世界は概ね、少年勇者達の方に風が吹いてきている。
其の隙を逃すまいと、アバンは小出しに情報を流す事にしている。
その一つが-古来より噂されている人と魔族達が共にいる狭間の世界-または幻の都と呼ばれている都市についてである。
裏の世界の者達や黒い紳士達のみに知らされている世界だと言えども、それほどの規模のある都市の事が口の端に上らぬはずも無く、謂わば公然の秘密の様に囁かれ続けてきた其の都市は、本当に出入り口の情報だけは厳然と守られて来た場所であり、それを知る者は極少数で行き来できるものは下っ端であれば目隠しをされ連れてこられる場所であったのを、アバンはハドラーとザボエラが都市部を制圧し、都市から国へと成立するまで早くとも半年は見積もったのだが
「ハドラー様と親衛騎団達がさっさと上層部を潰して即日王国が出来たぞ。」
・・・・たったの三日でこの情報が届くのはおかしいだろうと・・・異界の者達の非常識ともいえる言動や行動力を見てそれなりに鍛えられたと自負したアバンをして唖然とさせられた・・・・しかしだ、鉄は熱いうちに打てという!
フローラ女王と協議し、各国から問い合わせの来ている-ザボエラ-と各国の使者達が会える算段をつける親書を送り、ダイ達の知らないところで大人達は-今後の世界-について親書で連携を取り合う中、ダイはとりあえず世界復興の手伝い旅をポップ達としたいとパプニカ王城にて宣言した。
「俺はきっと世界の事なんて何にも知らないからさ、だから世界の人達を助けながらこの目で見て耳で聞いて知りたいんだよ・・・」
「ダイ君・・」
ダイとしては、その旅の道すがら-あの少女-と会うかもしれないのを今から覚悟をしての事である。
あの少女と再会した時、自分は其の時どう思い、許すかどうかも分からないが・・・キチンともう一度会えればと思う・・・
だからと言って、なにもずっと外に出る訳ではなく、三日に一度はルーラで戻ってくるというダイの言葉に、その間にダイを如何にか王配に出来ないだろうかと三賢者を始めたとした大神官達も協議して、正当性を高める為にも勇者は敵を倒すだけではなく弱った民草達を国ごとで差別する事無く、平等に助ける心清き者達であると言える環境を作ろうという案に纏まり、ダイ達の復興手助けの度は決定をした。
それはダイ達がバラバラで行くよりも、今日はどこの国へ行くかをあらかじめ決めて勇者達が行く事を打診して、大々的に彼等の活躍をアピールしようという目論見もある。
特に一度は敵対したヒュンケルとクロコダイン、そして敵対こそないがモンスターである大ネズミチウとチウに率いられている-獣王遊撃隊-なる者達の活躍にもきちんと衆目を集められるようにとの想いもあった。
彼等は今後人間社会で生きていける様に、ヒュンケルとクロコダインでは特に国を滅ぼした事を知られているヒュンケルが、きちんと償う道を歩いている事を知ってもらうべく、もしかしたら復興の中で最も過酷で辛い作業に従事するかもしれないが、それはヒュンケル自身が望むところであり、ダイ達の想いと大人達の思惑とが合致し、ポップとマァムとそしてダイがそれぞれの保護者達の下で休養をしてから出かける事になり、あの夕暮れの激突の次の日に各国に引っ張りだこの様にバルコニーに立って、民衆に向けて王達が平和宣言をして三日経ち、世間もそれなりに落ち着いてからそれぞれの家へと一旦帰路についた。
マトリフは自分でさっさと元居たバルジの大渦近くの海岸へとルーラで帰った。
弟子達の危機も一旦は去り落ち着いたのだから其れなりのんべんだらりとしたいのでと言って、爺仲間のブロキーナ老師を伴って行ってしまったのは何とも彼等らしいというべきであろう。
そんな師匠達を見送ったポップはベンガーナのランカークスにロン・ベルクとヒュンケルを伴い、マァムはロモスのネイル村にチウとクロコダインを伴う。
チウとロン・ベルクは兎も角、ヒュンケルとクロコダインはパプニカ王城にてなにがしかの下働きをして置いてもらうつもりであったのだが、人間の生活も良いもんだぞという仲間達の説得に負けて御厄介になる事になったのだ。
そしてチウの方も、隊員達にお行儀よく森で過ごすんだぞとお達しを出してマァム達の家に置いてもらう事になり、其れが後にこの世界の獣王遊撃の活動拠点となるのだが・・
ダイは父バランとラーハルト共にデルムリン島へとルーラで戻り、島に着くと同時に渡されていたブラスじいちゃんと島のみんなが入っているモンスター筒を宙に放ってデルパと唱え、何とも賑やかな展開となったのはこれもまた別のお話。
ノヴァは父バウスンが世話になっているベンガーナにて父と共に世話になり、ダイ達が再集結する時に共に復興手伝いの旅に出る気でいるのを、きちんと将軍である父に許可をとり、騎士団長の職を返上している。
因みに、ダイ達の再集結を待つ間に、リンガイアにとっての朗報が各国に舞い込んだ。
超竜軍団の襲来で首都が壊滅した時、騎士達に守られ脱出をした時に行方不明となってしまった王の・・・正確には王の家族が見つかったのだ。
彼等は首都から離れた山脈まで逃げ、そこで負傷してしまったリンガイア王を隠すように山の中に漁師達が時折使っている山小屋で自給自足していたという・・・もう少し早く街に降りるなりベンガーナへ行くなりしたかったのだが、モンスターが数多いる中を負傷した王と王太子だけで行ける筈も無く、とは言え王妃と弟妹達を抱えた身でルーラが出来る訳でもなく、キメラの翼も持ち出せずの脱出で身動きが取れない中、王は負傷した箇所が膿みだしそして半月前に帰らぬ人となって・・・
「それでも自分達はいつかモンスター達が減った時を見計らい外と繋がれないかと機を伺う事を諦めませんでした。」
幸い季節も程よく実りのある時期であり、其の山小屋は沢にも近く魚も置いてあった罠で採れ、ドライフルーツや自然の果実で賄っていたのだが・・・それも付きかけた時に-あの大激突-を彼等も見て、そして大魔王討伐を知り、もしもあの映像が本当であるのならばと、王太子は母を説得して一人森の中を恐る恐ると進めば、モンスター達の狂暴化は解けていた。
しかしそれでもモンスター達は危険なものであり、さてどうしたものかと王太子が思案し、いっその事昼日中に突き切って見るかと大胆な作戦に打って出た。
幸い弟妹達も十歳を超しており、自然豊かな野山を駆けまわった子供達であるので問題は母であるが、これも自分が背負って走り抜け、そしてリンガイアでも無事であった村に辿り着き保護をされた。
幸いそこの村がそこそこの規模があり、村長が王太子の顔を祀りの時の挨拶で知っていたのが幸いして話は直ぐにまとまり、その村に数枚だけあったキメラの翼を譲ってもらい、弟妹達を村で休ませてもらいながら王太子がベンガーナの自分の顔を知る大貴族の家を訪ねそこから話が王城に上り各国へと朗報が舞い込んだ。
ノヴァとバウスン将軍は当然涙を流して喜び、フローラ女王とアバンも我が事のように喜ぶ。
あの根が真面目でそれでも素直で優しい北の少年勇者が喜ぶ顔を思い浮かべながら・・・そして複雑でもあった。
二人は終生彼等の祖国を滅ぼしてしまった-超竜軍団の長-の正体を彼等に秘する事を決意している・・・・幸いにもダイは父親バランが超竜軍団の長として地上に攻勢を仕掛けたのは知っているがヒュンケルとクロコダインと違い、具体的にどこの国を攻めどうしたのかまでは知らないので、二人はヒュンケルとクロコダインに自分達と同じ罪を、即ち真実を墓場まで持っていく事を頼み、二人も重々しく頷いてくれているが・・・
それでも前に進まなければならない
狭間の世界と地上は半年以内に-同盟-を締結する運びとなり、その際はハドラーは王として会う事無く、表の事は全て-宰相ザボエラ-が、王の親衛騎団の長である-金属生命体のアルビナス-と共に任されている態となる。
ここで魔王軍とはいえども地上に知名度のないザボエラは兎も角、先の大戦を起こした魔王であり、今大戦においても猛威を振るった者が表立つにはややこしい事にしかならないので、その辺で調整が成される・・・・いつの世界も-表の平和-の為に-裏方の者達-が幾重にも謀をする事が絶える事はなくそれでも・・・
「私は構いませんよフローラ様。」
カール女王の王配をしつつ、謀を一手に引き受ける位置をアバンは笑って引き受ける。
長男や女児は兎も角、次男辺りには自分の-その辺-を伝授しようと今から資料の作成をしているアバンに、頼もしいやら申し訳ないやらのフローラに対しアバンが笑う。
この世界全ては無理でも、自分が守りたい者達は必ず守り抜くと。
それは数日後には復興手伝いの旅に出るダイ達の道もきちんと整えながらであり、つまるところこの世界のアバンも異界のアバン達が甘すぎるとは言えない程に、心の中はとっくに過保護化しているのだ・・・・無自覚に・・・
この世界と彼等に幸せになってほしくて・・・・
今宵ここまで
小石世界のエピローグはここまでとなり、次回は主人公世界にお返しします