勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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いしの積まれる世界:魔界の神・大魔王バーン

そこはほんの少し・・・否一瞬前まで確かに命の遣り取りを、さらに言えば若きバーンの圧倒的な暴力を前に蹂躙されていたはずであった・・・なのに・・・白いローブを翻して悠然と歩く白髪と同じく白髭を長くたくわえた-老バーン-は、目の前の若きバーンに目もくれる事無く、少年ダイとポップを、どこに座らせれば良いかゆっくりと周りを見まわしている。

 

ティファ達が目に入っていない訳ではない、今すぐにでも自分の幼な子達をこの手に抱きしめたい所ではあるが、この小さき身で頑張っていた少年勇者達をきちんと休ませてあげたいという思いも強く、漸く目を止めそちらにゆっくりと歩きだす。

その歩みはゆったりとして力強く、とても老体が男児二人を抱えているとは思えない足取りであったが、老バーンからすれば

 

「軽き体であるなその方達は・・・もっとキチンと食事を摂って肉をつけたほうが良いぞ。」

「・・・・・へ?」

「・・・・・はい?」

「余の知るダイ達は其方達の年齢の時であってももう少し重さを感じたぞ?」

 

然るにその方達は全く持っている気がせずに心配になる。

いかにティファの様な-料理人-がおらずとも、三食きちんと摂って来たのか?このような華奢な体で無茶をするのは勇者達は無謀なのかとか・・・大魔王様に食事の事で併せて身内のお爺ちゃんの如くな意見をされるとは当然少年勇者と少年魔法使いには想定外であった!!

 

一体自分達は-誰-に抱き上げられてこんな事を言われているのだ?

 

もう大混乱だらけなのは少年ダイとポップだけではない!

若きバーンはもとより!虎視眈々と異空間から老バーンを突け狙っているピロロとても、勇者達のみを心配する大魔王って何!!???状態であった・・・・他界の魔界の神・大魔王バーン様は-何時もの様に-そんな周りの事なぞ構いつけていない・・・他界の勇者兄妹曰くの-うっかりで可愛いバーン様-全開であった・・・・・この世界のアバンは老バーン姿を知らないので、実力はドール殿よりもすごそうですがあのご老体はどなたでしょうかとポカンとしているだけで済んでいるが!ロン・ベルクはそうもいかずに精神ダメージ計り知れなかった!!

 

なんだあの老バーンは!!あいつ俺の知ってるバーンじゃねぇ!!!!!

 

仕えた時間は本当に短かったが!あんな表情どころか訳の分からない説教をしている魔界の神・大魔王バーンなんていて堪るかと・・・・現実逃避したくなったのもうっかりバーン様はご存知ないとばかりにあれこれ言いながら歩を進めてティファによって集められている者達の下へと向かい、自分の世界のマトリフを見つけて話し出した!!

 

「二人を頼む。」

「あぁ分かってんよ。」

 

たったそれだけで、老バーンとマトリフは通じ合い、周りがその事に対して更に付いていけずにポカンとする中で、マトリフは老バーンから降ろされたダイとポップの面倒を見始める。

そしてその当のバーンは自分を唖然と見続けている若きバーンには目もくれずに、一人一人を迎えに行く。

 

先ずは若きバーンによって両の腕を砕かれてしまったポップの側に一足飛びに向かい、痛ましげな表情を浮かべ、青年ポップをそっと抱き上げれば、青年ポップは呻き声を発しっするのに、バーンは安堵の笑みを浮かべながら若きバーンの技の威力で岩場に叩きつけられたチウ達二人を区別する事無く腕に収めそして、この世界のチウを少年ダイ達の近くに降ろして最後の一人の下に向かった。

 

ラーハルトの拘束は最早解けているが、ぺたんと座って今まで見た事のないような歪んだ表情を浮かべているティファの下へと・・・・急く足を、青年ポップの体に障らぬようにと歩を進めるバーンの姿に、そしてそのバーンの白いローブに顔を埋めて震えだすチウの姿に、目を覚ましたの兄ポップが、バーンに気が付き驚きながらも瞬時に抱き着いた時、

ティファの何もかもが弾け飛んだ

 

 

 

 

 

           ふぁぁぁぁぁぁぁぁあああああんんん!!!!!

 

 

 

 

ティファが泣きだした

 

この世界に来てから、自身がどれ程理不尽な者達の思惑で酷い目に遭おうとも、味方の為とはいえども自身の気持ちに沿わぬ茶番に付き合わされたよとも、兄達が傷つき惨い目に遭った時でも泣く事なく-何とかしてきた-あのティファが・・・・

 

 

「うわぁぁぁ!!!うぁぁああああんんん!!!!!」

 

ただ泣いている

 

ぺたりと座り込み大口を開けて表情をくしゃくしゃに歪めながら涙どころか鼻水も何もかもで顔いっぱいに濡らして天を見上げて泣いている。

そこにいるのは当代随一の智謀・鬼謀・の頭脳を持つ大人達と渡り合った姿ない

茶番をひっくり返しながらも己の望む事を手にしながらも味方達の式を大いに高めた姿は無い

敵の思惑を食い破り味方達を守って来た料理人の姿はどこも無い

 

バーンは自分に縋りついて泣いている青年ポップとチウを左手一本で抱き抱えなおし、泣いている只の童を右腕で優しく抱き上げ三人を己の胸元に抱きしめ、白いローブの袖の中に閉じ込める。

 

「済まぬ・・・・余は其方達を守ってやれなんだ・・・」

 

子等を閉じ込め魔界の神は悔恨の涙を流しながら懺悔をする。

子等が攫われたのは自分の結界内であったのに!みすみすこのような目に子等を遭わせてしまった・・・・全ての愛しき子等にとって最良の一日となる幸せなだけの時間を過ごさせちゃる事が魔界の神を苦しめる。

 

それは子等を愛している心が強い故に・・・・其の想いをティファもポップもチウにも分かりすぎる程に分かっている・・・・

 

 

「大魔王!!!大魔王!!!」

「バーン!!バーン!!」

「バーンさん・・・・バーンさん!!!!」

 

三人の子供達は自分達を力強く抱きしめている大魔王バーンのローブを握りしめて名前を何度も何度も呼ばわる・・・・まるでその言葉しか知らないとばかりに何度も何度も。

自分達にとっての、魔界の神・大魔王バーンはこの人しかいないとばかりに。

 

自分達の大好きな大魔王バーンが来てくれた事が嬉しくて・・・・・

 

 

その声を、若きバーンと対峙している青年ダイの表情に笑みが浮かぶ。

自分一人だけではここまであの三人の心が解き放たれたかどうか甚だ怪しい・・・・特に妹は強がる可能性の方が高い・・・・バーンと来て正解であったと・・・後はこの世界にどう決着をつければ正解なのか・・・目の前の・・・この男を倒せば終わりでいいのだろうか?




今宵ここまで
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