老大魔王の想いに、其の気高さに引きずり込まれかけた・・・・唯一を誇る自分がだ!!
その様な事・・・断じて!!
「認めぬ!!!!!!」
若きバーンにとっては受け入れるべきでも・・・・受け入れたくも無い事だ!!
強者とは孤独の中であってもいかなる者達の中でも凛と立ち!常に圧し従わせて導くべき者であり!!断じて助けを求めましてそれを感謝するなぞ誇りは無いのかと・・・
若きバーンの否定する思いが老バーンの残り僅かな力を上回るが如く、技の応酬も何も無くなった拳と刃の闘気の打ち合いに、苦しくなろうとも老バーンも一歩もその場を動かず引かずに打ち合うのを、少年ポップ達は歯がゆそうにする!
「・・・まだだよ。」
若きバーンの攻撃も遂に老バーンの肩や腕に当たるようになった辺りから、飛ぶ出そうとするポップ達をティファが静かに押しとどめる。
両大魔王の大激突が始まってから体感的に数時間たったような濃密な時間がそこには流れていた。
互いの想いと誇りと、そして老バーンの長年積み重ねてきた・・・もしかしたらこの世界の大魔王でも得られなかった彼の人を魔界の神とまで言わしめられた気高き意思の言葉に、全員が魅了されたが故に長く感じたのかもしれないが、実際には十分と経っていないと、三十分用の砂時計を測っているティファの冷静な言葉に、弟子達と同じく彼の人を助けたいと出そうなこの世界のアバンを冷静にさせる。
先の若きバーンの蹂躙にも等しい強襲に、ノヴァ・ロン・ベルク・クロコダイン・ヒュンケルは異界のマトリフに手当てを受けても戦線離脱を告げられた。
挙げられた者達はまだ大丈夫だと言いかけたのを、内臓までダメージがあり青年ポップも両腕が複雑ではないにしろ骨折は向こうの世界に戻っても一月は使えないと言われては無理が出来なかった。
そして軽度であってもマァムも外れる様にマトリフに言われた時、当然直ぐには納得しなかったがティファに真剣に止められた。
「マァムさん、戦いが終わった後、貴女が何をしたいのかは私には分かりません。」
其れでもいつか好いた人が出来て添い遂げた時に、激闘のせいで子が成せないなど悲しい目に遭わせる事を望む人が、この場にいると思いますか・・・・そのように言われてしまえば・・・・武闘家とはいえどもダイの様に圧倒的な闘気量があり防御が優れている訳ではなく、老師の様に大成し武神流の防御の奥義の様な一片の木の葉の様に避ける術もまだ身に着けていない自分では・・・・
足手纏いだと、マァムははっきりと言われた気がした。
自分の技量ではここまでだと・・・その先に行くには力が足りないのだと・・・泣きそうになるのを、みっともないと堪えかけるマァムの肩に、優しく温かい手がそっと置かれた。
見上げれば目の前にいたのは
「俺さ・・・ぶるって逃げかけるたびにお前に横っ面張り倒された事思いだしてここまでこれたんだ。」
「・・・・ポップ?」
「ダイだけじゃなくてさ・・・そりゃおっさんやヒュンケルがいたからってのもあるけどそれだけじゃ俺は今ここにいなかったんだよ・・・・あの異界のバーン・・・さんが言ったみたいにさ・・・俺達全員がお互い支えあって来たからここまでこれたんだと思ってる。」
けどよ、ティファさんの言う事も分かるんだというポップの言葉に、周りの男達全員が頷く。
「俺達男は闘うことは出来てもガキは産めねぇんだわ。」
「マァム・・・俺も身を損ねて戦線離脱だが・・・お前は俺達を情けないと罵るか?」
「マァムさん!戦い終わった後も生きていくんです!!勝たないといけないけれどもこの後の事も大切なんです!!!」
「僕なんて偉そう言っててもあの中には最初から入れない・・・」
「お前さんに一番の防御力与えた意味考えてくれ。お前達は未来もあるんだろ?」
男にはどう逆立ちしてもできない事を成し遂げる未来掴むから、ここは譲ってくれと言う男達の言葉に、マァムはポロポロと涙を流す・・・足手纏いではない、未来を考えてくれているその優しさに・・・マァムは攻撃用に貯めて居た魔法力を、ノヴァを庇い全身に負った火傷用の薬を塗られ包帯をされた上からベホイミをかけ始める。
「ありがとうなマァム。」
「ううん・・・・私の事考えてくれて防御力の高い魔甲をありがとう・・」
ロン・ベルクの想い溢れる魔甲は、心臓の部分だけではなく内臓系統周りも薄っすらとオリハルコンを伸ばして守るようにしていたのだ。
女は子を産む
ロン・ベルクは一昔前にいた職人気質であり戦士だろうが何であろうが、自然の掟をどこか尊重している節がある・・・・親父の様な漢であったのだ。
そして-回復-を見計らい、ダイが間に合わずとも老バーンと変わるか共闘するかで纏まった彼等だが、その回復が五分以上経とうとも訪れない。
その理由は自分達が受けたダメージは全て暗黒闘気が含まれており、それが含まれたダメージは通常の倍の時間か十分以上かかるというティファの言葉に、異界の者達が焦りが見え始めた頃、ティファは全員の位置よりも一歩前に出て飛び出さないようにと釘を刺す。
このまま、回復まで自分の大魔王が持ってはくれまいかと願っての事だが、ティファの祈りはいつだってかなえられた試しがない・・・・即ち均衡破れ若きバーンに軍配が傾き始めたのだ。
異界に知略に長け謀略戦の数々をこなした老獪な身であっても、体力が尽きればそれらは意味は無く、次第に老バーンの足がほんの少しずつ後退するのを、若きバーンは獰猛な笑みを浮かべて畳みかける!
「先程エラそうな事を言っておいてこの体たらくか!!」
矢張り絆だ何だと言って-群れる者-は弱き者だからだと言い募る若きバーンの言葉を、老バーンは吠え上げて訂正したくとももう攻勢に回せる余力は無く、防戦一方になった時、ティファがそっと自分の世界のチウを抱き上げ何事かをひそりと吹き込み・・
「ええええ!!!ティファさん何する気ですか!!!????」
・・・・聞かされたチウは、若きバーンの気すらもそらしてしまう程の大声を上げ、其の隙を老バーンは見逃さず素早く距離を取りながら、ちらりとティファ達を見れば、チウを抱き上げティファが何か・・・声が聞こえない!結界まで張ってチウに何事かを指示している・・・・・何をする気なのか・・・途轍もなく嫌な予感が老バーンを駆け巡り、それは正解であった。
「逃がすか!!!」
大ネズミの声に驚き一瞬だけ猛打を止めた隙に逃げる老バーンを若きバーンが手刀の構えでカラミティエンドを撃ち、光魔の杖をへし折り余勢で老バーンを切り刻もうとした時、老バーンの姿がかき消えた!
また移動魔法を使ったかと忌々し気に小娘達のいる方を見れば、案の定老大魔王が小娘の横にいた!
「大魔王の誇りを賭けた戦いに邪魔を入れるか小娘!!!」
忌々しいが、あの男もまた己の信念の下に大望を以て道を歩く大魔王だと若きバーンが老バーンを、決着がつきかけたのを逃がしたティファを咎める言葉に、ティファは応じる事無くすぐに立ち上がり戦場に出ようとした老バーンの上にチウをしっかりと置いて一言。
「チウ君!大魔王に死んでほしくなかったら!!さっきの一言今すぐ言って!!!」
大魔王に一言いう様にチウに言いながら、自身はスタスタと追撃してきそうな若きバーンと自分達が居た場所の丁度間に歩を進めて立ち止まる中・・・・チウは先程ティファに言われた人事を言っていいのか物凄く悩みなんだが・・・・ティファの言う通りこのままでバーンさんが死んでしまうと意を決し、立ち上がろうとした大魔王の襟首掴みながら物凄く真剣な・・・・それこそ決死の言葉を大魔王の驚いた顔をしっかりと見ながら一言!!
「これ以上バーンさんが戦うって言うんなら!!この戦いに勝っても僕等は帰らないでこの世界の子供になりますからね!!!!」
ね~!!!
ね~!!!
・・・・それは岩場は周囲の岩場や山々に反響し木霊化した語尾の如く・・・・この世界の者達は何を言っているんだこいつは?そんな言葉脅しにもならないだろうと若きバーンのみならず、言っては何だが少年ポップ達もちょっとこの子供じみた言葉はどうなんだと思ったが!言われたバーンの表情を見て誰もが愕然とした・・・・・・あんたなんでそこまで絶望に突き落とされたような顔をしているんだと言いたくなるほどに!老バーンの顔は呆けてしまい・・・事態は其れだけで済むはずがなかった!!
「この馬鹿娘!!!!」
「お前は何て事をチウにさせてんだよティファ!!!!」
「チウ君・・・・・・ティファ!!!貴女チウ君に何てこと言わせたのですか!」
「足止めするにしてもこれひでぇぞ嬢ちゃん!!!」
「お前後できっちし説教受ける覚悟しておけよ馬鹿妹!!!!!」
呆けてしまったバーンの代わりに、ラーハルト・ロン・ベルク・アバン・マトリフにポップは、実行犯よりも首謀者に対して怒涛の怒りの言葉を背中に浴びながらも、その様子に青褪めるチウと違って本人はケロリとしている。
「そこまで言わないと止まらないでしょう大魔王は?」
スタミナ切れだからと言って譲る気ゼロなんだから仕方が無いという言い分は・・・物凄くあるがどうしてティファのする事はこうも悪辣なのだと・・・悪意とは無縁なのにこうと決めて実行する事の大半が悪辣なのは何故なんだと向こうの世界の野郎ども一同は嘆きたくなる中・・・・・・もっとすごい事態が直ぐに起きた・・・・高速ルーラで誰か来て!誰だとその場一同・・・否。ティファ以外の全員が身構えてみれば!!怒りの形相の-ドールさん-が来た!!
「チウ君!!!!!」
呆けてしまっている主を見てもうっちゃり!手前でフルブレーキをかけトベルーラに切り替えふわりと着地しながらチウを抱き上げ鬼の形相で吠え上げた!!
「チウ君!君何てこと言っちゃてるの!!そんな悪い言葉どこで覚えてきたの!!!」
今すぐ忘れなさいという・・・・・なんでチウの言葉が遠くでキルバーン相手に戦っていたお前に聞こえてしかも来ているんだという・・・・若きバーンが真っ当な突っ込みをしたのを!そんなことぐらい常識だとドールが馬鹿らしいと一蹴しやがった!
「大好きなチウ君の声何て百キロ先でも拾えて当たり前でしょう!そんな事よりもチウ君!!バーン様に直ぐに・・・・」
「あぶねぇ!!!!」
非常識な言葉を述べて、酷い事をバーン様に言うもんじゃないよと言いかけたキルの首近くに、空間が開くと共に大鎌が迫る。
誰もが警告を発すればティファが結界で守ると思ったが!ティファはそんなそぶりを見せない中-ドール-の方が動いた。
「・・・・・いい加減に飽きたな・・・」
それは刹那の動きであった。
チウをそっと降ろしながら-ドール-と呼ばれた男は-普段の姿-の戻りながら自身も大鎌を取り出し振い、キルバーンの大鎌に合わせ空間から死神を引きずり出す。
ドールと呼ばれた褐色肌の魔族の男の衣装が、みるみる見覚えのある道化の衣装に変わるのに驚愕したのはなにも少年ポップ達だけではなく!死神すらもが驚きを隠せなかった。
整った顔が出現する-笑いの仮面-に覆われているのを見続けるという愚を犯しながらも目が離せなかった・・・衣装がダサい・・・・あの忌々しい青年魔法使いの言葉はこれであったのかと・・・目の前の死神の色は、漆黒は同じであれども、他は赤・・・それも黒を下地に塗られたような美しい艶やかな赤は、真の死神の様でぶつかった赤い瞳と良く似合う。
仕舞だよ
優しい人であったドールさんは・・・・優美で優雅で物腰の柔らかい、自分達の疲れや悩みを親身になって聞いてくれる優しい大人であった・・・だが・・・今目の前にいるのは違う人と、少年ポップ達の目には映った。
無慈悲に大鎌を振い、キルバーンの四肢と首まで斬り落とした大鎌をくるりと回す様はまさに、死神キルバーンその人なのだから・・・
キルとしては、人形共々本体であるピロロもう少し引付けこの戦場から遠ざけ終わった頃合いにピロロ諸共にを考えていたのだが・・・・とんでもない言葉が耳に飛び込み計画なぞ吹っ飛んだ!
バラバラにした人形はすぐさま空間に入れられた・・・ピロロの仕業の様だが終わると同時にバキンと-空間が封鎖された音-が響いた。
しかし空気の流れや木の葉が風に舞い山の方まで言ったのが見え、どうやら現実空間はそのままに、自分達が使う亜空間だけを閉鎖したのを確認したキルは、ティファが死神対策をしたのを知ると同時に直ぐに大鎌を仕舞ってチウをまた抱き上げ先程の言葉を問いただそうとしたのをティファが待ったをかけた。
「キル!チウ君にその言葉言わせたの私です。」
その一言で十分でしょうと言わんばかりに後は若きバーンを警戒するティファの言葉に、キルはすぐさま思い至りチウを抱き上げたまま殺気まみれの視線でティファを射殺さんばかりに睨みつけ呪いの言葉を吐いた。
「本当に・・・・偶にね?君の手足の腱を全て斬り落として回復しない体にして、バーン様自ら張られた幾十の結界を施したパレスの奥部屋に閉じ込めたほうが-全員-が幸せになるんじゃないかと思う時があるんだよ?」
善きことと同じかそれ以上に、悪辣で自分を使い潰す事を辞められないティファを見させられて来たキルは、ロン・ベルクと同じ事を思う。
大戦からずっと、そう思う時が多々あり、これほどの言葉でもって主を止めたからにはこの娘はきっと-碌でもない事-しかしないだろうと当たりをつけて。
周囲が、それこそキルが大好きなチウをしてガタガタと震わせるほどの殺気と情念にも、ドールが実はあちらの世界のキルバーンだと分かった驚きすらも吹き払う程の妄執にも似た想いにも、当のティファはからりと笑う。
「そのくらいの言葉でも私が言っても大魔王には通じないでしょう。」
もっとすごい言葉を自分は大魔王に投げつけてきたのだからと笑うティファに、この小娘は一体あの老大魔王に何を言って来たのだと、少々どころか多分に気になる言葉をさらりと言った!
普段とっても良い子のチウ君でないと聞かない文句なのですと・・・・物凄く悪辣な笑みを浮かべて言い切るこの小娘は何だ・・・・・確かにティファの思惑通り、チウが言った事で子供の児戯にも等しい言葉が、大魔王の行動どころか思考すらも含めた全ての事を停止させた・・・まさに最大の殺し文句となったのだから・・・・
この娘はもしやして真っ先に消した方がよかった危険物だろうかと若きバーンが思う程に
今宵ここまで・・・・・・
これでうちの大魔王様はお休みです!・・・・・休ませてあげたかったのです・・・