確固たるおのれの理由が必要と考えています。
よろしくお願いします。
何で俺は動けねんだよ!!
ポップは先ほどからベッドにうつむいたまま。
何時だったかティファが言っていた。
-剣も魔法も体術も、あやふやなまま使ったらすぐにやられるよ。-
自分はあの時話半分で聞いていたが、戦う理由がきちんとなくあやふやだから行ってはいけないのだろうか?
-守りたい-
ティファは一言で言いきり、あの大群に向かって行けた。
では自分は?
仲間を守りたいと思っても・・動けない。
島を出る時は亡き師に弟弟子を託されたことと、師のやり残したことをするとブラスに言って出てきた。
しかしティファは、他者がどうではなく己自身の答えを出せと言っていた。
ここに来る前ロカさんが、-どの道を行ってもいい-
-悪い道なら拳骨だ-と言ってくれた。
遠くからでも見守るから安心しろと背中を押してくれたのに・・道も答えも見つけられない!!
ティファ・・俺は・・
「なんじゃ、まだいたのか小僧。」
「・・あんたは昨日の偽勇者の魔法使い・・」
「ほっ、人の事がいえるのかの~」
「何だと!!」
「お前さんは何でここにいる。
昨日人の事を散々偽物呼ばわりした威勢は何処に行った?」
昨日ポップはダイ達と共に偽勇者のでろりん一行に会い、偽物と分かりむかっ腹が立って散々けなした。
こいつ等と変わらない?・・違う!!
「俺だって行きたい!!」今すぐに飛び出したい!
「ほう。」
「でも・・怖くて・・それ以上に・・戦う理由が無い奴は来るなって!!」
ティファは、迷う心で戦おうとする自分を守ろうとしているのが分かってしまう・・。
その言葉に縫い留められて・・皆・・俺は・・。
(どうやらこの小僧は単なる臆病者ではなさそうだな。)
瞳に強い後悔の念を浮かべて肩を落としているポップをつぶさに観察をして、
まぞっほはそう判断をした。
誰だか知らんが、こんな子供に戦う理由を突き付けてくるとは・・酷な事をする奴がいたもんだ。
まるで自分の元師匠と兄弟子のようだ。
無茶苦茶で強くて・・でも分かりづらいが面倒見のいい優しさもあった・・とは今なら分かる。
戦場では迷った者は死ぬ。
言った奴はこの子供をむざと死なせたくない優しい心の持ち主で、
故にこそこの子供の心に響きすぎて縛り付けてしまっている。
優しいが・・匙加減が分からずに難易度の高い壁をこさえてしまったのに気が付かない類の者。
・・人とはそう強くも賢くも無いというのに・・勝手にその者ならば乗り越えられると信じて
されたものは迷惑この上ない。
何やら昔の自分を見ているようだが・・この少年ならば乗り越えられそうな期待を抱く何かを感じる。
だからこそ、答えを出せと期待したものは信じたのか。
少しだけお節介をしてみよう。
「これを見て見ろ小僧。」
水晶を懐から出して映したのは、
「ダイ!・・なんでブラスさんが・・」
今の王城内部だ。
狂暴化したブラスをダイが必死に止めて、
ティファはその二人を守るようにクロコダインの前に剣を構えて対峙をしている!!
しかも・・背中を火傷して・・-ブーン・・-
「あ!!」
「ふむ、儂の力ではここまでのようじゃな。」
マァムの安否を探す前に、水晶の映像が途切れてしまった・・
「そんな・・皆・・」
マァムだって・・戦っているだろうに自分は・・
「勝てるから!勝てないからとコロコロ勇気を出したり引っ込めたりするのは本物の勇気ではない!!」
-ビクリ-
「っと・・儂の師匠は常々言っておった。」
「・・・」
「儂は逃げ出したが、お前さんはどうするのじゃ?」
「・・俺は・・」
「む?」
「俺は逃げない!!」
「・・ほう。」
「あいつ等を!見捨ててたまるか!!」
大事な師が繋いでくれた兄妹弟子を!
可愛い妹分を!!
見捨てたくない!!!
あいつらは自分の大切な仲間だ!!!!
「答えが出た様じゃの。」
「あ・・」
「では行ってもいいのじゃろう、
答えのあるものは。」
「俺・・」
「行ってこい。」
「はい。」
「よし!」
まぞっほの言葉に背中を力強く押されるように、ポップは立ち上がる。
仲間がいる戦場へと。
「あの・・」
「ん?」
ポップは戸口で振り返り、
「ありがと・・まぞっほさん。
行ってくる。」
昨日なんだかんだあっても名前は聞いたので、きちんとお礼をしてから返事を聞かずに走り出した。
(ふふん・・礼を言われてしもうたわい。)
くすぐったくて、ちっとも自分の柄ではないのに。
しかし久し振りに心が清々しい。
自分も少しは頑張ってみるか、今の一行を少しは本物にするために。
ポップは走って走って急いだ。
(皆ご免!!遅くなっちまって・・。
もう仲間じゃ無えって見切り付けられたかもしんねえけど。)
それでも助けたい!見捨てたくない!!
答えは出したんだ!文句はねえよなティファ!!
自分だけの答えと、ありったけの勇気を胸に秘めて・・
主人公は自分がチートに近いのを忘れて、
求める難易度が高い事にうかっりと気が付かづにポップをつぶしかけました。
あのポップとまぞっほとのやり取りを書けて、筆者は大満足です。
あの場面は通常の人でも、思いを胸に努力すれば何でもできると信じさせてくれるきっかけとなる、かけがいのない場面だと思っています。
まだ少しだけ一般人感覚だったポップが、戦う男になった瞬間の回でした。
以降は原作の様には弱さを面には出さず内面で葛藤しつつも、
歯を食いしばって戦っていきます。