遡った勇者side
「エネルギー分捕ってきます」
ティファのこの言葉に、一同唖然とした。
安全に時空を通るという概念からして追いつかないこの世界の者達はもとより、師達から教わった青年ポップも、そんな事できる膨大なエネルギーどこにあるんだと・・・・たった一人だけ嫌な予感に襲われティファに恐る恐ると尋ねてた。
「・・・まさかとは思うけれどもお嬢ちゃん・・・・そのね?まさか・・・上空の空飛んでる砦に忍び込んで・・・落とされる筈の-六個の柱の中身-狙うつもりかな?」
あの冷静沈着にして優美を絵にかいたこれぞ紳士なドールさんが!物凄く冷や汗かいて聞いてると少年ダイ達にとっては其れこそ驚きであるが、ドールさんが尋ねた内容にもぶっ飛んだ!!
だって敵はずっと超上空で結界張って隠れ潜みそして誰も通れないかダイとバランの竜闘気全開でぶち破った代物の中に・・・・言っては何だが確かに頭脳は凄いが-華奢で吹けば飛びそうな少女-が乗り込みますってそれってない・・・・と、少年ダイ達は完全ティファの容姿に騙され、この世界のキルバーンの不意討つ防いで蹴り飛ばしたことをすっかりと忘れている。
それもあるが、向こうの世界のアバンもマトリフもいい顔をしておらず・・・ロン・ベルクなどこいつ本当に手足叩き折って監禁したろうかという凶悪な顔を覗かせているのを、当のティファはからりと笑う。
「大丈夫です!私にはラーハルトとドールが付いてます!!」
通常では見えなくとも式鳥を介せば見えており、結界も張った者に気づかれずにスッと斬って侵入した経験もあり、後は見えない結界を張ってコッソリと地上を狙う為に手薄になったパレスにお邪魔して-エネルギーの元-をマジックリングに入れてくるという至極単純な作戦なのですと・・・・どこが単純!!??
まず見えない結界を張ってる敵の居所知ってるだけでもおかしい!
そしてそんな途轍もない結界を、張った術者(この場合はバーン本人)に気が付かれずに斬るってどんな技量の持ち主?
そして地上を破壊しうる途轍もない代物を盗んでくるという発想自体からしておかしいのを・・・・目の前の少女は事も無げに笑って話している姿には、流石にこの世界の大人達の背筋に寒気が奔った・・・・目の前の少女は本当に-少女-なのか?
天か魔か・・・何か途轍もない-モノ-を見始められたその時、向こうの世界のラーハルトが溜息を突きながら、-毎度おなじみ無茶を言う-少女を抱き上げた。
「・・・・勝算は?」
「んと・・・・大魔王もどきに気が付かれずに行けたら八割強、途中で気が付かれたら五分、もしも私の策を見越して待ち構えていたら即座にラック=バイ=ラックで逃げる。」
「ふむ、逃げ帰る算段も入れているなら上出来だが・・・・ドールがいる必要性は?」
かつてあらゆる-凄い事-を発案しては即実行していたティファには、己の安全確保という最も重要な事だけが抜けていたのを、今回は其れも織り込んでいるという発言にラーハルトは賛意を示すが、そこまで策を練っているというなら-キルバーン-要らんだろう発言に、ティファは困った笑みを浮かべる。
どうしてもラーハルト達大人組はキルが嫌いなままで・・・・何とかならないかな~と思っている。
あの人は優しい人なのだがそれは兎も角、今回は本当についてきてくれないと困るのだ。
「ラーハルト、この世界の服装言動悪趣味死神の罠対処できるのドールだけだよ。」
自分は今回は見えない結界と、膨大なエネルギーを納められるように集中したいのと、-死神の罠-に精通しているのは間違いなくドールだという言葉に、ラーハルト達大人組は一様に苦虫を嚙み潰したような顔をして、この世界の者達になぜそこまで魔族のドール殿を嫌っているのだとはてなが浮かぶ・・・・知らぬが何とやらとはまさにこの事だが、ラーハルトもティファの言う事には理しかないので諾と答えざるを得なかった。
その表情がおかしく、少年ダイは吹いてしまい、ポップ達も忍び笑いをしていつしか笑いが起こり、全員がティファの案に無理が無いと判断をして実行に移された。
まずパプニカ王城にこの世界のラーハルトとバランとレオナ姫を送り届け、テランの湖の神殿に非戦闘員(フローラ様含む)も送り届けてそのままラーハルトは空飛ぶ靴を履いてティファを胸にしっかりと抱きしめ、キルはそのまま飛んで一路向こうの世界のアバンと自分が仕込んだ-絶対に攻めてきた敵達を殲滅させる罠-に喰らいついてきたカールの砦上空に、ティファ曰くいますねという辺りに二人は止まり、ティファも新たに空飛ぶ靴を式で拵え結界ギリギリに近づき、昨日ロン・ベルクさんから貰った-夕月-をすらりと抜き放ち正眼に構える。
月とは我ながら浪漫チックな名前つけたなと思うのだが、奇麗な名前に見合った技をきちんと撃てるようにとティファは全神経を夕月に張り巡らし、ゆっくりと呼吸を整えそして
スッと斬った
音も無く気配も無く打ち下ろすその姿に、ティファの全力を初めて目の前で見たラーハルトの表情には歓喜と怖れが同時に内包された複雑な・・・獰猛な笑みが浮かんだ。
見る者が見ればわかる!ティファの今の一撃はまさしく達人と呼ばれても尚足りない、無我の境地からの必殺の妙技だという事に!
自分が愛し敬愛する少女はどこまで大きく果てのないお方なのだと、ラーハルトは全身全霊で歓喜を味わう中、キルがティファを伴い斬られたであろう箇所を通るのを、ラーハルトも慌てて直ぐに二人の後を追う。
潜入の第一関門は無事に成功をした。
結界の中に入り込んだ三人は、先ず鳥の中心地にの下の方からコッソリと入り込み、ティファはホコリ程の式を数多作り出し偵察をしてみれば・・・・
「キル・・・ラーハルト・・・誰もいない・・」
ティファ自身が物凄く困惑をする事態が待っいた。
ティファとしては、地上には半分ほどが言って残りは守りにつくと想定していただけに、全軍出撃とは思いもよらずに、これこそ自分達が乗り込むのを待ち構えて隠れ潜んでいる罠かとも思ったのだが・・・丁度-キングマキシマム-が自分のポーン達を引き連れ待機している以外は見当たらない。
ティファとしてはパレスにいる一切の魔王軍が残らず地上に行った理由が分からない。
その理由はこの世界のバーンが、パレスに敵を入れるつもりは毛頭なく、地上にて殲滅させる作戦を立案し、もしも地上の最初の部分が罠であってもそれなりの数は残るだろうという人数を送ったのだが、まさかアバンとキルで拵えたトラップで全滅したとは思わなかった・・・・そもそもがそんな大規模な罠を張れるキルバーンが向こうにいるなぞ思考に入れるわけが無いのだからそれはバーンだけの失策と肺は無いがそれは兎も角、理由にとっても心当たりのあるキルは胸の内でティファの言葉に納得をしながら、ここで迷っていても仕方がないでしょうというキルの言葉に従い、ラーハルトに抱えられ、それぞれ鳥の翼の先端にあたる外側の黒の核晶が入っている巨大な-ピラァ・オブ・バーン-の下へと飛んで向かった。
柱の場所には誰もいなかった・・・そう-人-は・・・その代り三人が降り立った次の瞬間!周囲から途轍もない量のマグマが降り注ぎ!!パレスの床を突き破り下に張られている結界によって消滅をした。
「ウフフ~見えなくとも、何かがそこに立てば当然重さが生じる。
それを利用した罠にこうも簡単に・・・・はいかないか~。」
「き・・・・さま・・」
「怖い怖い、どうしてバラン君配下の君がそこの忌々しい小娘さん達と一緒にいるのか気になるけれどもね・・さっさと死んでもらうよ!!!」
マグマが降り注がれたと同時に、ティファを抱えたまま神速の速さで逃げおおせたラーハルトであったが、流石に無傷とはいかずに鎧の覆われていない足の部分にマグマが当たってしまい、手酷い火傷を覆いティファを床に降ろし、痛みを堪えて槍を構えキルバーンと対峙するのを、普段であれば傷ついたものを甚振るのが趣味のキルバーンらしくなく、この場所に張って置いた全ての罠を一気に発動させ二人に迫らせ、自身も罠の中に大鎌を振り被って罠に対処しようとしている二人の内のティファの方に向かっていった!
バーンとの-約定-を果たす為に・・・
遡ったバーンとキルバーンside
朝日が昇る前の作戦決行前に、キルバーンとピロロは忙しくしているであろうミストバーンの姿を探した。
昨日からミストバーンを見ていると儚く消えてしまいそうな気がして、探してみたのだが見つからず、そうこうするうちにバーンに直接呼出しを受けて玉座の間に行けば・・・そこにいたのは・・・・
「あ・・・」
冷酷無比にして残酷で情が一切存在していないと味方をして言わしめてきたキルバーンが-ピロロ-と共に発してしまったその音に、目の前の-バーン-は満足げに嗤って玉座で足を組んだまま応じる。
「この姿の余を見ても驚かんという事は、矢張りお前には余とミストバーンとの間の秘事に気が付いていたか。」
どこまでも尊大で傲慢な若々しい声と共に告げられる内容は、もはや自分に隠すものは無いと堂々としており愉快気であった。
老人の時とは違い、筋骨逞しく上背のある体躯をゆっくりと立ち上げキルバーンに近づくバーンに、ピロロもキルバーンも言い知れぬ思いがその身を駆け抜ける。
別にバーンの威厳にうたれたわけでは決してない!
それこそ二人は冥竜王ヴェルザーの全盛期の時に何度も御前に馳せ参じ、報告や時折ヴェルザーの命を受けた事も幾度もある。
かの冥竜王は目の前の大魔王とは違い感情を、それも怒気や憎しみを表に直ぐに出し、其の度に二人は冥竜王の本気の闘気に晒されてきたが、二人は慣れたものだと飄々とし、この二人がその類で怖気振う事は無かった。
では何が二人の心を竦ませたのか・・・・
それは二人の様を見てぬたりと嗤うバーンの一言で露わになる。
「ミストが恋しいかキルバーンよ?」
一応近づきしバーンに臣下の礼をとり跪いたキルバーンの耳元にひそりと毒を流し込む。
キルバーンとピロロとしては、それ以上の弱みを見せまいと何事かを嘯こうとしたがそれは制された。
「今ミストは余の中で眠っている。この肉体を返した事で疲れたのであろうか、余の魂の御蔵付近で揺蕩っておる。
もしかしたらこのまま余と同化するやも知らんな~。」
全てを見透かしているバーンの前では、どのような虚言も強がりも出せようはずも無く、死神をして屈辱にまみれる一言を発せざるを得なかった。
「僕に・・何を御命じになりますかバーン様・・」
仕える義理はあれども義務はないはずなのに!!
自分は他の者・・・それこそミストとは違う-自由な死神-を誇りとして来たキルバーン達にとっては!己から銘じられる事を請うなど唾棄すべき事である!!
・・・・それでも・・・・
「ふむ・・・・そうよな・・・・・きっと忌々しい小娘辺りが何かの計略で異界から来た強者達を使ってこのパレスに侵入し、黒の核晶を狙ってくるかもしれん。」
それはバーンにとっても荒唐無稽な計画ではある。
万が一このパレスに侵入できたとしても、あの膨大なエネルギーを秘めた黒の核晶をどう狙うのだと・・・・まさかそれを収められるマジックリングをティファが作り出すことが出来、そしてその当人がこようとは夢にも思っていない。
先の作戦同様日常の者達に守られていると考えているがそれは兎も角
「地上勢は連れてきた魔王軍をぶつけて殲滅させる。
仮に取り逃がしたとしてもマキシマムの物量で押しつぶし余も遊びに行く故留守をしっかりとするのだぞキルバーンよ?」
その役目を果たしてこそ、お前の望む褒美はある。
作戦開始前に、其の命を受けたキルバーンとピロロはミストバーンのようにバーンの側に立ち、作戦と共に自分の持ち場に張り付きそして、今まさに忌々しい小娘を狩れる!!そう思ったが
ギーン!!!!
「・・・・甘いよ・・」
「またお前か!!!!」
罠を躱しつつ自分の大鎌をレイピアで受け止めながら獲物である小娘を胸に抱いて保護した褐色肌の魔族を、キルバーンは憎々し気に見つめる。
キルもラーハルト同様にマグマを避けたが、同じ方向に避けて罠に全員が一網打尽にされるのを厭いティファ達とはあえて反対方向に避けた。
捕らえる罠・包囲殲滅する罠・相手を別の場所に送りバラバラにする罠などお手の者のキルは、罠の張り方は無論の事、避け方も熟知している。
それは避けられた時の対処法まで考えるのだから当然であり、この世界のキルバーンの罠の張り方を見破り最短でキルバーンの凶刃迫ったティファを保護し、全ての罠が出し尽くされたと判断してから、ラーハルトにティファを預けてキルバーンとの一対一にの対決に持ち込んだ!
「お前はどこまで僕の邪魔を・・・・獲物を横取りばかり!!!」
「・・・・五月蠅い・・・・お前なぞ・・・・さっさと壊れはて消え失せろ!!!!」
キルバーンの逆恨みの言葉もよりも、それはティアにとって初めて聞くキルの怒声であった・・・いつもは穏やかで、それこそ自分がミストを消滅させたかもしれないあの時とてここまでの感情を露わにしなかったのに・・・・
だがキルバーンとても-いつもの様に-一旦引いて体勢を立て直す事をしなかった・・・引けば間違いなく親友はバーンに食われる!
あの抜け目のなさは自分と同じくらいの大魔王であれば、この状況をもしかしたら悪魔の目玉で見ているかもしれないと思うだけで引くという選択肢は消え果て目の前の侵入者達に打ち掛かるのを、ティファは-らしくない-と感じた。
何を焦っているのか・・・それは分からない、しかし呆けている訳にもいかない!
「ラーハルト!!」
「承知している!!!!」
二人の決闘のような戦いを見届けている暇は無いと、ラーハルトは向こうでそれぞれに渡されていた万能薬の内、火傷用を塗り込み回復をさせ直ぐにティファを抱えて見えない結界を張らせ柱に向かい、ティファは夕月で柱の真上のとんがり帽子のような箇所の真ん中に拳ほどの四角い場所を作り出し、中にマジックリングを差し込みイルルと呟き見ずとも黒の核晶を奪取し、残りの五つも罠を警戒しつつ同じように奪い去る。
そして本当にパレスが文字通り空である事も知った二人は急いで地上に戻った。
それは自分の兄と少年ダイとポップの危機の時であり、ティファは空中から九頭竜閃を放ちそして、何故キルバーンが焦っていたのかの一切の理由を知ったのだった。
今宵ここまで
時系列としてはどちらも作戦決行の一時間前あたりです。
(すなわち何故かバーンとキルバーンとピロロだけシーンで、主に対して二人が素っ気ない態度を取る直前です。