまた新たな情報部隊を作るための予算を組まねば・・)

如何に大魔王の軍でも古今東西の軍の例外に漏れず、予算は常に組まねばならない。

シャドー、ゴーストは手勢の配下でいいが、悪魔の目玉はただでは作れない。

けっこうなコストが一体ずつに掛かっている。

大魔王が底知れない富裕者であったとしても、主の富を予定外の事で削られるのが、

ミストにとっては許せない!

(一体誰の仕業だ!!!)

見つけたら確実に八つ裂きにしてやると、ミストは心の中で誓うのであった。




主人公は仲間にとても過保護気味です。
ミストバーンの方は、筆者としては真面目で一途なキャラで大好きなので、
ちょこちょこといじって聞きたいと思います。
なおミストバーン・キルバーンの表記は今後略式を採用します。

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