勇者一行の料理人   作:ドゥナシオン

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よろしくお願いします。


ドタバタな再会

あの小娘はいつ起きるんだ!

ティファがとっくに起きて城内を爆走している事を全く知らないヒュンケルはイライラが収まらず、取り上げたアバンの眼鏡を破壊してやろうかと思った矢先に

「ヒュンケル様、魔軍司令官ハドラー様がお越しになりました。」

モルグからの報に何の用だと眼鏡の件は保留にしてポケットに入れて招かれざる客の対応に渋々と出た。

 

 

「昔と全く変わらんなここは。」

じめっとはしているが、静寂が心地いいとハドラーはしみじみと思う。

ここに来る前の軍議は酷かった・・リンガイアと相性が悪かったバランがカールを任され、

騎士団長を葬り、いよいよ王都戦に入ろうとしたところに軍議で呼ばれて出鼻をくじかれて

不機嫌で物凄くピリピリしていた。

その後ダイ達の殲滅戦で集まってもらったが、ヒュンケルに勇者一行の討伐命令がバーン直々に

勅命が下った事を詫びれば、フレイザードがぶちぎれて会議室で大暴れをして部屋が全焼する

大惨事に。

・・そこへ医務室の蘇生液に入れていたクロコダインがいなくなったと報告を受けて、

バランはカールに戻り、フレイザードは気を落ち着けさせるのに時間を要するために、

手の空いているのが自分とザボエラだけだったので行きそうな場所に探しにやってきた。

・・大所帯を切り盛りするのは楽ではない。

やりがいがあるが苦労も多い、一人で大戦やっていたころの気ままさが少々懐かしく思ってしまう程ものすごく疲れた・・手を焼く配下が多すぎる。

 

ここは本当に落ち着く。

かつては地上にて魔王を名乗り、配下達を意のままに従えて共に戦った。

アバンに敗れた場所であっても、思い出深い地に変わりはない。

 

(あ奴は昔の方が強かった気がする。)

 

アバンは実力もさることながら飄々として掴みどころがなく、何を考えているのか分からない

得体のしれない強さも感じていた。

なのにデルムリン島にて再会した時はものすっごくガッカリとした。

ティファという小娘にその力を吸い取られでもしたのか?

最後に出てきたあのみょうちきりんな小娘の方が昔のアバンに似ていた。

(アバンの奴は腑抜けおって!)

ここで戦った時のアバンと倒したアバンはやはり違う気がする。

近頃はアバンの事を考えると胸の中がチリチリとして苛立ちが湧く。

昔のままのアバンを倒したのであれば倒したことを誇れたのだろうか?

 

 

-預かってください-

-守り抜きます-

 

アバンから何かを託されたあの娘を倒せば気持ちは晴れるのだろうか?

 

 

「これは魔軍司令官殿、この様な場所へようこそ。

 かつての栄光をご覧になりに来たのですかな?」

ふいにヒュンケルの声が聞こえて我に返る。

配下だというのに棘だらけで皮肉満載の声だった。

 

 

(ハドラーでうっぷん晴らしをするか)

 

ティファとクロコダインの事で苛立っていた思いをハドラーに晴らすことにした。

確かあいつは挑発にすぐ乗るとアバンが言っていたし、ムシャクシャしていたので、

ハドラーで遊んでやろうと気分が浮上した。

何となればあいつが弱かったから父が死ぬ一端を作った奴だし罪悪感は微塵もない。

・・アバンを恨んでいる割にはチャッカリそういった情報も覚えているヒュンケルだったりする。

 

 

「貴様!ハドラー様に向かって!!口を慎め!!!」

挨拶よりも、侮辱にしか取れない発言にお供のザボエラが怒ったが、

当の言われた本人はしげしげとヒュンケルを見るだけで何も言わなかった。

 

(なんだ・・何故何も反応をしないんだ?)

 

自分をじっと見ているだけで気持ちが悪いと思い、

「何かありましたかな、魔軍司令官殿。」

重ねて聞いてみた。

 

 

「いや・・お前の方が可愛気があったのだなと思ってな。」

ティファのあの物言いに比べれば、ずっと腹が立つ反抗的な奴だと苦々しく思っていた。

生意気ヒュンケルのほうがずっと可愛気があり、今の皮肉なぞも子供の悪口程度にしか感じない。

 

「「はあ!⁉」」

 

ヒュンケルは面食らい、ザボエラは呆気にとられた。

軍議以外でも廊下等で鉢会った時にヒュンケルの皮肉にブチ切れていたハドラーの言葉とは思えない!!

(俺に可愛気だと⁉・・ハドラーの奴・・頭でも打ったのか・・)

物凄く失礼な事を考えてしまう。

 

しかしハドラーをよく見れば、以前会った時よりも貫禄が増していて魔王としての風格が

上がった気がする。

一体このわずかな間に何があったのか、かつての宿敵を倒したからだろうか?

 

 

ヒュンケルはおよそ人が考えられる常識の中での考えをしたが、実はハドラーの変わりようは

ティファの魔王道発言による。

それを知れば、あの小娘かと、同じようにティファにあれこれ言われたヒュンケルはうんざりとするが、知りようもないので打倒アバンを達成した為かと考える。

まさかあんな事を初対面の・・それも魔王にあのような無茶苦茶を言う者がいるとは普通

誰も考えない。

余談ではあるがアバンも心底ティファは無茶苦茶だと思った。

 

「それで、今日は何か?」

とっとと本題に入って、さっさと帰ってもらいたくなった。

憂さ晴らしがとんだ期待外れだとがっかりだ・・

 

「うむ、実はな・・」

ハドラーが本題に入りかけると「お話の最中に大変申し訳ありません。」

従者のモルグが珍しく割って入ってきた。

普段は節度ある従者がこのような事をするという事は余程の事だ。

 

「構わん、何事だ。」

 

ハドラーも察したのか従者の発言を寛大な心で許可した。

「ハドラー様・・」

ザボエラとヒュンケルは心底驚いた

かつてのハドラーならば従者如きがと不快感を示していたのが嘘のようだ。

本当にハドラーはどうしてしまったのだろう?

 

「何事だモルグ・・」

とにかく用向きを聞いてみることにした。

「はい、実は手当てをした娘の首にマジックリングと思しきものがありまして。

 何やら大切にしていたようなので武器の類が入っているのかと思いお持ちしました。」

 

あの娘の物か、あいつ同様厄介なものでも入っているのか?

調べてみる価値はある。

 

「あの娘とは、誰か捕えたのか?」

「・・実は・・」

 

モルグからリングを受け取りつつ、ハドラーの質問に答えようとしたその時

 

「サット・マーレ-(ちょっと待ったー)!!」

 

・・およそ常の地底魔城では絶対聞こえないであろう元気いっぱいの少女の声が聞こえてきた!!

 

((あの声は!!))

 

その場にいた男四人のうち、ハドラーとヒュンケルが声のする方に目をむいた。

聞き覚えがあり・・今は聞きたくない声だった!!

 

 

 

薄暗い地底魔城をリングの気配追っかけてであったモンスター達を沢山踏みつけて大爆走して

ようやく見つけたって・・ん?あれってヒュンケルの他には・・ハドラーとザボエラもいたー!

ダニ野郎発見!!

しかし手リングの方が大事だ!灰にするのはまたの機会に!!

 

物騒な算段をつけつつ、ティファはヒュンケルの目の前でフルブレーキで止まった。

 

「小娘、貴様が何故ここにいる⁉」

ヒュンケルより先にハドラーが瞬時に毛を逆立てにティファに対して怒鳴り声をあげた。

何となればヒュンケル以上の無礼者だ!!

しかもだ!

「何だその格好は!貴様それでも年ごろの娘か⁉

 そんな姿でうろついて恥ずかしくはないのか!!

 ブラスが見れば嘆くぞ!」

明らかに男物のシャツを一枚着ただけで、あとはショーツしか身に着けていないティファに

対して思わず説教してしまった。

「他人の人格問うなら先ずは己自身の身嗜みをきちんとしろ!!」

 

果たして、

「うっさいですよ!!

 パプニカに勇者一行の上陸の報告くらいはいっていたでしょう!

 私がこの地にいるのは何ら不思議ではありません。

 この姿は故あってのやむを得ずの事です!

 理由分かっていないのに無闇に怒鳴らないでいただきたいものですね!!」

ティファも負けずにハドラーに怒鳴り返す。

「っと、改めてお礼申し上げますヒュンケルさん。

 手当とこちらの服をお貸しくださりありがとうございました。

 とても助かりました。」

服の持ち主にきちんとお礼をし、

「時に眼鏡をお返しくださると助かります。」

堂々と眼鏡の返還を要求した。

 

「・・・」

 

あまりの唐突な出来事にヒュンケルの思考はフリーズを起こし、言われるままにポケットから

眼鏡を取り出し、返してしまった。

「ありがとうございます。」にっこりとお礼言われた。

 

(・・何だこの小娘は一体⁉さっきの戦場でのあいつはどこ行った!)

 

初遭遇のヒュンケルはティファの妙ちくりんさに、アバン以上の得体の知れなさを感じて

内心でドン引きし、ザボエラもぽかんとしたが、二度目のハドラーは免疫が備わり

 

「質問に答えろティファ!

 何故貴様が地底魔城のこんな場所にいる!!」

勇者一行の事は無論聞いているが、ティファがいる理由まで知る訳が無い。

 

(・・ハドラーが私の名前きちんと言った?)

(ありえん・・)

(ハドラー様が人間の小娘の名を・・)

三者三様に驚いた!

 

そう言えばハドラーなんだか・・しげしげ。

「・・何だ・・」

「いえ、貫禄が付いたなと思いまして。」

「・・・」

「魔王もどきが初級魔王になったようですね!」にっこりと言ってあげよう。

 

「おい!!」

「小娘⁉」

「・・お前、命いらんのか?」

ヒュンケルとザボエラはティファの発言に心底びっくりだ。

 

(・・まさか!!)

 

ヒュンケルは今のハドラーとティファのやり取りで先程のハドラーの発言を思い出す。

-お前の方が可愛気がある-

お前の方が・・もしかしなくてもこの小娘と自分を比べての事か!?

流石に自分だってあそこまでの事は面とは向かって言ったりしないと、片手で顔を覆い

げんなりとする。

 

「そんな事を言うなんてまだまだですよ。

 ですが初めてお会いした時の貴方よりもずっと素敵です。」

 

ティファは本心から言っているようだが褒めているのか貶されているのか全く分からずに

ズタズタにしてやりたいが・・みたところ・・

「今の貴様はヒュンケルの捕虜のようだな。

 処分はヒュンケルに任せる。」

 

今のティファは範疇外だとヒュンケルに任せた。




本編のハドラーは少し古風な父親キャラが入っていますので、この後もなんやかんやと
主人公に対して説教をする場面が出てきます。

サット・マーレ ちょっと待ったですが、筆者が作ったオリジナルアンデット語です。
次回ストーリーに必要なので、このオリジナルアンデット語がモルグと主人公のやり取りで出てきます。
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