勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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よろしくお願いします。


復讐?八つ当たりです!

-心の在り様はともかく-

つまりティファはアバンの弟子であっても悪になるものも居るといった!

正義のものとはならずに、悪の手先になるものがいると。

「・・そんな・・」

「噓だ!」

「嘘よ!」

その考えはダイ・ポップ・マァムにとっては受け入れ難い、否!受け入れるわけにはいかない事だ。

流石にショックか、でも敵のヒュンケルから言われるよりはましか。

 

「その通りだ、あいつに教わった全ての者が奴を尊敬するとは限らん。」

ヒュンケルは吐き捨てるようにティファの答えを肯定をする。

奴は憎むべき者だと心の底から。

「では何故その輝聖石を?」

チェーンの具合を見れば皮脂が見られる。

長年掛けていなければああはならない筈だとティファはふみ問いかけてみた。

「奴の弟子をおびき寄せる為の餌にすぎん。それが終われば用済みだ。」

 

-ブチ-チャリン

 

ヒュンケルはティファの問いに対し、下らん事だと思いながら-用済みの石-を無造作に

放り捨てる。

「しかしあいつも馬鹿な奴だ。」

「何だと!」

「手前!!」

「何を!」

「お前達を守るためとか抜かして自爆呪文を使った挙句が相手を仕留めきれんとはな。弱く愚か者になったものだ。」

「「何だと!!」」

ヒュンケルの挑発にダイとポップが乗りかける。

「正直がっかりだ、俺が出るまでもなかったか。」

「酷いわ!先生は命を賭けて!!」

「その守るべき弟子たちに後始末をさせているのだから滑稽極まりないだろう。」

ダイ達の怒り悲しみの声を、ヒュンケルは侮蔑の声で返す。

嘲りの笑みを浮かべて。

 

「それ以上!先生の悪口を言うなー!!」

「ほう、ならばどうする?」

「ダイ兄!」

「くらえ!アバンストラッシュ!!」

ヒュンケルの挑発に乗ったダイはティファの制止の声を聞かずに剣を逆手に持ち、先制攻撃をしたが、

「ふん!!」

未完成なストラッシュはヒュンケルの剣の一閃でかき消され不発に終わった。

「くっくっく、これがアバンストラッシュだと?

この程度ならば俺でもできるぞ、ストラッシュ!!」

ヒュンケルはダイと同じ型でストラッシュを放った。

型は同じでも込められた闘気はけた違いであり、喰らえばダイの大ダメージとなりかねないのを、

「はあっ!!」-ザン!-

ダイの前でヒュンケルと同じく剣の一閃で相殺をしたものがいた。

「小娘貴様!!」

アバンと同じ眼鏡をかけた少女が、いつの間にかリュックを下ろし剣を抜いて立ちはだかる。

それも手加減なしの闘気の一閃をかき消して平然と自分を見ている!!

自分はアバンを殺すのを目的として日々鍛錬をしてきた!!

時に大魔王の命で魔界にて実践も兼ねた反乱討伐をこなし数々の敵を屠ってきた自分の

攻撃を受けても涼しい顔をしている!

この一行の実力者は奴か!!

 

「貴方の言う通りです、ダイ兄のストラッシュはいまだ未完成です。」

下手に慰め言っても何の解決にもなんないからきっぱり言ってしまおう。

「そんなティファ・・」

「けれどもこんなに酷い感情のストラッシュは撃ちませんよ。

清々しく、清風のようです。いつか必ずできるから、めげずに行ってみましょう!」

「ティファ!うん!!俺頑張る!!!」

素直って本当に美徳だな。

これで元気出てくれてよかった。

でも今の言葉に嘘はない、ダイ兄なら必死になって習得してくれるって信じてるもんね。

ヒュンケルの攻撃からは憎しみと殺気しか感じなくってまだ腕びりびりするな。

「そいつがか?」

「はい、ダイ兄は本当に勇者になれる素晴らしい人です!」

ヒュンケルに対して兄自慢してやった!!

「ならば、今すぐ死ね!!」-鎧化-バクン

げ!初っ端から魔装化してきた!

「気を付けてください!情報では隊長格の者の鎧には魔法が全く通じないそうです!!」

・・・言っててなんだがどこ情報だと自分で突っ込みたくなる。

そんな高度情報聞きまわっていた時間ないし、送ってくれた船長さんからもそんな情報教わってないだろと情報ソースどこだと突っ込みどころ満載だ。

まさか転生者+大戦当日の戦闘状況式見で見ていましたは流石に言えんが、

「その通り!この鎧の前では小手先技は通じんぞ!!」

・・なんとまあヒュンケルが助け舟出してきた・・複雑だ、根はいい人なのかこの人は?

「そしてこれが奴を殺すために編み出した技だ!!」

やっば!!

「受けて見ろ小娘!!ブラッディ―スクライド!!!」

って!ダイ兄じゃなくて私かい!!受けて・・

「ティファ!!」

「ダイ兄⁉」

「「ダイ!!」」

「あう!!」

ダイ兄が・・私庇って剣を受けて、数メートルまで吹き飛んだ。

「ダイ兄!」

ヒュンケルから目をそらさずに後方に跳んで兄の隣に来れば、ロカさんが餞別でくれた

鎖帷子を着てたお陰で致命傷には至らずに済んだ。

「痛う・・!」

それでもダメージは大きく立ち上がれない。

 

「どうしてこんな事をするの⁉

先生の生徒が・・凄い力を持った貴方がどうして!!」

「何故だと?」

マァムの悲痛な問いかけに、ヒュンケルお目は憎悪の感情で溢れかえった。

「・・いいだろう、話してやろう。」

マァムを睨む目は氷の如く冷たく、声も静かな怒りに満ち溢れ

「あいつは父の仇だ!!!」

十数年間アバンに抱き続けている負の念を全て話しつくし

「だからこそ俺は魔王軍にいる!!」

マァムの問いに答えた。

「そんな・・」

「でも・・だって・・」

聞いたポップとマァムはヒュンケルの答えに反論が出来なくなってしまった。

敵にも身内はいる、仇をとろうというのは自然な考えではないのかとさえ思ってしまう!

それほどまでにヒュンケルの決意は固く、初対面の自分達をも圧倒する一途さを感じてしまうもの!

しかし、

「成る程、つまり貴方は父君と違って戦士ではないのですね。」

ティファの静かな声が聞こえた。

労わりや間違っているなどの説得ではなく、はっきりとした否定の言葉に

「おいティファ!」

「ちょっとティファ!」

それは不味いとポップとマァムが慌てる。

「小娘・・今何と言った」

案の定ヒュンケルの逆鱗に触れた。

自分は復讐することもさることながら父バルトスの強さを指し、父のような戦士足らんと

してきた!

それを見も知らぬ小娘は!!

「言葉の通りです。

 貴方は戦士などではなくただの復讐鬼です。」

ヒュンケルが殺気を込めた闘気の気配を叩きつけてもティファは黙らない。

「何故だ!父の仇を討とうとして何が悪い!!」

「それが間違っています。」

「何だと!!」

「戦士とは敵と相対し倒し、時に倒されるものです。

 戦場で戦えば間違いなくどちらかにしかなりません。」

「・・・」

「倒す者は倒される覚悟を持って戦場に出ているはずです。

あなたの話からするに父君は間違いなく戦士の心構えを持っていたはずです。

いつかは自身も他者に負けて倒される覚悟を。」

「っつ!」

「まして魔王軍の隊長格ならば戦士のみならず大勢の無辜の命もその手に掛けたはずです!

そんな深き業を背負った父君ならば戦場で堂々と戦い敗れて倒されたのならば文句は無かった筈です!!」

 

私の知ってるバルトスさんは止めを刺さなかったアバン先生に反対に食って掛かるほどの

潔い戦士として描かれてた。

そんなバルトスさんが今のヒュンケルをどう思うんだろ、悲しむかな。

「黙れ!!そんなことは綺麗ごとだ!!!俺はアバンを・・」

「仮に貴方が父君の事を思ってどうしてもアバン先生を許せなかったとして。」

怒りに任せて先生を殺すとは言わせません!

「なぜあなたはいまだに魔王軍にいるのです?」

「・・何を・」

「彼の人はいなくなった。

復讐すべき仇がいなくなったというのに貴方は未だに人に、世界に対して憎しみの剣を 振るい続けている。」

「それがどうした!」

「最早貴方のしている事は復讐にもなっていません!!

たんなる憎しみ感情を周りにぶつけているだけの八つ当たりです!!」

「貴様!!」

「父君は成る程、立派な戦士だったのでしょうが、息子であるはずの貴方は道を踏み外しましたか。

今の貴方を見て、バルトスさんはどう思うでしょうか?」

 

私がバルトスさんなら大ショックだよ!

種族差を考えず、赤子の頃から可愛がっていた大事な息子が世間様に対してこんなことしてるって知ったら。

私だってじいちゃん殺されたら迷わずやる!

でも当の仇死んだ事になってもまだ魔王軍して周囲を苦しめてますってなんじゃそら!!

それって単なる八つ当たりだ!

私は復讐はやった奴だけにするもんだと考えてるからヒュンケルの考えは受け入れられない!

NOと言わせていただく!!




主人公はヒュンケルとこの後に出る父バランの考えを真っ向から否定する派です。
復讐するなとは言わずとも、やり方の考え方で真っ向からぶつかりました。

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