どうして俺は・・・・あの時攻撃を止められなかったんだ・・・・俺がやらなくとも・・・-誰か-があいつ等を倒していた筈だ・・・
俺自身がしなくとも・・・・・倒す手伝いをしていたんだった・・・
何も分からずに暴れさせられていたあいつ等を・・・・俺の意思で・・・・
あいつ等は本当は優しい奴らが多いのに・・・・中には攻撃性が高い奴らがいても俺達が不用意に近づかなければいいだけで、そうすれば俺達もあいつ等も互いに嫌な思いをしなくて済んで、どうしても・・・・食糧不足や群れでいられる数を逸脱しすぎて怒ってしまうスタンピードとかどうにもならない時は、俺達もだが狂暴化していないあいつ等の仲間や他の奴等にとっても脅威で、そしてそうなったら-狂暴化-と違ってマホカトールでも他の浄化方法でも、-倒さない限り-収まらない時は俺だって・・・
だから敵になってしまったあいつ等を味方や仲間達が倒す事を責められるはずがなくて、俺自身だって大戦時に魔界のモンスター達を散々に倒して来たんだ・・・
沢山・・・沢山沢山・・・・・あいつ等を倒した後だって戦場に出てロッドで他のモンスター達の内臓傷つけて・・・切り伏せて・・・なのにあいつ等の感触だけが手に残ってどうしようもなくて・・・・
「めんな・・・・ご・・・・・め・・・・ん・・な・・・・・・」
ふぅふぅ・・・・
何かに謝るポップに-抱き留めている-ティファは振り乱した髪はそのままに荒い息を吐きながら、それでも座り込んで兄を横抱きにして腕の中から放さず
「大丈夫・・・・・にぃ・・・もう大丈夫だから・・・・ティファがいるから。」
「・・・ティ・・・ファ?・・・・お前・・・・・ここは・・・」
「ティファだけじゃない、チウ君もいる、ダイ兄もいる、大魔王もおじさんもアバン先生もレオナ姫もキルもハドラーもミストもマァムさんもラーハルトもガルダンディもボラホーンもルード君も其れにメルルさんもいる。
ポップ兄が大好きで、ポップ兄の事が大好きな人達が皆いる。
ちゃんといる。ここにいる、にぃを置いてどこにもいかない。
だから大丈夫だよ。」
「ティ・・・ファ・・・・みんな・・・メルルも・・・・・そぅ・・・か・・・・」
-ボロボロになったーティファは、それでも兄を離さす事無く、兄が心の底から大切にしている大好きな人達がこの場にいる事を教え、ポップはその言葉を耳にした途端心の底からの安堵を覚える・・・・ここは何の怖い事が起きない絶対的に安全なところで・・・自分が大好きな場所なのだと
「ティファ・・・・俺・・・」
「うん・・・・」
「俺眠い・・・・」
自分は-ナニカ大変な事-をした気がするのだが何だったのだろうかとポップは自分の事なのに思い出せない様子で、トロトロと瞼が閉じるのをティファは優しい手つきで兄の頭をゆっくると撫でながら、背中も優しく叩いて兄を眠りの中へと誘う。
「眠いなら寝ていいんだよ。」
「・・・いい・・・のか?」
だって自分は・・・・結婚をしたとたんに・・・・厄介な・・・・-怖い所-から・・
「いいんだよ眠って」
後はティファが何とかするから
-ナニカを-を思い出そうとする兄に、ティファは優しい声と言葉を掛け続け、そして-伝家の宝刀-を抜く。
その言葉は大戦時にダイを始めとして勇者一行が幾度も聞いて来た言葉・・・
ご飯の支度から傷の手当、そして果てにはこの世界の事までも救いあげてきた無敵の言葉で・・・・もう使わせたくない言葉の筈なのに・・・・
「うん・・・ね・・・る・・・な・・・・」
今はその言葉に縋りたくて、ポップは妹に包まれて眠りに落ちる・・・・
ティファに包み込まれている事で、-ポップ自身の暴走-によって甚大な被害をが出た室内を、そしてそんな兄の暴走によって周りに被害が行かないように自分の方を向かせて抱きしめたティファ自身にも、ポップの暴走の爪痕が文字通り全身をズタボロにし尽くした。
小さな顔はすり傷だらけで青い血が薄っすらと滲み、服もキルが用意してくれた耐魔法が無ければ服どころか全身も切り刻まれていたかもしれない程で・・・・
ポップは生来から魔力の量が一般人よりも多く、それ故に難易度の高いメラゾーマを、炎の魔法と親和性が高くとも難なく習得して見せた上で、ポップの命を救う為に授けられたバランの竜の血が、ポップの生命力のみならず魔力にまで影響を及ぼした。
それはポップが竜の地と相性がよく、それ故に-黄泉がえり-を果たすだけにとどまらずに魔力の質を高みへと押し上げ精霊達との親和性も上がり・・・・そのポップが我を忘れる程の苦しみが現れた時、魔力が自然暴走した。
呪文を唱える事はないが、膨大な魔力であれば闘気と同じような性質のエネルギーとして発せられた。
それが世間にいる魔法使いであれば大魔王の結界で数分閉じ込めれば自然収まる者であったろうが、ティファは兄の膨大な魔力が尽きるまで、一人で苦しませることを是とせず、スライム達に-何時もの様に-懐かれた兄が突如異変を起こして魔力を暴走させた時周囲の者達同様に吹き飛ばされたが、瞬時に戻りそして兄諸共に五メートル四方の結界を張って閉じ籠り、兄が正気に戻るか疲れ切るその時までずっと言葉を掛け続け十分近く経ち、漸く魔力切れと暴走の疲れで兄が眠りについた時ほっとした。
ティファとしては、自分にも結界を張って防御したかったのだが如何せん周りに結界を張るしかハイ=エントの魔力は残っておらず、結果的に自分を犠牲にしたようなものだが後悔はない・・・・
後悔は無いのだが・・・・・
結界を解いた事で入って来た者達の顔をまともに見られない・・・・
自分と兄の身を案じている者達に、どうしてこうなってしまったのかの説明をしなければならない事に気が重くなる・・・それを考えると、攫われたあの時・・・・攫われたのが自分一人だったほうがまだよかった気がすると思うのも間違いだと分かっているのだが・・・・それでも・・・
兄ポップの心が傷だらけになってしまった事を・・・どう伝えればいいのだろうか・・・
自分達が自分の屋敷の厳重な結界を張っていたと自負していた宝物庫で攫われた事をとても気に病んでいた大魔王に
兄を一度は掴めながらも目の前でみすみす攫わせてしまったと泣いていたキルに
最愛の人と結ばれる事が出来た良き日に矜恃に見舞われた花嫁のメルルに・・・・
そして・・・・兄を愛しているこの場にいる全員に・・・・・何と言えばいいのか・・・何を見て聞いて体験してしまったのかを・・・・知らせなければならない事にティファだとて泣きたくなっている・・・・・
言う方も聞く方も辛い事を・・・・何と言えばいいのか・・・・・・・
今宵ここまで・・・・