勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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いしの積まれる世界:切り札

確実なる左手の紋章には歴代の竜の騎士の想いとそして、己と母に対する深い愛情の微かなる記憶

 

確実ではない右手の紋章には・・・・何が詰まっているのかは分からない・・・

 

しかし言えることはただ一つだけ

 

「左手を即座に選ぶような子であれば、そもそも私はいなかったでしょうね・・・どう思いますか若き大魔王もどき殿?」

「・・・・知らぬ!!そんな事よりも!!貴様いい加減に-余の中-より出ていくがいい!!そもそもお前はどうやって余の中に入り込んだのだ!!」

「あぁそれはですね、貴方の中に無断で入って来たお詫びとしてお教えさせて頂きます。

私は向こうの世界の大戦終結の為に-多少-無理しすぎて世界の命運やら天命やら・・ぶっちゃけると色々と起こる筈であった事象を強引に起こさせないように誘導したせいで対価やら代償払えと生命と魂持ってかれそうになりましてね~。」

「・・・・・・・・は?」

 

少し前に、後ほんの少しで魔獣と化した名付けるところの-鬼岩王-となった自分が、自我が保てている間に忌々しい者達全てを粉砕できるところまで来た時、突如この目の前の忌々しい小娘が精神世界に入り込み、自分の精神体を掴まえた・・・訳がわからない!!

 

そもそも複雑な呪法を用いてようやく入れる精神体に!なんの呪法も仕掛ける時間なぞ無かったこれが!どうやって自分の精神世界に入って来たのだと問えば!!世界全ての命運等を書き換えたのを-多少無理した範囲-で語ろうとしているこいつの精神自体がおかしい!!!

何のなのだ!そんなそれこそ-神-かそれに近しいものしか成しえないような事をしでかしておいて、そこまで凄いことではありませんよね認識でいるティファに対し、そういう方面に圧倒的詳しいバーンとしては、もうティファという存在自体が-色々-とおかしすぎると苦悩するのを、ティファは気づかず種明かしをする。

 

「体まで砕けた時、-私の大魔王-が自分の魂と生命を半分分けてくれたのです。」

 

あの時の温もりを、ティファはずっと忘れない。

 

寒くて凍えて、消え果ようとした自分を必死に搔き抱いて文字通り己の全てを半分分けてくれた大魔王を・・・この先後継ぎのハドラーが大魔王に就任しても、自分にとっての大魔王は大魔王ただ一人で・・・・・目の前の大魔王もどきは割とどうでもいいのでその辺は胸に仕舞って今起きている事象の説明だけをする。

 

「他界であろうとも大魔王の生命と魂が入っている私は、この世界の貴方とも親和性が高く、故に精神世界に入るのは簡単でした。」

 

それが無ければ貴方を取り押さえるのはもう少し苦労して、拘束時間も短かったでしょうと言いいながら笑うティファを、バーンは忌々しげに見つめる。

 

-遡った少し前-

 

バーンが第三の瞳・鬼瞳を解放した時、ティファは鬼眼王があったと臍をかんだ。

 

マザードラゴンの策が間に合わなかったか!

 

・・・・とは言ったところで仕方がない。

さてどうしたものか、ラックでマグマの中に堕としてもあれは死なないだろうし・・・・自分の生命全部をハイ=エントの魔力に回して魔獣に取り込まれたバーンの最後の心臓をジ=アザーズで止めてみればうまくいくかなという、やったら効果のほどは分からないが確実に自分は死ぬだろうがやってみる価値はあるだろうという物凄く物騒な策を実行しようとした時に、-待った-が入った。

 

「ティファ!!!貴女は自分が死ぬのを前提で動く癖をどうにかしなさい!!!!」

「・・・・・・・は?」

「えぇえぇ分っていますよ!!!貴女にそんな策をさせる事になった元凶たる私が何を言っているのだと言いたいのでしょうが!!あれを何とかする策はもうできているのです!!!」

 

もっと周りを頼りなさい、信用して真っ先に自分を使い潰す癖を辞めなさい!!

 

止めたのはこの世界のマザードラゴンであり、策があると言いながらティファに説教したのだ。

ティファは、どうして周りには無理無茶するなと言いながら、己とはそれこそ本当に何の縁も所縁も無い世界の事で命をかけるどころか命を対価にするような策を平然と敢行しようとするのか、この世界のマザードラゴンはティファを連れて来てしまった事を悔いても悔やみきれない気持ちながらも、切々と語る時間は無いので後は向こうのマザードラゴンに託したので-後で-聞いてくださいという言葉に、ティファはそれだけでマザードラゴンがこの後どうなるのかを的確に察して、自分にどう動いてほしいのかを端的に問うた。

 

このタイミングでの接触であれば現状の打開策があり、自分には時間稼ぎでもしてほしいのかと問えばその通りですと言われたので、速攻自分ならできるのではないかというバーンの精神世界への侵入を試みて成功をした。

 

やり方は魂飛ばしと同じであり、この場合魂ではなく精神をバーンと繋がるようにする。

原作で言うところの最終の時のメルルとポップのあの心が繋がり通信で来たのと同じことをバーンに仕掛け成功し、気付かれて弾かれる前に内奥まで進んで今に至っている。

 

「マザードラゴンが・・・・何故短時間で余を仕留める策がある?

・・・貴様か?事前に余の最終形態をマザードラゴンか神々に伝えて策を施させていたのは・・・」

 

バーンの疑問ももっともである。

向こうの世界の老大魔王すら知らない事柄を、何故かこの小娘が知っていて策を用意させたのか問うバーンの疑問に、ティファは苦笑する。

 

「何でもかんでも私の仕業だと決めつけないでください。私はそんな凄いものではありませんよ。」

「ふん・・・貴様の仕業と思われる数々の事を思えば、疑われて当然であろう。」

 

この世界に来て早々に自分から勇者一行を丸々と逃がした事から始まっているだけに、疑われて当然だというバーンの言葉にティファは益々苦笑する。

 

「本当に今回は私ではありません。覚えていますか大魔王もどきさん、最初に遭遇した時マザードラゴンは、近い世界であれば行き来をして情報のやり取りができると。」

「・・・・言っていたが・・・もしや・・・」

「はい、その中に-貴方の情報-が入っていてもおかしくは無いでしょう?」

「だが・・・それでは神々は何故余に対してなにもしてこなかった!!??

事前情報がある時点でそれこそ余がこうなる前に!!!」

「それをするのは-禁忌-なのでしょう。

結末が分かっていても言葉にせず、干渉せず、-情報-が使われるのはあくまでも戦闘経験だけで、それ以外に知った事はどこであっても伝えない・・・そうでもしなければどこの世界もおかしくなると思いますよ?」

「む・・・確かにお前の言う事に一理ある。理の外から得た情報で世界を動かすというのは、人形遊びとさほど変わらんな・・・・してみれば其れで世界が動く事を余やヴェルザーの如きものが知れば、いつか研究して同じ事をしようとしよう。」

 

だが、世界はそのようにはなっていない・・・・なっていないと知覚できていればが前提であるが、少なくとも自分がそうなっておらずここまで勇者達を追い詰めたのがその証拠の一端にはなろうとバーンはどこか納得をする。

 

であるならば尚の事疑問が湧く。

 

「ならば何故余に対しての策が出来ているのだ?」

 

・・・・性格や在り様は兎も角として、知識は特一級品なバーンの鋭すぎる疑問にティファは溜息をつきながら答える・・・・溜息の理由は-自分がされたら嫌な事-であり、自分がさんざんやっている事だからだ。

 

「この世界のマザードラゴンは、他界で知った貴方の最終形態の事をこの世界の神々に明かす代わりに、あと百年は存在で来た思念体の消滅と・・・・・輪廻転生できる筈の魂までもを対価にしたのです・・・」

 

文字通りマザードラゴンは己の全てを使ったのだ。

 

竜の騎士のみならず、彼女はいつしかこの世界の生命が愛おしく思っていたのかもしれない。

只の調停者の生みの親というだけではなく-母-として。

 

「ただ一つ貴方の先程の事もあっています。」

「なんだと?」

「貴方の情報に対して結構あやふやなところがあったので、-鬼眼王-になる為の発動条件と言いましょうか、どんな動きをした時にそうなるのかの最後の情報を私が渡しました。」

 

バーンが額の目、鬼瞳を取り出そうとした時だ。

 

つまり、半分以上はマザードラゴンの策であり、ほんの少しだけ自分が関わっているのですというティファの言葉に、バーンは今度こそ怖気振い、戦慄く声でティファを問いただす。

 

「・・・・なんなのだ貴様は・・・・・一体貴様は!!!なんだというのだ!!!」

 

最早化け物ですら生温いとばかりのバーンの言葉に、ティファは静かに笑って答える。

 

「私は・・・・そうですね・・・こういう時の為の-切り札-ですかね・・・」

「切り・・・札だと?」

「はい、貴方はとかく切り札たりえる物を出しすぎたのですよ。

地上消す為の六芒星の核になる黒の核晶を仕込んだ柱をあんなに剥き出しにするから私に盗まれて、あの服装言動悪趣味死神を取り込む為かは知りませんが、折角影に預けていた若い肉体を自分と融合する事で、老バーンと若い肉体との挟撃という手を自ら封じて、影にこっそり逃げて人知れず力を解放して、遠くから私達を殺す手を考えもせずに目の前で堂々としてやったが為に、こんな羽目に陥っている・・・・切り札を殺してますね・・」

「だ・・・まれ・・・・」

「切り札は簡単に見せてはいけませんよ。」

「黙れというに!!そもそもが本来はどれか一つでも使えれば貴様等を殺しえたものを!!」

「はい、私が尽く邪魔をしました。

私も自分の能力を見せてきましたが、-それら-は全部は見せてませんでした。」

 

黒の核晶を取れる能力も、若き大魔王を相手に出来る大魔王の力も、そして若きバーンが追い詰められた時の行動や最終形態の事を識っていたことも・・・

 

「切り札を見せるなら、更に奥の手を持つべきでしたね大魔王もどきさん。」

「貴様が・・・その切り札だとでも言いたいのか!!!」

「今回においては違います。私はそんな貴方にダイ君達なら抗えると信じた事が最後の切り札です。」

 

己が絶対だからと慢心したように周りを見ずに動くから、少年ダイの心根も見抜けずに食らいつかれたのだとティファは言う。

彼等の絆の力こそが、最後の切り札なのだと。

 

「彼はどんなに辛くとも、貴方を倒す道を選びます。」

 

この世界を大切な仲間達と共に知る為の旅に出る為に・・・・記憶の無くなったバランがそれでも生きていてくれれば新たな絆を自分が築けばいいのだからと泣いてバランの生を喜んでいた優しい少年は、きっと・・・

そう信じているからこそ、少年ダイの為に自分の持てうる限りの力を使える・・・自分がマザードラゴンに情報を与えた時、ティファもまた対価を払った。

 

それは己の肉体の成長

 

これよりはティファに肉体は成長する力が無くなる。

生殖機能は流石に渡さずに済んだ。

其れでは対価の払い過ぎだがそれは兎も角、ティファはまだまだ女性らしく成長できる筈であった。

事実ザボエラ達の健康診断で指導を受けたマァムの食事療法のお陰で背は伸び胸も少しだけ膨らみ二次性徴が始まったが、それもこれはから無くなり-一生少女のまま-時を渡っていく事が決まった。

 

だがそれでもいい、自分が信じた切り札達の為に、成長しないくらいなんだというのだ。

 

生きる事が第一なのだから・・・・・

 

そして、ティファの願いが届いたが如く、数分後に少年ダイは泣いていた瞳をぐしゃぐしゃに両手で拭い、決然とした顔を上げた。

 

答えが出たのだ




今宵ここまで
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