勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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魔王軍の死神と主人公が出会います。
原作とは全くの別人なので、苦手な方はバックしてください。
よろしくお願いします。



奇妙な出会い

三人をベッドに寝かせて、伝言メモを残してネイル村に向かった。

今後マァムさんが一行に付いてきてくれると言ってくれたのをロカさん夫妻に報告しないといけない。

何となれば家出少年ポップと違って大切な一人娘さんだからね。

昨日通った道を空飛ぶ靴でひとっ飛びして、日暮れ前に辿り着けた。

-トントン-

「はい・・あらティファさん!・・あなた一人?マァム達は・・」

「その事を含めてご報告がありまして戻ってきました。

ロカさんは?」

「まだ起きています。さ、中へ。」

「お邪魔します。」

 

飲み物を断って今日の出来事をすべて話し、

 

「マァムさんをお連れしてよろしいでしょうか?」

 

二人の顔が難しい顔をしているな。

 

「仕方ねえ・・マァムが決めた事だ。」

「そうね、ティファさんよろしくお願いします。」

・・私に頼むんかい・・でも、もとより守る気だからいいけど。

「分かりました、お二人の言葉をマァムさんにお伝えします。」

お暇しようとしたら、

「それよりもお前さんに聞きたい事がある。」

何故かロカさんに引き留められた。

「何でしょう?」聞きたい事って。

「アバンの奴、本当はどうした。」

「!!」

「・・随分驚いた顔すんな~。

お前達やマァムの様子見てればわかるさ。

ここに来た次の日からあいつの話が全く出なかったんでな・・長く戦いに身を置いてた俺には分かる事だ。

で、本当にあいつはどうした?」

「・・あなたをだますような真似をして申し訳ありません。

魔王がきて・・メガンテをされました・・。」

「・・そうか・・あいつは・・」

「・・はい・・」

アバン先生が死んだことには薄々勘づいてたロカさんでも、先生が自爆呪文を使ったって言う事には衝撃を受けたようだ。

無理もない、倒されたのと自らの命を投げ出したのとでは意味合いが全く違うもんね・・。

「・・後一ついいかティファ。」

「はい、何でしょう?」

暫く苦しそうな顔をして俯いていたロカさんんがもう一つの質問をしてきた。

答えられることは全て答えようと聞いてみれば、

「お前さんいったい何者だい。」

「・・それはどういう・・」

「一行の-料理担当-にしては薬学知識があり過ぎるんだよ。

それに俺はそいつの動きを見れば大概の実力は分かる積りだ。さっきの戦闘時の話、全部手前の事をすっ飛ばしたろう。」

 

これは・・本当にこの人は凄い人だ、頭が下がる思いしかしない。

それでも私の答えは一つだ。

 

「私は後にも先にも一行の料理人ですよ。」

 

目をそらさずに思いを告げる。

互いに真剣に見つめ合っていると、

 

「分かった、悪かったな変な事を聞いちまって。」

「いいえ、ではマァムさんをお預かりします。」

 

「ごめんなさいね、ロカが変な事を聞いて。」

「いいえ、大切な娘さんを得体の知れない輩の元に置きたくないというのは親として当然の事だと思います。

ロカさんはいい父君です。」

「あんな・・そういう世慣れた事を言うから怪しまれんだぞ!

ダイ君や・・ポップみたいに・・もっと子供らしくどたばたとだな・・」

「貴方!!」

「う!・・とにかく!!

マァムもそうだけどな、三人の事頼んだぞ!!」

「はい、分かりました。」

 

何やら温かい言葉で子供らしくしろと変わった説教貰ってロカさん宅を後にした。

 

 

 

後日談

ロカの家に久々に治療に訪れたマトリフにレイラがティファの睡眠薬のメモを見せたところ、

はじめは感心をしていた顔をしていたが・・急に何か様子が変わり・・わなわなと震えだし遂には

「あの嬢ちゃん!!

人に全く会いに来ないで何をうろちょろしてやがんだ!!!!」

怒りの大絶叫を叫び上げた!!

・・確か御年九十八で・・近頃は人格が丸くなってきたと感じたマトリフをここまで激怒させるなんて・・。

メモを見た時は

(ムーラン草か・・いいアイデアだな。)

腕のいい薬師だと思って見ていたが・・筆跡がティファのものだとすぐに分かった!

伊達に五年も文通をしていない!!

自分に会いに来ない薄情者をつい怒鳴ってしまい、ロカとレイラを心底驚かせてしまった。

二人はマトリフの怒鳴り声よりも、マトリフと深い関係にあるであろうティファに対して。

大魔導士と誼があるって・・本当にティファは何者なのかと・・。

しかし当のティファとは全く無縁な話である。

 

 

(いい夜だ、月がとても綺麗だな~。ここがネイル村か、

ふふ、ミスト偵察部隊全滅させられたって、そうとうおかんむりだったな~。

あんなに怒ったミストを見られて僕は楽しいからいいんだけど親友の困りごとは

調べて上げないとね。

誰がやったんだろう、逗留した勇者一行の者かな・・楽しみだな~)

キルは一人偵察を名目に一人でネイル村の上空に佇んでいた。

偵察部隊を誰が全滅をさせたかミストが配下を使って調べようとした矢先に獣王が敗れた一大事の方で招集を受けたためキルが自ら申し出た。

暇で退屈だからと。

ミストは無言であったが、気配で呆れていたのがまる分かり。

しかし手を一振りして任せると言ってきたので散歩気分でやってきた。

一応ピロロにも声を掛けたが興味ないと一人に馴れて清々してる。

月明りで見つからない様に大樹の枝に立って元勇者の仲間の家を見てみれば、

「では失礼します。」

少女が一人、夜の森を行こうとしている。

灯りは一応持たされているようだが、

(こんなに遅くにどこ行く気だろう?)

面白そうなのでついて行ってみよう。

 

-スタスタ・ピタ-

-スタスタ・ピタ-

 

・・誰だろう、さっきから付けられてる気がする・・。

ご丁寧に足音を合わせて・・山賊か・・このご時世に人攫いか・・どっちにしても!

人を付け回すなんて碌でもない奴に決まってる!!

「誰ですか!!!」悪い奴はフルボッコ!!

ん・・少し感じた気配と・・足音頼りに振り向いたら・・誰もいない・・気のせい

「ふ~ん、僕に気が付くなんて鋭いね君。

かなり強いのかな?」

 

・・そんな・・声が真後ろから・・気配無く背後とられるなんて!

背中に冷たいものが奔る・・気配が全く感じられない・・誰!!

何時でも飛び退れるように準備をすれば、

「嫌だな~いきなりとって食べたりしないから、おっかない気配出さないで。」

・・やることを見透かされた・・相当な実力者に捕まったらしい。

しかもこの状況を楽しんでいるようだ。

じたばたしても仕方が無し、無駄しない様に体の余分な力を抜けば、

「そうそう、君は聞き分けの良い子だね。」

・・なんか頭撫ぜられて褒められた。

本当にどんな奴に捕まったのか、純粋な好奇心で知りたくなって振りむいてみれば・・

-キルバーン-がいるって何の冗談!!!

って・・あれ?

何か・・私の知ってるキルのお衣装が違う・・。

原作のキルは・・確か白の膝下ブーツに黒い頭巾と、黒部分が多いい仮面に、装飾以外の

服の布地は薄紫だったはず・・

対してこのキルの布地と仮面の黒以外の部分が艶のある深紅だ!

原作のキルは如何にもな感じで登場早々気障ったらしく嫌な奴に見えたけど、

こっちのキルは・・「カッコいい。」

思わず思っている事が口に出てしまった。

長身肩広のキルによく似合っていいる。

気配も邪気がない・・機械人形なのは知っているけれど、そのせいではないだろう。

たまに呪われたアイテムやなんかからも、邪気があるもの知っている。

しかしこのキルからはそれが感じられない・・ネイル村出てきた辺りから付けてきたんなら、

私が勇者の関係者なのを知っているはずだ。

なのに尋問遊びとか、原作のキルなら喜んでやりそうなえぐい事をしようとしてこない。

真っ赤な瞳は一緒でも・・何故か深みを感じる・・怖くないと思ってしまう・・。

 

「カッコいいって、僕の服の事を言ってくれているのかな?」

普通に振り向いたら話しかけてきた。

「・・私的には好みの服です・・」

「そう、嬉しいな~」

「嬉しい・・ですか・・」

「うん、この服は僕とその主以外からは評判悪いんだよ。

僕の親友からもね。

長く生きてきたけどこの服の良さが分かってくれたのは、僕と主と君を入れてようやく三人なんだよ。」

「そう・・何ですか・・」

つまりバーン以外には悪趣味って言われてんだ・・親友のミストにも・・気の毒だ。

「そうだよ、だからとても嬉しい。」

・・なんかにっこり笑ってフレンドリーな人だ・・こっちのキルって変わってる。

しかも人の頭やたらと撫ぜてくるし・・「あ!!」

油断してたら眼鏡とられた!!

「返してください!!

それは大切な方からの贈り物です!!!」

 

眼鏡ない方がこの子可愛いな。

数百年してこの服の良さを分かってくれるこの素顔を見たくて眼鏡を取り上げれば、

顔を赤くして怒ってきた。

血色のいい匂い立つような頬、少年のような薄く艶のある唇もさりながら、

ダントツに気に入ったのは黒い瞳だ。

自分は衣装と装飾・肌及び髪が真っ白な主と、衣がすべて真っ白な親友がいる。

外側は白く、中は深淵の夜のような美しい艶やかな黒を持つ者達だ。

それに対してこの少女は、長くふんわりとした黒髪に星のきらめきを閉じ込めたような

美しい黒い瞳を持ち、真っ白な無垢の子供のような印象を受ける。

こんな時刻にこんな真っ暗な森の中で自分のような怪しいものと話しているなんて、

危機意識が相当ない箱入り娘のようだ。

「君じゃないよね?」

思わず聞いてしまった・・ミストを困らせたのがこの子供であってほしくないと願って。

「・・何がですか?」

少女は取り返そうとしていた動きを止めて、きょとんとした顔をする。

「いや・・何でもないよ。」

何でかあまり深く聞きたくなくてはぐらかして少女の頭を撫ぜる。

(初対面特典で今日は見逃してあげるか)

何の特典だか考え着いた自分も?だが、百獣軍団を撃破した一行はこの地に留まるまい。

ならば偵察部隊がいてもいなくともさほど重要ではない。

この子もバーン様の作戦が本格的に始まれば死を迎えようし、

少しの間の生を無為に狩ることも無い、どの道地上の全ての命は消えるのだから。

現段階では一行の抹殺指令も出ていない。

わざとほんの少しの気配と普段は立てない足音をさせたが、実力が高くないと気がつかない程度を

気が付いた子だが・・気に入ったので見逃すか。

「はい、眼鏡返すね。」

「・・ありがとうございます。」

「その眼鏡、無い方がいいよ?」

「・・知ってます・・似合わないことくらい・・」

「違うよ、そうじゃない。」

「?」

「君本来の美しさが隠されてしまう。

勿体ないよ。」

「・・あの・・何言っているのか・・」

「まあまだ子供の君には分からないか。」本当に勿体無い。

この蕾のような少女は、美しく咲く事は決してない。

「早くおいき、悪い狼に食べられる前に。」

「・・狼出てきたら蹴っ飛ばします。」

「勇ましいお嬢ちゃんだ。

でも-お転婆-が過ぎると、狼の群れに囲まれてしまうよ?」

「・・それは」

それは今の一行が邪魔になったら確実に軍が総出で潰しに行くという事だ。

果たしてこの少女に理解できるか?「そしたら・・」ん?

「力を合わせて狼さんを伸してお説教します!」

「・・は?」

「悪い事はいけないと教えてあげます。」

・・何か・・変な事をにっこりと笑って言ってる。

人を襲いし狼を説教して・・改心させるつもりかこの子は?

「ふっふっふ・・はっはっはは。」

久し振りに楽しい笑いをさせられた・・こんな年端も行かない子に。

「もう行きますね、失礼します。」

礼儀正しい子だ。

「そうだね、お行き。」

まだ沢山話をしたいが、自分もそろそろ戻る時間だ。

「またどこかで会おうね。」

未練がましく次を言ってしまったが・・考えてみれば、敵の子と会うのは戦場か。

戦うよりも暗殺の確率が高い気が・・。

少女は驚いた顔をしたが「そうですね、また服について楽しくお話しできるといいですね。」

答えてくれて行ってしまった。

後姿が見えなくなるまで見送った後、空間を使って帰還した。

 

「キル!!何だこの報告書は⁉」

一応偵察名目で出たから気紛れに報告書をミストに出したら怒鳴られた!!

長ければ数十年はだんまりをしているミストから怒声聞けるなんて超レアだ!!

「それじゃあ駄目かい?」

何やらまだ会話できそうなので聞いてみたら、

「駄目に決まっているだろう!!」

-村を見回しても何も分からなかった。でも楽しかったよ?-

「こんなふざけたものを寄越して!!」

あの少女に出会えて素直に感想書いただけなのに、ミストはからかわれたと感じたらしい。

今日はついてるな~。

あの子と言い、ミストの怒号と言い、いい日だ。

「聞いているのかキル!!」

「うん、もっと聞かせてよミスト~。」

「き・・様は!!」

 

その後小一時間キルはミストの部屋で二人きりで説教三昧をされて大喜びをした。




原作のキルとは中身は似ても似つきません。
服の方も筆者の好みに、敢えてさせていただきました、。
黒と藤紫よりも、黒と赤の組み合わせの方がいいなとずっと思っていたので、
作中で実現できて嬉しいです。
どなたか絵心のある方が書いてくださったら嬉しく思います。

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