石化したバーン達を魔界の深部にというティファの言葉に、当初固まってしまっていた大人達は、ティファに対して頭おかしいのではと一つ目ピエロが言っている間に状況整理を素早くし、ティファの提案を再吟味して悪い手ではないと思っていた矢先の-雷-に、再び唖然としてしまった・・・・雷が突如として降って来た事はなく、何故か分かっているだけに、この世界の神とは一体なんであるのだろうかと開いた口が塞がらない・・・
ティファの提案は至極真っ当であった。
この地上のどこの国に安置するにしても各国の思惑で決まるにしても何年もかかるであろうし、その間矢張りどこの国で預かるというところからして揉めそうであり、であるならばいっその事地上に無い方が-誰-にとっても良いのだから。
古来より勇者が魔王や竜やその他を討伐しても、証を持ってくるだのましてや遺骸を見せろだのの類を言われた事は無く、先のハドラー大戦においても、ハドラーを討伐した・・・と思っていた(あれは特殊で仕方ない・・)あの時も、アバン達の報告一つで討伐終了宣言が成されているのだから、今回も討ち果たし、マザードラゴンと神との共闘で勇者ダイが受け継いだ竜の紋章を併せる事で、途轍もない力を大魔王に打ち付け欠片も残らなかったのだと、この場にいる全員に口裏を合わせた上で報告をすればいいのだから。
幸いこの場には勇者一行の関係者しかおらず、なんならば神との併せ技の時に、ダイは竜の紋章を捧げ、強さは北の勇者ノヴァ程になったとも言えば、彼を危険視する度合いも、-兵器扱い-するものとておらず、それと併せてポップ達もし烈なる戦いの影響を受けてしまい、肉体と力のレベルが下がったのも報告をすれば、自分達の弟子の安全度合いがぐんと高まるとまでこの世界のアバンとマトリフは話し合わずとも同じか似たような計画を頭の中で素早く算段をつけた矢先であった。
そして異界のアバン達も似たような結論に達していただけに、この出来事に対してどう対処すればよいのか本気で迷ったが、隣からの凄まじい怒気・・・最早殺気ともいえる程の気配が漂い、そちらに目を向ければ、己の忠臣の左腕を焦がされた事に激怒し光魔の杖に再び魔力を注いで槍の穂先を作り、天に向けている老大魔王すさまじい形相があった事に、異界の全員が怖ろしいとは思わずに納得をする。
老大魔王の怒りは、そのまま彼等の怒りなのだから。
キルが負傷をした事もさることながら、今まで何もどころか問題解決の為に己達のみを削る事もせずに、他界のティファの作りし奇跡の薬をなんの断りも無しに持ち出そうとしたどころか!あろう事かティファの力自身をも巻き込む事を仕出かし、これまで何謝罪も無い者達が、我が物顔で討ち果たされし若きバーンの遺骸とその忠臣ともいえるミストバーンを辱めようとする者を、老大魔王を筆頭に、許せるものなどここにはおらず・・・当然ティファの怒りは凄まじい者であった・・・・
自身が連れてこられた事はまだ許せた。マザードラゴンが己が身で償ったのだから。
しかし兄とチウが巻き込まれた事は苛立ちを覚えた・・・・その二人の心に多大なる傷がついた事も、少年達が痛々しい涙を流し様々な葛藤と苦悩を抱え、それを乗り越えた先のこの出来事に・・・・
「いい加減にしろ・・・・・・・」
ティファの深度の怒りを、天界は買ったのだ・・・
しかし天界側にも言い分はあり、何故邪魔をしたのかの詰問が、雷を降らせた時と同じように降って来た。
未だ天界と地上界は繋がっており、交信が可能なので一部の神々から逆にどういう積りだと-叱責-が来たのだ。
「我等はそこな大魔王を討たんとしたのみだ!その者は遺骸とて残しておけば後々の禍根となろう!!」
「左様!その禍根を残党諸共に排そうとしたのを何故に邪魔をするのだ異界の竜の騎士の片割れよ!!」
彼等は自分達の行いは善だと信じ切っており、戦い終え死力を尽くした者への敬意も無くそれが正しいのだと言い切るその独善的なまでの言葉に、若きバーンを倒さなければならないと必死だった少年ダイ達をして不快にさせる程であり・・・・
「・・・・・・攻め・・・滅ばされたいですか私に?」
静かな怒気は怖ろしく・・・
「貴方方を殺さずとも無力化して天の端にでも転がすか、或いはあなたが貴方方の身を明かしたうえで魔界に捨て置きましょうか?」
天界であれども、自分の本気の結界に閉じ込めれば千年は何も出来ずに無力の徒となって天界の者達からの軽侮の目に晒されるだけで済むが、魔界に会っては間違いなく嬲り殺しの目に遭う方法を、つらつらと話すティファの形相はいっそ静かでないでいるだけに・・それはかえって途轍もなく怖ろしいものであり、それを指示するような雰囲気を醸し出しているキルもまた同様に怖ろしいものとかしていたが、ティファの言葉は其れのみでは済まされはしなかった。
「この狼藉、一体どういう積りなのかの釈明の一つも無いのですか?」
それは詰問であり尋問であった。
人々どころか長い間怨みつらみをその身に飲み込んできたピロロと人形キルバーンをしても驚くようなティファの行動は、当然神々にとっても予想外であった。
天地開闢をして、自分達を恨み罵る者達が居たとしても、たまさかにこうして地上と繋がった時に交信する機会があった時に声を掛ければ、神の声が聞こえたと、それまで抱えていた不満も何もかもが浄化され崇められてきた彼等にとって、これ程の予想外でありまして他界であろうとも天に所属すべき竜の騎士の子孫が自分達を尋問しようとは思わず、たまらずに一人が声を荒げ
「無礼者!!!我等とて様々な事情があり地上に手を出す事は叶わない身!!
だが今回我等は-手を貸せる-事が出来た故に助力をしたのを感謝こそすれ邪魔建てをし!!あまつ我等にそのような言動をとるとはそちこそどいういう積りだ慮外者が!!」
ティファを弾劾した。
その声には確かに神威が籠っており確かに神の一人だと分かるだけ
「フックックック・・・・」
ティファの怒りを更に募らせただけだであった・・・
「ハッハッハッハ!!!滑稽ですね!!確かに貴方方は様々な制約があり、地上と魔界どちらかの味方だけをするわけにもいかない諸事情があるのは!あちらの三神様達や周りの六大精霊王様達から伺って知っていますとも!!
・・・・ですがね・・・・ふざけた事をするな慮外者が!!!!!」
様々な事情を知っているだけに、ティファの怒りは他の者達よりもなお深かった!!
「確かにこの者達は!滅ぼさなければならない敵だった!!地上の為にも魔界の為にも!三界の為にもそうしなければならずに討ち滅ぼした!!!
だが!最早彼等は骸だ!!
大魔王は最早封印から逃れる事は無く!仮に悠久の時の果てに封が解けたとて心臓二つに鬼瞳が潰れてしまえば最早何も出来はしない哀れな骸だ!
その主を喪った影もまた何も出来・・・・死神達とて最早・・・お前達がしようとしたのは!何も出来なくなった彼等を巨大な力に酔いしれ足蹴にしようとした外道以下の事をしようとした事すら分かっていない愚者ではないか!!!
-神になる-というシステムに偶々生まれただけで自分達がさも偉いと勘違いをし!いざこの世界において問題が起きた事に対して己達の身を削ってでも助けようともせずに他界の私を頼る事をしようとした段階で!!お前達なぞ神でもなんでもないわこの馬鹿者どもが!!!!!!!」
ティファにとって、神とは最終的には自分達の何もかもを使い切ってでも三界全てを救わんとした三神様と六大精霊王様達であり、愚かな事を仕出かしながらもマザードラゴンの様に代償を払う事をせずに、のうのうとしようとしている者達なぞ神でも何でもない。
そもそもが、ティファは神であろうが王であろうがなんであろうが、その地位にいるというだけでは相手に対して何の評価もしない性分であり、偶々そこに生まれただけであり、後はその者達がその地位にいて何を成しているかに重きを置き、そして身分・種族を問わずにその者の成した事や言動や心根を見る事にしている・・・・まさしくどこの世界においてもティファ異端であり異常。
神をそのように怒鳴りつけている時点で、ティファの言動の異常さは際立ち、この世界のアバンとマトリフを戦慄せしめ、子供達の顔色を無くさせてもティファの言葉は止まらなかった。
「・・・・決めました・・・私は-一つだけ-黒の核晶のエネルギー使えますが・・・こうする!!!!」
「な・・・・止せぇぇぇ!!!」
「止めよ!!!!」
ティファはこの世界の命運と紐づけをした時、ある細工もきちんとしていた。
六つ手に入れる予定であった黒の核晶の一つを自分が使えるようにと・・・それは己の肉体が破損した時に、治せるエネルギーとして確保するつもりであったが使う事は無く、この世界の痛めつけられた自然界の復興にでも回してもらおうと思っていたが!!気が変わった!!!
「己達の存亡の危機の恐怖を知るがいい!!!!」
黒の核晶は一つであるとはいえども、その力はドルオーラなどの比ではなく・・・ティファ視覚をは地上と天界の繋がりを反対に辿り、
「止めよ!!!!!!」
天の神々の制止を振り切り、天上界の天蓋において大規模爆発をさせた。
当然平和であるはずの天界に住まう者達の心胆を寒からしめ、何事かと蜂の巣をつついたよう大恐慌に陥たのを、神々は青褪めたが、ティファの行為はそこでとどまる事は無かった。
今爆発に使ったのは自分が使えるうちの三分の一であり、もう三分の二は
「聞きなさい天界の全ての住人よ!!私はこの世界のマザードラゴンと天の神々から攫われし他界の竜の騎士である!!!」
なんと全ての天界の民達に、この世界のマザードラゴンと神々が起こした所業を暴露したのだ。
今までどこからの攻撃も仕掛けられることなく安穏と過ごして来た彼等にとってはまさに青天の霹靂である中でのこの暴露話は効果のほどが凄かった。
先ず前提として、天界に住まう者達は異界がある事を教育の場で教えられている立場にある事が大きかった。
いつか天界の政庁で働く時の事も考慮されている事もだが、天界は場所的に異界とのひずみは生まれやすい場なので注意喚起が第一目的であり、余程幼い者以外には異界があるのは周知の事実。
その様な中で己達が崇める神の暴挙を聞かされた者達は、ある者はこの世界の為だと言ったがそれは少数であり、それを擁護する声はあまりにも無く・・・・その行為に対して天の神の所業ではないという者、それによって自分達の身を危うくさせるに至った事に怒りの方が強く、非難の声が上がり、交信が繋がっているので少年ダイ達にも神々と天界に何が起きたのか全て筒抜けな状況となった。
そんな中-金色の瞳-で天を睨むティファの姿は、まさしく大魔王のそれであった。
今宵ここまで・・・