周りの驚愕を他所に、中の二人は文字通りぶつかり合っている。
バーンは右腕がまだ回復できず、ダイの方もまだ-ダイの剣-を使う時ではないと勘が告げている。
それにまだ-技-のイメージが固まり切っておらず、青年ダイに教わったアバンストラッシュクロスはもう見られているので初見殺しは出来ず、威力はあるだろうが自分の中で考えていた技では恐らく自分が負けるとダイは確信めいた予感がする。
魔界の名工ロン・ベルクの手によりダイの剣は産みだされ、そして彼の手によって生まれ変わったダイの剣の鞘の中ではダイの剣はとっくの昔に-ギガデイン-が纏われている筈。
魔法剣を使う時、魔法を纏わせた剣を鞘に入れ十秒待てば、自分出掛けた魔法のランクが上がるという常識が取っ払われたような、一種出鱈目な機能が追加された時、ダイは心から喜んだ。
これで俺も親父と同じ技が使えると、即ち-ギガデインーを使った技が使えるのだ。
自分はライデインまでしか契約が出来ておらず、そもそもがギガデインの契約呪文書がどこにあるかも分らず探している時間も無い中、それを解決してくれたロン・ベルクに抱き着きそうになったほどであった。
ギガデインを使うとすれば、父バランと同じギガブレイクか、ライデインストラッシュの上位版になるギガストラッシュか・・・それとも鞘事使ってアバンストラッシュアローを撃ち、二撃目をギガデインを纏ったダイの剣でブレイクを撃ってギガデインストラッシュクロスのあ三パターンを、青年ダイにストラッシュクロスを伝授された時に得た着想で考えたのだが・・・・どれも通じる気がしない程に、自分と打ち合いをしているバーンの気迫が、これまで感じなかったほどの凄まじさが一つ一つの攻撃から感じる。
そう・・・死の大地で激突をしたあのハドラーの気配によく似ているのだ。
ハドラーが超魔生物になってようやく自分と本気で戦おうとしたあの時と。
もしかせずとも、今までは自分達が戦っていた大魔王は、真剣には自分達と戦っていなかったのだろうか?
遊び半分で軍団を地上のあちこちに攻めさせ、命がけで戦っていた自分達を相手にしていた時にも・・・・そんなそんな馬鹿馬鹿しい気持ちのせいで!!みんなが!!
「お前なんて!大っ嫌いだ!!!!!」
そんな者のせいでオーザム・リンガイア・カールは滅ぼされ!大好きなレオナの国も一度は滅びに瀕し・・・・レオナのお父さんは死んでしまい・・・・もっと多くの人々が死んで!生きていても地獄のような思いをさせられている!!!そんな奴!
今までのバーンの言葉を考察した事ではあるが、ダイの考えは当たっている。
この世界のバーンは、天界を消すという野望こそ本物だが、それを娯楽と捉えている側面が確かにある。
先ずは天界の前に、神々の恩寵を受けた忌々しい地上を消し去り魔界を浮上させ後に天界を滅ぼさんとしたが、その過程に-遊び-を入れたのがその証拠である。
この世界のバーンにとっては復讐こそが原動力であり、配下も国もどうでもいいとは言わずにそこそこ大切にはするがそれも身を張って守ろうという気は毛頭なく-弱肉強食-を国の内外にも求めそしてついてこられなくなったものは仕方なかろうなのであり、故にこそ弱い者と自分が直接戦ってやるのだから栄誉であり、戦いは楽しいだろうというバーンの想いを汲んでしまったダイは
「こんな事の!!何が楽しいものかよ!!!!!!」
泣きながらバーンを殴りそして殴られ返されながらも否定をする。
こんな事は絶対に間違っていると
そのダイの想いがバーンを苛立たせる。
自分が、魔界の神大魔王と呼ばれているバーンが、最大以上の譲歩をしたというのに、あの忌々しい異界の小娘の可笑しな考えに同調し刃向かってくる。
其れも少し、本当にほんの少し前までは未熟であった勇者が、覚悟を携え向かってくる様に、バーンの本来持っている闘志をむき出しにされる事もまたバーンにとっては腹ただしい。
こんな小僧とも呼べない童を相手に・・・いつしか老大魔王相手の時のように高揚させられていく己の性に腹すら立つ・・・・絆?信じる?それが何の足しになるというのだ!
自分は生まれ出でた時より圧倒的な力を有しており・・・周りにいたのはそんな自分の力を当てにした者達ばかりであった。
誰もが、強い自分を信じていると言い、そして大半の者達は裏では自分の力を化け物の様だと嘲笑していた時期があった。
まだ自身が百歳くらいの若造の時、周りの甘い言葉に有頂天になっていた時の事だ。
自分を信じていると言っていた者達が、自分よりも強い者とぶつかった時に助けるどころか裏切り後ろから攻撃を受けた時に、そんな甘い言葉と思いは諸共に死んだ。
辛うじて相手に勝った時、一度の気の迷いを許してほしいと言った者達を皆殺しにしたあの時か・・・・誰にも裏切らせない、誰をも信じず己の力の身を信じる覇道を行く事を決めたのは。
そんな自分からすれば!信じるだの絆だのを言い張る甘い戯言を言う者達なぞ不快であるというに!!その果てにいるようなこのダイと打ち合う事に高揚する気持ちが生まれるなぞ、バーンにとっては不愉快であった筈を・・・
この世界のバーンは自身の中にあるとある部分を理解していなかった、否、己の事であるが気付いてすらいない事がある。
其れこそが、他者と戦う事の楽しさは、いつか自分を理解し得る者が現れるのではないかという淡い期待も含まれている事に・・・・おそらく自分がそんな期待を、微かであろうとも持っていたと知れば憤死したかもしれない。
それほどにこの世界のバーンの自尊心は高く、それでも、裏切られたあの時-泣いた自分-を忘れようと躍起になろうとも、確かにその時までは魔界においても絆とはあるのだと信じていたバーンがいた事は確かであり、もしかしたら、ダイと打ち合っているこの最中で思い出そうとしている事をも無意識に打ち消そうとしているのかもしれない。
所詮絆だの信じるだのは甘い戯言であり、世界や見守っているであろう神々や忌々しい異界の連中がそれを希望にしているのであれば、粉々に砕かんと
夢中で互いを殴り合う中、ダイはバーンの手刀を躱し飛び退った時、カイザーフェニックスの追撃を受け、更に飛び退り、闘気の大渦の中で僅かな間ではあるがバーンから距離を取ろうとした時、疲労で足が滑り偶然その場で回転をした。
このままではカイザーフェニックスをまともに受けてしまうと焦ったダイは、咄嗟に全身に竜闘気を纏わせ蹴りでカイザーフェニックスを打ち破ろうとしたが、威力はカイザーフェニックスを撃つ破るだけではなく、蹴りの威力がカイザーフェニックスの後詰めとして迫ったバーンを吹き飛ばしたのを見た時、ダイの中で何かが繋がった!
「ほう・・・・決めに来るかダイよ?」
「・・・・・分かるのか?」
「ふん、その顔を見て分からない程ぼんくら大魔王とまで思われていたか。
何を仕掛けようとしているのかは知らぬが、余の全身全霊を以て!貴様毎希望とやらの全てを粉々にしてくれるわ!!!」
バーンの言葉に、ダイは剣に手をかける。
それを見届けバーンもまた静かに闘気を練り始める。
己達の想いの丈は全てぶつけ合った・・・後は!!決着をつけるのみ!!!!
今宵ここまで