蒼天に君臨する竜、まさにダイは其れであった。
そしてその竜に心臓を二掴み砕かれ、のみならず左腕と角一つをも消失させられ地に伏したバーン・・・・これで決着がついた!
誰もがそう思う歓声が上がりかけた時
「・・・・う・・・くぅ・・・」
微かな呻き声に、全員が止まりダイも警戒をしながら全員の前に立って剣を構えながら、震えそうになる体を鎮めようと苦心する。
あそこまでした、文字通り自分の中の力と知恵を全て使い切っての大技であり、あの周りの闘気の大渦も全てバーンに行き、自分なら即死しているダメージを負ってもなお生きているバーンに、最早恐怖すら感じるのは無理からぬことで、どうしたってバーンを倒せないのだろうかとさえ頭によぎる。
魔界の神とは・・・本当に-神-であり倒せないのか・・・・
だが、これにも絡繰りがきちんと有る。
バーンは己の若い肉体を分離し凍れる時の秘法で不死性を手に入れ、何千年という時を渡って来たように、今度もまた絡繰りを・・・・最後の切り札に手を付けた。
「っぐふ・・・・・はは・・・・まさかここまで・・・・・余が追い込まれ・・・」
けふけふと、血を吐きながらバーンがバーンは-額の瞳-に手を入れ
「余の・・・・肉体を捨てさせる決意をさせられるとはな!!!!!」
第三の瞳の開放により、ダメージが回復していく
「あ・・・・駄目だ!!!」
「止めろ!!!!」
「カイザーフェニックス!!」
「大地斬!!」
「メド・・・・メラゾーマ!!」
「アバンストラッシュ!!」
それは異常であり、回復していくバーンの動き一つで空間すらもが捻じ曲がる現象に、ダイ達は無いながらも力を振り絞りそれぞれに出せる技をバーンに放つがそれらは届かなかった。
歪んだ空間は、尋常ではないエネルギーを発し、来たもの全てを曲げバーンに掠りさえもしなかった・・・・解放したのだバーンは、己の最後の切り札である第三の瞳-鬼瞳-を。
解放すれば、己の肉体は魔獣と化して理性も知性も失われるであろう最後の切り札を、自身の何もかもを投げうってでも、絆の力とやらに負けたくないという一念が、バーンを追い詰めそして死すとも出すまいと思っていた。
-アレ-になってしまっては、己の意思まで呑まれるからだが、それでも勝ちたい!!負ける事こそ業腹であると、己を捨てでもと・・・・
その凄まじいエネルギーが噴き出し!バーンの体は巨大な-ナニカ-に覆われそして中心にバーンが取り込まれていた!!
「竜の騎士ダイよ・・・・くっく・・・これが、余の最後の切り札よ。」
巨大な・・・モンスターともいえないその異形の姿になり果てたバーンに、老大魔王もあれがなんであるか皆目見当がつかない。
それはあまりにも異質で、異常で、ドラゴンでも魔神でもモンスターでもなく・・・凄まじいエネルギー体である事しか分からない
呆然とするのをバーンは老大魔王の様を見てクツクツと笑う。
「そうか、貴様の若き肉体はすさまじい威力があったのだったな・・・おそらく余と違って鬼瞳を解放しても、このような魔獣の肉体化はせずに世界を破滅させるエネルギー体にでもなるのか・・・・・それも叶わぬよ・・・・貴様らは余が・・・・じきにこうして話もできなくなる知性も理性も無くなった余が!!全員殺す!!!!」
本来は、己が成らない・・・なる気が無く、鬼岩城を作る事で満足している筈であったバーンの-最後の力-は、拳を振り下ろし文字通り全員を潰そうと振り下ろす。
一撃を逃れても、幾人かを死なせてしまう・・・その場で防御をしようにも最早・・・力がもう・・・・
「竜の子よ!!!!!」
ダイを初めてして、誰もが、力がもう出せないと絶望しかけた時声が響き、そして魔獣が動きを止められた。
それは、その声は思念体となり最早直接は現世では聞こえない筈の
「マザー・・・ドラゴン・・・」
ダイの言葉に、マザードラゴンは最早存在しない顔を苦シャリと歪める。
愚かで他者を散々振り回す自分の名をまだきちんと呼んでくれることが嬉しくて、そして最早二度と聞けない最後の会話を、楽しむ時間がない事も全て含めて表情が歪める。
あと百年残る筈であった思念体としての役割の為のエネルギーを割いてでも・・・
「ダイ、時間がありません。」
自分の最後の事も呼べるダイとの別れも惜しいとばかりに、マザードラゴンは焦るように話し始める。
「そのバーンは、今第三の瞳を解放して真珠となり果てました・・・大丈夫です、今から数分は動きを止めてもらっています。
私の話を聞いてくださいダイよ・・・」
マザードラゴンの言葉にバーンを見れば、魔獣は拳を振り上げたまま、取り込まれたバーン事動きを止めている。
それが何故も何も聞く暇は無く、マザードラゴンはダイに選択を迫る。
「ダイ・・・残念ながら今の貴方達ではそのバーンを倒すことは出来ません。」
竜の騎士の最終形態になれればと言っても詮無き事・・・・
「しかし、ダイの協力があれば一つだけ手があります。」
「なに・・・何が俺に出来るの!!!」
今自分に出来る事があるのであれば、直ぐにやるというダイの言葉に、マザードラゴンは嬉しく思う。
この状況に絶望せずに、足掻けるのであれば何でもするという心の強さに。
其れでも・・・これから自分は・・・
「ダイ、貴方の左手に輝く紋章はバランから譲られたものですね?」
「あ・・・うん・・・・この中から、沢山の戦い方と、父さんの微かな、俺と母さんを愛してくれた記憶と思いがあるんだ・・・」
譲られた紋章から、これまで戦いに対するその場その場の最適解を教えてくれていただけではなく、根底には-愛-を感じた・・・・悪を討てという感覚よりも、どの教えの中にも己を見んとしてくれている父の果てしない愛を・・・・だから・・
「俺は怖くても前に出て戦える・・・・」
ダイの言葉にマザードラゴンは無い筈の涙が流れるのを感じる・・・・
「よく聞いて考えそして返事をしてくださいダイ・・・」
時間は-あの人-が作ってくれる・・・・だから、悩んでいいというマザードラゴンの言葉に、ダイは何を言われるのかと不安になった。
そしてそのダイと周りの不安は的中した。
何故ならマザードラゴンの提案は・・・
「ダイ、貴方の譲られたその紋章を空に放ち、ティファがバーンが取って来た膨大なエネルギーを天空で一つにしてバーンに向け紋章閃を放てば倒す事は可能です・・・」
「そうなんだ・・・なら!!」
紋章閃は、一度だけ父に放たれた事がありあれだけでいいのであればとダイは構えたが、マザードラゴンの次の言葉でダイの動きが止まった・・・・止まってしまった
「ダイ・・・これからあなたに撃ってもらうのは只の紋章閃ではありません・・・」
それはバランから譲り受けた紋章の中に蓄えられてきた数百年分のエネルギーをも併せなけらばならず
「私は我が子等が死ぬとき、私の体内に死した子等を再び胎の中に取り込み紋章も吸い取るのです。」
その力を使ってダイの左手から-バランに譲られた紋章全て-を取るのだと・・右手の紋章も可能ではありバーンを倒せないとは言わないが仕留め切れる可能性は低くなり、できれば左手の紋章を取らせて欲しいと
「そ・・・れって!!!まさか!!!!」
今まさに左手から天に向かって紋章閃を放とうとしたダイの動きも思考も全てが凍り付き、それはポップ達も同様で・・・何故なら
ダイの疑問に、マザードラゴンは包み隠さずに答えた。
文字通り、譲られた紋章を取るという事は・・・・・・戦闘時の最適解だけではなく、バランの残された微かな記憶と愛までもダイから奪う事を・・・
ダイ君はどうするのだろうか?
右が左かどちらを、何を選んでも助けますと、ティファは-バーンの中-でダイの中で答えを待つ
今宵ここまで