勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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明けましておめでとうございます。
よろしくお願いします。


正義の使徒も大変です

日の光の差さない松明の灯りの中で、玉座の椅子にてまどろんでいる青年が居た。

薄気味の悪い部屋には似つかわしくはない銀色の髪の青年は-人待ち-をしている。

「ヒュンケル様。」

「・・モルグか・・」

執事風のゾンビからヒュンケル様と呼ばれた青年はうっすらと目を開ける。

「勇者一行の者達が来たと、今しがた報告が入りました。」

モルグは一礼をして用向きを主に伝える。

「来たか・・パプニカ城ではなくこちらに。」

てっきり城に行くと踏んだのだが、攻める手間が省けてちょうどいい。

自分は父の敵アバンを討つ事を目標にして生きてきた。

正直魔王軍がどうなろうと知った事ではない。

自分について来てくれる不死騎団の者たちが可愛くてモルグの事も好きだが、その程度だ。

目標たるアバンはハドラーに先を越されてしまった、ならばせめて弟子の全ては自分が貰おう。

「さっさと俺に殺されに来い・・」

紫の瞳に憎悪と殺意をどろりと煮詰めさせた色を乗せて、ヒュンケルは誰ともなくそっとつぶやいた。

 

 

ああ・・来ちゃいましたよ、地底魔城近くに。

環境的には良い子が絶対来たらアウトなどん暗な雰囲気で、遺体はないけど道々に血だまりの後とかってほんっと勘弁してよ!

ダイ兄達のやる気テンション駄々下がり!!

・・仕方ない、平和に生きてきた子供達には少々グロイ光景だ。

遺体が無くてマジで助かる。

王国側は遺体の回収が出来る余力があるのか、死んでないのかは分からないけれど無くてよかった。

「こほん。」

青ざめてる三人には、

「あそこに池が見えますよね。

倒木があるので船で淹れておいたお茶を飲みましょう。」

リラックスしてもらう。

「ティファ!!お茶って・・」

「あのねダイ兄、体に力が入りすぎ。

ポップ兄とマァムさんもですよ。

余計な力はいざという時動けなくなる元です。

温かい物を飲んでリラックスですよ。」

 

説得に応じた三人は、意外にもネタで出したクッキーも食べてる。

案外子供というのは図太いらしいと学習させてもらった。

そろそろ行かないと・・悪魔の目玉の視線が痛いな。

 

 

「モルグ!連中はまだか!!」

報告を受けて一時間が経つが、来る気配が全くない!!

ヒュンケルは罠を張って待っていたが来ないとしびれを切らし、半ば八つ当たり気味に

モルグに報告を促す。

「その・近くまでは来ていますが・・」

「なんだ・・どうしたモルグ。」

いつもははっきりとした物言いをするモルグが珍しく言いにくそうにしている。

「・・矢張りガキはガキか。

近くまで来ておいて逃げ出す算段でもしているのか?」

戦う気満々の自分が失望するのを憂えたモルグらしいと思って聞いてみれば

「その・・彼等はお茶を飲んでいます。」

「・・なに?」

「倒木に腰を掛けて・・人間の食べるクッキーとやらも食べながら・・」

「はぁ⁉」

「四人おりますが、誰一人として怯えた顔をしておりませんヒュンケル様。」

・・何なんだそれは⁉

あの一行は少年少女しかいない一行の筈だ!

なのに戦場の影の色濃い地にて暢気に茶を飲んでますってなんだそれは!!

アバンが居れば可能な話ではあるが・・誰だ・・誰か戦い慣れした者がいるとでもいうのか!!!

 

 

「ふえっくしょうん!!」

何だろ・・ここ最近くしゃみが・・。

「大丈夫ティファ?」

「大丈夫ですよマァムさん、そろそろ行きましょう。」

きっとヒュンケル辺りがまだ来ないかってイラついてる気がする。

目玉の数が増えて来てるのがその証拠だ。

・・あれって餌付けできないかな?

頭の隅でらちも無い事を考えながら片付けすまして出発をする。

さっきよりも皆いい顔をしてくれてほっとする。

 

 

地底魔城まで一キロの所には神殿が一つ立っていた。

確かハドラー大戦の犠牲者の鎮魂目的のために建てられた物が、無残にも焼け落ちてる。

「ティファ・・これって・・」

「そうだよダイ兄、私達が負けたらこんな場所があちこちに出来るんだよ。」

「・・そんな・・」

初めて見る本物の戦場後は、ダイのみならずポップ達の心にのしかかる。

負ければ世界全てが破壊されるという事実に。

乗せて来てくれた船長の話では、パプニカは首都と大きな街は無事だが小さな村落は陥落されたと言っていた。

つまり・・ここと同じように。

「ティファ!!俺敵全部倒して皆を守る!!!」

「俺もだ!!」

「私もよ!」

いい目だ、三人は本当勇者一行の人達にふさわしい。

怯えても逃げることなく立ち向かう方を迷わず選び取る三人を見て、ティファは心の中で微笑みを浮かべる。

しかし-ボコボコ!!-無粋な邪魔が入った。

「げっ!!」

「きゃっ!!」

「うぇ!!」

十メートル先の焼けた地面からガイコツが数十体出てきた。

アンデットの群れ来たー!!でも

「ダイ兄、ポップ兄、マァムさん!!」打ち合わせ済みだ。

-ガッシャン!!!- -バッシャン!!-「メッラゾーマ!!!」-ゴオウ!!-

 

バダックさんの聖油を作っている時間は無かったので、油入り瓶と聖水の大瓶三つを同時に投げて聖油もどきぶっかけてポップ兄のメラゾーマ攻撃!

さっさと昇天してもらおう。

「うっし、効いた!」

「船長さんからアンデッドの軍の情報聞いておいてよかったね。」

「いつかお礼しないとね。」

半数減らせて三人共嬉しそうだけど、油断は・・

「ふん!!」-ガッシャン!!-

禁物って思ってたらなんかの一閃でガイコツ全滅した。

三人は驚いて声も出ない。

「誰ですか?」

分かっているけど一応聞かないと。

神殿の影から出てきたのは・・やっぱりヒュンケルだった。

・・うわ~隠してるつもりでも剣の方から殺気が出てる・・なのに気が付かないダイ兄と

マァムさんがのこのこお礼言いに行っちゃった・・危機感もって二人共・・ん?二人?

「なあティファ。」

ポップは行かずにティファに小声で話しかける。

「あいつ、なんか変じゃねえか?」

「・・どんな風に?」

「服が綺麗すぎる気がする。血どころか埃もなんもついてねえ。」

「そうだね。」

民家が近くにある平和な世ならばいざ知らず、大戦始まって被害が出ているこの地にいるものにしては綺麗すぎるとポップの勘が働くのだ。

「それによ・・俺らが来た時人の気配が無かったのにいきなり現れたのも変だ。」

アバンのハードスペシャルの中に気配を読む修業をして多少はよめるようになったのに、

あんな凄い技を使える者の気配が分からなかったはずがない。

「わざと消してた?」

「・・かもしんね・・確かめてみる。」

何故こんな所にいるのか目的を聞こう。

 

 

(二人は予想通りに側に来たが、あの二人は来ないか。)

寧ろ自分を疑っているようだ。

アバンの弟子ならば奴に似てお人よし揃いだと思っていたのだが、疑う者もいた。

(あの小僧は魔法使いか。少しは人を疑えとアバンに教えられたのか?)

アバンはお人よしそうに見えて底が見えずに抜け目のないところもあった。

その教えを受けたものがあれか、油と火炎の作戦はあの小僧か。

もう一人は・・何なのだあれは?

戦場にリュックと小さな鍋を下げて背負っている・・どう見ても場違いな小娘は?

(しかしあいつがかけている眼鏡は間違いなくアバンの物!見間違うはずがない!!)

憎い仇の形見をしているという事はあいつもアバンの・・どこか飄々とした雰囲気が似ている!!

 

ん?ヒュンケルこっちガン見してる。

「貴方もアバン先生の!」

「じゃあ俺達と同じだ!!」

二人とは名乗り終わったみたいだ。

二人は嬉しそうだけど、ヒュンケル全然嬉しそうじゃない。

口で薄く笑っても、目が全く笑ってない。

ポップ兄もそこに気が付いたみたいで魔力を備え始めた。

「二人ともこっちに来なよ!」

「ヒュンケルさんが同行していいか聞いてるわよ。」

「・・ポップ兄。」

「ああ、俺が聞く。」

「分かった。」

二人の側に来て、

「ヒュンケルさんて言ったな、俺はポップってんだ。」

「・・・」

「少し聞きたい事がある。」

「二人ともこっち・・」

「え?」 「ちょ!」

ポップ兄が話している間に二人の腕をとってヒュンケルから引き離す。

 

「ポップ失礼だよ!!」

「そうよ!彼は私達と同じ輝聖石をしているのよ。」

ダイとマァムはティファたちの行動に驚き抗議の声をポップにあげる。自分達と同門の先輩に対して疑っていいはずかないと。

「クックッック、はっはっはは!!」

その二人の思いはヒュンケルの歪んだ笑い声によって打ち砕かれた。

「何がおかしい・・」

ダイ達は驚き、ポップの警戒度がマックスになった。

「アバンの弟子はお人よし揃いだと思っていたがどうして・・ふん!!!」

ーガコ!!- -ボコン!!-

ヒュンケルが指で合図を上げると同時に、ばらけていたガイコツ達が再び起き上がった。

「さっきの!!」

「またかよ!!」

「うそ!」

「倒したふりですか。」でも甘い!!

 

 

二人は風上に連れて来てる、大瓶二つマジックリンクから取り出して-ガッシャーン!!-

「ポップ兄手加減なし!!」

「おう!メッラゾーマ!!!」-ゴオオウ!!!-

さっきよりも威力あるメラゾーマ、風下は安全です!

「貴様ら!!」うっわ怒ったか。

「どうしてアバン先生の弟子が!」

「そうよ!どうして敵と一緒にいるの⁉」

ああ、二人ともそれは

「そいつは敵といるだけじゃねえ!」

「ほお、どういうことだ小僧?」

「先生が言ってた。

ゾンビとがガイコツのアンデッドは基本主人の命令しか聞かねえって。

そいつがパプニカ攻めてる隊長格だ!!」凄いポップ兄。

ダイ兄達ショック受けてる。

「クック、正解だ。」

「どうせその輝聖石も偽もんだろう!!」

「そ・・」

「それは違うでしょうポップ兄。」

ヒュンケルが言う前に言っておかないと。

敵から聞くよりは見方からの方が心のダメージは少ないはずだ。

「確かにその人はアバン先生の弟子だった方だと思います。

心の在り様はともかく、先ほどの太刀筋はダイ兄が得意な大地斬でした。」




パソコンの状態が悪く遅くなりました。
またジリジリと話を乗せていきます。

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