勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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いしの積まれる世界:生命の輝き・・・

若い肉体になった・・・ここでは若きバーンとてでもいおうか、彼の者と槍使いと共に若き勇者らを背にして相対しているティファとて実力は確かにあるがそれが本来出せる状態では決してない。

 

ここに来るまでにキルバーンとピロロが念入りに張った死地にも等しいトラップの地雷原を走破するには矢張りドールことキルはこの世界のキルバーンにかかりきりとなってしまい、ラーハルトの神速をもってしても躱しきれないものがあり、その都度ティファの強固な結界ジ=アザーズでの力業で乗り切ったが為に力の半分はそこで消耗していた。

 

キルバーンの必殺の陣が物を言い、ティファを殺しきれないまでも死神としての面目躍如を図らずも果たしている。

そして若き勇者達と兄ポップを救うべく、奥義たる九頭竜閃に持てる力を全て込め一時的に若バーンを退けるに至ったが、ティファは内心で焦りを覚える。

まさかこんなにも早くバーンがミストを消して若い肉体に戻るとは想定していなかった。

 

それが成るとすれば、もっと自軍が壊滅し自身も追い込みをかけられた時だと考えていた。

その頃には自分も兄も回復をしてダイ達をサポートして全員で力を合わせればギリギリ倒し切り-石化の封印-が出来る見込みは六割強と見積もってみたが・・・

 

来た!!

 

ティファの斟酌なぞ知らんとばかりに、若バーンは躊躇いもせずにティファの正面よりも少し横にいるラーハルトに狙いを定めて一気に攻める。

そこには何らかの技などは無く、純粋な闘気と鍛えられた筋力だけの猛ラッシュに、あの神速を謳われ自身も槍よりも内側に入れないという自負心のあるラーハルトは槍の柄で応戦しながら後ろに飛び退りながら打開策を図ろうとしたがバーンの方が上手であった。

 

「奇麗な顔を焼かれたら辛かろうか?」

 

成人男性よりも二回りはあろうかという若きバーンの掌にラーハルトの顔が包まれそして瞬時に焼かれかけた・・・そう、直接のメラで焼かれる寸前にティファがラーハルトを兄のポップと少年ダイ達の側に負傷したラーハルトをラック=バイ=ラックでしゅうんじに移動をさせそれと同時に兄の周りにまだ無傷である異界のロン・ベルクや他の者達も兄を起点として移動させ、そして一気呵成にバーンに自分から突っ込んでいった!

 

「私の槍使いに手を出すな!!!!」

 

ティファ自身には残り僅かな闘気とハイ=エントの魔力しか残されていない。あるとすれば聖炎の力しかない中、もしもティファのステータスをマキシマムがキングスキャンで見てみれば、嬉々として主に伝えただろうがマキシマムはティファに移動されなかった異界のヒュンケル達に圧倒されており、そして地金の違いで二人の合わせた-双ブラディスクライド-によって粉々に砕け散り、集められたダイ達を攻撃しようとしたポーン達はガラクタの様に崩れ落ちるのを、若きバーンもキルバーンも目もくれる事無く目の前の憎き敵達のみに集中した。

 

顧みらる事なく倒されたマキシマムは、瞬時に粉々に砕かれ絶望も醜態も晒す事無く、敬愛し尽くした主君に顧みられることも無かったという事実を知らずある意味においては幸運な終わりを迎えられたのかもしれないが、若バーンとキルバーンの猛攻と追撃に会っているティファとキルもマキシマムの最後などに構いつける余裕は無かった。

 

「華奢な体を砕いてやろうと思うたが、その剣に助けられているではないか異界の小娘殿?」

「・・・・私の世界のロン・ベルクさんは最高の鍛冶屋なのです!!その彼が私の為に打ってくれた一振りが早々に砕けるとは思わないでくださいね大魔王もどき殿?」

 

若きバーンの闘気を込められた一撃が必殺の様な拳の嵐に、ティファは夕月に残り少ない闘気を流し込み、其れとは知られないオーラブレードを形成して耐え抜き、ふとした瞬間に訪れる嵐の隙間を縫うように一撃を放って距離を取り、土竜閃で突進してくるバーンに闘気を込めた礫の嵐を反対にお見舞いしたが、若バーンはふっと余裕の笑みを浮かべながら右足を軸とし左足に闘気を込めて、飛来する闘気の石礫の嵐を足の一閃のみで搔き消し、石の礫に紛れたティファ諸共吹き飛ばした!

 

「ティファ!!」

「小娘!!!」

「ティファ!!!」

「お嬢ちゃん!!!!」

「「ティファさん!!!!」」

 

吹き飛ばされ先程とは反対に岩場に叩きつけられたティファを、この世界と異界のヒュンケルがギリギリ岩場とティファの間に入り込み受けるが、吹き飛ばされたティファを追いすがるように放たれた二羽のカイザーフェニックスは中央で一羽に合わさり三人の背後にあった岩場を蒸発させるほどの威力となった。

 

「ティファ!!!」

 

男達は瞬時に動いた。

 

二人のヒュンケルはオリハルコンで作られ本当の意味で絶対魔法防御化した鎧の魔剣でティファを抱きしめ合い、ティファの体が同い年の子女よりも華奢で小柄であったのが幸いし、ギリギリ包み込み守ることが出来たが、若バーンがそれだけで攻撃を止める筈も無く、カイザーフェニックスの着弾前から闘気の玉をティファ達に向けて浴びせるのを、異界のロン・ベルクとアバン達はなけなしの闘気で剣で打ち払うも奮戦虚しく闘気の玉の餌食となるが、二人は一歩も引かずに剣を手放し両の手を前に突き出し少しでもティファ達の脱出時間を稼ごうと闘気を掌に集中させて盾となるのを、若きバーンはその様を鼻で嗤った!

 

「最早大勢が決したというのに無駄な足掻きを!!汝らに勝機などあるまい?その小娘を差し出せばせめて楽に逝かせてやるぞ?」

 

勝者の権利として捕虜を甚振る事は魔界では儘ある事であり、敵の抵抗が激しければ激しい程勝利者側の憎悪を勝って散々に甚振られ辱められ、そして絶望の果てに殺すのをティファを差し出せば褒美として瞬時に終わらせてやるという若きバーンの言葉に、剣と己の肋骨を叩き折った相手にノヴァが最後の力を振り絞って立ち上がり、血を吐きながらも顔をしっかりと上げてバーンの顔に向かって叫んで拒絶をした。

 

「ふざ・・けるな・・・誰が貴様の言う事なぞ聞くものか!!貴様に屈する位ならば!甚振られたはてに殺された方がましだ!!!!!」

 

この数日を、ティファと共に過ごしたノヴァの心は大戦が始まって以来穏やかな物として過ごせていた。

確かに敵からの攻撃や謀略戦があり、カール平原にてミストバーンの猛攻によって散々翻弄され死にかけた目に遭った・・・それでも・・・・ティファとそしてポップさんとチウ君達と異界から来た大人達のお陰で心は平安であった。

いつでも微笑み絶やさない異界の彼等とティファはいつだって大変な目に遭った己達よりも自分達のみを案じて何くれとなくしてくれた・・・・そんな大恩ある彼女を!己の身の可愛さに差し出すくらいならば屈辱を与えられる死の方が何万倍もましだと叫びあげながら、ノヴァは最後の闘気をティファの様に剣に込めて突進をするが・・・・

 

「愚かな事よ・・・・」

 

若き勇者の高潔なる志の突進も、巨大な力の前では無力だとばかりにバーンは右手で闘気の玉を放ちながらノヴァを一顧だにもせずに左の腕に闘気を込めオーラブレードを払いのけ追撃にカイザーフェニックスみまった。

 

やられる・・・・僕は何て無力で情けない勇者なのだろう・・・勇者とも呼べないか・・

 

剣諸共にノヴァの心は折られた・・・折られてしまった。

故郷を守る事も能わず、勇んでハドラーの親衛騎団達に挑むも何も出来ずに・・・そしてここで・・・

 

「・・・・馬鹿な坊やだ・・・」

 

焼け死ぬ・・・・そう思ったのに!

 

「ロン・ベルクさん!!!!」

 

この世界のロン・ベルクが身を挺してカイザーフェニックスを食らいながらもノヴァを抱きしめ、突っ込んだ勢いのままノヴァを放す事無く地面に転がるのを、チウ達が窮鼠包包拳を移動の為に使ってロン・ベルク達の転がる先に先回りをして二人の頑丈な体で受け止めた!

 

「無茶ですロン・ベルクさん!!体が・・・」

「・・・・は・・・こんな年端もいってねぇ坊やが命かけてるのをちんたら見ているだけの腐った大人になり下がるのなんざご免だからな・・・」

 

ヒュンケル達とは違い、本当に生身でカイザーフェニックスを受けたロン・ベルクに守られたノヴァは兎も角、ロン・ベルク自身は全身大火傷を、特にカイザーフェニックスからノヴァを守り切る為に抱きしめた両腕が火ぶくれを起こして壊死まで仕掛けている!

 

「そんな・・・・ロン・ベルクさん!!僕なんて庇って・・・どうして・・・・」

 

自分はこの魔族に、戦いになる場にお酒を満ち込むなんてと突っかかって以来まともに口すら効いていないのに・・・・なのに!ダイ達と違って何も成せない情けない自分を庇ってこんな重傷を負うなんて間違っていると、ボロボロと大きな瞳に涙を浮かべるノヴァにロン・ベルクは痛む体をおして起き上がり、優しい笑みをノヴァに向ける。

 

「僕なんてッて言うもんじゃねぇ。

お前さんは魔界では誰もが怖れる大魔王の言葉に逆らって、あまつさえ刃を叩きつけようとしたんだ。

魔界だったら大の大人でも間違いなくあいつの言う通りにしているのを、お前は己の矜恃と生命の全てを掛けて貫こうとした・・・・あの剣に込められたのはお前の-生命エネルギー-だったろうが・・・・子供が無茶をする・・・」

「どうして・・・」

 

確かにロン・ベルクが言う通り、ノヴァにはオーラブレードを作り出せる闘気は残っておらず、突進しながら己の生命力を闘気に変換する-生命の剣-という禁忌の技を繰り出した。

それは使えば使う程に己の体に如実に生命の剣の反動が表れるが、あの一瞬で分かる筈が、気付かれる筈がないとノヴァは思っていたのだが・・・

 

「なに、お前さんの剣の色がオーラブレードよりも白い・・・白銀になったからな。」

 

真っ直ぐでともすれば人に突き刺さる眩しい色合いがノヴァの魂の様だと感じたからこそ知れ、そして年端も行かない穢れ無き生命が大魔王によって無為に刈られるのをロン・ベルクは厭うたのだ。

 

まさかダイの仲間以外で、人間の子供の命を惜しいと思うとはロン・ベルク自身が驚いているが、それでも全身が焼かれても後悔は無かった。

 

「・・・馬鹿ですよ・・・こんな僕なんかを・・・・・」

 

自身が死ぬよりも他者が傷つく事に涙を流すこの坊やを助けることが出来たのだから・・

 

「ふん・・・・余の下を去ってから随分と惰弱になったか魔界の名工殿?」

「この状況を見てもそんな事しか抜かせないお前なんぞこいつの足元にも及ばんよ。」

「・・・貴様、余がそこな泣くしか出来ぬ惰弱なる者よりも劣ると申すか・・・」

 

ティファとヒュンケル達の前に陣取り盾となっていた異界のロン・ベルクとアバン達が力尽き倒れたのを見計らい、一時攻撃の手を緩めて自分の有様に述べた感想に対し、ロン・ベルクこそが鼻で笑ってやった。

この高潔な魂を見ても何も感じないやつ等仕える値打ちも無いとにべもないロン・ベルク の言葉に、若きバーンの顔が歪み自分を見遣りながら怒気を放つのを、ロン・ベルクは愉快気にする。

 

「あぁそうだ!!お前に仕えたあの日々は確かに鍛冶屋として充足していたが!!

それと同時に俺自身が腐るのを感じた日々だった!!!

翻ってダイ達に出会い関わり過ごした十数日間は、この坊やも込みで生涯が輝いた日々だった!!

俺からの返答もくれてやる!あのお嬢さんを差しだす気がある奴なぞ!俺も含めてこの場にいると思うな!!!」

 

身を起こし大火傷の身ながらもノヴァとチウ達を背に庇い、ロン・ベルクは人生で一番の咆哮をかつて仕え、そして魔族なればだれもが知る魔界の神に布告をする。

どんな死に様を晒そうが、結末が変わらず死であったとしても、仲間と認めたティファを売る者なぞこの場にはいないのだと。

その言葉に、チウ達は互いの顔を見合わせ頷きあい、そして立ち上がり震える体を互いで支えるべく手を握り合い堂々と吠え上げた!!

 

「「僕等も!ティファさんをお前なんかに絶対に渡さない!!!死んでもご免だ!!」」

 

その声には確かに怯えもあった。そしてその姿は震えてもいた。

だがそれを情けない事だと、小さき者達を嗤う事が何故か若きバーンには出来ず、そしてノヴァとロン・ベルクとチウ達の言葉に次々と言葉が足されていった。

 

「ティファを売るなんて冗談にも言われると殺したくなるね!!」

 

合間合間にピロロの見えざる罠の支援を受けているキルバーンを相手にしながらもキルは殺気を若きバーンに注ぎ、倒れ伏しながらもヒュンケル達とアバン達と異界のロン・ベルクも否という中、攻撃の手が緩んでいるとはいえ若きバーンの攻撃はやむ事無く、闘気の玉によってオリハルコン製の鎧の魔剣にひびを入れられ更にカイザーフェニックスを浴びせられたヒュンケル達を、ダイとポップを降ろした青年ポップが両手でヒャダルコを放出して全身を覆わせながらトリプル呪文でトベルーラでカイザーフェニックスの炎の中に突っ込み二人とティファを抱えて助け出し、三人の状態に素早く目を通す。

三人とも傷は負って意識を失っているが、オリハルコンの鎧のおかげで重傷では無かったことに安堵する。

そして少年ポップから借り受けたロッドに魔力を込めして柄を伸ばして槍状にしながら倒れ伏す三人を背に庇い、三人を死地から連れ出した自分を見ている大魔王もどきにポップも宣言をする。

 

「生憎と俺も妹売るなんて考え持った事が一度もねぇんだわ・・・・ふざけた事抜かしてんじゃねぇぞ馬鹿野郎が!!!!!」

 

・・・・たった一人の小娘の為に、なぜこれほどの漢達が魔界の神と呼ばれる自分に逆らうのだと、若きバーンは本気で戸惑う程に、青年ポップ達の気迫は凄まじかった。

かつて、これほどの者達が自分の前に現れた事は無く、若きバーンの心が動いた時、この世界の勇者と魔法使いもまた動き出した。

 

「俺もお姉ちゃん渡す気ないよ。」

「同じくだ・・・つう訳で諦めてくんないかな大魔王さんよ?」

 

ボロボロになりながらも闘志を保つ勇者の横に飄々とさせた気配と言葉を操る魔法使いの姿が、一層の事若きバーンの思考を乱したのだ。




今宵ここまで
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