「笑いながらお前達に良い事ばかり言いながら周りの人間を悪く言う奴は要注意だと思え。
そういう輩が来たら、お前達はにこにこ笑って何も分からない振りして時間稼いでそいつ足止めして、その間にそいつを口論でぶっ潰せる奴を連れて来て貰うんだぞ?」
・・・とか・・・
「もしも謀略戦で足元をすくわれたら真っ先に余に目玉で知らせてくれれば、後はミストとそち達の周りの者ですぐさま対処でき様。」
・・・とか・・・
「人の善意に漬け込む輩が悪いのです。騙されたのは反省したとしても罪悪感を抱きすぎないでくださいませ。」
・・・とか・・・・ロン・ベルクさん達や大魔王やラーハルトが超具体的な謀略・調略の事をにぃ達に話しながら、その後の対応の仕方教えてるのを、少年ダイ君達もそんな悲しい怖ろしい事があるんだって顔しながらもきちんと聞いてる・・・・凄いメンバーのお教室だよこれって・・・。
ロン・ベルクさん達もなんだかんだと魔界で騙し騙されの世界を三百年以上過ごして来た訳だし、ラーハルトもその辺は魔王軍内部でそこそこそういうのを見聞きしたり、何なら父さんの地位に嫉妬した人達から足の引っ張りが来ただろうし・・・大魔王に至ってはね、うん、もういう事ないよ。
とは言えここにいるみんなもなんだかんだで兄達に甘いと言える。
話している内容はあくまで-向こうから仕掛けられたら-の話に終始してその対応策だけで、国の利害が掛かったら王自らもそういう事を考えるべきだとは大魔王は勿論、リアリストのロン・ベルクさん達も言うつもりなさそうだ。
だから、こっちの方にも耳半分しているアバン先生達も、自分達の愛弟子の内面に影響なさそうなためになる話だから割り込まずに狭間の世界の事の話に集中してるんだろうと思うという、大人達の-調略・謀略対応講義-をぼんやりと聞いているティファの考えの通り、アバン達は子供達には-あまりそういう事-には関わってほしくは無いが餌食になるのは論外である。
どう教えて行こうかと思っていたところにこれは渡りに船であり、後でお礼をきちんと言いましょうと他界のアバンは算段している中、ティファもティファでこの世界のダイ達に何故ザボエラが必要なのかの講義を始めだした。
「ダイ君とポップさん達はザボエラ嫌いですか?」
「・・・うん・・・だって・・・あいつ俺のじいちゃんを・・」
「夜襲しかけてきたし・・・」
「それではザボエラさんに勧められたからと言って、それに乗っかったクロコダインさんと骸骨を地面に隠して不意打ちしてきたヒュンケルさんと、同じような事を沢山してきたハドラーさんはどうなるんですか?」
・・・・物凄いティファの真っ当な言い分に、少年達は困惑を浮かべた顔を見合わせながら、それはとか、仲間としてとか・・・ハドラーも真っ当になってるしともごもごというのを、ティファはそうですねと少年達の言葉を肯定する。
「身近になってきちんと相手の事を知って、そして相手が悪いだけの人では無いと知ったからこそ-許そう-という心情が生まれる訳なんですよね・・・相手の事を何も知らないのに悪事許そうと思う奇特な人なんて稀でしょう。」
「え?でもお姉ちゃんそういう事しそうだけど?」
良く知らない相手でも助けたり許したりしそうだという少年ダイの言葉に、ティファは苦笑する。
「一つお話ししましょう。
実は私は君達と違って問答無用で向こうのザボエラさん倒そうとしまして・・」
「・・・・へ?」
「出会いがしらに手刀で首吹っ飛ばそうとしたのです・・・・・最低ですね・・」
当時の事を思えば、どうしてきちんと知りもしない相手をそこまで悪だ何だと決めつけて殺そうとしたのか、本当に勇者一行失格ですというティファの言葉に、ダイ・ポップ・マァムの顔は引きつりドン引きしてしまった・・・自分達もそんな蛮行しようと思った事ないと・・・
それは兎も角、ティファが言いたいのはこれからザボエラはこちら側の者として働く身になるので、ヒュンケル・クロコダイン・ラーハルトとハドラーの時の様に色眼鏡で見ずに今後の働きをきちんと見て評価してあげて欲しいと言うものであったのを、三人の子供達はまたもや顔を見合わせる。
確かにティファの言う通り、この三人、特にクロコダインとヒュンケルは早々に戦いあった事を許しており、為人が根底が武人であると認めたハドラーの事も悪く思わない中でザボエラだけはというのもおかしな話であり、特にダイは其れは自分に向け垂れた偏見に満ちた悪意であると感じて、自分がされて嫌だったことをしそうになっていた事に気が付き溜息をつく。
これでは、あの人達が酷い人だったと言えないではないか。
偏見や分からない事に対する悪意とはこんなにも簡単に心に生まれてしまう事を期せずして学ぶ機会ともなれたのは、子供達にとっては僥倖とも言える。
己の身をもって知る事と、見聞きしただけで知るのとでは様々な意味で違うのだから。
そしてティファの話はさらに続いた。
「ああいう人は、その人の能力に見合った地位と敬意と報酬を約束して、尚且つ逃げられない立場にすれば裏切る事はそうそうないと思うんだよ。」
「・・・?」
「地位や報酬とか分かりますけど・・・逃げられない立場ってなんすか?」
自分の言葉に少年ダイは完全に分からない顔をし、ポップも半分は分かるが後は何だという質問に、ティファは優しく答える。
「ザボエラさんはこれからハドラーさんの国で能力に見合った地位-宰相-につきます。
もっと政治センスのある方がいたらザボエラさんは外交部門の長となったかもしれませんが、現状ハドラーさんの周りで魔族・人間双方の心理や経済周り、国同士の遣り取りや内部部門の調整と政治が出来るのはザボエラさんだけですので、ザボエラさんが宰相になるのには正当性が有ります。
宰相ともなれば王と同じく-国-に何かあった時に命運が諸共になってしまう立場なのです。
国が攻め滅ばされれば大抵は王族同様見逃されずに処刑される事が多々あります。
国が経済で立ち行かなければ無能の誹りを内外からされて、二度と雇ってくれる国はないでしょう。
そうなるとザボエラさんはご自分の命と尊厳と報酬の為にも意地でもハドラーさんの国を守らなければならなくなります。
下手こけばご自分に跳ね返るだけなので。」
そこそこの地位なれば、他国にハドラーさんの国の内情の情報売りつつ内部崩壊の工作もしてその功績を以て、ハドラーさんの国にいた時よりも高い地位を目指そうとするかもしれませんが、王に次いで高い位に予めつけておけばそれ以上昇る事は出来ないので心配はいらないというティファの言葉に、あちらで自分をきちんと評価しているティファの言葉に満足をしながら話を詰めていく中、ティファの兄達も含めて子供達は引きつった顔でティファを見る。
よくもまぁ・・・・ここまでつらつらと策が出てくるティファの頭の中は一体どうなっているのだと・・・
だが青年ダイとポップにもティファの提案している内容で一つ疑問がある。
それはこの世界の地上が衰退しないようにするためにもという言葉だが、何故ハドラー達が国を興す事でそれが防げ、そもそもが地上が衰退するとはどういうことなのだという兄達の疑問に、ティファはそれはねときちんと説明をする。
「大魔王バーンが倒された事で魔王軍はトップがいないから崩壊の一途をたどると思う。
其の空いた土地や利権を巡って以降は暫く魔界は地上の事よりも、魔界の覇権を争って各勢力がぶつかり合って併呑されたり飲み込まれたりする間、地上は時たま魔界から迷い出てくる大型モンスターとモンスターのスタンピードとかの稀なこと以外は戦いに意識を割く事は減ってくると思うんだよ。」
平和な世の中に闘う事を研鑽しようというのは国の中枢や学者や武具を作る職人達等はいるだろうが、平和の期間が長ければ長い程に、国自体も戦いよりもインフラ整備や他の事に割く事が増え
「大規模魔法や凄い武具の作り方の失伝が出てきても困るので、ハドラーさんの国に-八百長-でもしてもらおうかと。」
例えばヒム達が数年単位でどこかの国に現れて適度に闘い、或いはさまよう鎧などの大規模軍勢で攻勢を仕掛けたりしてもらい、平和はあれども適度な危機感を持っていてほしいという言葉に、青年ダイとポップは無論の事、少年達も頷くが、この世界のラーハルトはそれではお前達の世界のその辺はどうなのだという質問が飛んで来た。
ティファ達の話がすべて本当であれば、もう敵になる者もそうおらずに、平和な中で失伝するのではないかという疑問に、ティファはにっこりとする。
「そこは大丈夫なのです!」
「・・・・何故だ?」
嫌にきっぱりと自信満々に言うティファに、更に何故だと言い募るラーハルトに、ティファ世界のラーハルトは、ティファ様が大丈夫だという言葉に何の疑問があるのだと噛み殺しそうにな視線を受けるがそれは兎も角
「私達の世界では今-魔具-作りが盛んなのです。」
「魔具・・・マジックリングや何かのあれか?」
「はい!例えばそよ風程度しか出ないギラと少し暖かい程度のメラを、魔法を込められる魔石に込めて・・・・ちょっとすいません・・・書けた・・・こういう形の筒に入れて同時に発現できるもので髪を乾かす魔具があるんです。」
「ほう・・・これは・・」
ティファは口で説明するしづらいので、先に説明した魔法を込めた二つの魔石を入れた気の筒を紙を出してサラサラと絵に書いて見せた。
気の筒は女性でも片手で包める太さと長さで、髪に充てる部分は通気口の先の様になっており、要はティファが前世で使っていたドライヤーの簡易版である。
ティファは魔法が今後廃れていくのではないかと危惧し、なら戦いでなくとも日常で魔法を使えるように日常品の魔具が出来ないかをマトリフ・アバンと大魔王達に相談し、三人も平和になった世は嬉しく思うが、其れ受け継がれてきたものが廃れていくのは不味いと、各国にも協力を呼びかけ、そういう部門の立ち上げ要請をして生み出されたのがこれであり、他にも雪深いリンガイアではメラミ並みを入れた魔石で除雪をし、もう少しすればルーラも魔石に詰めれられないかと魔界、地上界の各国で合同研究が成されている。
それが出来ればキメラ達を狩る必要は無くなりかつ希少性の高いルーラやトベルーラを習得しようとする者が絶える事は無くなるという目論見があり、ティファ達の世界は化学よりも魔法発展が伸びていく方向になり、其の内に魔法科学という言葉が生まれる日が来るかもしれず、事実気の早い者達からは-魔法学-という言葉が生まれており、高価であった魔術書などが一般教科書になる日も来るのかもしれない様相を帯びてきている。
そしてそれにねと、ティファの話はまだ続きがあった。
「精霊さんはね、魔法を使う人たちが減って、契約してもらえないと寂しくなってもう知らないってそっぽ向く時もあるんだって。」
百年くらいはまだ人間に関心があっても、それ以降自分達の事を忘れた様になった者達に腹を立てて、いざ地上界が危機に陥りポップ達の様な魔法の素質がとびぬけた者がいて強力魔法と契約しよとしても、臍を曲げてしまった精霊達が応じる可能性は低いらしい。
そういう事もあるし、魔界も適度に地上の物資が入りそこそこ豊かに暮らせれば現状の不満が突き抜けて地上を直ぐに獲ろうという輩も抑えられるのではないかとも見込んでいる。
そして魔界の魔石や鉱物、アイテムなども地上には有益なものもあるので三角貿易もできればいいなとティファは考えているという言葉に、子供達は呆けてしまった。
たった一つの国を造るという行為の中に、一体いくつの思惑があるのだと・・・・
それを耳半分で聞いていたこの世界のアバンの背中に薄ら寒さを感じつつ、マトリフのティファに対しての評価を思い出す。
-異界から来たって言う娘、あれはお前には金輪際扱いきれる柔な娘じゃねぇ-
-敵に回したが最後、どんな方法だろうが最後には敵は泣ける、それもどうしてそんな方法で負けたのか訳の分からない内にだ-
一つの事柄にいくつもの策を瞬く間に思いつくティファを・・・どうして自分の思惑で動かせるのだと思っていたのかアバンは慄然とさせられる・・・ティファという少女に常識や既存の概念で同行できるなどとは今は思いもつかない。
だが、ティファのそういうアイディアはどうやら善性に寄った考えであり、敵であっても許す事が多そうなのが救いなのかもしれないと思うアバンであった。
彼女の言う通り、様々に方法を駆使して地上に要らぬ火種を持ち込ませないように、万が一第三勢力とやらが動きそうになった時ハドラーの国と地場が連携できるためにも。国を興した後に、地上国家と交友や盟を結んでいくかをハドラーとザボエラとフローラと知恵を絞る。
地上を温かくも危機感を薄れさせない世界を作る為にも、ここが一番肝心なのだと
今宵ここまで