勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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サクサクとパプニカに行きました。
よろしくお願いします。


ーパプニカ編ー上陸

あれは本当にキルバーンだったのだろうか・・原作の人物とは似ても似つかない。

中身がもんの凄い紳士で残虐キルバーンとはとても思えなかった。

ザボエラは原作通り屑で下種な策謀家なのは判明したけど、こっちの世界の人物は会ってみないと

分かりません状態か。

これからは先入観無しで会いに行こう!

知識じゃなく、自分の目で見たものが真実だ!!

・・それでいこう。

 

大海原を走る船上で、一人黄昏ながら昨日のキルとの遭遇を考えてようやく結論出た。

そんくらい私の脳内フリーズ起こしましたとも!!

何なのあの紳士キル!!

何の冗談?

なんかの策略の一環?

勇者一行の者を誑かすための演技かい!!

とは言えまい。

この世界は大魔王バーンからして違うんだから、考えた末に結論を出した。

こいつはこうの考え丸っとこの海にポイって捨ててしまいました。

 

捨てて新たに考えを定めて船上を見回してみれば、もう一人黄昏ていた私の双子の兄が

いつの間にやらポップ兄とマァムさんとでじゃれ合ってる。

ダイ兄の中のお悩みを、ふたりがかいけつしてくれたよ

三人とも元気があってよろしい。

 

「四人共、そろそろ目的地に着くが、本当に・・。」

ロモス王様が私達の行き先がパプニカと知って船を出してくれた。

じいちゃんの件と言い、この船と言い、本当に優しくて実行力のある王様だ。

船長さんも海の男らしくていい人だ。

けどウォーリアさんの方が美男子だと思うのは内緒にしとこ。

その船長さんが目的地を聞いて不安そうな顔をしている。

パプニカは今大戦は一進一退ではあるが負けておらず、首都も大きな港町も被害はなく

風光明媚で式で見た限り戦争の不安さはあってもそこまで暗い影はなかった。

行き先が普通にパプニカの首都周辺であった場合の話だけど、

「はい、行き先は地底魔城より五キロ離れた西海岸でお願いします。」

私が設定したのは敵の目の前すれすれだ。

斥候や見張りがギリいるかいないかの範囲を目的地に設定をした。

この決定をダイ兄達に納得させるのに超手間がかかったな~。

「敵の情報を少しでも収集してから王都に行った方がパプニカ国の為になると思います。」

ただレオナ姫や父王にのこのこ会いに行くだけよりも、勇者一行の者達らしく、

敵を調べ上げて倒す算段を付けた方が云々かんぬんで、

一行の良い子達をだまくらかした。

本当は悪魔の目玉でパプニカで見つけられて、ヒュンケルが単騎で王城に乗り込んで来たら

ぶっちゃけしち面倒な事にしかならないのが目に浮かぶからだ。

戦場においてヒュンケルは一度たりとも魔装は脱がずに戦ったろうから、誰も素顔は知らず、その格好で来られて城下及び城内で戦われたら最悪私が取り押さえないと被害甚大だ。

私の力量はまだ隠してやっていく方向だ。

せっかく三人が自分達の力でやり遂げられると自信をつけてきたのだから。

それに最大理由は魂の貝殻。

復讐鬼化しているヒュンケルの目を覚まさせるにはあれは必須だ。

戦うのはやっぱりあの貝殻が手に入るようにしないと、ヒュンケルを救えない。

あの人も助けたい方向ではある・・でもキルの件もあるので、実際のヒュンケルを見てそれで考えよう。

今でも純粋に亡き父を慕っての復讐か、暗黒に堕ちて殺人鬼となり果てたのか。

見定めるとはおこがましくとも、観察させてもらう。

それでも一番の目的は打倒不死騎軍なのには変わらないけど。

 

「早く着かないかな。」

さっきからダイ兄がソワソワして少々困る。

浮かれていったら怪我じゃすまない。

 

「おいダイ!御姫様に会う前に、おっかないとこに偵察行くの分かってんのかよ・・」

「そうよ!父さん達から地底魔城の凄さ聞いたことがあるけど、本当に危険なのよ。」

 

ダイ兄のソワソワ理由を知っている二人に怒られて少ししょげて落ち着いてくれて助かる。

「まあまあ。

二人共、気負って行くと余計な力が入って良くないですよ。

反対にダイ兄は少し浮かれ過ぎです。

首都及び周辺の被害が少なくとも、敵の攻撃で辛き目にあっている人達がいるんです。」

そろそろ仲裁の頃合いなので間に入った。

 

「まあ・・そうかもしんねえ。」

「ピリピリしてもしょうがないか。」

二人は素直に聞いてくれる。

「そうですよ、先は長いんですから出来る事をその都度していけばいいんです。

頑張るのと気負うのは別物ですよ。」

「おう。」

「うん。」

「・・でも・・」

二人は素直でも、

「俺、早くレオナに会いたい。」

ダイ兄が珍しく引かない。

気持ちは分かる。

何となれば初恋の人が今まさにピンチで、早く会いに行って無事な姿を自分の目できちんと確認をして安心したいというのが自然だろう。

けどね、ダイ兄は勇者になったんだ。

その辺をもう少し自覚してほしい・・ゆっくりとでもいいから。

「兄、必ず会えるよ。」

「ティファ・・。」

「私の言った事外れた事あったけ?」

「ううん、無い!そうだよ、敵調べてレオナ達助けよう!!」

十二年兄妹してる私への信頼感半端ないな。実現できるように全力尽くそう!

 

「では気を付けていくんだぞ!」

「はい!王様によろしく。」

「ありがとう。」

「気を付けていきます。」

「船長さんもお気をつけて。」

丘のモンスターと違って海のモンスターには破邪の石の効果はなく、

気のいい船長さんにお礼を言いつつ互いの無事を祈る。

パプニカに上陸だ。


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