勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

477 / 536
獲物はどちらか・・・


いしの積まれる世界:罠

太陽はいつも通りの動きに従い、日付変更線をまわった地をその陽光で照らしていく。

たとえそれが合図にその地に厄際が見舞おうとも知った事ではなく、そもそもが自然に意思などあろうはずもなく、良くも悪くも何事をも決めるのは-意思持つ生物-達の仕出かした結果であり、故に陽光指したと同時にカールの西の森が全て・・・否、一部分以外を残して木々や動植物たちそして何も知らずに眠っていたモンスター達が瞬時に滅ぼされたは、天上のパレスにいる大魔王バーンの命令通りに起こったに過ぎない。

 

その光景は異様であった。

周囲の動植物達が火炎呪文によって四方が黒焦げになろうとも、爆裂呪文によって大地が抉れようとも、まるで四角で切り取ったように何事も無く傷が毛一筋もつかない異常な場所が広大な程にあった。

 

あれが大魔王様の言われた目標であると、この場の一軍を任された魔界のレッドでビルは察した。

あの中には先の決戦で逃げた臆病な勇者達が閉じ籠って居るという・・・愚かな事だと指揮官のレッドデビルはあの場所に逃げ込み、こうとなっても未だにうって出ることすらしない-臆病な者達-を嘲笑う。

最期には強気大魔王様が勝つというのに、逃げてばかりとは情けない勇者がいる者だと周囲の自分の配下達すらが嘲笑している。

 

先の決戦時で魔軍司令官ハドラーが討たれたとあったが、このような臆病者たちに討たれるとは不甲斐ないとすら出ている中、レッドデビルはこの状況に飽きたのか地上のモンスター達に-結界破壊-の為に突撃を命じる。

大半が突進系の地上のモンスター達であり、一斉攻撃の衝撃と上空からの再度の呪文攻撃に結界とても破壊できようと見積もって・・・まさかこのような微温湯のような地上界に、魔界並みの結界を張る者はいないだろうと・・・・甘い見積もりであった。

 

一斉攻撃のすぐ後に、それは知れた。

 

「報告!地上のモンスター達による突撃に、結界にはひび一つはいらず!!・・・のみならず全てのモンスター達は結界の強度により衝突死した模様・・」

「見えている!!・・・・全く忌々しい・・・」

 

今回は街を蹂躙するでなく野戦で戦うでもなく目に見えない結界を炙り出し、そして破壊するための軍であり、地上のモンスター達で選ばれたのがあばれうしどりやアークバッファロー、はては火炎を口から吐こうとも魔界生まれの自分達には遠く及ばないがその突進力と巨体から繰り出されるであろう破壊力をかってドラゴンを十数頭ぶつけたのだが、全て頭蓋骨または全身の骨が砕け内臓に突き刺さり、突進してぶつかったと同時に地上のモンスター達軍は一瞬にして全滅した。

 

「・・・・この結界を張った奴は怖ろし者だな・・」

 

自分達の爆裂呪文を加えれば相まって相当な破壊力になりえるのを傷一つつかない事もさることながら、激突死を狙ったのであれば魔界においても相当な強者と言えよと、レッドデビルは感嘆し、称賛に値する者だとニンマリと笑う。

まさか臆病だと思っていた勇者達に、敵対勢力であれば惨たらしい死をいくら積み上げようとも構わないという気概がある者がいるとは思わずに笑ったが、それも自分達が負ける事は無いという余裕の表れであった。

 

地上のモンスター達を使い潰しても構わない、其の達しの通りに数百もの命が一瞬で消えようが、自分達には何ら影響はないという指揮官の思惑は、残念ながら滅さられ、それは程なく天上のパレスの玉座の間に悪魔の目玉が報告をした。

 

「ほう・・・なかなか骨のあるものが地上にいる者よな・・・・この世界の者達ではなく異界の者達の献策か?」

 

悪魔の目玉の報告に、一部とはいえども自軍が滅さられたというのに玉座に座るバーンに焦りの色はおろか、味方が死んでしまったという悲しみどころか苛立ちすらも現れずただ笑って報告を受けていた。

まるで楽しい事が起きたと知らされた子供の如くに。

 

大魔王の命令通りに場所を炙り出し特定した後、直ぐに地上のモンスター達は命令通りに突撃をした瞬間、あるものは脳漿をぶちまけながらも狂ったように突撃をやめずに絶命し、突進力が強ければ強いモンスター達程衝突の破壊力に筋肉と外皮が破れ骨が砕け内臓に突き刺さり尽く絶命しそして・・・

 

「我等の目玉が一瞬の内に滅せられ直ぐに新たな目玉を送り込みましたが、レッドデビル様の率いる空中部隊は杳として行方知れずに。」

 

地上のモンスター達全てが絶命した直後に、その場所を見張っていた悪魔の目玉たちは何らかの方法で全て滅せられ、-ミストバーンの代わり-に諜報部隊を指揮しているシャドーがすぐさま新たな目玉部隊を急行させたが、十分足らずの時間でレッドデビルが式する空中部隊が姿を消し、代わりに周囲の焦げ方とは違う-四角四方-の巨大な燃え後があったという。

 

「・・・間違いなく、周りの火炎呪文とは違ったのだな?」

「は!四角四方の方はまだ若干くすぶっていた-赤黒い炎-が残っており、通常の火炎呪文とは異なっておりました。」

「・・・・分かった・・・そしてその地には勇者達が見当たらぬと・・」

「捜査半径を五キロにしていますが未だに行方知れずにございます。」

 

バーンの言葉にも悪魔の目玉は淡々と報告をする。

これが初期の魔軍司令官であったならば、前進と声を振えさせ大量の汗をかきながらみっともなく報告をするのだろうが、元来悪魔の目玉には意思はなく、報告と簡単な会話と命令をこなす知能だけをザボエラに育てさせており、死という概念するが無い目玉たちには恐怖という感情は皆無であり、どのような事も揺らがずに報告する者達をバーンは存外気に入っている。

 

嘘偽りも無く、忠誠心だの友愛だのに囚われる事も無い便利な道具だからだ。

決して自分以外を見ない道具・・・ミストバーンもそのようになると思ったのだが・・まぁ良い・・・

 

「捜索範囲を広げさせよ、世界中をひっくり返してでも・・・・・・いや・・勇者達にとって-因縁深き-彼の地を重点的に調べよ。」

「は・・」

 

先代勇者が魔王ハドラーを討った地・・・・あそこは存外様々な因縁やそして-地場-がある。

魔族が好む力が溢れる地であり、それをして魔王ハドラーはあの地が死火山となり天然の要塞となっているのも相まって拠点とした地。

 

「ただで帰れると思わぬ事だな異界の稀人どもよ・・・」

 

 

 

 

 

その日パプニカの王城は厳戒態勢であった。

自分達の実質の原告種の帰還のみならず、そのレオナ姫からあの勇者ダイの父君と其の護衛であるという半魔のラーハルトという男を城内で守ろうと言われた時には、国元もきちんと守る為と言われて留守居役をしていたアポロ・マリン・エイミは本気で度肝を抜かれた。

 

二人はレオナ姫に伴われ夜が明ける-一時間前-に突如として城内に姿を現したところからして度肝を抜かれた。

目撃した兵士などは、姫の幽霊だと叫びちょっとした混乱が起きたがそれは兎も角、レオナは先の決戦時に一度勇者達が破れた事と、其の再戦が今日行われるので、ダイの父親をこのパプニカ王国の総力を挙げて守るのだと言われた時、三賢者には疑問しかなかった。

ダイが当代の竜の騎士になった事はレオナ姫自身から全て聞かされており、いわんやダイの父親ともなれば先代となるだろうが竜の騎士であり、何故父親は戦場に出ないのだという言葉にレオナは溜息と共に説明をした。

 

全ては息子であるダイを守らんと一度は身を挺し、-奇跡手に一命は取り留めた-が、力の全てを使い切り最早一般人と変わらない身となってしまったのだと。

 

「その様な事が・・・・分かりました!我等三賢者と兵士達はこれより追撃してくるであろう魔王軍からダイ殿の父君をお守りいたします!!

マリン!見張りをそれとなく増やせ、あからさまであればバラン殿の身がここにあると喧伝する事になるから注意しろ。

エイミはバラン殿と護衛であるラーハルト殿を部屋にご案内した後すぐに城内に魔王軍との最終決戦の余波がこの地に来ると伝えて厳戒態勢をとらせろ、複数の兵士達を使いつつも決してバラン殿の事を漏らすな。レオナ様はこの後はどのように?」

 

三賢者の筆頭たるアポロは、自分達に出来うる最適解を次々に導きだしそして主に指示を仰ぐ。

戦の現場の指示出汁は兎も角、この後の大まかな指針を出すのは-王-たるものの務めなのだから。

 

アポロの出す指示に満足げに微笑みを浮かべていたレオナは一転して悲しい顔になる。

なぜなら・・

 

「私もこちらのバランさん同様に、敵の人質に取られないように非難するように言われたの・・・駄目ね・・・いざという時に闘う力がないから外されるなんて・・」

「・・・レオナ様・・・」

 

無力であるが故に外されたのだというレオナの言葉に、アポロはおろかマリンやエイミも駆ける言葉が見つからず口を閉ざす中、レオナの想いはこの世界のラーハルトにもよく分かる。

主を守る為にはどのような事をしようとも、まさか戦場の外に出されるとはラーハルトは思いもしなかったからだ。

連れていかれた後はきちんと異界の者共の話を聞き、-今回の策-を全て聞かされた時は自分も敵を殲滅させるかとやる気が漲っていただけに、双方のアバンからダイが十全に闘えるように父バランの護衛をしてほしいと言われるとは思ってもみなかったのだから。

 

愛した者達が立つ戦場から遠ざけられる・・・これほど辛い事は無い・・・無いのだが、レオナがいかにベホイミやベホマを使えたとても、それは異界のポップや-ティファ-の薬草が簡単にその位置にとって代われる場所であった・・・物心ついてから鍛えられていた賢者としての力を否定されたようだが・・・・異界のアバンの言葉が忘れられない・・

 

「貴女とバラン殿に何かが起きた時おそらくダイ君はもう一度死にましょう。」

 

そして世界が滅亡してもいいのであれば戦場に立ちなさいという情け容赦のない言葉は、この世界のアバンの眉をひそめさせるほどの物言いであったが・・・現実を突きつけるのにこれほどうってつけな言葉は無かった。

その言葉をこの世界のラーハルトも聞いたからこそ、バランと自分の護衛の為に王城内に籠る事を是としたのだから。

 

今この世界を守らんとしている勇者にして主君の子息であるダイ様の最愛の者達を守る事を

 

 

 

「今頃は-全ての策-がうまくいってますかね~マトリフ?」

「・・・け!!うまく行ったかどうかよりも!策の内容絶対に嬢ちゃんたちに知られるなよアバン!!!」

「当たり前でしょう。ティファは愚か-向こうとこちらの子供達全員-には内緒ですよ。知らなくていい事なんて教える趣味は私にはありませんからね~。」

「・・・ったく・・・この地の地場の力を取り込んだ陣はこれでよしか・・・全く、お前さんがハドラー打ち取った魔王の最後の場所に俺達の希望を託すってどんな悪趣味野郎が描いた図だ?神さんも皮肉が過ぎるってもんだろう・・」

 

この世界で今起きている策謀を全て一人で描き切り、魔王軍を損耗させダイの最愛の者達はパプニカ城内に、そして非戦闘員であるレイラ・ジャンク・スティーヌはもとより、超高齢化で自分達のマトリフよりも内臓系統が弱っているこの世界のマトリフはテランにある竜の騎士しか本来は入れないあの湖の神殿に隠して来た。

 

「そもそもがマザードラゴンが始めた事なのですから当然責任の一端はとって頂いてしかるべきでしょう?」

 

物凄い冷笑を浮かべて異界のアバンはこの世界と思念体となったマザードラゴンを繋ぐ水晶を思いっきり脅したのだ。

やらないのであればもはや自分達は総力を挙げてティファとポップを留め、この世界の一切から手を引くと・・・・夜半に闇に紛れて湖の外から脅しをかけてきた異界の稀人に対し水晶は泡を食って結界を消し去り招き入れ、異界のアバンの望みは何かと本気で怯えながら聞いたのだ・・・・自分が忠誠を誓いしマザードラゴンが残してくれた希望の光を消させ時という健気な心など、異界のアバンからすれば望みをかなえる為の道具でしかなかった。

 

水晶のパーソナリティはこの世界のダイから、水晶と交わした話を聞きだしそこから辿って見事的中させたアバンの言う通りに水晶は彼等を匿いそして、-砦の罠-を、ティファには自分達の策の為の時間稼ぎの為と称し、ティファの隠れ結界でパプニカ王城内とテランの湖の神殿に隠す者達全てを届けさせる時自分達も来て無人となった砦の結界を存続させそしてティファの知らない-罠-をキルに張らせた。

ティファには隠し砦をほんの少しだけ晒させ、そしてー隠したままの方が時間稼ぎになるーとだけ伝え、結界に衝撃がありティファに伝わった時はすぐに消すように伝えている。

そしてティファの知らないところで、キルは砦の大きさと同じ規模のダイヤのナインを仕込ませた。

 

きっと砦の結界を消す為に、様々な攻撃呪文やー破城鎚ーや爪や拳や闘気などが使われるでしょうとー大まかな予測ーをティファとポップとチウの前で披露し、いなかったことにがっかりとして怒り狂って思考を乱してやりましょうというアバン先生の策略を、良い子達は先生って、と少し白い目で見ていたのがアバンには可愛い事であった。

死兵をたった数年前に相手にした一廉の戦士達のすっかり平和に馴染んだ姿は、アバンには愛おしいものである。

もはや血生臭い事は全て自分がする、どうか二度と戦いの天才などという事は言われないで欲しいものだと。

 

そしてティファ達には予めこう言ってある。

 

-自分とマトリフ-は、空間を安定させる呪法以外の力は無い、つまりキルには力が残された状態で来れている。

自分達も少しは持ち込めるはずの力を、アバンはあえて全てキルが持てる様に綿密に力の配分をしてこの世界へと来たのだ。

当然ラーハルトとロン・ベルクはもう少し自分達にもと言ったが、アバンは-全て-を見越して頑として聞き入れなかった。

 

それはすなわちこの世界の狂暴化したモンスター達と魔王軍が群れを成してきた場合、ロン・ベルクやラーハルトの技よりも、話に聞いている-ダイヤシリーズ-の方が汎用化が見込めると。

罠を張れば、後はそこに獲物が勝手にかかるに任せればよく、人がいる必要が全くないからだとは、アバンはラーハルトにもロン・ベルクにも伝えなかった。

その思惑を言われずとも察しているマトリフからは、

 

「お前の悪党っぷりにも磨き掛かってんなぁ~。」

 

と呆れられたのを、アバンはにこりと笑ったのみであった。

 

異界のアバンからすれば、この世界の命運はおろか、弟子であるポップと違い狂暴化して正気を失ってしまったが為に使われるモンスター達に対する憐みは一片も無く、魔王軍が損耗するのであればそれでよいのだから。

 

 

そして自分達はかつてハドラーの拠点があり、今は風穴と化しながらも地場が残っている玉座の間の後で作業をする。

 

この世界からティファ達を連れ帰る為の最後の道となる大法陣を出現させるべき法陣を。

この地にいる事と-ティファ達の作業-がばれない内に、-道-が繋がるかどうか・・

そこだけが今のアバンを悩ませる




今宵ここまで
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。