勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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いしの積まれる世界:

少年ダイは、若きバーンに向かって言いたいこと全てを吐き出せてすっきりとした顔をしていた。

先程まで悩み苦しんでいたとは思えない程の澄んだ瞳で、青年ダイから借り受けたミスリル銀の剣を若きバーンに向けている。

 

「俺はこの世界が綺麗だって思った!!」

「・・・・なに?」

「人の事じゃない!・・・・そりゃ・・・俺の仲間や先生や女王様や俺達の事を助けてくれた人たちは大好きだけど他はまだ分かんない・・・」

「ならば何故!!」

 

世界が綺麗だと言われた事は兎も角として、ダイが今あげた者達は必ず、それこそ自分の魂にかけて誓ってでも守ると言ってやっているのに、なぜ自分と戦うというのかと若きバーンは本気で目の前の少年が何を言いたいのかが分からない。

 

だが、少年ダイは本気で若きバーンを倒そうと決意したのだ

 

 

-遡ったダイ達-

 

「もう目を開けてもいいよ。」

「・・・・・ここって・・・あの下にあるのって!!」

「何だと思う?」

 

竜闘気を纏って少年ダイと自分を守りながら、青年ダイは宇宙空間と成層圏のギリギリの境へと来た。

 

周りに見えるのは暗い空間と点々と輝く星々と、そして下に見えるのは

 

「・・・・・綺麗・・・・緑が・・・・大地?」

「そうだね、下から飛んで来ただけだから眼前に見えるのがパプニカのあるホルキア大陸だ。

海を挟んで見える上の方はギルドメイン大陸。」

「・・・・海ってあんなにキラキラしてるんだ・・・・大きくって・・・俺達あんなに凄い所に住んでるの?」

「そうだ、俺達が見えている広いと思うところも、上から見たら小さなところだ。」

 

それでも、俺にとってはどこよりも何よりも大切なところだという青年ダイの言葉に、少年ダイはきょとんとする。

小さなところなのに何よりも大切だという言葉が分からなくて。

 

そんな少年ダイの頭を、青年ダイは優しく撫でながら-秘密-を話す。

 

「他の人達には絶対に内緒だ。俺はパプニカの王配になる。」

「・・・・王配って何?王様になるの?」

「少し違う、王様か女王様になる人と結婚して支える人の事だ。」

 

自分はパプニカの女王となるレオナと結婚をしてパプニカの王配になる。

 

「俺はあの国とレオナを守る為なら何でもする。」

 

妹も仲間も大切で、守りたい人達があちこちにいるがそれでも

 

「俺はこれからレオナとパプニカ王国の幸せを大切に生きていくんだ。」

 

そう言った青年ダイの顔に迷いは無く、本当にレオナとパプニカ王国を愛しているのが、初対面のダイにも伝わり・・・・羨ましく思う。

 

「俺にも・・・・見つけられるのかな・・・・・」

 

一度は世界に・・・・・もしかしたらそんなに大層な事ではないかもしれないが、確かに人間に怯えられた自分が、もしも奇跡的にあのとんでもない力を振い若きバーンを倒せたとしても・・・・自分の全てをかけてでも、後悔する事のない程に愛する事が見つけられるのだろうか?

 

「それは俺にも分からない。」

 

青年ダイは、あえて少年ダイに甘い事を言わなかった。

この戦いの後にきっと見つかるなどという安請け合いをする方が酷いのだと・・・甘い世界に自分達を漬け込んでおきながら、其の自分達を置き去りにする策を何度もした-あの酷い妹-のせいで、ダイ達は甘い世界の怖ろしさをよく知っている・・・知りたくも無かった事なのに・・・あんな地獄を他者に味あわせる気なぞ、青年ダイには毛頭ない。

希望を与えるのと、優しく甘い言葉は違うのだから。

その代りに贈ろう

 

「分からなくとも、探すことは出来る。君の魔法使いだって俺のポップに負けないくらい素敵で君を助けてくれる頼りになる人だって思う。」

 

戦いが終わった後に、いくらでも探す事は自由なのだと。

 

「話に聞いたマァム・ヒュンケル・クロコダイン・チウ・メルルも戦いの後も君と一緒にいる事を話してくれたんだろう?」

 

少年ダイには、助けてくれる素敵な人達が居るから大丈夫なのだと。

 

「それをするには、先ず勝たないと。」

 

見つかるかどうか不安になるにも-探す場所-が無くなってしまっては、自分の幸せがあるかも知れない場所を守らなければ意味がない。

 

「この世界には人だけじゃない、あの大魔王を倒せば本来の優しさを取り戻せる多くのモンスター達が住んでいる。

爺ちゃんやゴメちゃんや、島にいるみんなと同じくらいに優しいモンスター達が沢山いるんだ。」

 

いるのは人だけでもモンスター達だけでもない。

島にやってくる美しい渡り鳥、動物たちが、何も知らずに生きて死んそしてどこかで生まれている・・・

 

「そんな素敵な場所なんだよあそこは・・・・」

 

決して酷い人達だけの者ではない大陸に想いを馳せた少年ダイはボロボロと泣いていた。

 

「あ・・・そこには・・・・キラキラとした何かがある?」

「分からない、俺には君が言うキラキラがなんなのか・・・それでも、俺は地上が好きだ。」

 

少年ダイのいう事は分からなくとも、島での光景や自然を愛していると青年ダイは言う。

 

俺の言うキラキラって・・・・なんだろうか?

 

分らない・・・・知りたい・・・・自分は何を求めて外の世界に憧れたのか・・・・何を守りたくて勇者になって-みんなを守る-と決めたのか・・・・

 

探したい・・・・見つけたい!ポップ達と一緒に!!この世界の・・・

 

「全部見たい・・・」

「そうか・・・其の為には全部守らないといけないな。」

 

少年ダイの答えに、青年ダイはきちんと聞く。

全部とは、少年ダイを傷つけた人達も含んでいる事を。

 

「それでもいいのか?」

「いい・・・・だって・・・俺は俺の事を怯えたレオナを許したんだ・・」

 

後悔して泣いていたレオナを自分は許した。

 

「もしかしたらさ・・・・その女の子もさ、レオナみたいにその時だけ怖いって思って、もしかしたら酷いことしたと思ってくれてるかもしれない・・」

 

そうでないかもしれないという少年ダイの甘すぎる考えにも、青年ダイは否とは思わなかった。

自分だとて、人の心がわかるほど・・・いや、きっと誰にも本人でさえも分からない心の在り様を言えるものなどいないのだから。

少年ダイが、そうだといいなと考えているのならば、それこそが彼にとっての真実なのだから。

 

「だったら、あの大魔王もどきに勝てる様にならないといけない。」

 

その真実も想いも、あれを倒してこそだという青年ダイの言葉に、少年ダイは頷くのを、青年ダイはほんのりと笑い、そして少年ダイにトベルーラを使わせ自分で浮かせる。

青年ダイとしては、きちんとした床か地面のある上に少年ダイを座らせてやりたかったことなのだが、時期に自分達の大魔王の体力が切れる頃だと青年ダイは見積もっている。

 

この世界に来るために、自分達のレベルを落とす時、青年ダイは普段の一割の力だけを望み、その分バーンが力を有せるように調節をしてきたのだ。

 

「バーンさ、あの大魔王もどきを叩きのめしてやりたいでしょ?」

 

いつも自分達の為に、何くれとなくしてくれるバーンの願いを何かで叶えたくとも、バーン自身は自分達が健やかでいてくれる以外は何も望まぬよと・・・・本当に頭の下がる思いでいてくれている。

そんなバーンの望みを、ダイは自分も叩きのめしたいという思いをバーンに譲った。

つまり、若きバーンの前に立ち威嚇していた時も、若きバーンが危険視したのは青年ダイの闘気ではなく、殺気一つのみで若きバーンの足止めをして見せたのだ。

 

そして持ってきた一割も、純朴な答えを出した少年ダイの為に使う事を青年ダイは選び、少年ダイの両手を降ろさせ、向かい合って絡ませるように小さな手を青年ダイは握りしめる。

 

ゴツゴツとしながらも自分の半分歩かないかの小さな手・・・・その手に世界の全てを乗せられて・・・・自分は本当に・・・多くの手と共に支えてもらったのだと感謝をしながら、少年ダイに竜闘気と共に思念を通わせる。

 

「あ・・・・・怖い!!」

 

時間がないために、何の説明もせずに中に入ってくる青年ダイの竜闘気と知らない気配に、少年ダイはやめてほしいと怯えるのを、青年ダイの優しい声が頭に響いた。

 

-大丈夫、これは俺の竜闘気と思念だ-

-あ・・・・貴方の?-

-そう・・・一緒においで-

 

青年ダイは、思念を内に向ける様に少年ダイを誘導し、少年ダイを-魂の御蔵-の中へと連れて行く。

普通に生きていれば、知る事も無い場所、己の内部に青年ダイと共にいく少年ダイは不思議になる。

薄っすらと明かる中心に、煌々と輝く白い玉の側に・・・・ほんのりと青白い-ナニカ-が見えて・・・

 

「目を凝らして、もっと近くに行こう。」

 

青年ダイに手を取られ近づけば・・・・それは竜の紋章の刻印が押されている青白い玉だった。

 

そっと触って見てごらんという青年ダイの言葉に誘われるように、恐る恐ると少年ダイは両手で包み込むように触れよとした瞬間、それは弾けて自分の中に飛び込んできてそして

 

-どこにいるディーノよ・・・愛するソアラと私の息子よ・・・-

 

「親父!!あ・・・・・あぁ・・・これ・・は・・・」

 

流れ込んできた・・・バランの思念が・・・・自分を慈しみ探してくれている想いや、人間を憎む心、敵をどう倒すかという思考、ラーハルトを、知らない鳥人と獣人を助けた時の想い、自分を見つけたが敵同士であった時の葛藤、周りにいたポップ達に対する憎しみそして・・・・人間の良さを見せつけられその果てに抱いた己の業と罪悪感・・・

 

「お・・・やじの記憶・・・・」

 

そこにあったのは、父バランの取られたという自分に繋がる十二年の歳月の記憶・・・そこにあるのは全てではなく断片的で、紋章を受け継いだ時に共に流れ込んだ微かに残されていた父の思いは、どれ程自分を愛してくれていたのか・・・どれ程人々を愛したが故に、人々に失望し憎みそして・・・・再び人の温かさを知ったが故に苦しんだのか・・・・

 

「おやじ・・・ごめんね!!親父が!命を懸けて愛した人も大地も!!生命も!!!俺捨てようとしたんだ!!!!」

 

そこに見たのは限りない愛憎と後悔とそして・・・やはり自分に対する深い愛情。

偉大な戦士で不器用ながらも自分と母を愛し抜いてくれた父の想いを、自分は踏み躙りかけた事を知ってしまったダイは、父に申し訳が無いと泣いて謝る。

 

泣いて泣いて、そして泣き切り顔を上げた少年ダイの顔には、最早迷いは無かった。

 

「ダイさん・・・俺、親父みたいに生命の為にって言えない・・・言えるほど知らない。」

 

だから、親父達が生命を賭けてでも守りたかったこの世界を自分もちゃんと見る為にも、絶対に負けたくないという少年ダイに、青年ダイは応える為に再び両手を絡め額も着け合い-双竜紋-の使い方と-アバンストラッシュクロス-と-鞘の使い方-を思念で伝授する。

 

「左手に君のお父さんを思い浮かべるだけできっと出来るから。」

 

思念で伝え、さっそく使ってごらんという青年ダイの言葉と助言に、少年ダイは力強く頷きそして左手を握りしめて右手で包み込み父を思う。

 

親父・・・・俺も、守りたいものがきちんとできたんだ・・

 

あやふやに勇者になる為や、誰かに求められたからじゃない。

自分の思いで生命を賭けて守りたいと思った事がある。

 

「だから、手を貸してほしいんだ・・・・親父・・・」

 

息子の切なる願いにこたえる様に、少年ダイの左手の甲に薄っすらと現れた竜の紋章は、やがて横にある自分の魂と同じほどに煌々とした輝き解き放つ。

 

それは自分の全てを愛し包み込んでくれているようで、少年ダイの目にまたうっすらと涙が浮かぶのを、青年ダイはもう行く時間だと促す・・・・何か途轍もなく嫌な予感がすると言われた少年ダイも、慌てて涙を拭い、二人は現実世界に戻りそして青年ダイの竜闘気にまた包まれ一気に下へと戻る道すがら、青年ダイに伝えられた数々の技、そして父以外の歴代の竜の騎士達の想いもまた少年ダイに流れ込む。

 

この地上とそこに住まう生命を守ってほしいと・・・

 

「守るよ・・・・」

 

今度こそ自分は迷わないと少年ダイは左手の竜の紋章に誓いそして全ての怒りを若きバーンに叩きつけてすっきりした後に宣した。

 

 

「お前を倒してこの地上の全てを!!ポップ達と一緒に見に行くんだ!!!!」

 

 

それは、違う世界の、限りなくこの世界に近い世界のダイに対して大魔王が似たような問いをした時、もしも人が俺を怖れるなら、お前を倒して俺はこの地上を去るという言葉とは真逆な事を言いきったこの世界のダイに、少年ポップは嬉しくて涙を流し、仲間達や師も同様に嬉しく思う。

そして-それを知っている-ティファもまた、薄っすらと涙を浮かべ、声を出すのも辛いので兄の胸に靠れながら心の中でエールを贈る。

 

頑張って、私が信じた勇者様




今宵ここまで
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