魔界の名工様が必死で武具作りに励んでいる間の出来事をアバンが全て説明した・・少し離れたところから・・・異界の魔界の名工様の煽りをもろに食らった子の名工様は、仲間を助けに来たのは良いとして、なんで少女を膝にのせてあいつはご満悦なのだどげんなりした。
百歩譲って異界のチウはまだわかる!あいつは良い子で俺でも膝にのせて癒してほしいとは思うのでいいのだが・・・・俺に少女趣味はないから、頼むから俺も同類だという目で見ないでほしいと泣きたくなったこの世界のロン・ベルクは悪くない。
そんな事は知らないロンは、愛しい少女を膝に乗せて大好きな子供達を傍らに置けてご満悦であり、そうこうするうちにティファとポップとチウだけは今日は特別食だとアバンが四人の前のテーブルに三つのプレートを置いた。
「ティファ、ポップ、チウ君、-向こうの世界の人達-が、貴方達の為に拵えてくれた食事です。」
にこにこしながらその支度をするアバン先生に、良い子三人組は嬉しいのだが困ってしまう。
「先生、この世界ではみんなが頑張ってるのにティファ達だけそれって良くない気がします。」
「俺もそう思います・・・・どうにかダイ達だけでも一緒に食べられませんか?」
「僕達だけが其れなのは・・・・」
あぁ本当になんて良い子達なのでしょうかこの子供達は!!今すぐにでも向こうに連れて帰ってひたすらに甘やかしてあげたいです!!!・・・とはアバン先生は脳内大暴走させたが表面には決して出さずにコホンと咳払いしたのみで説明を始める。
「大丈夫です、この食事に関してだけは砦の-大人達全員-に周知して許可を得ました。この世界の私・・・いえアバン殿もフローラ様も了承されましたので。それにこの世界のダイ君達にもクッキーお持ちしましたのでそちらを楽しんでいただきます。」
自分達という脅威が来たのだ、こちらのもどきとは言え大魔王を僭称する者が今日の夜に焦って夜襲かけてくるような三流ではないでしょうからデザートも楽しんじゃいましょうと・・・物凄い子きおろしをしながらの敵分析と状況分析に、-先生時折口悪くなるな-なくらいにしか思っていない三人の子供達は兎も角、もっと真っ黒い気配を出されて説明を受けたアバン・フローラを含めた大人全員はその時の事を思い出してゾッとした!
まぁ夜襲したくともティファの結界のお陰で位置特定はされていないでしょうし、誘き出そうにもこちらの戦力不明時に同じ事をするような馬鹿ならばそれはそれで罠張ってやりようはいくらでもあると冷たい瞳で口だけ三日月を描いたような異界のアバンは本当に恐ろしかったのだ。
そんな気配は三人の子供達の前では微塵も見せずに、向こうから持ってきた料理をいそいそとマジックリングから取り出した。
「「「おぉぉ!!」」」
ティファ・ポップ・チウは思わず声を上げてしまった。
取り出されたのはクローシュを被せた三つの丸い銀盆。
クローシュが外れないようにと奇麗な組み紐で丁寧に縛られていた。
「ふっふっふ、このマジックリングは-とある人-の秘蔵品で、なんとどれ程持ち主が知っちゃかめっちゃかな動きをしようとも中身は何の影響も受けないという超優れものなのですよ!」
しかもこのクローシュも特別製で、内側に保温用の呪法がびっしりと刻まれているので料理も冷めていませんという説明に、ティファ達の周りはどよめきが奔った!!
「・・・・・んだ其の馬鹿げたマジックアイテムは・・・」
「どこの酔狂な奴がそんなものを作ったんだ・・・」
「・・・・リングなんて伝説級ではないですか・・・・」
特に呪法だのマジックアイテムだの魔道具だのに精通しているマトリフ・ロン・ベルク・アバンは異界のアバンの説明に唖然とした。
呪法を銀に刻むこと自体はそう難しくはないが、それは平板な物や緩い曲線に限った話であり、クローシュなどほぼ球体でありそれも内側に刻むとなればどれだけの職人技術がいるのだとマトリフとロン・ベルクの意見であり、マジックリンの中身が外からの干渉を一切受けないという事は、内側の空間を揺るがさない強固な結界がいるだろうとはアバンの意見に、向こうの人達は優しい人達が多いんだなとのほほんと聞いていた少年ダイ達も唖然としてしまった・・・つまりこの三人の食事の為に!伝説等級の代物が用意されたのだ!!そういう物は、本来もっと太古の石板や同じくらいの繊細で壊れやすい伝説級のアイテムを持ち運ぶときに使用するのなのに・・・ それを平然と持ってきているこの人達って何!!??である。
・・・ぶっちゃけ全部用意したのは魔界の神様だろうと、子供達三人は直ぐに分かったので驚きはなかった・・・・一日の結婚式の為にデルムリン島の脇に同じくらいの島を大規模転移させたり、魔界の山脈が高すぎるから雨雲が阻まれているなとティファが愚痴れば即日の内に部下に命じて山の高さを十キロどうやってか低くさせるだの権力・魔力を山ほど持っているまさしく魔界の神様ならば、このくらいの物を持っていても不思議はないだろうな~と・・・・一般感覚から最早子供達はずれていた・・・・手遅れな程に。
なので驚きではなく、魔界の神様達の心尽くしの方に歓声を上げて、いそいそとクローシュに結ばれていた組み紐をほどき開けてみればそれは・・・
「フワフワオムライス!!!!」
「おぉ!!俺久しぶりにこれ見たわ!!!」
「凄い!本当に湯気立ってます・・・柔らかそう・・・」
素直に喜ぶ子供達にキルは嬉しくなってルンルン声で解説をする。
「これは-僕達の料理長様-が、僕達が出立するギリギリに作って、-あのお方-がクローシュとリングに入れたんだよ。
組み紐は向こうの-花嫁さん達-がしてくれたんだよ~。」
つまり温かいものを自分達に食べさせたいと、魔王軍の料理人にして大魔王バーンの料理人たるミストが拵え、バーンが伝説等級のリングとクローシュを用意してくれて、マァムとメルルとレオナが組み紐を結わえてくれたのだと思うと、三人の瞳にじんわりと涙が浮かぶ。
きっと、自分達の事を物凄く心配してくれながら用意してくれたのだと思うと、其れだけで胸がいっぱいになるがそれは兎も角!!
「「「いただきます!!!!」」」
作り主達の想いを無駄にしないとばかりに、アバン先生からスプーンを受け折るや否や子供達は直ぐに食べる為の挨拶をして、そしてフワフワオムライスにスプーンを入れて、口いっぱいに頬ぼった!
「ん・・・・ふ・・・柔らかい!美味しい!!」
「中にケチャップライス入ってる!!・・・鶏肉うんんめえぇぇ・・」
「あっふっふ・・・美味しいです!!」
そこにいるのは、美味しいものを頬張る子供三人の姿があった。
味方を欺きながらも必要だからと茶番をしたティファ、心に傷を負いながらも戦う事をやめないといったポップ、必死に負傷兵達を守り抜くために体を張ったチウの姿はどこにもなく、無心にご飯を食べている子供しかいない姿に、異界の大人達は目を細め、食事の為にティファとチウを降ろしてポップの横に陣取ったロンもそれを肴に美味そうに酒をグビリト呷る。
子供なんてものはこれが一番だろうと言わんばかりに。美味しいものを無心に食べて、そして様々な事を学んで疲れたら寝かせて大きくなっていくもんだと。
そんな素晴らしい光景を、自分達の世界でも実現させてあげたいと、させねばならないとこの世界の大人達が新たに胸に誓う程の尊い光景であり、そちらの食事の支度もできたので少年ダイ達も食事にありつく。
異界のアバンはビシバシ言いながらも、こちらの食事の方も向こうの料理人たちが拵えてくれたようで豪華な食事であった。
沢山の鶏のから揚げに、向こうの新作料理だという野菜たっぷりのポテトサラダにデザートには本当にクッキーまでもが付けられたのだ。
マヨネーズという白いソースが絡められたポテトサラダは美味であり、大量に銀盆で各テーブルの中央に配置されたので全員が、それこそアバンまでもが弟子達と同じ様にお代わりをしたほどであった。
バランも久しぶりの部屋の外の食事に戸惑うが、-ダイ-が横に座って美味しいねと笑う姿に緊張は解れて少しづつ口をつければ本当に美味しかく思わず笑みが浮かぶのを、二人の目の前に座ったラーハルトは泣きそうになる。
自分がバランに拾われ長ずるにつれて食事の支度や身の回りの世話をしてきたが、バランは常に何かに駆り立てられるように食事も栄養が取れればいいとばかりに味わう事をしてこなかった姿しか見たことが無かった。
それが・・・力と記憶を失ったその背で本来の優しい人間性を取り戻したのだから何という皮肉だと思いつつも、主の心が休まる光景にラーハルトは涙を禁じえなかったのだ。
そのラーハルトを、隣のヒュンケルがそっと背中を叩き、叩かれたラーハルトは何だとヒュンケルを睨んだ。
自分の涙を揶揄っているのかという無言の言葉に、ヒュンケルは首を横に振って黙って微笑んでいるのを見て、ラーハルトは察した。
主と自分が共に生きて、良き光景を見れて良かったなと言ってくれている事に。
それは少年ダイの周りに座っているポップ達も同じであった。
いつもはヒュンケルは離れている位置に座っている・・・・なのに今日はアバンの弟子達全員とメルルとチウとクロコダインレオナとノヴァは必ず近く同士で座るように異界のアバン先生から厳命が下ったのだ。
「どうも貴方達は普段のコミュニケーションが全く持って足りてないように見受けます。近頃作戦の伝達や今後の方針以外の事で日常会話を五分以上した事はありますか?」
・・・・思いっきりぐぅの音も出ないような指摘に、ヒュンケルの事を嫌いではないがいけ好かないと思っているポップも反論できず、ヒュンケルの左隣はラーハルトなので右隣に座る事になった。
向かい側はバラン・ダイ・マァム・チウ・ノヴァであり、ポップの列はラーハルト・ヒュンケル・ポップ・クロコダインとなった・・・・しかし日常会話ってなんだっけと、ダイは父バランに沢山話しているのでそちらは兎も角、他の子供達は大いに戸惑った。
ここでジャンク達が助け舟を出してくれればありがたいのだが、偶には子供・仲間同士でさせましょうというこれまた異界のアバン先生のお達しで、保護者達は保護者達の席が遠くに用意をされて援護はない・・・と思ったら・・・・向こうの世界のクッキーが仕事をしてくれた・・・
パキリ・・
「・・・うめぇ・・・甘いけど・・中にベリーの実が入っててうめぇや・・」
大広間全員にクッキー五枚が配られた。
クッキーは魔王軍の料理人たちが一丸となって大量に作ったのだ。ティファ達が攫われた先で手助けしている者隊のやる気を出させる為にも、美味しい物で釣り上げよう作戦は功を奏し、食事の時は黙って食べよと厳格なバウスン将軍さえもが美味いと言ってしまう程の絶品に、少年ポップはむしゃむしゃと食べてしまった。
周りは味わいながらも食べているのに臍をかんだがもう遅く、もっと味わえばよかったと後悔すれば、ことりと目の前に三枚のクッキーが-左隣-から送られて来た・・ヒュンケルが自分の残りを全部くれたのだ。
今までこんな事をしなかったヒュンケルに、当然ポップは目を丸くし、周りの子供達それこそ何事においてもつんけんしているポップをあしらうようなヒュンケルを知っているノヴァもどうしたんですかという目を向ければ・・・ヒュンケルの顔が赤くなっており、ボソボソと口を開いた。
「・・・・今日俺を助ける為に無茶・・いや・・・無理・・・・兎に角そのお礼だ・・」
いつものように、弟弟子が無茶無理をしすぎないようにうとどうしても上から目線の説教時見てしまう言葉を飲み込みながらの変な言葉遣いになってしまうヒュンケルの顔は益々赤くなった。
ただお礼をしたいだけなのに、そして自分の事で命を危険にさらしてほしくない、そんな簡単な事さえも面と向かっては言えない己がいやになりながらも、ヒュンケルは異界のヒュンケルと自分のポップとのやり取りの焦がれたのだ。
異界のヒュンケルはあの後も優しくポップに話しかけていた。
「痛みは無いだろうがマヒしたような感覚はないか?」
「大丈夫っす・・・少し力が抜ける感じも明日には無くなっていたら大丈夫だって師匠と-マトリフさん-言ってましたから・・」
「そうか、俺もだがお前も若いからマトリフ大魔導士がそういうのならばすぐに治るだろう。」
自分では・・・あんな風に言っては上げられない・・・優しい言葉を掛け合うにはこれまでの関係が許してくれない。
ヒュンケルはずっとダイ・ポップ・マァム弟妹弟子達を守って来たつもりであった。
この厳しい戦いで死んでしまわないように、心を鬼にして厳しい言葉を特にポップにかけてきた。
己の不始末でダイが死の大地付近で行方知れずになった時も、慰めでは何の意味も無いと発破をかける為に憎まれ役をかって出て奮起させたが、あれが決定的にポップとのわだかまりを作ってしまったのをヒュンケル自身が自覚している。
いかに戦時下と言えども傷ついたポップの心をさらに追い詰めたうえで怒りで動かす・・他にやりようがあったはずだがヒュンケルにはその時にはそれしか・・・いや、今もそれしか浮かばない・・・きっとあの優しいヒュンケルであったれば・・・そもそもがそんな事態にさせていないのではと思うとこれまでの自分の未熟さが浮き彫りになったのだ。
罪を滅ぼしも相まって弟妹弟子達を守るアバンの長兄を務める為に、無理をした、背伸びをした。
自分は何があっても大丈夫だと-大人の振り-をした。ダイ達の事を守る為に苦言めいた事を言ったが、それがかえって弟妹弟子達、特にポップとの間に溝を作った・・・それが為に自分はマァムよりもダイ・ポップと長い時間いたというのにダイが何かを思い悩んでいる事をポップから相談される事は無かった・・・察しても上げられなかったのだ!
弟妹弟子達を守ると言いながら背伸びする事に精いっぱいで!己の事で手一杯で!!異界のあの少女の様に包み込んで守る事をしてあげられなかった-子供-と変わらない自分をヒュンケルは認めたのだ・・・認めて少しでも優しさを出そうとヒュンケルはクッキーを無言でポップに差し出そうとしたが-言葉-に出した・・・戦いの指示や特訓についてはなどはサラサラと言えるのに・・・・異界のアバン先生の言う通り、日常会話が壊滅的だがそれでもヒュンケルは頑張って上から目線にならないように心がけて言い切った!!
「ありがとうポップ・・・俺を助けてくれて・・・」
そして、弾かれてもいいからとばかりにぎこちなくポップの頭にそっと手置いた時、ポップの丸くなっていた瞳がさらに大きくなった事でヒュンケルは不覚にもクスッと笑ってしまったのに、ポップが反応した。
「・・・んだよ笑って・・・・俺の顔に何かあんのかよ・・・」
それは憎まれ口であったが、声音にはいつものような刺々しさは無く、その言葉に釣られるようにヒュンケルも自然と答えた。
「丸い瞳が落ちそうなほどだったのでつい笑ってしまっ・・・嫌だったか?」
「・・・・俺の目ん玉は落ちねぇよ・・・・それよりもこれ貰っちまって良いのかよ?本当に全部食べちまうぞ?」
「あぁ、それは全部ポップが食べてくれ・・・・俺はもうお腹がいっぱいだ・・・お前が食べくてれた方がクッキーも喜ぶ・・・と思う。」
なれないながらも冗談を言おうとする堅物を絵にかいたようなヒュンケルの姿に、ぶほっという噴き出した声が聞こえた。
見ればレオナがもう無理とばかりにお腹を押さえていた!
その様子にマァムは悪いわよと言いつつも口元うぃひくひくとさせていた・・・まさかヒュンケルがあんな下手な冗談言うとは思わず、メルルはびっくりした顔をしてしまい、生真面目なメルルが驚いた顔にも笑い上戸なところがあるレオナはもう駄目であった!
「アッハッハッハ!!もう駄目・・・ダイ君!私笑い死にそう・・・」
「ちょ!レオナそれは酷くない?」
「だって・・・あぁあ~・・・ヒュンケルって本当は面白い人だったのね。私今の貴方の方が断然いいわ!!」
それはヒュンケルが自国を攻め滅ぼしたと知った時レオナが勇者達を助けて生きて償う道を指し示した王女の顔とは違い、明るく笑う少女の顔で臆面もなく好きだと言われたヒュンケルは、-そういう意味ではない-と知りつつもさらに赤面してしまった!
言っては何だが戦場での敵とのやり取りや、魔王軍の軍団長として同僚や配下とのやり取り以外はコミュニケーションなどほぼ取ってきていないヒュンケルは-普通の少女-に等は免疫ゼロで。
そして好きだのなんだのの言葉など父バルトス以外にはアバンに大切な弟子しか言われてこなかった・・・
その姿に、なんだこいつ・・・・俺と同じで女の子にちょっと褒められただけで赤くなるなんて子供じゃんとポップは思ってしまった。
自分もマァムやメルルに褒められただけでのぼせて調子に乗ってしまうが、ヒュンケルももしかしたら・・・・自分と同じ子供なところがあるのだろうかと思うと・・・・-壁-にひびが入って
「んだよヒュンケル、姫さんにちょっといい事言われたら赤くなってさ。
クッキー一枚返そうか?甘いいもん食って落ち着くか?」
軽口を叩けば・・・睨まれた・・・というよりジト目をされた・・・それは初めて見る-拗ねた少年-のようであり、その顔にチウもクロコダインも笑ってしまった。
「ヒュンケルさん、僕のも一枚どうぞ。ポップ、人を揶揄うのはいただけないよ?」
「左様、左様、俺は甘いのはいいから残りのポテトサラダとやらを貰って酒を貰ってくる。お前達で甘いのを分けて食べろ。」
「チウとクロコダイン・・・お前達まで・・・」
自分を庇っているのかレオナ達動揺に揶揄っているのか判然とせず、憮然とするヒュンケルにラーハルトもダイも笑ってしまった・・・思えばこんな風に食卓を囲んだ事は一度も無かった。
バランと戦った後マトリフ大魔導士の洞窟で世話になっていた時の、それぞれが自分達の回復と戦力アップだけに集中してそれどころではなかった。
三賢者のエイミが作ってくれた料理もそこそこに食べ、ダイは特訓をしてポップとヒュンケルはアバンの書に夢中でかじりつき、それ以外の事で会話をしたのかすらも覚えていないありさまで・・・・日常会話は全員が集まってしたのは本当に初めてなのだと知った。
それはこの一行を包んで守る者達が居なかった為であり、子供達の責では決してない・・誰もが、闘って生き残る事に夢中になるしかなかったのだからと、彼等の遣り取りを遠目で見ているティファは思う。
それを阻止する為もあって自分は料理人をしたのだが・・・・
-原作-でも本当にそんな日常パートはほぼ皆無であり、戦う絆以外があれで育つと言われればティファは無理だろうと考えていた・・・生死を共にすれば絆が・・・友情が育まれるなんて幻想だと。
現にしょっちゅうつるむ様にしていたダイとポップ、そして自分からその二人の間に飛び込んでいったレオナは兎も角、原作の後半ではマァムとポップとの間すらも妙にギスギスしていて・・・最終決戦時のあの変な修羅場は何だとすら思ったものだが・・・
「ポップもヒュンケルも甘いもの好きなの?」
「・・・俺は好きだな・・」
「・・・・・俺はその・・・初めて食べたが・・」
「そうなんだ・・・-今度-・・・・全部終わったら作ろうか?」
「え・・・」
「マァム料理できるの知ってるけどお菓子作れるの?」
少しの間、ロモスのネイル村から王都につくまでの短い間の数日間の移動時にマァムに料理を作ってもらったダイとポップは、マァムはクッキーも作れるのかと尋ねれば
「あ・・ミーナが得意だから教わるわ。上手く焼けたら食べてちょうだい・・メルルも一緒に作ってみる?」
「え!!??・・・実は私・・・・旅から旅の占い師生活で料理は全部宿屋さんか野宿の時の料理しかした事ないです・・・」
服作りは自分の分を拵えるからできると、ぼそぼそというメルルに、ニヤリとレオナが例の-ウシシ-笑いが出た!!
「だったら私も一緒に特訓するわ!!ダイ君!美味しいクッキー作るから絶対に食べてちょうだい!!私もクッキー作る特訓できるように沢山頑張るから!!!」
それは、この大戦を全員で勝って生き残ろうというレオナなりの言葉であった。
今この席で硬い言葉を使いたくない、楽しい話でいたいという彼女なりの背一杯の言葉にダイは柔らかく頷いた。
「レオナのクッキー作るの俺も手伝いたい・・・みんなでさ・・・デルムリン島で作らないかな?」
「ダイ・・・・俺も手伝う・・・・料理だったら先生教えてくれると思ぞ?・・・ヒュンケルも習うか?」
「俺!!??・・・・材料の準備位は・・」
-戦いの後-の話を、-子供達全員-が初めてした瞬間であった。
ぎこちなく、それでも確かにお互いの言った言葉を受け入れ前に進もうとする姿に、この世界のアバンは涙を堪え、ロン・ベルクもマトリフもほんのりと笑って聞いている。
ティファの世界の甘さの百分の一以下ではあるが、この世界にも確かに甘い空気が流れた瞬間であった。
ちなみに元祖甘い組はそれどころではなくなっていた
「ちょっとドール!!・・・この-十種類のトライフル-もしかして・・」
「あのよ・・・まさかたぁ思うけどよ・・・」
「その・・・・・作ったのって・・」
「三人とも大正解♪」
デザートは魔王軍の双子の料理人アンリとセシルは得意のアップルタルトを作ってくれ、そして十種類のトライフルはミニカップに入って三人分がそれぞれに用意されていた。
作り主はもしかしてと、ティファとポップとチウがキルに尋ねてみればキルは三人に顔を寄せる寄せさせ、バーン様だよとひそりと囁いた。
長いローブの袖があるのと流石にそれはとミストが止めて材料の下拵えをミストと双子が速攻で揃えたが、盛り付けは本当に全て只御一人でされたのだと、名前はもう出さずに成された説明に、ティファとポップとチウは感激して惜しみながら味わった・・・やっぱり自分達にとっての魔界の神様・大魔王バーンは優しいあの人だけだ。
きっと周りをハラハラさせながら拙い手つきで懸命に自分達の事のみを思って作ってくれたのだと思うとそれだけで嬉しくなった。
その日の大広間は様々な甘い空気が流れた日となった
今宵ここまで・・・・・
書けた・・・・原作だとこの辺で一行仲間とエイミさんの修羅場が入る所らへんでしょうが・・・その代りに甘い空気を-向こうの世界-から無理やり輸入させました!!
本編に書いた通り、あの世界では仕方がないと思い-勇者一行の料理人-を書いたのですが、原作準拠世界にも、主人公達が戻った後も少しでも蟠りの少ない世界を残してあげたくて書いた回となりました。
次回からは最終決戦に向けての話となります<(_ _)>