バーンさん・・・・そろそろ収拾付けなくていいですか?
少年ポップとティファの口論と、何故ハドラーが生きてここにいるのかとこの世界のフローラ女王がアバンに対して掴みかからんとするする勢いで問いただし、周りはどちらも同止めればいいのかと手をこまねいている状況に、流石にこれは不味いのではないかと・・・うっかりと-バーン-の名前を出したからさぁ大変・・・・主にフローラ女王様が・・・
ハドラー生存とこの場にいる理由の詰問をしていたフローラは、ばっちりと聞こえてしまったチウの言葉に、口をぴたりと閉ざしてギッギッギッギという音を立てそうな首の振り方で-大貴族然としたご老人魔族-の方を向けば、フローラに掴みかかられていたアバンと、少年ポップと言い争っていたティファと大人達があっちゃぁという顔をして一斉に点を見上げた・・・・カオスなこの状況だけでもフローラ様の情報キャパシティ超えているだろうな、順を追って説明してなるべくフローラ様を驚かせないようにしてあげたいな~という大人達の配慮は、無情にも天然チウのやらかしで砕け散ってしまった・・・・その証拠に、バーンを見ているフローラ様の瞳の瞳孔がやばい事に・・・・
「失礼女王陛下、良ければこちらに御腰掛を。」
失礼と声を掛けながら、様々に固まってしまったフローラの肢体を軽やかに持ち上げふわりと用意した木の椅子に座らせたドール事キルは、主に出したのと同じハーブティーのティーカップをフローラにそっと持たせ
「ゆっくりとお飲みください。」
驚かれるのは無理もありません。お茶を飲んで落ち着きませんかという・・・余裕のある男の低音ヴォイスに!何やらときめいてしまったフローラはそれを誤魔化すように疑念や様々な思いを差し出されたハーブティーと共に飲み下してみれば、美味しかった。
ここに来るまでの間様々な事で不安に思って喉もカラカラになって、着いてみれば訳の分からない状況の上に、魔王軍最大の脅威の名前まで耳にして精神が崩れそうになった時に渡されたハーブティーは、熱すぎもせず温すぎもせずに、唯々自分を落ち着かせてくれるためだけに淹れられた・・・そんな気遣いが詰まっていると思わせてくれるような一杯であり・・・・
「フローラ様!!!???」
「女王様!!!」
「おい・・・キ・・・ドール・・・・お前ハーブティーに何入れたんだよ!!!」
「いや僕は別に・・・・あの・・・・・僕が淹れたハーブティーはそこまで不味かったですか?」
「あ・・・いえ!違うのです!!!」
気が付けばフローラは泣きだし周りはその事にぎょっとして驚きアバンなぞはすっ飛んでフローラの下に駆け寄り、ハーブティーを淹れてくれた目の前ドールは困惑をしているのを、フローラ慌ててドールが悪い訳ではないと泣いた理由を周りに話す。
曰く大戦が始まって以来心が休まる日は一日も無く、地下に潜って力を蓄え各国に親書を送れるほどになり、そして奇跡的にもアバンどころか頼もしい味方が増えてはくれたが、それは異界という途方も無い者達も交じっており、自分の手に負えることなど一つとして無い中、それでも自分を女王様と呼んで仕えてくれているカールの者達やレジスタンス達、そして異界の者達も自分を立ててくれているのが伝わっていただけに、なお心が苦しくなる日々であったのだと・・・
「私は無力です・・・・出来る事と言えば私の権威とこれまでの積み重ねてきた実績で辛うじて皆さんの上に立って何とか纏められるようにして来た程度です・・」
其れもティファ達が来てからは、付随してきたアバンとティファと異界の者達の能力で砦の者達はそれに沿って動き、自分がしてきたと言えることは、異界の、特にティファに対しての疑念を募らせすぎる事なくカールの者達を宥め和が乱れないようにして来た事くらいであった・・・そして異界からの救援が来ればそれすら不要になった。
自分の世界のアバンとマトリフと異界の二人も加われば、カールの者達も士気は一気に上がり異界の者達に対する不満も吹き飛んだのだから。
そしてフローラは別にそこに不満は無かった。
端から自分は全員の纏め役であり、戦うのは彼らなのだから・・・しかしだ・・・
「ティファさん達が悪い子ではないのは知っています・・・知っているのですが・・・やる事成す事全ての規模に・・・・私自身が付いて行くのがしんどくなってきてたのです・・」
カップをプルプルと震えさせながら、フローラはこれまでの心労を全て吐露する・・・
ティファの周りで起きることは全て凄すぎた・・・砦の男達がキルバーンの予告文章でおびき寄せられた時、ティファは己の身を犠牲にするが如くの策を自分達が止めるのも聞かずに敢行し・・・・それ一つだけでもフローラの心は潰されかけた。
「自分達の世界の少年達に重荷を負わせるだけではなく・・・私は・・・異界からさらわれるように連れてこられてしまったポップさんとチウさんとティファさんに多大な負担をかけても何もしてあげる事も出来なくて・・・・」
周りが傷ついてく中、自分だけが無傷な中何もしてあげられない己の無力さに打ちひしがれた矢先のこの出来事に・・・フローラの心の疲労は限界に達して最後の-バーン-の存在に追い打ちをかけられかけた時の、このハーブティーの美味しさに本当に癒されたのだ。
「たった一杯のお茶にも助けられるものがいるのです・・・なら・・・・私もこの辺を目指してみましょう・・」
御馳走でもなんでもなく、しかし心が込められているのであれば一杯のハーブティであってもひとのたすけになるのだから、自分ももう少し頑張って凄い指導者にはなれずとも誰かの心に寄り添い助けになれる為政者を目指そうという言葉に・・・キルは本気で感動した。
お嬢ちゃんの事は好きで愛しているが・・・あれほど常識破りな者はおらず、その被害をもろに受けてもたゆまず努力するというフローラの心根のいじらしさに。
そして決意を新たにしたフローラの下に、異界の子供三人組は爆走して迫って取り囲み!手をがっちりと握りしめ想い想いの言葉を遺憾なく述べた!!
「フローラ様!!!フローラ様は間違いなく偉大なる指導者です!!こんな曲者だらけの私達を受け入れてくれて嬉しかったんです!!!沢山心配かけてお騒がせして御免なさい!!!」
「そうっすよ!!異界なんて訳の分からない所から来たって言う俺達受け入れくれて本当にありがとうございました!!!」
「僕の余計な一言のせいでごめんなさい!!驚かせる気は本当に無かったんです!!!
それにフローラ様は弱い僕にも、怪我した兵士さん達手当しただけなのにお礼を言ってくれた優しい女王様です!!僕フローラ様の事本当に大好きです!!!」
ティファは一旦ザボエラを自分達の世界のロン・ベルクの腕に預け(ザボエラ生存賛成派でここなら安全)、チウもバーンの膝から飛び降りて駆けだし、青年ポップもこの状況どうすればと手をこまねいていたのを意識覚醒させてフローラに心の底からの礼を述べるのを、フローラは薄っすらと赤くなりながらそんな私はと言いかけるのを、異界のアバン達も始め、自分達のような胡乱な者を受け入れてくださり本当にありがとうございましたとお礼を述べられた。
そしてこの世界のダイ達も女王様のお陰で沢山の仲間と心を一つにして戦えたから勝て親父の事も許してくれて本当に嬉しかった事、罪人である自分達を分け隔てなく受け入れてくれた事は本当に感謝してもし切れないというヒュンケル・クロコダインの言葉に、女王様の優しくも力強い心に何度も励まされたというマァムの言葉に、フローラの涙はまたポロポロと落ちていく・・・嬉しくて・・少しの助けにしかできなかったと思っていた自分に、こんなにも偉大なる者達がお礼を言ってくれる、それも本心だと分かる温かい気配を漂わせて・・・自分は間違っていなかった、人を信じ、世界を信じて闘い抜いて大切な者達を守ろうとした自分が報われた気がして・・・・
「私こそ本当にありがとうございます皆さん・・・」
勇気を与えてもらって。
これよりは戦後に向けての話があるのかもしれない。
きっとハドラーを助けるなどというとんでもない事をしたのはティファさんで、腕の中にいた老人魔族諸共何かをさせようとしているのだろうと、心が落ち着き常の冷静なる女王としての心が発揮できる。
気がつけば、自分の世界のアバンが、そっと自分を背後から包んでくれている。
それだけでも更に勇気が湧いて、何を聞いても大丈夫。
「ティファさん、話す事が沢山ありそうですね。」
「女王様・・・そうなんです・・・・沢山・・・・・沢山ありすぎて・・・」
どうすればよいのか途方に暮れいてるというティファの言葉に、フローラは優しく言葉をかける。
「ここにいる方達が居れば大丈夫でしょう・・・ハドラー、貴方が無事にここにいるという事は少なくともダイ達も了承しているのでしょう。
他人事のように遠巻きに見ていないで、近くに寄りなさい。」
当事者なのですからというフローラの言葉には力があり、現状どうすべきだとどこか投げやりだったハドラーはその声音に驚きながらも、かつてカールの戦意を挫く為に攫いに行った時の、気丈ともお転婆とも言えそうなあのじゃじゃ馬姫を彷彿させられ、ついニンマリと笑ってしまったが、フローラの言う通りこの渦中の当事者の一人は自分であり、周り任せは自分らしくないなと思いなおした・・・・たとえ筒から出た先にはアバンが二人いる事を予め知らせられていたとはいえ・・・あちらの世界のバーンが目の前にいて・・しかも大ネズミモンスターを膝に乗せて寛いでいる事に精神が破壊されかけても、腐っても魔王なのだと気力を振わせる。
そんな中・・・・ティファは心の中で滅茶苦茶フローラに詫びていた・・・
御免なさい!!御免なさい!!!
精神的負担かけまくって本当にごめんなさいと・・・・もう隠し事も無しだけれども心の負担にならないように順序良く説明していくので許してくださいと・・・・クロファもこれやりすぎたかと反省する中、漸くまともな話し合いが始まった・・・
今宵ここまで