勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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いしの積まれる世界:夜は明けそして・・・・

その日は良く晴れていた。

秋に見られる晴天を流れる雲一つない、-超超高度-からでも-下界-が遮るものなく見渡せるほどの晴天に、-空飛ぶパレス-は玉座の間に座りてご満悦であった。

 

「良く晴れておる、そうは思わなかキルバーン?」

「・・・その通りですねバーン様。」

 

玉座に座りてワインを啜りながら、下界にいるであろう-忌々しい異界の小娘-をどう蹂躙せんとするかと嗤っているバーンを、キルバーンとそしてピロロとてもが冷たい瞳で見遣るのを、当の本人は意にもかえさずそれすらも嘲笑う。

 

「余がこの世界の勇者ではなく、あの異界の小娘にご執心なのが気に入らんか死神よ?

それとも魔界の強者や現竜の騎士たるダイと戦い消耗する余を討たんと虎視眈々と狙うのに飽いたか?」

 

歌う様な揶揄う様な物言いにも、目の前の-死神達-は何の感情も動かさないのをバーンはつまらなさそうに放り捨てる。

 

「その方が欲するものとヴェルザーが欲するものが違えただけでここまでとはな・・・見込み違いか・・」

「・・・・・」

「まぁよい、数百年もの間、余の無聊の慰めになった-褒美-の件は忘れてはおらん。」

 

もしもこの大魔王宮に土足で踏み入る者あらば狩り尽くせという主の命を受けたキルバーンは、御意にと言ったきり早々に空間を通り、主の許しなく玉座の間を後にする。

 

「ふむ・・・・どう思う-ミスト-よ?あれは余の命令通りに動くと思うか?」

 

バーンは-一人きりとなった玉座の間にて、数千年を共にする忠臣の名を呼び問うた。

あの死神は-影-の伝えた言葉ではなく、自分自らが伝えた言葉に従うかと。

 

思えばキルバーンが来てから初めてかもしれない。

いつも死神に仕事をさせる時は、初対面で妙にウマの合ったミストバーンに伝えさせていたのだが。

 

「まぁよいか・・・・・最後の最後であれがどう振舞おうとも余に敵う筈も無し・・」

 

キルバーンの想いや行動に何ら重きを置く気が、そもそも道化としての価値以外然程興味のないバーンは一人心地る。

下界の忌々しい小娘くらいであろうか?地上を消すという-壮大な遊戯-を思いつきそしてそれを実行する為の企てが実を結んだ時以外で己の興味をここまで搔き立てたのは?

 

あれはどこまで知っている?どうやってあちらの世界を制してきた?切り札は異界から来た者が何かしらを持ってきたか?それとも・・-あの忌々しい小娘自体-か・・・・-アレ-はよく分からぬ・・・

 

ワインの入ったまま杯を右手で弄びながら、下界が払暁になるその時を待っている。

高度の高さで日がすぐに見られるが、下はまだ空の白みも無い・・・自分達の絶望を見ぬうちに逝かせるのなぞ何の面白みも無い・・・・自分も見てみたいのだ。

あの残酷な事柄を多く見てきたが故に、近頃はその遊戯に飽いたと言っていた死神のお眼鏡にかなった異界の大ネズミのあの麗しき涙を・・・・そして火を噴くが如くであった異界のポップが見せたという絶望の様を死神はこの世の宝を手に入れたが如くご満悦でその時の様を自慢気に話していたのが癪に障った。

 

あの傲慢な程の自信家のような魔法使いは実は奇麗な子供だったんですよ。

 

その奇麗な心に傷がつけられたのが余程嬉しかったのか、珍しくミストバーン以外に対して酷く執心を見せていた。

しかしあの様子では興味が失せたか・・いや、それどころではなくなったかと、バーンは喉の奥でクツクツと嗤う。

 

死神の様を思考で愉しみながら、速く下界の夜が明けよと願うバーンの言葉に従う様に、カールの隠し砦のある森に陽光が差した。

其の報をシャドーから聞いたバーンはニンマリと笑って命を下す。

 

「翼ある者達に昨夜掴んだ位置を中心に、周囲一帯を爆裂呪文と火炎呪文で焼き払わせよ。

-何事も無かった場所-が目指す場所である。

見つけ次第地上界のモンスター達をいるだけ突撃に使え。使い潰しにして構わん。」

 

そして何もない所にヒビが入らばよし、もしも-結界-が強固だあるのならば指揮官以外の魔界の者達全員で事に当たれと。

 

これまで勇者達の隠れ家が見つけられなかったのは異界の小娘の所為だと、バーンは半分以上確信をもって考えている。

能力の名は知らない、詳しい事も知らない、だが-勘-が告げている。

 

全ての忌々しい出来事の渦中にいるのは必ずあの小娘だと・・・数千年で魔界を平らげたは何も自身の力や軍の規模が物をいっただけで決してない。

確かに死神や影達が反乱勢力を殲滅し、軍は損なわれる事なく魔界のここぞという大戦の時にだけ集中させてきたが、大戦をするにも-機-と言うものがある。

そしてその機を知るのに間者や造反者や、果ては死神を時折間諜として使った事とてもある。

その時は自分は暗殺・謀殺をする死神だというのにという文句を聞くともなしに聞いていたがそれは兎も角、魔界の一角を占める大物達は当然自分のような大軍勢とそして結界を有しているのは当たり前であり、ではいつが自分達に都合の良い機が訪れるのかを、バーンは悉く勘が告げる通りに戦略・戦術を練って来た。

 

ある時は相手の寿命が差し迫った時であり、いつかは表立って現れなかった内乱の予兆を何と無しに感じて調べさせその通りであったので内乱を大火にして相手の内側から貪り尽くした時もあった・・・あの時は愉快であったとバーンは思い出し笑いをする。

骨肉相食む事が常であった魔界では珍しく、身内を信じていた男の領地の最後が愛していた息子の手によって灰燼に帰したと告げてやった時のあの絶望に満ちて崩れた様が堪らない・・・・それが弱く虫けらの如き身で刃向かう愚か者達が絶望に沈み悪足搔きや、それによる焦った身内同士の罵り合いでも見物できれば上々だろうとバーンはその程度にしか下界にいる勇者達をを評価していない。

 

自分の望みはどこまでいっても天界への復讐、さらに言えば忌々しい神々によって奇跡までも使って守り通して来た人間達の楽土を壊滅させ、絶望した天を悉く食らいつくす事であり・・・・・それだけが長い魔族の生の中で願った事・・・

 

夜は開けた、それと共に地獄の蓋を開けよ我が育てし魔王軍

太平の惰眠を貪っていた虫けらどもを尽く起こしそして地獄の底へと叩き落とすがいい

 

 

-地上だとて太陽の影響による旱魃だの寒冷だの自然に翻弄され、その上モンスター達の襲来だの、合間を縫うように魔界からの侵攻を幾度も受けて被害甚大になるたびに頑張って復興しているというのに!世界の広さも生きていく辛さも知らぬ、頭御花畑の木っ端大魔王もどきが何を抜かすか!!-と、とある料理人が聞いたら間違いなく怒髪天をつかさんとする命が発せられた直後、翼をもちし者共が空を埋め尽くし攻撃呪文を眼前の森に向けて一斉照射する。

 

地上と魔界の戦いの狼煙が切って落とされた合図であった。




今宵ここまで

短めですがようやくこの世界の最終決戦の幕が上がりました。
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