勇者不在の間のわずかな時間の間に、-大魔王対大魔王-の第二戦が旧地底魔城後の地上部分において勃発をした!
とは言え若きバーンの相手は老バーンが回復を果たしたのではなく、相手をしているのは-色白ではなく雪石膏の肌に白銀の髪-をたなびかせ、金に瞳で若きバーンの猛攻を見据えてひらりひらりと躱しながらここぞというところで若きバーンの背中や右腰などにちょこまかとダメージを与えているティファであった。
少しばかり遡った地底魔城後では、ティファの悪辣なるやり方による強制的な相手交代に、向こうの世界の(チウは除く)野郎ども一同による、ティファの事を本気でどうにかしそうなほどの獰猛な気配にさしものこの世界の者達は(若きバーンも含む)、ティファという少女は一体どういう者なのだと改めて疑問を・・・・物凄くだが今更持ち始めたのだ。
初対面から散々翻弄された若きバーンや、己が仕掛けた茶番の片棒担いでもらったはずなのにちゃぶ台が返しされたアバンも、あらゆる手を使って助けられた少年ポップ達も全員が普段の穏やかで優しい気配に完全に忘れる程に・・・・奇妙であった。
そこまで印象に残ろ事をされながらも、いざ本人を前にすればその様な事を本当にしたのだろうかと言う物凄く違和感と言おうか記憶違いでも熾しているのだろうかと言う程に、ティファという少女からは-何も-感じない・・・・今もこうして自分に直接敵対すると言われても、お前に何が出来るのだという感想しか若きバーンは持てずにいた。
少年ダイやポップ達であろうとも、其れなりに力や危害を感じたというのに、目の前でほんのりと笑っている少女はまるで・・・・何も知らない人間の童の様で・・・・
「一体お前に何が出来るというのだ異界の少女よ。」
何が出来る・・・・それこそこの世界に来て丸ごと勇者一行を逃がすは、ミストバーンが実行した大規模人質作戦潰されて、五日間も砦を丸ごと隠されていたという魔王軍からすれば忌々しい事の数々をしてのけた・・・・もしかしたら勇者達を逃がした二日目に起きたパレスでの奇妙な惨事にも関わっているかもしれないのを若きバーンはきちんと覚えているのだが・・・・
「そもそもお前に戦う力があるというのか?」
それこそ吹けば飛びそうで華奢で・・・・闘志は感じられるがそれに伴う-力-を何も感じない・・・・・それこそ魔界の名工達を手当している女武闘家の方にこそ力を感じるくらいだという若きバーンの言葉に、ティファは大丈夫ですよとにっこりと笑って保証した。
「私こう見えても向こうの世界で今でもきちんと存命している-超一流魔王・ハドラー-と、ガチンコバトルして引き分けてきた実績きちんとあります。」
・・・・・は?
「彼の魔王が超魔生物の力十全に振るっての戦闘で、一対一の真剣勝負して首跳ね飛ばそうと頑張ったのですが・・・・諸事情で断念しましたがそれは兎も角・・・」
貴方を倒すのは無理でも時間稼ぎ位はきちんとできますよと言う言葉に、若きバーンはティファの言葉に偽りを見つけられず、口調こそ軽いが真剣な瞳に嘘は無いと知った。
「貴様にそこそこの力があると・・・・成程、考えてみればこの世界に来た初日に貴様は大鎌で襲いしキルバーンをあっさりと撃退していたな。」
その時の事を思い出し見れば、目の前の少女はあっさりと・・・それこそ達人が木の棒を持ってきた童を制したような容易さで味方を模戦慄させる実力の持ち主たるの死神を蹴り飛ばして拘束していたのが思い出される。
だがそれでも
「勇者を待つ間の大魔王同士の矜恃のぶつかり合いに!!-その程度の力-しか持たぬ汝では格が足りぬにもほどがあるわ!!」
折角相手も矢張り異界で大魔王を名乗る者だと若きバーンは老バーンを認め始めていただけに、-少々の力-をひけらかす小娘が変わるなどと言われれば不快でしかないのを、聞いて柳眉を上げ始めた周りと違い、罵られた当人はからりと笑って問いかけてきた。
「私が他界の竜の騎士の娘であっても不足ですか?」
其れでは格が足りないかと言うティファの問いに、全く足りんと若きバーンは一蹴する。
「理により余と最後まで命をかけてやり合えぬ者であるならば、せめて大魔王級の相手でなければまったくもって足りんわ!」
最期までとことんやり合えない-前哨戦-に付き合ってやるのだから、せめてそれほどの位が無ければ、付き合ってやる気にもならんという若きバーンの言葉に・・・・にんまりとティファは笑った・・・・・笑ったのだ・・・
「成程成程!相手が他界の大魔王であればまだお付き合いしていただける余地があると!貴方はそうおっしゃるのですね!?その言葉に二言はありますまいなこの世界の大魔王もどき殿!!??」
「おいティ!!」
「まさか前言撤回しませんよね!
この世界の若き魔界の神大魔王バーン!!!!」
ティファの言葉に潜む何かに気が付いたポップが、それらに待ったをかけようとしたのをティファの言葉の嵐に、若きバーンは目の前の小娘が調子に乗ると苛立ち叫びあげた!
「ああそうだ!相手が-大魔王-であれば余に否やは無い!!あの情けない勇者が戻る保証なぞ無いに等しいが!!異界の大魔王の持て成しくらいしてやろうではないか!!」
「・・・・・ふっふ・・・・ふふふ・・・はっはっはっ!では-他界の大魔王-を持て成してもらいましょうこの世界の大魔王殿!!!」
前言撤回するなと言いながら!-嗤う-ティファの小さな体から白い闘気が渦を巻いて立ち上り!それは次第に-灰色-の闘気に変わりやがて・・・
「ティファさん!!」
「駄目だよチウ君!!あれに近づいたら君は死ぬ・・・・あの子は!!!」
「ティファ!!・・・・か・・・・野郎!!!!!」
「あの・・・・馬鹿者が!!!」
うねりを上げて立ち上る膨大な闘気は、天に達し上昇気流迄もを巻き起こ上空を覆っていた厚手の雲を吹き飛ばし太陽が姿を見せるのを、この世界の者達はあの小柄な少女のどこにこれほどまでの膨大な闘気が隠されていたのだと驚愕するのを、チウがティファのしようとする事を止めようとし、キルはそんなチウに危険だと抱き留めながら再び闘気の渦の中心にいるティファを射殺しそうに見つめ、青年ポップ達は怒りを迸らせ、チウの言葉に呆けていた老バーンも正気に戻り、ティファの狙いに行きつき怒りに震えた!!
・・・・なぜあの者はいつも・・・・いつであっても!!
その嘆きを、ティファだとて感じないわけではない。
おそらく自分の大魔王達はもう自分に戦いに無縁でいて欲しいと願っていたのを知らない訳ではない。
それでも自分は・・・
-少し遡った時-
ねぇ
ん?
ねぇ・・・・ねぇ!聞こえてるよね-中の私!!-
・・・・・・は?
やっと答えてくれた!もしかして私の勘違いだったら恥ずかしいなって思い始めてたんだけど、-やっぱり-私の中には-もう一人-いたんだ。
それは大魔王同士の激突が思いのぶつけ合いになる少し前に、ティファは外よりも-己の中-に目と意識を向けて呼びかけ、外の世界に大魔王が来て気高き魂と思いを輝かせているのに魅入っていた-クロファ-は、外の主人格の呼びかけに驚いて返事をしてしまい臍を噛んだ・・・・・-ティファ-が死ぬまで知られたくなかったのだが・・・・仕方がない!
「何の用?」
「うわ!中の人ってこういう感じの人だったのか・・・って・・失礼だよねいきなり声かけたの私なのに・・」
「いい、で?-忙しい身-で私の正体さぐりっこしたいわけじゃないでしょう?私の事何時から何てまだるっこしいやり取り要らないのも分かってるでしょ?」
お互いの-合理主義-は同じであり、ティファはそこに命の遣り取りを入れる事を厭い、クロファがその部分を受け入れて存在しているだけの話であり、つまるところ根は一緒なのだから
「あのね、このままだと大魔王がじり貧で押されるの分かってるでしょ?でもダイ君とダイ兄もう少しかかりそうなんだ。」
「・・・・それで?」
「うん-力-貸してほしい。」
「・・・・あんた-大魔王の力-十全に使いたいの?」
「そうそれ!・・・・前回はこの世界の力との接続とか力を回すだけに-一部-使っただけだけど・・-戦う力-も一緒に・・・・・駄目かな?」
近頃自分の思考回路と-やっている事-との差異に、敏いティファは気が付いていた。
きっとこの世界のハドラーを助けるのであれば物凄い無茶をして十全に助け、何なら兄達の力も借りてこの世界のダイ達にも理解してもらって、共闘をと無茶事言っている筈なのにそのハドラー達を保護してその後の経緯や昨日筒に入れてをきちんと保管したという-記憶-がある事でティファは確信をした・・・・それまでにもあった小さな違和感はきっと-もう一人の自分-に相当する誰かがいる・・・二重人格とか分裂人格ではなく、きっと大魔王が自分に飲ませた暗黒闘気が自分の大魔王の魂と結びついて肉体の無い新たな生命が自分の中に生じてしまった、新しい生命と自分は同居しているのだという事に、ティファは別段驚かなかった。
元々がもう自分の肉体自体が、-竜の騎士の子共で肉体の見た目は人間で中身と血は魔族でその魂は大魔王-という、己でも奇妙だと思えるほどの物なのだから、別の自分に近しい思考を持った生命がいても今更であり、クロファが危惧したような排除や取り込もうという気はティファには全くない。
其れよりも肉体を共有していると認識しており、-闘う力-はそちらが管理していそうだから貸してほしいと頼み事も迄したのを、当然クロファも二や思考でその考えに至り-貸出許可-を出した。
「私の意識もだいぶ混ざるけれどもいいの?」
「ふふ・・・元々は一緒だったんでしょ?」
数年前には確かにあった、敵対勢力に対する怒りなどが消えたのはきっとそれすらも別たれて持って行ってくれたからでしょうと言うティファの言葉に、クロファは沈黙を以て応えたのw、ティファは笑って提案をする。
「私はティファだけど、あなたのお名前は-次回-聞くね。」
「・・・・そう・・・だったら勝たないといけないわね。」
「そうだよ。-私達はいつも通りの事-をして、この世界の勇者達のサポートするだけだよ。」
にっこりと-いつも通りにする-のだという主人格に、クロファも笑う。
その通り、いつも通りをしてでも、自分達が支えたいと願った者達を勝たせる事こそが自分達の存在意義なのだから。
そしてティファとクロファが-結合-する凄まじい力の誕生によって生じた-暗黒闘気の渦-が、周りを吹き飛ばす程のエネルギーを散らせた時、-ソレ-は泰然と立っていた。
水色の詰め襟スカートに白いシルクの長ズボンに合わせた柔らかい茶色の川のハーフブーツはそのままに、少女の姿は一変していた。
白い肌はさらに白い雪石膏となり・・・なのに耳は人間のまま丸く、半魔ではない証拠に顔に黒い文様は無く、白銀の髪とそして魔族の証である金色の瞳は若きバーンと老バーンと揃いであり・・・・何よりもその気配が物語っていた!
「申し訳ありません。」
一変した少女に唖然としたこの世界の者達相手に、少女は謝した。
実は自分はこの世界に来た時の名乗りに-一つだけ-入れていなかった名乗りがあった事を
「改めて名乗りましょう。
私は竜の騎士バラン、故アルキード国王女ソアラが娘、勇者ダイの妹で一行の料理人を務めていた-大魔王の魂を持つ-ティファです。」
どこまでも人を食ったような・・・それでいて当人は大真面目に名乗るのにいち早く反応したのが・・・・
「ふざけるなよ・・・・・小娘!!!!!」
この世界の若きバーンが、腹に据えかねた様にティファに打ち掛かりそして戦端が再び開かれた!
「何だというのだ貴様は!まるで・・・・まるで大魔王というくらいを蔑ろにするような忌々しい小娘が!!!」
先程の老バーンの時よりも、ティファの方にこそ若きバーンは怒りを募らせる・・・綺麗事一つでこの世界に介入し、そして自分達を翻弄してきた娘が実は大魔王でしたと・・まるで、大魔王という位が子供の玩具にされた気がしたのだ若きバーンは・・・この馬鹿馬鹿しい不愉快な目の前に-ナニカ-を引きちぎらんとする若きバーンの手刀を中心とした攻撃に、白いティファは柳に風とばかりに柔らかくよけそして若きバーンとの体格差を利用して動きによって生じる若きバーンの視界の死角に潜り込みダメージを当て、それがむるであれば結界を小さ作り蹴り上げ難を逃れ距離を取り、或いは当たりそうになるのを硬い結界を弾力ある者に変え正面からではなく斜めに展開して威力を逃させる・・・まさに時間稼ぎの戦い方をティファ-達-は展開しているのが、若きバーンをさらに怒らせる。
「・・・・待っているのかあの小僧を・・」
まるで勇者ダイは必ず戻ると言わんばかりの自信ありげな態度に対し、若きバーンは自分にはない絆に・・・・まるで嫉妬するような苛立ちが生じる。
そして距離を置かれたので問いただしてみれば
「戻ってきますよダイ君は。」
答えの内容は分からなくとも、きっと悪い事にはならないと思いますよという笑顔のティファの言葉に、バーンはその言葉にも苛立つ!!
「それはお前達代々の竜の騎士達が掲げてきた正義の為に戻ってくるというのか!!」
「おや?」
先程と違い、何かに苛立っている若きバーンの姿に戸惑い変な声を上げたティファの声に、其れすらも自分を挑発するかと受け取った若きバーンは激昂した!
数千年間見続けて来た勇者やら竜の騎士達は皆一様に生命を守る為だの弱き者達の為にと-正義-とやらを掲げて数多の命を屠ってきた・・・・中身は兎も角!手段は己達と変わらず最後は大勢の敵対者たちを殺しているくせに正義の名の下に相手を悪だと断じる厚顔無恥にも等しいと若きバーンは-正義を掲げた者達-を厭いつくして来た・・・・この小娘の様に!!
「正義なぞくだらん!どのように言い繕ったところで!!ただ自分達の死が怖ろしく!!それでも数多の命を奪う罪業に目を背ける偽善者共が!!!欲望を口にし振る舞う我等を蔑む高邁なる者が!!!!」
お綺麗な小娘の何もかもを否定した・・・・そう否定したはずなのに・・・
「正義ですか・・・・確かに-正義の戦い-なぞ滅多に無い事でして、私もそこには賛同します。」
・・・・・その当の本人が-正義の戦い-を否定したのだ・・・
「な・・・・に?」
問うた若きバーンも、そして周りもティファが何を言っているのだという目を向ける・・だってティファはその正義を掲げる-勇者の妹で一行の料理人-をしていたのではないのかと・・・・だが
「戦いなぞは大半が-生存競争-です。
私達の大戦はまさにそれでした・・・・この世界の貴方のように、身勝手でやらずとも好い大量虐殺起こすような最低な事を止めのは確かに-この世界-においては正しい義だと思いますが・・・」
強者の理屈だとか、勝者側理論だと言われがちな者であるが・・・・この場合は世界の者達の大量の生命が脅かされているのだから数少ない・・・・・それこそ超が付く程のレアケースで、-大量虐殺者を止めるのは正しい仕儀-になるのだが
「私自身正義を掲げて戦おうというつもりは微塵もありませんよ。
正義の為に闘おうというつもりもありません・・・・よく-相手-する方に正義面するなだの正義の味方になったつもりかなどと言われることがありましたが・・」
主に魔王軍の某お爺ちゃんや・・・遡れば大戦前にお世話になった村襲った盗賊たちを顔かくしてのした時とかに言われたのだが・・・
「正義とやらの為に闘っているのではなく、-たまたま嫌いな相手-に悪党と呼ばれる人が多かった。ただそれだけの話です。」
何故なら自分は好きだったから・・・・大戦時からずっと大魔王達が好きだった、相手の超一流魔王様を尊敬すらしていたのだ。
それでも、好きで尊敬した相手であっても
「戦ったはそこが互いの生存競争を賭けた戦場故に。」
そこには相手が積年溜め込んでいた真剣な想いと言葉を受けとめながらも、何の迷いも無い-透明な笑み-を浮かべ己の今までの軌跡と思いをを何の躊躇いも無く明かす少女がいて、そして言い放たれた
だから、正義の使徒などという大層な者ではありませんよ私は
ただ、自分が信じたあの子達を信じて闘う者なのだと
それこそがティファの強みであった
何にも寄らない自分の中で定めた鉄の約定
ー義ーではなく、まして大勢の定めたものでもなく、自分自身にしか通じないたった一人の決めた事であっても貫くティファは、ここが他界であろうともまして若きバーンの言葉にも迷いを覚える事なく戦いが続ける
そしてティファは今は一人では無い
己の中にいる者もいるのだから二人だと心強く想いながら前に進む
若き勇者の帰る場所を守る為に
今宵ここまで
そこに-正義-は無く、ただ己が信じると決めた者達の為だけに戦う主人公