「そっか・・・・・・俺、思ってた以上に-あいつ等の事-引きずって…はは・・本当に駄目駄目だな俺って・・」
「ポップ!それは違うよ!!ポップは優しいんだよ!駄目なんかじゃない!!!」
「そうだよポップ兄!優しいと駄目は違うよ!!」
「ダイ・・・・ティファ・・・」
ダイ達の部屋にティファ達が押しかけ、別室にいたノヴァ達も同じ部屋で一夜を明かそうと話が決まってから、全員が入って寝られるように部屋の中のベッドの位置を変える物音で目を覚ましたポップに、何が起きたのかをティファが正直に話したのだ。
ポップの心の傷は、ケアや本人の心情を考慮して話す時は本人が落ち着いている時などのタイミングを見るべきであるのだが、そんな悠長な事を言っていられないというティファの判断であった。
これが力のない一般人の話だったらティファも聞きかじりではあるが時間をかけてケアや話を段階的にしていけるのだが、それが力を持った者、其れも巨大で下手をしたら周りの者達が巻き込まれ、怪我人はおろか死人すら出かねないのがポップの魔力暴走である。
何かの拍子で先程の暴走をした時、運悪く自分達が居ない時であれば間違いなく懸念している事が最悪な形で実現されてしまい、そうなって一番に傷つくのはポップ自身。
対策としては暫くはのんびりと過ごしてほしい所だが、人一倍責任感が強いポップが、次期女王となるメルルを補佐する王配教育を休む事を是とする筈も無く、無理に納得してもらい休んでもらってもそれは表面上の事で、間違いなくストレスから事態の悪化を招く悪手であろうし、ならば四六時中ティファなりポップの暴走を止めるか受け止め周囲に被害を出さない者が付くという案もまた現実的ではなく、最善でもなく次善でもない方法だが、本人に自覚をしてもらうしか手がない・・・・・それでも、-幽閉-よりも絶対ましだというのが話しているティファ本人と、-そういう事-に通じている王女レオナは悲しくなる。
古来より力を暴走させるものがいない訳ではなく、そういう者は対処としては魔力封じの呪法を施すなり、腕輪なりの魔具で縛るなりして囲い込む・・・要は幽閉である。
実際にそういった記録は王侯貴族達の勉学の一環として存在しているのでレオナはその事を思い出して心が暗くなる・・・・国と民達を守る為にも、魔力暴走をするものを放置しておくわけにはいかず、その時にこういう事もあるのだと勉学で得られる知識の一つとして覚えておこうと思ったくらいだが、まさかそれが自分の大切な仲間の一人に起こりえるかもしれない事に、レオナの心は暗く成るどころか慄いている。
最愛の人の大切な相棒で、大好きな妹になる者の兄で自分にとっても頼りになるポップを幽閉せざるを得ない状況が出来かねない状況に、レオナはまた泣きたくなる・・・・今日は後何度涙を流せば流さなくていい道が出来てくれるのだろうかと思う程に・・・・きっとそれは幽閉の事は分からなくとも、今のポップを想うだけでこの場にいる全員が、何よりもメルルの心を思うとやりきれなくなる・・・・・他界滅ぼす反対なぞせねばよかったと後悔するほどに現状が酷すぎて・・・・・だが、道はいつだって細くとも茨が覆い茂時には険しき山を登るよりも過酷であろうとも、その道を指し示すものがこの場にいる。
「ポップ兄が駄目だったって言うんだったら、敵を倒そうとしただけで吐いちゃうティファはもっと駄目かな?」
「あ!・・・・ち・・・違う!!」
どん底になったポップは、ティファの言葉で沈んでいた思考を一気に浮上させて慌てて己の言葉を再吟味して青褪める。
自分が-敵-となってしまったキメラ達を倒した事を心の傷になってしまった自分を貶めるという事は、それは-ティファ-は貶めている事に他ならないからだ。
ティファはかつては敵を倒す事を厭うていても、それでも倒していたのだ。
それが今では敵を制圧することは出来ても、倒す事をもっと言えば殺す事が出来ない身となった。
それはかつて、絆とも呼べるほどまでになりながらも、様々な状況や本人達ではどうしようもない事情で敵対せざるを得なかった竜騎衆の三人の内ガルダンディーとボラホーンをその手にかけてしまってから、ティファは今のポップ以上に傷つき魂にまで傷を負ってしまった。
それ以来ティファは戦うことは出来ても敵を倒す事をしたことが無く、其れこそ最後の戦いの時、この世界の天界を牛耳って来た腐敗した天人達と対峙し倒す寸前で、心が慄き倒す事・殺す事を拒絶して吐いてしまう程であった・・・・唯一の例外はハドラーだけはどうあってもと思い定められたからこそ心行くまでの激突をして倒そうとした事だけだが、その様な情熱をぶつける相手はもうおらず、それはティファがもう敵を倒す事が出来ない事の証明でもあり、敵を倒す事を思い悩む事が駄目であるのならば、そもそも根本的に敵を倒す事が出来ないティファはポップよりも駄目だろうと言っている事に思い至った当の本人は、青褪めたのも無理はない。
だがこの話の持っていき方自体、ポップの想いと思考を自己嫌悪から無理やり引っぺがす為のティファの策であり、其の策が成功するのを見て取ったティファは其の隙を逃さずに
パン!!!!!!
ポップの顔を思いっきり引っ叩き・・・・
「しゃんとして!!!やった事は無くならないの!!!しちゃった事はどうにもならないの!!!
ポップ兄がどれだけ自分の事を駄目な奴!どうしようもない奴だって自分の事を虐めたって罰したって無くなってくれないんだよ!!!」
そのたった一つの行動は、百戦錬磨の戦士達と政争を知ってあらゆる事柄に動揺しない心を持った王女や大戦で強き心を持った少女の心を震撼させる中、仕出かしたティファはそれだけでは止まらずに怒涛の勢いで腑抜けてしまった兄の胸ぐらをつかんで赤く腫れあがり始めた顔を上げさせ言葉を降り注いでいく。
ティファは、兄の中に出来てしまった暗い思いを打ち砕くべく叩きそして終生秘っしておきたかった言葉をぶちまける。
その言葉は、かつて兄以上にしてきた事の大きさに、計画されていた大戦がいざ始まってから、取りこぼされていった生命の多さに慄き、己を罵倒して罰してきたティファの心からの本音であった。
神々と世界全てを救う為だと始めた事であっても、大戦が始まってからティファは己から背負った業の深さに、責任の重さに心も精神も傷られそして・・・・壊れた・・・・
あれから数年経つ中、ティファは己の罪を忘れる日は一日も無い・・・それでも・・・
「それでもね!辛くっても歩いて行くんだよ!!生きて行くんだよ!!!
大事な人達と一緒に幸せになる為に!大切な人達と一緒に世界を守って笑って生きていきたいんだよ・・・・・歩かないといけないんだよ前に・・・・」
だって・・・・私達はこの瞬間を生きているのだから・・・・・
怒鳴る声の内容に、ティファの半生を知らされたダイ達も怒鳴られているポップも何も言えない中、ティファの声は次第に小さくなりそして泣いている。
生きて行きなさい・・・・かつて敵の策略で味方が自分のせいで仲たがいされそうになり咄嗟に元凶たる自分を消して策を壊そうとした時に寸でのところでアバンのお陰で死なずに済んだ時に贈られた言葉に、ティファは生きる心を授けられた・・・自分の罪の重さから、かつては自分の命なぞ安いと軽視していたティファの思い違いを打ち砕いたアバンの言葉。
今でも自分を使う策を使って来たが、其れでも己の生命を必ず守る事を前提としているだけ成長しているとだろうとは本人の言だがそれは兎も角、あの時の言葉をティファがポップに贈る。
「私達と一緒に生きて行こうポップ兄、一緒に悩む、苦しい心をティファ達にも分けて欲しい・・・・一人で何て行かせない・・・・・みんなで・・・明るい道を作って生きて行こう・・・メルルさんと一緒に・・・・」
一緒に、共に悩み苦しみ・・・・・それは-今日-デルムリン島の大聖堂で、病める時も健やかなる時も共に生きて行く事をとメルルに誓った言葉と同じで、其の事に気が付いたポップが、泣き出した妹にしがみつかれたまま顔を上げれば、ダイ達男達の顔は誰もが真剣で、自分と目があえばティファの言葉を受け取ったと重々しく頷き、マァムとレオナとそして・・・
「ポップ・・・・さん・・・・一緒です・・・何があっても!どんなことがあっても!ポップさんが辛くて先程の事が何度起きようとも私は絶対にポップさんから離れません!絶対絶対に一緒です!!!だって・・・だって・・・・・私は・・・・」
ポップさんの妻だから・・・・・
愛しているからというメルルの言葉に、今度こそポップの思考は暗い道から完全に引き離された
こんな自分を・・・・傷ついた事から逃げる様に暴走して情けない姿を晒した自分を其れでも愛してくれている-最愛の妻-は愛して絶対に離れないと言ってくれている・・・周りにいる自分の大切な者達もまた自分を・・・・・きっと自分だって、他の誰かが同じような屈強に陥り傷ついたら・・・・・・そうだよ・・・・・俺は・・・・俺達はいつだって・・・・
「うん・・・・行こう・・・・・生きて行こう・・・・・みんなと・・・ずっと・・・歩いて行きてえ・・・・・」
「ポップ!!!」
「ポップさん!!!」
「行こうポップ!」
「今度こそは絶対にお前を、お前達を離すものか!」
「行こうポップ!」
「うん!!うん!!!」
ボロボロと涙と鼻水も流すポップを、ダイ達はしがみつき誓い合う。
これより自分達の行く道は沢山あれども、それでも幸せを歩ける-大道-を共に行くことを。
自分達はいつだってどんなに辛い時であっても笑い合いそして苦しい時は泣いて、弱く駄目なところを支え合って今日まで来た。
ならばこれからも今までと同じ手を携えて歩いて行けば、辛く困難な道も歩き斬る事が出来る・・・・・あのアバン先生の教え通り、生きて未来に向かって歩いて行くのだから
ならばその道を、良き道にしたいとポップ達は心の底から決意した夜となった
今宵ここまで