勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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世界に散らばるいし達:エピローグ⑬

それを読むのは構いませんが、それを読んだからと言って泣くのは勘弁してもらえませんか?

それを完成させるまでに物凄い労を要して書いたのが馬鹿みたくなるので

 

 

 

 

ポップ達の心の声を書き綴った物を-途中まで-読んで泣き崩れたアバンと他の大人達に対して、非常に冷たい声がかけられた。

 

声をかけたのは扉をノックする事無く、眠そうに頭をバリバリと掻きながら部屋に入って来たティファであった。

 

今のティファは寝たりないので機嫌がすこぶる悪い。

元来ティファは寝起き自体が非常に悪く、其れも寝入りばなや短時間睡眠の途中を邪魔されるのを非常に嫌っており、それが為に幼少期昼寝をしているティファにやらかしたダイが地獄を見る事がしばしばあった程に寝起きが悪いのを、察したラーハルトの背中に冷や汗が流れる。

 

主バラン達と共にデルムリン島に住むようになって早三年、最初の一年はティファはバラバラになりかけた魂と肉体を回復させるための眠りについていたが・・・・起きてから二年が経てば嫌でもティファのそういう面を見る事になる。

 

 

 

そしてティファの地雷をもう一つ・・・・それもものの見事に踏み抜いてもいる事に、あの戦であれば死地においても鼻歌でも歌いながら切り抜けられる剛の者ラーハルトが動揺しかけている。

 

それは、ティファは自分の書き綴った物を勝手に見られることを・・・それこそ寝入りばなを起こされるよりも嫌っている・・・・・以前デルムリン島のリビングで遠方の研究仲間に偶には目玉通信ではなく研究成果も入れた手紙を書いている最中、台所からマァムに夕食の料理の味見を頼まれて離籍した時、何を書いているんだと興味を持ったガルダンディーが手紙を覗き込んだ時・・・・・洒落にならない殺気がリビングに充満したのが記憶に新しい・・・・あれは一般人が受けたらそれだけで精神攻撃になりかねない代物であり、以来ティファの書いた物を目にしたガルダンディーは速攻で逃げる程のトラウマ化したのだ。

 

そのティファの地雷を二つも、見事に踏み抜いてしまった自分達の明日は果たしてあるかと、ラーハルトは本気で覚悟をしたのだが・・・

 

「読むのならば最後まで読んでから後悔するなりなんなりをしてください。

途中だけで最後まで読んでもいないのに、中身を知った気になられるのが一番不愉快なのですよ。」

 

どうやら何の奇跡か今のティファは地雷二つの事よりも、寝ている自分の手から勝手に持ち出した物を中途半端に読み解かれている事に立腹しているようなので、神速のラーハルトはシュバっと泣き崩れていたが、ティファの意外な仕草にポカンとしたアバンを立たせて近くの椅子に座らせて、握りしめていた残りの書付を直ぐに読むようにアバンに促す。

・・・・ここでもたもたしていたら、今度こそティファの超特大の地雷を踏む気しかしない焦ったラーハルトに、アバンは何事だろうとぼんやりと想いながら促されるままに書きつけの残りを読んでみればそこに書かれていたのは・・・・

 

 

:だから俺はレオナの夫として王配として、国の人達が酷い事をする事の内容な優しい心を持った人達になってほしいと思う!

モンスターのみんなは怖いだけじゃない!ちゃんと優しい所もあって本当は良い子なんだよって-知って-欲しい!!

俺も人の怖い所や駄目なところもきちんと学んでいくから・・・・一緒に学んでほしい

 

 

:俺もダイと同じで、きちんとあいつ等の怖い所や人の怖い所も知って、それでも人とモンスターが不幸な関係にならないようにしていくんだ!!

 

:怖がるだけでも駄目、怖い所を見ないようにするんじゃない、いい所も悪い所も知って互いに共存できる道がないかを探していきたい。

ダイ君達がいればそれはきっと夢物語で終わらないと私は信じてる!

 

:僕達がどう思われているのかを悲しんでるだけじゃきっと駄目だ!僕達だってみんなと仲良く暮らしていきたい・・・・知ってほしいんだ僕達が怖いだけのものじゃないって事を知ってほしい

 

:テランのあの子達に悪い子はいないのを、世界中の人達に知ってほしい。

私もおばあ様と一緒に占いの旅をして怖い目に遭った。

けれども怖いのは人もモンスターも変わらない・・・それは優しいのは人もモンスターも変わらないのと一緒。

モンスターの中には村で共生している子達もいる事を・・・良き事もきちんとあるのだと人々に知ってほしい。

 

 

そこに書かれていたのは、見せつけられて知った世間の闇に押しつぶされまいと力強く立ち上がろうとする子供達の想いであった。

 

子供とはいつまでも子供ではなく、いつかは巣立ち羽ばたいて大空を舞う日が来るものであり、まさしくこれは、彼等が大人達の作った居心地の良い暖かい巣から飛び立っていこうとする決意の表れであった。

ただ敵と戦うだけではない、生命を脅かす事柄を打ち砕く戦いだけではなく、普遍的に世界に散らばっている邪なる意思に立ち向かっていくのだという暖かい意思が、そこには書き連なっていた。

 

ただ嘆くだけの意見の場だけにするつもりがなかったティファは、ではどうしたらいいかをもきちんと考えてもらってそして朝日が昇る頃にこの意見が出尽くしたのを見届けていた大人達も満足をして全員が崩れる様に眠りについたのだ。

 

意見を出そうと必死に考えた子供達も、子供達の心の傷を案じて見守っていた大人達も子供達の確かな決意を固められたことに安堵して、双方心が解れて自然と穏やかに寝入るほどの書付には、ダイの、ポップの、レオナの、マァムの、チウの、メルルの温かい思いが溢れており・・アバンはまたもや自分の不見識を打ち砕かれる・・・・・彼等は、ダイ達は優しいだけの心弱きものでは無い、優しくてそして心が傷つこうともそれでも良き未来を目指して前に進む強き者だと・・・・・自分の不見識を粉々にされたアバンは其れが嬉しくて・・・

 

「・・・・・まったく、他者が書いた物を勝手に読んだ挙句に笑いながら泣くというのもどうなんでしょうかね?」

 

宝物を抱くかの如く、ティファの書いたダイ達の暖かい想いと意志が詰まった書付を胸に抱きしめて笑いながら泣くアバンを前にしたティファはまた頭をバリバリと掻きながら憮然とする。

 

誰か来た気配がしたが眠気に勝てずにその時は覚醒しなかったが、手から書き物を取られた時に意識が浮上し、勝手に書いた物を見られたと怒鳴りに行こうとした。

 

だがしかし、泣いているアバンを前にしては眠りを妨げられ書いた物を勝手に見られるという地雷を踏み抜かれながらも怒るに起これないティファは憮然とするしかなく、申し訳ありませんというアバンを許すほかなくなりそれもまた面白くないのを、事態を見守っていたバーン達は久しぶりに子供らしいティファが見られたと笑うのに、ティファはさらに面白くないと仏頂面をするのであった。

 

兄達をきちんと休ませて明日辺りから書いた物を披露して大人達を安心させてあげようとしたのに・・・・・もう知らんと珍しくやさぐれもしたのであった・・・




今宵ここまで・・・・主人公も人の子なのです(苦笑
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