勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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いしの積まれる世界:竜の嵐

心が定まれば、不安が消え去り心が凪いでいく。

 

そうすれば不思議な事に、ほんの少し前まで怖ろしく感じた大魔王の事が怖くない・・・きっと俺よりも強いだろうし、これから放つ俺の技を砕いて俺を殺すかもしれないという感じは全く変わらない。

 

それでも、本当に俺は怖くない

 

闘気の大渦の中、対峙しているバーンはダイの心の変わりゆく様をとっくりと見ていた。

その時に仕掛ける隙は幾らでもあった。

やろうと思えばいつでも殺せた、それでもそれは-無粋-だと思ってしまった。

 

かつて自分に対峙した者達の大半は、怯えながらも飛び掛かっきた。

死にたくない、大切な者達を守りたいと怯えながら。

それは先程のダイの様に。

 

だがそれが今はどうだ?

あの魔法使い・・・ポップという男ともいえない小僧の言葉に応えた、たったそれだけの事で目の前の怯えていた小さきものが、戦士の顔をして自分を見つめている!

 

「クックック・・・・・ハッハ!!面白い!!お前達は本当に面白い!!!」

 

己の復讐心よりも、己の半生を使って今一歩のところで完遂する地上・天界を破滅に導く事よりもなお!!この者達は何故これほど自分の興味を掻き立て高揚させるか!!!

 

絆か?かつて自分も信じそして馬鹿馬鹿しい幻想だと斬り捨てた!!あの絆という思い一つで、魔界の半分以上を征服した自分に向かってくる!

 

笑う声だけでダイの肌はひりつきともすれば吹き飛ばされそうなほどの闘気に、それでもダイは体中に力を込めダイの剣をスラリと抜き放ち、正眼な静かに構える。

 

抜かれたダイの剣に雷が、それもギガデイン級の魔力を感じたバーンの顔は益々笑みが深まり、まるで獲物を見つけた肉食獣の様な獰猛な笑みが刻まれた。

 

「そうか、汝は父の記憶をも継ぎ!父子揃って余を討たんとするか!!

ハッハッハ!なんとも健気なものではないか!!

竜の騎士と人間の女の間に出来た数奇な運命をたどりし若き竜の騎士よ!!!」

 

残った左手で乱れた前髪を掻き上げながら、複雑な運命(さだめ)におかしみを感じる。

 

黒の核晶でバランを殺せていたら、楽に勝てていたかもしれないがここまで自分は高揚していただろうか?愉快に感じていただろうか?

もしかしたらすでに天界をも滅ぼしに言っていたかもしれないが、あの美しい太陽も欲しいと立案した計画を完遂させたとしても、予定通りに終わったかと思うだけで、太陽を己がものにしたとしても、感動はあれどもここまで高揚はあっただろうかあやしいものである。

 

だが!今はどうだ!?

己の想いが何も儘らないというのに、これ程までに心が躍る!!

 

「さぁ決着をつけに来いダイ!!!!」

 

まるで、いつまで待っても来ない恋人を待ち焦がれる男の様だと、己の心情に苦笑したくなるがどうにもならないバーンの熱を帯びた言葉と掲げられた左手に誘われるように、ダイは、走った。

 

走りながら剣を握った両手を内側に力を籠め、そして両手の竜闘気を増幅させ目に見える程に闘気を高め最高潮に達した時、ダイは体全てを回転させた。

 

それは小さな竜巻の様であったが、バーンから見ればか細いものであった。

あれが、ダイが此処に来て考え付いたものだとすれば期待外れだと失望を覚える程に弱きものに映る。

 

「それが汝の・・・貴様諸共に掻き消してくれるわ!!!!」

 

ズリュリ!!!!

 

「あ・・・・そんな!!ダイ!!!!」

「ここに来て・・」

「そんなのって!!!!」

 

最後の最後でバーンの右腕が生えた・・・ポップ達がそうであったように、竜闘気の特性が切れ回復してしまったバーンの右腕に、外で見ていたポップ達はあの構えを取ったバーンの姿にダイが破れてしまうと飛び出そうとした。

闘気でそしてマホカンタ系の技で、ダイの新技がやぶられてしまうと・・・そうなった時、あの凶悪に渦巻いている大量の闘気がダイを襲う前に!!

 

そうなる前にと飛び出しかけた全員の前に、ソレは立ちはだかった。

 

ダイ達と自分達の間に立ったのは、自分達よりも背が低くいはずなのに、誰よりも大きく見える背中を長い黒髪をたなびかせたティファであった。

無言で自分達の間に立ち、黙ってダイを信じろと言わんばかりに両足で大地を踏みしめて立つ少女の無言の言葉に、男達は止まる。

 

そしてティファも食い入るように見つめる先には・・・

 

 

「ギガデインであろうとも!余の勝ちだダイよ!!」

 

バーンは左手ににフェニックスウィングを右手にカラミティエンドの闘気を纏わせ、ダイの目論むギガデイン系の何らかの技を打ち破ろうと回転するダイを、先程何らかの回転技を撃とうとしたティファの様に止めようとしたが・・・・・止まらなかった!

 

両手に闘気と魔法系のカウンター技を纏わせながらも、ダイの回転を止めることが出来ない事に、バーンは本気で焦りを感じた。

こんなか細いものが何故止められないのだと・・・だが、ダイの技が止められないのは奇跡でもなんでもなく、それは必然であった。

 

ダイが今己尾の剣にまとわせているのはギガデインであり、其の自分達を包んでいるのは竜闘気であり、竜闘気だけであれば、もしくはギガデインだけであったればバーンの天地魔闘で敗れていただろうが、回転をする事でダイの剣が纏っていたギガデインの威力が、内側からダイの竜闘気の回転に引き寄せられ交じり合い、まるでギガスラッシュや火炎大地斬やライデインストラッシュの様な魔法剣と同じ威力が生じ、バーンの急増ともいえる右腕で威力を殺すには足りずに、止まることなくバーンの腕の中で回転を続け、少しずつバーンが押され始める。

 

しかしダイは、別にそれを狙って回転をしたのではない。

ましてバーンの右腕が生えるなどと予想もしておらず、回転の渦の中で見てい驚いたがそれでも撃つんだと迷わず威力を殺さずに突っ込んだのだ。

 

ではなぜ回転を選んだのか?

それは単純に強いからだ。

ダイは知っている、島に大嵐が来た時たんなる突風よりも、海から時折来る大渦の竜巻の方が、島を酷い状態にしていったから。

 

そしてクロコダインの大技と、ヒュンケルの必殺技も知っている。

どちらも凄まじかった。

 

其れのみで編み出された技は、バーンのカウンター技を決まらせるに至らせなかっただけではなく、徐々に-周囲の渦-達が引き寄せられていた・・・

 

「そんな・・・・・あの渦は本来は・・・・」

 

その光景に、今までどのような事があろうとも冷静でいた老大魔王すらが驚愕せしめ、見守る者全員が目を見開く。

 

それに気が付いたバーンもまた、これもダイの狙った事なのかと焦りは混乱へと変わるほどであった!

 

「これを狙っていたのか貴様は!!!」

 

ダイの渦巻く闘気に吸い寄せられるように、周囲の闘気の大渦が巻きこまれダイの発生させている闘気の竜巻が肥大化していく。

老大魔王の言う通り、本来であればどちらかが破れ均衡が崩れた時、それは決闘に負けた物を食らわんとするが如く、敗者に襲い掛かる筈の大渦が!今まさにダイの放つ技に使われんと集っていく様に、老大魔王とバーンとティファの脳裏にある言葉が浮かぶ

 

竜は嵐を伴い来る

 

それは雷鳴と共に、渦巻く竜巻を束ねた中に、逆鱗に触れられた怒れる竜が姿を現すという伝承であった。

 

竜の騎士にして勇者であるダイは、確かに怒りを以て戦っていた。

己の愛した者達を、罪も無い生命を消そうとバーンに対して怒りを発してい!

 

「ぐぅ・・・・・これしきの事!!!!」

 

周りの闘気の威力も上乗せされ、最早か細いとは言えなくなったダイの竜巻に徐々に押されていたバーンは、それでも堪え上に逸らそうと持てる闘気を全て引き出す。

これを耐えればダイにはもう次がない!そうなれば己の勝ちであると・・・だがしかし、-絆の力-が堪えようとしたバーンをまたもやダイ達の絆によって不意に体が崩れた。

 

「な・・・・に・・?」

 

ゆっくりと崩れる体に、誰であろうバーン本人が一番驚いていた。

今自分の腕の中で回転を止めないダイが攻撃できる筈も無く、周りの闘気の大渦もダイによって引き寄せられたとはいえども内部の半分ほどであり、外からの干渉を許す程でもなく、ではなぜ自分が・・・・あの魔法使いの・・・・

 

なぜ自分が崩れているのか、それは崩れたのが己の-右足-であると認識をしたバーンは一つの考えに至った。

先程少年ポップを蹴り殺そうとした時、あの魔法使いはギラを収束して撃つことで自分の右膝を貫通させたが、直ぐに直せたが、それは皮膚や貫通された骨などの-大まかな傷-であり、傷つけられた神経の直りは完ぺきとは言えずに、それは普段の戦いであればどうという事のない取るに足りない傷が、この極限の力を発揮せねばならない時になって牙を剝いたのだ!

 

「おのれ・・・・おのれ!!!!」

 

絆の力に、屈してなる者かとバーンは足掻くが、ダイはここだとばかりに残しておいた最後の闘気をダイの剣に全てを込めた!!

 

「お前の・・・負けだバーン!!!!」

 

爆発するダイの力にバーンの両腕は弾かれ諸て上げにされ、障害の無くなったダイはバーンの身を食らいつくしに攻めかかる。

 

 

「喰らえ!!!ストームギガストラッシュ!!!!!」

 

渦と雷の嵐がアバンストラッシュブレイクの威力に収束されたその技は、大魔王の心臓を二つ食い破り、のみならず諸て上げになった左腕とバーンの象徴の一つたる左の角を粉々に砕いて蒼天へと突き抜け竜は天を駆け、そして一拍おいて崩れ去るバーンに残った大渦の闘気が襲い掛かる。

 

ダイの技が決まり、真竜の戦いは勝者を闘気の檻から出し敗者に食らいつく。

 

「あ・・・ギィァァァァァァ!!!!!」

 

 

今生に味わった事のない、まさに死を想起させる神経一つ一つを苛むような激痛にあえぎながら、バーンの巨体は地に倒れ伏すのを、蒼天の中心で少年ダイは見下ろすのだった。

 

 

 

 

誰もがダイの勝ちであると確信するほどの光景であった




今宵ここまで・・
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