勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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世界に散らばるいし達:エピローグ⑫

:知らなかった、俺が住んでいたランカークス村には迷いの森が近くにあっても、その森から出てくるモンスター達はほとんどいなくて、たまに出てくるのもスライムとかが出てくるくらいで畑にも被害なく、偶に大きいのが出てきても村の大人達が対処してそれで終わりで、アバン先生に押しかけ弟子をして一緒にあちこち回るようになってからモンスター達の本当の怖さを教えてもらった。

其れだって何かあれば、例えば木に化けているマンイータが出ても先生があっという間に倒してくれて、森や谷のどの辺がモンスター達の住処で回避すればいいのか教わって難を逃れてのれんぞくだった。

大戦が始まっても地上のモンスター達はデルムリン島以外はモンスター達は狂暴化せずで、俺は本当に地上のモンスター達の怖さを知らない。

そして群れが膨らみすぎて餌不足で引き起こされるスタンピードもチウと獣王遊撃隊と有志の人達に任せきりで、だから、人々が地上のモンスター達に対して抱いている根幹的な怖れを本当の意味で知っていなかったんだ・・・・今日までは・・・・

 

 

:僕は近頃周りの皆さんから優しくしていて頂いたので、知られたくはなかった・・・僕達の本当の現状が、また昔の様になってきた事を。

昔ロモスの王宮で僕の事で大騒動があったのに、それを皆さんが助けてくれて嬉しくて、優しい事だけを覚えていたくて・・・・・言い出せなかった、僕たちモンスターが昔から意味があっても無くても怖がられる存在だってことを・・・・僕には分らない、どうすれば人とモンスター達の縁を本当の意味でり持つことが出来るなんて途方もないことが出来るのかなんて。

単に子供達と僕の遊撃隊達の子が仲良くするだけじゃきっと足りない事しか分からない。

 

 

:私の住むネイル村は森の中にある。

その性質からどうしても森のモンスター達と渡り合わなければいけない事も少なくない。

でも、だからと言ってネイル村の人達からモンスター達を根絶させようという話を私は聞いたことが無い。

あるのはどうすればモンスター達に遭わずに森の中を往来し、子供だけで森の奥に行くことを禁じて危険から身を守る事を第一とする話しか知らなくて・・・・狂暴化もしていないモンスター達を根こそぎ否定する人達が居るなんて思いもしなかった・・・

デルムリン島にいる子達はみんないい子で優しくて、島に来る人達に直ぐに懐いているのを見るうちに、私自身もモンスターの脅威と言うものを忘れていたのかもしれない・・不甲斐ない・・・いつでも脅威を忘れてはいけないという先生の言葉を違えているなんて・・

 

:私も鈍ったものね、民達がいえ人間というのは同族であれ異種族であれ自分達と違う者、其れこそ派閥の違いや考えの違い一つでどこまでも残酷になれる事を頭の中から追いやっていたんだから・・・近頃ティファの近くが、ティファの考えた世界の中にいるのが居心地が良すぎて、優しい大人達の守られているのが当たり前になりすぎて・・・これじゃぁ駄目ね。

どんな時でも人々の中には善良だけではなく無意識の残酷さや悪意があるのを忘れないでいないと・・・・どれ程善き世界の中にいても・・・

 

:俺・・・偽勇者にゴメちゃん攫われたり、て味方だったはずのカール騎士の人達がティファの事が分からなさ過ぎて暴走したのを完全に忘れてた・・・・それに世間の人達が俺達みたいに俺の友達のモンスター達の事に詳しくない事も・・・

あの子達だって危害を加えられたり縄張りを荒らしたりお腹がすいた時以外はむやみに暴れる事が無いのを知らない事を・・・・・島のみんなや爺ちゃん達は皆優しくて・・魔族だってバーン達みたいに良い人しか知らなくて・・・・スタンピードも俺は見たことが無い・・・・だから俺自身も知らない。

モンスター達と魔族や他の人達の脅威を本当の意味で知らない・・・人間達の悪意も・・

 

 

 

 

 

己達の無知と忘我の後悔の念が、そこには書き連ねられていた。

 

 

昼近くになっても傷ついたポップとチウ達の他にも共にいたはずのノヴァや大人達が誰一人としいて起きてこない事を不審に思い、居ても立っても居られなくなったバーン達が様子を見に行けば、大人と子供達どころか花嫁とティファも共に一つの部屋で・・・・雑魚寝をしていたことに驚いたが、辛うじて自分達の気配で目をしょぼつかせながらも起きたヒュンケルとラーハルトが、ティファの握りしめていた書付を自分達に渡しながら、昨日どのような経緯でこの状況となったのかを、まだ眠っている者達を起こさないようにするために大広間に場を移してから事細かく話しをされた。

 

誰もが不安で眠れないのならば一緒にいようというティファの提案に、幼馴染のノヴァと兄であるダイが賛同した事から始まり、目が覚めたポップを手痛い方法であるが本人と周りの為にティファ自身が一番したくない方法で教え諭した事を。

 

そしてそこからレオナが、いったい今の自分達は何を知らなくて何を忘れていて、其の所為でポップを助ける事の障害が何であるのかを全部を話合って書き記していこうという発案に、傷ついた当事者のポップとチウが大賛成をしてそしてティファが書き記す事になったのだと。

 

そしてそれを一番に読んだのは当事者のポップと発案者のレオナの師であるアバンが読み進めていくうちに・・・・・

 

「・・・・不甲斐ない・・・・・・私は・・・私たち大人はあの子達を守っているつもりで・・・」

 

ポタリと、ティファの書き綴った紙面に涙を溢す。

 

知らない事こそが、知られない事こそが子供達を守る最善の策だと、今日この時までアバンは信じて疑わなかった・・・平和でいさせてあげられなかった子供時代を改めて守る為に、そして命をかけて労した分だけ彼等の幸せを-大人-として守ろうと思っていた事が裏目に出してしまった事が、傷ついたポップ達に申し訳なくて・・・

 

確かにこの世界は一時忘れ去られ、若しくは表面化していなかったモンスター達に対する脅威に対する怯えや、異種族に対する差別や無意識の悪意が再び表面化されているのをアバン自身もチウと行動を共にする事が多いフォブスター達からの情報で知っていた。

それでも、まだ自分達でどうにかする時間があると、自分達の能力を過信していた・・・其のツケを、自分達の一方的な思惑で-無知-でいさせてしまったポップ達が払って・・本末転倒もいい所で・・・・

ファブニールの竜を討った時、無知が罪である事を恥じた先祖にも顔向けが出来ないとアバンの心が打ちのめされる。

 

そんなアバンの後悔は、泣くアバンからそっと紙面を抜いて読み始めたバーン達にも生じる。

キルやミスト、そして普段は子共であっても厳しくする時はするハドラーやマトリフをしてもアバンの考えに同意したのだから・・・・無知は罪であるというのならば、無知でいさせたこともまた罪が重く・・・・彼等をあまりにも子ども扱いした事で生じたこの罪を償うのにはどうすればいいのか・・・・ただ、優しい子供達をの心を守りたかったのに




今宵ここまで・・・・


久しぶりに【ファブニールの竜】を出しました。

無知が罪であるというのならば、無知でいさせたこともまた罪が重いのだと思う筆者ですが、優しい心からのこの行為はどれほど重いのだろうか、本当に悩ましく思いそれ故に遅々としてしか筆が進まずにエピローグが思いがけずに長くなって申し訳なく思います。

後数話で終えられる予定ですが果たして・・・
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