「つまりアバン先生とおじさんと-ドール-は時空間の穴をもっと広げて安定させる要因で、ラーハルトとヒュンケルとロン・ベルクさんは護衛のような感じという事でいいでしょうか。」
「その通りですよティファ。ふふ、貴女は本当に一を聞いて十を知ってくれるので説明の手間が省けて助かります。」
「・・・ども・・」
えぇ・・・何やら異界と言いましょうか私達のアバン先生に褒められて照れ臭いティファです。
甘くておいしい夕飯の後は、歩哨で出ている兵士さんたち以外全員集合で大広間でアバン先生達が来た経緯についての説明と、私達の今後についてのお話です。
私が褒められたのは最初の部分で、先生達が来た理由です。
曰く、アバン先生とおじさんとキルは時空の穴を広げる秘術を今回限り天界から授けられて、アバン先生は破邪の洞窟で会得した秘術で、おじさんは・・・あの精霊だか悪霊だか分からない意外と高位の精霊なパックさんから得た加護で得られた精霊呪力で、キルは・・生命化した事で得られた魔族の呪力の三つを合わせて作られる時空間の穴を広げて安定させる法陣を作る・・・らしい・・・
「あまりにも複雑かつ専門的になりすぎるので、私達もそう説明されて使用方法だけしか教わっていないのですよ。」
とは、それぞれに渡されたアイテムを見せてくれた時に困った顔をしていたアバン先生の言葉だった。
三神様達の気持ちも、困ったアバン先生にも私的にはよく分かる・・・神羅万象の一切の説明なんて、話されても困るし時間もないからとりあえず使用方法と、不具合が会ったらこの世界の思念体となったマザードラゴンに知らせれば、伝書鳩してくれるから使い倒すようにって・・・・あのいつもはのほほんとしている人の神様からのお達しらしい・・・神様たちが壊れてる気がしてこあい・・・・帰った後-色々-大丈夫なのか心配だよ・・・
そんな心配よりもお前に傷一つつかないようにしろよとは、-全部-の事情を知っている全員がティファの心情知った時の突っ込みではあるが、お互い知らないのが何とやらであろうがそれは兎も角、この世界のアバンとマトリフ以外は、時空間の穴を広げるアイテムだの、向こうのマトリフに精霊の加護が付いているだのの話に思考が飛ばないようにするのに精一杯である。
竜の騎士たるバランは何とかなっているが、息子のダイはぽかんとしており、アバンとマトリフから魔法の薫陶を受けているポップも呆けた顔をして、他の面々もついていけない顔にティファが優しく解説をする。
「要は大規模な魔法を大勢の魔法使い達でする事を、アバン先生とマトリフおじさんとドールがしてくれるのです。
空間を安定させて、更に通れると向こうの三神様達が確信をしたら私達は帰れる・・でいいんですよね。」
「ベリーグッとですよティファ。それと向こうの世界から-贈り物-と・・・言いましょうかロン・ベルクさんから渡す物があるそうです。
後はお願いしますねロン・ベルクさん。」
「おう。」
それまでの説明をつまらなさそうにしてティファとチウを相変わらず膝に乗せて酒をかっ食らっているロン・ベルクは、ちょっと行ってくると二人を膝から降ろして大広間の扉の方に移動する。
先程の食事の席を全て片付けて扉側に壇上の様になって説明会が開かれている。
その際問題点も洗い出そうと、感じた事・疑問に思った事・問題に感じている事をどんどんと言って貰って書き出す為の黒板と白墨を持ったアバンが陣取っている・・・まさに往年の-先生-である。
そのど真ん中にロン・ベルクが悠々と歩を進める。酒瓶片手に持ちながら・・・
「紹介にあずかったロン・ベルクだ・・・と言っても大層なもんを持ってきた訳じゃないがな。」
やる気もあまりなさそうなその姿に、ダイ少年達は慣れているが生真面目なノヴァは切れかける・・・この世界のノヴァはどうもロン・ベルク属性とは相性が悪いらしいが、持ってきた物に全員が驚いた!
「そこにいる俺達のヒュンケルの鎧の魔剣の試作品だ。俺が大魔王バーンに武器作ってやった事は知ってるな?」
ロン・ベルクもチャランポランのようだがきちんと確認位はとる・・・・膝に少女を乗せて酒かっくらう趣味持ちだが・・・やる事はきちんとやるのを、フローラがきちんと伝えられていると答えたので話を続けた。
「鎧の魔剣と魔槍も俺は二振りづつ作ったんだ。一つは相手に渡すようと、もう一振りは手元に残して改良できないかの研究用に取って置いた。」
因みにその時バーンには一振りづつしか作っていないと嘘ついて懐に仕舞ったのだというしょうもないエピソードまで・・・・ロン・ベルクって碌でもない奴なのだろうかという・・・・この世界のロン・ベルクはまたもや同類の目を向けられて切れた!
「俺は一振りしか作ってないぞ!真っ当に作って渡して誤魔化しなんてしてないぞ!!」
こいつ一体何なんだというこの世界のロン・ベルクはきっと悪くない・・・お前は真面目なんだなという異界のロン・ベルクをぶっ飛ばしそうになったのを、ダイ達が必死になってしがみついて止めたのもまた・・・ご愛敬でいいだろうきっと・・・
「落ち着いてロン・ベルクさん!俺ロン・ベルクさんがそんな悪い事しないって信じてるから!!」
「向こうの世界は向こうの世界だ!怒んな!!!」
ダイとポップが必死にしがみついているのを横目に、異界のロン・ベルクは全く相手にしないで借りたマジックリングから鎧の魔剣を取り出し青年ヒュンケルに預ける。
「結局これを改良する気持ちも全くわかずにお蔵入りさせていたものだ。一応ここに来る前にこっちのヒュンケルに一通り動作確認はさせてある。
-向こうの魔法のスペシャリスト-にも一通りの魔法を撃ってもらって魔法防御も衰えていないのは確認済みだ。
錆び付かせるようなへまもしてないから使ってくれ。」
お前はもともと剣士なんだろうというロン・ベルクの言葉に、ヒュンケルは感激して受け取った・・・・もう二度と、鎧の魔剣とは会えないだろうと定めていただけに、良くも悪くも生死を共にした魔剣が手元に戻って来たのだから無理はない。
「気に入ったんだったらくれてやる。」
武器だのは飾っておいても武器が可哀そうだいう言葉に、ヒュンケルは万感の思いを込めて頭を下げて礼をした。
不器用なヒュンケルには、嬉しすぎて言葉が出ずにそれしか出なかったのだが、ロン・ベルクとしてはそれだけで十分だった。
戦う漢の矜恃は安くはなく、一級品の戦士がここまで礼をしてくれるだけで十二分以上である。
この青年ヒュンケルとしても、長年の相棒が手元に戻りそれも貰えるとあっては喜び一押しであり、そしてもう一つ喜ぶ理由がある。
「ラーハルト!」
「・・・どうしたヒュンケル?」
「分かっているだろう?この鎧の魔剣があれば・・」
「俺に魔槍を返すと?」
「あぁ、俺には矢張り剣の方があっている。長らく借りたがお前に返そう。」
ラーハルトに鎧の魔槍を返してあげる事。
まさか殺し合った末に繋がりとも思える何かを得た男の形見と想った物を返そうとは思ってもみなかったヒュンケルは-武器が無くなる心配-が無くなりほっとした。
異界のロン・ベルクから鎧の魔剣を渡されなくとも、ヒュンケルは槍をラーハルトに返すつもりだった。
其れで武器が無くなろうともだ。
ラーハルトは最早戦う力を無くしたバランを守り抜く使命がある。
大切な人を二度と失いたくないのは誰もが同じなのだから。
剣はヒュンケルに、槍はラーハルトの下に渡り、俺は自分の仕事は済んだぞとばかりにロン・ベルクはまた元の席にふらりと戻り、またティファとチウを膝に乗せて酒を飲み始める。
「・・・・嘘つき・・・」
ポツリと言うティファの言葉に、自分とチウにしか聞こえないぽそりとした声ににんまりと笑いながら。
そのティファの言葉に、声を拾えたチウはきょとんとしているのを、ロン・ベルクは更に笑ってチウの頭を撫でて気になった事を聞いてみた。
「時にチウ、お前さんの籠手はどうした?」
「あ!!・・・あぁ・・・あれはですね・・・」
チウの籠手はティファがマジックリングに預かって持ち歩いているのを知っているロン・ベルクは、チウにこっちで使ってみて不具合はないかを確かめてみたのだがチウの歯切れが悪い・・・・もしかして壊されるような事があったのだろうかというロン・ベルクの懸念は、良い感じに外れた。
困ったチウに代わったティファの言葉によって。
「ロン・ベルクさん、この世界のクロコダインさんのアックスの刃とポップさんのブラックロッドの切っ先部分見てみてください。そっとですよ。」
「あん?・・・・あれは・・まさか・・」
「はい、-チウ君の籠手-が材料です。先程この世界のロン・ベルクさんがマァムさんに渡した手甲も鎧化した時心臓部分が-オリハルコン-でした。
その三つに、チウ君の籠手が仕事をしています。」
チウもいつそれを言おうか迷っていた。ロン・ベルクさんなら自分の想いを分かってくれるとは思っていたが、それでも自分の為に懸命に作ってくれたものを他の人の武器にしてもらいましたとはチウも早々には言えなかった。
分かってくれるのとそれを受け入れてくれるのは別だと分かっているから・・・しかしチウの懸念は杞憂だった。
「アッハッハッハ!!!!いいぞ!!それでこそお前さんだ!!だから俺はお前にあれを作ってやったんだ!!」
その笑い声は、-外道-を壊したと悦んでいた時よりもより大きく、其れよりも一層晴れやかな笑い声が大広間を席巻した!
「あれはお前のものだ!お前がどう使うか興味があったがなんともお前らしい!!ふっふっふ・・・・あぁ・・・・たまんねぇ・・・・お前達はいつだって・・」
自分の予想を軽々と超えてくれると、ロン・ベルクは慈しみを込めてティファとチウを抱きしめる。
どんな酒よりも自分を酩酊させる最高の宝物達・・・チウは、自分で言っては何だが魔界では垂涎の的になっている魔界の名工の最高傑作のうちの一つである鎧の籠手を惜しげもなく異界の者達の力となる為にこの世界のロン・ベルクに渡し、そしてその願いはきちんと叶った。
自分の笑い声に、ロン・ベルク以外が驚いているところを見ると、どうやら内密に渡したらしい。
ロン・ベルクの方は自分が何に笑っているのかを察したようで、良かったのかという表情にまた笑いがこみ上げる。
いいに決まっている、良い子のチウが決めた素晴らしい行いに否やがある筈も無い。
「向こうに帰ったらまた拵えてやる。」
幸い-材料-に事欠かないというロン・ベルクの言葉に、あんな凄い物何度も貰っていいのだろうかとチウは思うが、ロン・ベルクさんの心遣いに嬉しくなった。
「さて、一通りの説明はこれで最後です。」
笑っている自分達のロン・ベルクが落ち着いた頃に、アバンは最も重要な事を告げた。
「私とマトリフは空間を安定の為-だけ-の力しか行使できません。昼間使ったようなことはもうこの世界では出来ないのです。
そしてそれは私達と来たヒュンケルとラーハルトも同様です。」
この世界に大勢来るには力の制約が必要であり、自分達の今のレベルは半減されており、それも全力の大技を使えるのは一度きりの制限があり、この後は通常の魔物達と戦うには遜色ないが、-大魔王バーン-はもとより外道死神とミストバーンと渡り合えてもとどめをさせる大技はないとの事だ。
「この世界に引っ張られたティファ達と違い、渡って来た私達の現状は以上です。」
部屋の隅で立って聞いている-ドール-は兎も角、一度きりの最大の援護射撃を使い切った渡って来たヒュンケルとラーハルトも、その通りだと頷いているのを、ダイが応えた。
「・・・・・一度でも助けてくれたんだから・・・十分だよ・・」
後は俺達が頑張る事だから・・・・
まだどこか自信なさげなダイの言葉に、少年ポップは何故か泣きそうになった。
一度は戦いを、自分の人生をも放り捨てようとしたダイが、自分達が頑張ると言ったのだ!!
「そうともさ!ダイの言う通りここは本当は俺達だけで守らなきゃいけない事なんだ。後は-俺達-が頑張る話なんだ!!!!」
勇者が進む道を決めたのならば、魔法使いがその道を照らしだして仲間達を引っ張るんだと意言葉に仲間も応えた。
「そうね、私達がやるべき事よ!!」
「剣も戻り・・」
「戦う力を頂いたのだ!!」
「僕達が頑張って戦うのみです!!!!」
戦えるマァム・チ・ヒュンケル・クロコダイン・チウの言葉に、
「僕もまだまだやれます!何が出来るかじゃない、最後まで戦い抜きます!!」
勇者ダイ一行と氷の勇者ノヴァの言気高き勇気ある葉に、大広間の騎士・兵士達は奮い立自分達も最後まで共に戦い抜きそして勝つのだという言葉が大広間に響き渡るのを、ジャンク達は震えが奔った。
娘や息子たちの気高い姿に親たちは涙を流しそうにかける。小さかった子供達が羽ばたく姿を見られた喜びに震えそうになる。
その熱量が、それぞれの胸を熱くし合いながら
今宵ここまで
-嘘つき-の中身はとー魔法のスペシャリストーの正体は読者の皆様のご想像にお任せします^_^
異界の者達の無双などが無いように、制限をきちんと書かせていただきました。
そもそもが主人公と伝説級とはいえどもアイテム一つが来ただけで生ける伝説のマザードラゴンの肉体の消失がありましたのに、向こうの世界からは無償で来れるのはおかしいと思い、これでバランスが取れればと思います。