「僕はリンガイアの復興に尽力するよ。」
「それなら俺達も手伝うよ。パプニカもカールも・・・女王様の話だとオーザムの直系の人達は城と共にしたらしいけど従妹が残ってるらしいぜ?」
「そう・・・ならオーザムも王国の再建が出来るね・・・・勝って復興に大忙し・・・其の忙しさが早くほしいや。」
難しい話は終わり、ドールさんからの心尽くしのお茶会も終わり、子供達は今日は早く寝る様にと異界のアバン達からのお達しで、少し大部屋の所にベッドが運び込まれて子供組の男の子達は同じ部屋で寝転がりながらお喋りをしている。
ノヴァは大戦が始まってからは国を滅ぼした魔王軍を倒す事しか考えてこなかった。
しかし、マァムが大戦後にお菓子を御馳走してくれるという話から、大戦が終わった後の事に初めて目が行った。
戦いが終わる・・・ノヴァにとっては其れは想像が出来なかったから。
いつ終わるとも分からない地上の狂暴化したモンスター達との戦いに、後から後から送り込まれる新たな魔王軍の敵達・・・・終わりがあるのかとすら思った地獄に終止符が打たれると言われても実のところ実感が湧かないでいる。
それでもやりたい事はあるのだと口にしてみれば、その道を目指して頑張れるのではないかと、己を奮い立たすために口にした言葉は、思いのほかノヴァの心に力を与えてくれた。
力強さと温もりを・・・
その言葉に少年ポップが応じる。あちこちに出来た・・・もうノヴァは友人でいいだろうとばかりに友人や仲間達や師の故郷の復興の手伝いに汗水流す・・・戦いなんかよりも余程いいと。
それをダイは俺はどうしようかと悩んでいる。
自分はこの後は親父とひっそりと生きていくだけでいい。ポップ達やカールのこの砦にいる人達は大丈夫でも・・・もう見知らぬ人の中に入るのが怖ろしく感じる。
自分はどこまでいっても-人間-ではない。それがはっきりとわかる魔族でも半魔ですらも無く、見た目は人間で中身は違うとなれば、知られた時の怖ろしさはきっと自分の方が怖がれる気がして。
「ダイ、お前は当分島でバランとブラスさん達とのんびりすりゃいいさ。」
「そうだなダイはそうするといい・・・俺は・・」
「んん・・・・ヒュンケルも俺達とさ・・・・復興手伝いすりゃいいんじゃね?」
ダイの悩みにヒュンケルはポップの考えを支持したが、彼自身は今後等考えた事はなく言葉に詰まるのをポップが遠慮がちに誘ってみた。
ヒュンケル自身も忙しく働きながら答えを見つければいいのではとばかりに。
「チウはどうするの?俺と親父と一一緒に島に来る?」
この後の世界で、きっとモンスター達はハドラー大戦の後の様にモンスター狩りが怒らないとも限らない。
自分達と共に活躍をしたチウは兎も角、遊撃隊達はどうなるのかと心配したダイの優しさに、チウは嬉しくなる。
「僕はもう少し人の中でやってみるよ。」
なにせ僕はシティーボーイだからというチウの姿に、吹いてしまったポップにバフリと枕が投げられた。
見れば目を三角にしたチウからの攻撃であり、やるかと笑って受けて立ったポップも枕を投げるのを、ダイとヒュンケルは呆れ、そして次第にくすくすと笑いだすのを、ノヴァは皆子供だな~と思いながら枕に頭をつけてうとうととする。
「結局マァムはポップ君とヒュンケルのどっちが好きなの?」
男の子達がお喋りに花開いているように、女の子達は恋バナをしている。
人の恋愛大好きなレオナの遠慮のない言葉に、ポップに想いを寄せているメルルは複雑そうだが自分も知りたいとばかりに耳をそばだてる中、マァムは溜息をつくように答えた。
「・・・分からないの・・・ポップの事は弟みたいに思ってるし・・・」
これがマァムの偽らざる本心であった。何と無しにはポップが自分の事を思ってくれている事には気が付いていた。
しかしポップ自身から決定的な事を言われたことはなく、いつも彼自身が茶化して終わりになるのでもしかしたら気のせいかもしれないとも思うが、もしもそうだと言われてもきっと今と同じ答えしか返せない。
それではヒュンケルの事はどうかと再び問うレオナの言葉に、マァムはヒュンケルも違うと答える。
「私ね・・・ヒュンケルの事が気になったのはきっと・・・-頼れる大人の人-として見ていたんだと思う。」
時折ヒュンケルの事を意識したようなマァムの態度に、レオナとそしてメルルもてっきりマァムはヒュンケルにその気があるのかと思ったがどうも違うらしい。
「私ね・・・お父さんの事あんまり覚えてないの。村の人達も大人の男の人達はいたけれど・・・私ってほら、頑丈で丈夫で手がかからなくって・・・少し大きくなってからは大人の男の人に守られたことが無いのよ。」
マァムは苦笑しながら自分の事を話し始める。
父は幼い頃に亡くし、自分が生きていくのに困らないようにアバン先生の弟子になってますます強くなった後は、反対に村の大人達に頼りにされていた。
それこそ大戦が始まり村の子供のミーナが行方不明になれば自然と自分が探しに行ったほどに。
村には同年代の友はなく、ダイとポップも自分の強さに感心していた・・・きっと最初に出会った時はポップも気の強い頑丈な女の子だとしか思ってなかったろう。
そんな中、バルジ島でハドラーに捕まりあわやの所をヒュンケルに包まれるように守ってもらったあの時ドキドキ胸が高まった・・・・それも今考えれば守ってもらえた安心感からだとマァムは分かっている。
アバン先生に再会でき時と・・・・異界のヒュンケルさんやドールさんに優しくしてもらった時もそんな感じを受けたから分かったのだ。
自分の中で想像していた強い父に守ってもらえる安心感であったのだと。
ティファさん達の世界の大人達は皆優しい。それこそ半魔のラーハルトさんも今日は速く休むがいいと、優しい言葉を自分達一人一人にかけてくれていた。
片付けは気にせず早くお休みよとはドールさんからの言葉で、誰もが自分達を守るべき子供だと扱ってくれていた。
「きっと・・・私は本当の意味で恋した事ないみたいなの。」
自分のこれまでの感情を振り返って出した結論に、メルルはほっとして・・・・自分に嫌になった。
過酷な戦いに身を投じるマァムさんに比べれば、安全圏にいる自分の浅ましさが嫌になるのを、レオナは横目で見ながら寝転んでいるマァムの頭をそっと撫でてやる。
「マァム、良い男探しの旅でも出てみる?この戦いが終わった後に。」
「へ?」
「貴女今まで山奥の村にいて出会った人達自体が少ないじゃない。」
世界は広いんだから、全部終わった後に探せばいいじゃないというレオナの言葉に、マァムはそんものかしらと思う。
「メルルも私の所に遊びに来てちょうだいね?」
王女から女王になったら自由には遊びに行くのは難しいのよと、レオナは笑ってメルルも誘いかける。
自分には同年代の友達はいないのでお城でも今日のようなお茶会や女子会がしたいのよというレオナの笑顔に、自己嫌悪に陥りかけてしょんぼりとしたメルルの心があったかくなる。
占い師生活は結構ハードなのだ。
自分達の出して結果に腹を立て怒鳴る客はまだましな方で、時折料金を払わない貴族達もいる中、実質的に一国の現君主たるレオナ姫の飾らない人柄に惹かれる。
自分もポップに対しての気持ちは漠然としている。
それだってこの戦いが終わってからゆっくりと考えてもいいではないかと、メルルも焦る気持ちが静まった。
明日で・・・全部決まるのではない。
明日をみんなで乗り切ったその先でゆっくりと考えればいいではないか
自分の気持ちもその時に・・・・
今宵ここまで
男の子達にも女の子達にも未来に目を向けてもらった回でした。
原作であったあのごたごたは此方では-原作のマァムさんもこんな感じではなかろうか-という考察を入れて書かせていただきました。
どうにもポップはマァムの言う通りの対応で、ヒュンケルに対してもあまり恋愛とか初恋とかではなく、頼れる大人の男の人に対する憧れのような気がしたのです。
違ってももしかしたらほのかに思いを寄せているかもしれなくとも、全ては魔王軍に打ち勝って考えてもらう事になりました。